ー繋がれたー(特別な存在)
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天才。
彼女はすべてをもって生まれた。
何をやらせても上手くいく。
容姿は申し分なく、環境にも恵まれていた。
それ故に、疎まれる。
幸い彼女のメンタルは強かった。
いや、そう見せたのだ。
ちょっとしたことで傷つき、涙がでる。
しかし、それを悟らせないこと………相手に気を遣わせないことも、
彼女の才であったのだろう。
まさに、誰かの為に生まれたような人間だった。
誰もが彼女を期待し、
また彼女も、その期待に答えてみせた。
その自己犠牲精神は計り知れない。
彼女をそんな風にさせたのは、きっとその両親なのだろう。
冷たく、自分中心的だ。
子どもに日々のストレスをぶつけ、時には手をあげることもあった。
そんな中で着々と
空気を読む力をつけた彼女は、周りから頼られる存在になった。
高校卒業後。
彼女はいつの間にか、
そういう__いわゆるP活などと呼ばれる__ことをする様になった。
それは彼女にとっての、自傷行為なのではないか。
もう、見ていられない。
これは彼女にとって最善の生き方ではない。
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整えられた字は、そこから先を綴ってはいなかった。
きっと、この“彼女”へ会いに行ったのだろう。
遺書のようなそれは、部屋にあった机にポツンと残っていた。
まさか、彼女を助けたかったのだろうか。
私たち上位存在の介入は許されないと言うのに…。
人間界へ着いた途端に記憶を消され、
自分の目的も失い、何も持たない成人として生きることになる。
知らなかったはずがない。
親から子へと、よく聞かされるものだから。
破ってはいけない暗黙のルールとして。
破ればその一族は、さらなる上の上位存在様への裏切りとして虐殺されることになる。
……そういえば、この遺書……日記の主の一族はこいつ一人だったか…。
最近朝礼へ出なくなったやつの元を訪ねてはこれだ。
この“彼女”の被害者はこれで何回目だ?
ストーカーまがいの監視をして日記を書いては、
ついに人間界へ……。
あぁ、上位存在様へなんと言えばいい?
いっそ“彼女”を幸せにできれば、この相次ぐ裏切りをやめさせられるのだろうか。
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おやすみなさい。
ー勇者とー(バカみたい)
誰もしらないような村で、勇者が選ばれた。
世界の勇者が。
本人はその場にいなかった。
ただ、その王国の騎士が、勇者の名だけを告げ、
去っていった。
村の人たちは呆然とした。
勇者に選ばれたのが、村一番の「バカ」だったからだ。
「あいつに役目が果たせると思うか?」
「うーん。無理だと思うけど」
取りあえず古い剣とか、村で一番良い服とかが贈呈された。
勇者に選ばれたそいつは、そういうのを持って村から追い出された。
「勇者」はまだ、状況を掴めていなかった。
「どういうこと?」
勇者は聞いた。
「友達」に。
友達…その青年は、勇者が心配で「ついていく」と言った、
優しい青年だった。
「お前が勇者になったんだと」
「……そうか」
勇者は少し眉を下げて頷いた。
「勇者」が何か逡巡していたのだ。
「じゃあ行くか」
勇者は前を向いた。
そこには、だだっ広い平原が広がっている。
見渡す限り、植物しかない。
「…どこ行くんだ」
「どっか」
青年はその返答にため息をついた。
なんてやつだ。
「…大丈夫か?」
「大丈夫だろ」
「なんで」
「選ばれたってことは、できるってことだ」
そうか?
青年は眉を潜めた。
「お前、勇者がなにするものか知ってる?」
「魔王を倒すんだろ?御伽話でしった」
「……取りあえず、町を目指すか」
「そうだな」
二人はしばらく無言で歩いた。
少し居心地が悪かったのかもしれない。
勇者が沈黙を破った。
「俺、村の外は初めて見た」
「ふーん」
「初めての場所って、だいたい何かあるよな」
「そうか?」
「そうなんだよ」
青年は、少し考えてやめた。
と、勇者が遠くを指差した。
「あれ、光ってる!」
子供みたいな興奮の仕方だった。
二人で近づく。
茂みのなかに、白い穴があった。
結構でかい。
勇者は一言。
「入ってみるか」
「は?ダメだろ。戻れなかったらどうすんだよ」
「まぁ大丈夫だろ」
「大丈夫じゃないかもだろ」
「俺の勘が大丈夫って言ってる」
「お前の勘は当てにならないから」
青年はため息をついた。
「……大丈夫だったとしても、俺らが入る理由はない」
「理由ならあるだろ」
勇者は穴を指した。
「ここにある」
「?」
そのまま、穴に飛び込んだ。
勇者の姿が視界から消える。
…とんでも理論過ぎるだろ。
青年はため息をついて、自分も穴に飛び込んだ。
「おっ、来たか」
声がした。
頭上から。
その声は「遅かったな」と続く。
体は気づいたら、石畳の上で腰をついていた。
青年は、ゆっくり立ち上がった。
目の前に、立派な城。
異様な雰囲気を放っていた。
「ここどこだろうな?」
勇者の呑気な声に思わずため息をついて、青年は城を指差した。
「これ、魔王城じゃないか?」
「えっ、これが?」
