夜空の音

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今年の抱負

「それじゃぁ、1人ずつ今年の抱負を聞かせてもらおうか。」
お酒の回った席で、祖父が言い出す。
毎年の事だ。
だがその一言に、私たち子どもに僅かな緊張が走る。

「下から行こうか、今年の抱負は?」
最年少のいとこに照準が定められる。
「ともだちたくさんつくります!」
小学生らしい、かわいらしい抱負だ。祖父はうんうんと頷きながら、その隣へ目を移す。

「今年の抱負は?」
「勉強頑張ります。」
少し緊張気味に中学生のいとこが答える。
「頑張るじゃないだろ。」
祖父は容赦ない目でいとこを睨む。お酒を飲むと手が付けられない暴走ぶりだ。
「どう頑張るんだ?」
「っ定期テスト、毎回合計400点以上取れるように勉強します。高校受験も、偏差値60以上の学校に行きます。」
いとこの手を見ると、膝の上でギュッと固く手を握りしめていた。
「それくらいは普通だな、もっと上を目指せ。」

祖父は続いて私の弟に照準を向ける。
「俺は....大学の𓏸𓏸っていう分野に興味があるから、それについて調べて勉強します。」
私たちには𓏸𓏸が専門用語すぎてわからない。
祖父は満足そうに、がんばれよ。と言う。
相変わらず、男に甘くて女に厳しい。

「それで....お前は?」
最後に、私に目を向ける。
「私は、仕事で2年目になるから、4月に入ってくる後輩に頼られるような先輩に....。」
「そんなの聞いてない。」
心の中で、ですよね。と思う。
「お前、結婚は。彼氏は。」
無遠慮な目つきで私を上から下へ見る。
「いません....。」
「お前次何歳になるんや?」
「24です....。」
別れてすぐの私には、この話題はしんどい。でも、それを言い出せる訳もなくて。
「お前な、前から言ってるだろ?彼氏はまだかって。」
「....はい。」
「24だろ、早く結婚しろ。女の幸せは結婚なんだ、女の仕事なんてどうでもいい。」
「わかりました。」
お見合いをするか?と言い出した祖父の言葉は聞かなかったことにした。

中学生になった時から、彼氏はまだかと言われてきた。
20歳から、結婚はまだかと言われてきた。
早く曾孫を見せろと言われてきた。
昔からの、時代錯誤したセクハラ発言。
これだから、正月は嫌いだ。祖父に会いたくない。

1/2/2026, 11:25:39 AM