どうして
LINEが、ブロックされてる。
彼の声が聞けなくなった。
Instagramが、ハイライトを見れなくなってる。
私の唯一彼の写真を見れる場所がなくなった。
Instagramも、ブロックされてる。
彼に連絡する手段がなくなった。
それでも、私の名義でできた借金は請求が来る。
私のカードでしたキャッシュローンも請求が来る。
私の友達は、彼と会ってるらしい。
私の貸したお金で買ったバイクは売ってしまったらしい。
彼には彼女が出来たらしい。
それなのに、彼が元気にしてるという友人の言葉を聞いて、よかった。と幸せになってしまう。
ただ、人づてにしか聞けない情報。その情報を持つ友人を、羨んでしまう。
嫌いになっていれば、借金を請求できたのだろうか。
何故お金を返さずに連絡手段を消したのか、問い詰められたのだろうか。
あんなに喜んでいたバイクを手放せた理由を、暴き出せていたのだろうか。
彼女が出来たことを、手放しに祝福してあげられたのだろうか。
私は、どうしてを毎晩繰り返す。
どうして、彼と写真を撮らなかったのだろうか。
どうして、動画を撮ったり思い出を残さなかったのだろうか。
どうして、お金を渡してしまったのだろうか。
どうして、名義を貸してしまったのだろうか。
どうして、友人に嫉妬してしまうのだろうか。
どうして、あの日家を飛び出してしまったのだろうか。
どうして、あの後直ぐに謝らなかったのだろうか。
どうして、嫌いになれないのだろうか。
どうして、好きになってしまったのだろうか。
どうして?
こんなにも苦しい。
夢を見ていたい
「暖かいね。」
私は、彼と一緒にいる。
隣でくっついて、お布団の中で、ヨシヨシと頭を撫でられている。
冬はいい。こうしてくっついている口実があるから。
「明日仕事休みやし、2人でどっか行こか。」
「行きたい。どこ行く?」
「山とかどう。」
「いいね、ドライブしようよ。」
明日が待ち遠しい。
明日が早く来て欲しい気持ちと、今の時間を終わらせたくない気持ちが入り交じる。
「もう遅いし、寝ろよ。」
彼はそう言って、私を抱きしめ直した。
「うん。おやすみ。」
「おやすみ。」
そうして、私は眠りに落ちた。
「さむ。」
私は寒さで目を起こした。
なんとなく、幸せな夢を見ていた気がする。
どんな夢だったのか、何故かきつく抱きしめていた抱き枕を見て察しがつく。
ポツンと、抱き枕にシミができる。
抱き枕に顔を埋めて、もう一度寝ようとする。できれば、どこかへ遊びに行く夢を見たい。2人で出かけたことがなかったから。
布団を引き上げ、身体を温めようとする。でも、
「....さむいなぁ。」
君と一緒に
夜、寝る前に写真を眺める。
そこには笑ってる君がいて、楽しそうな君がいて、幸せになる。
細くなった切れ長の瞳も、恥ずかしげもなく開かれた口も、覗く鋭い犬歯も、風に吹かれる長い髪も、どれも君らしくて、愛おしい。
思わずスクリーン越しに、君の頭を撫でる。
上がる口角と共に、雫が頬を伝う。
こんな私を愚かだと君は笑うだろう。
でも、これくらいは許して欲しい。
だって、
君と一緒に、どこかへ行きたかった。
君と一緒に、歌い続けたかった。
君と一緒に、ドライブを続けたかった。
君と一緒に、風に吹かれ続けたかった。
君と一緒に、眠りに着きたかった。
君と一緒に、ご飯を食べたかった。
君と一緒に、笑っていたかった。
君と一緒に、居たかった。ずっと、ずっと。
幸せとは
幸せとは、なんだろう。
仕事で成果を出すことだろうか。
学校のテストで高得点取ることだろうか。
友達が100人いることだろうか。
恋人がいることだろうか。
毎日遊べる相手がいることだろうか。
結婚することだろうか。
わからない。
寝る前、私は布団の中で頭を抱える。
今日、里帰りして、今年も言われた言葉に囚われていた。
結婚が女の幸せだ、はやく結婚して曾孫を見せろ。
幸せとは、なんだろう。
今年の抱負
「それじゃぁ、1人ずつ今年の抱負を聞かせてもらおうか。」
お酒の回った席で、祖父が言い出す。
毎年の事だ。
だがその一言に、私たち子どもに僅かな緊張が走る。
「下から行こうか、今年の抱負は?」
最年少のいとこに照準が定められる。
「ともだちたくさんつくります!」
小学生らしい、かわいらしい抱負だ。祖父はうんうんと頷きながら、その隣へ目を移す。
「今年の抱負は?」
「勉強頑張ります。」
少し緊張気味に中学生のいとこが答える。
「頑張るじゃないだろ。」
祖父は容赦ない目でいとこを睨む。お酒を飲むと手が付けられない暴走ぶりだ。
「どう頑張るんだ?」
「っ定期テスト、毎回合計400点以上取れるように勉強します。高校受験も、偏差値60以上の学校に行きます。」
いとこの手を見ると、膝の上でギュッと固く手を握りしめていた。
「それくらいは普通だな、もっと上を目指せ。」
祖父は続いて私の弟に照準を向ける。
「俺は....大学の𓏸𓏸っていう分野に興味があるから、それについて調べて勉強します。」
私たちには𓏸𓏸が専門用語すぎてわからない。
祖父は満足そうに、がんばれよ。と言う。
相変わらず、男に甘くて女に厳しい。
「それで....お前は?」
最後に、私に目を向ける。
「私は、仕事で2年目になるから、4月に入ってくる後輩に頼られるような先輩に....。」
「そんなの聞いてない。」
心の中で、ですよね。と思う。
「お前、結婚は。彼氏は。」
無遠慮な目つきで私を上から下へ見る。
「いません....。」
「お前次何歳になるんや?」
「24です....。」
別れてすぐの私には、この話題はしんどい。でも、それを言い出せる訳もなくて。
「お前な、前から言ってるだろ?彼氏はまだかって。」
「....はい。」
「24だろ、早く結婚しろ。女の幸せは結婚なんだ、女の仕事なんてどうでもいい。」
「わかりました。」
お見合いをするか?と言い出した祖父の言葉は聞かなかったことにした。
中学生になった時から、彼氏はまだかと言われてきた。
20歳から、結婚はまだかと言われてきた。
早く曾孫を見せろと言われてきた。
昔からの、時代錯誤したセクハラ発言。
これだから、正月は嫌いだ。祖父に会いたくない。