勇者はごくりと喉を鳴らした。
「勇者は魔王を倒すんだろ?なら、今戦うってことか」
青年は思わず目を見開いた。
「え?それで?」
「どれ?」
勇者は「村一番の服」という名の普通の服と、
古い剣しか持っていなかった。
「どうやって戦うんだ」
「?もちろんこれで」
勇者は剣を抜いて一回振って見せた。
風を切る音がした。
それだけだった。
青年は顔を押さえた。
しかし、勇者は誇らしそうに言った。
「これで届く距離なら倒せる」
「届かなかったら」
「近づけばいい」
勇者は再度、剣を振った。
若干、剣から変な音がした。
ヒビが入っている。
「……ダメだ、戻ろう。さっきの穴は」
「消えた」
一泊。
青年はなにも言わなかった。
「そういえば、魔物がいないな。こういうのって、襲われるんだろ?」
「? あぁ、確かに。もう見つかって、捕まっててもおかしくない」
「歓迎されてるんじゃないか?」
「なんでそうなるんだよ」
二人は顔を合わせた。
勇者が頷く。
「入るか」
「え?いや」
「入るしかないだろ」
「戻ればいい。村まで、歩いて」
「なんでだ。俺たちがここまでこられたのは、今倒せってことなんだ」
「そんなことないだろ」
「ある!」
「……なんか、凄いなお前」
青年は城を見上げた。
さっきから不気味なほど静かだ。
「…行くか。しょうがない…」
「それがいい!」
二人は門の前に立った。
扉がひとりでに開く。
重い音を立てて。
「ほら」
勇者が青年を見て笑った。
「止められないってことは、入っていいってことだ」
「そんなわけあるか」
青年はそういって、軽く勇者をこずいた。
城のなかは、外と変わらず静かだった。
広い城のなかに魔物の姿は見えず、二人の足音だけが響く。
勇者はキョロキョロ見回した。
「誰もいないな」
「…最近、魔王がどっかと戦ってるらしいから、それかもな」
「ここの魔物のが戦に出てるってことか?」
「多分。でも、全くいないのはおかしいよな」
「うん、全員いないかもな」
「それはないだろ」
「いや、俺の勘がそう言ってる」
「だからお前の勘は当てにならないんだって」
「全員いないなら、今が一番弱いな。やっぱり俺たち導かれてる!」
「聞けよ。魔王がそんなバカなことすると思うか?」
「魔王だってミスはするさ」
「これはミスってレベルじゃないだろ」
奥へ進む。
重厚な扉。
「多分、奥に魔王がいる」
勇者はそうこぼしたが、青年は反応しなかった。
扉は、来たときのように自動的に開いた。
「歓迎されてる…」
玉座の間。
王の椅子がある場所は、そう言われていた。
黒いローブのようなものをまとった「怪物」。
それは、魔王。
勇者は変な顔をしたあと、魔王に話しかけた。
「こんにちは」
魔王は初めてそこで、侵入者に気がついたようだった。
玉座は、扉の真ん前にある。
「だれだ貴様」
「勇者です」
「…勇者はずっと向こうの村で生まれたと聞いたが」
「穴を使ったから」
「穴?」
「穴」
「穴…だと」
「はい」
「……なぜここに?」
「勇者は、魔王を倒すものだから」
「…私が言うのも変だが、先にそちらの王に会いにいき、倒す旨を伝えてからでないと、報酬は降りないぞ」
「報酬?」
「知らないのか?魔王を倒すと報酬がもらえるのだ」
「俺は、魔王を倒すために来たから…」
「………理由のない悪は、正当な悪よりよっぽど酷いぞ」
「悪?俺が魔王を倒すから?」
「あぁ、倒される気はさらさらないが」
「……じゃあ、俺勇者やめようかな」
「勇者をやめる?」
「勇者はカッコいいものだと思ってたから」
「…まぁ、そちらの世界でどんな扱いになるか分からんが、貴様がそれでいいならそうすればよいのではないか?」
「はい。帰ります」
勇者はパッと青年を見た。
「帰るか」
「…あぁ」
こうして二人は魔王城から立ち去った。
一人の勇者の物語は、今でも語り継がれている。
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こういうの久しぶりに書きました🙂
おやすみなさい。
ーなぜー(二人ぼっち)
確かに、隣にいる。
体温だって伝わってきそうなほど。
近くに。
でも、分からない。
いつだって存在は曖昧だ。
どうして、私はあなたを感じられないの?
あぁ、寂しい。
いつまでも。
消えない。
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またか…。
おやすみなさい。23:22
ーそこにいたー(夢が醒める前に)
ポチがいた。
犬のポチ。
結構長生きしたポチ。
食いしん坊のポチ。
人懐っこい、あのポチが。
懐かしいリアルが、僕の前で体を震わせた。
ポチ、こんなところにいたの?
こんな、場所で。
ポチは生きてたんだっけ。
曖昧になって。
でも、あぁそうか、ポチは生きてたんだ。
ポチに触ろうと、手を伸ばした。
しかし、ポチはそれを躱す。
そして駆け出した。
追いかけっこが始まった。
どうしてポチ。
会いに来たのに。
どうして?
ポチはこちらを見ながら、すごいスピードで遠ざかっていった。
「ポチーーー!!!!」
叫ぶ。
ポチは、こちらを見続けてはいたが、止まりはしない。
なんで?
と、ポチが姿を消した。
下に。
下?
落ちたんだ。
穴があいていた。
真っ黒な、底の見えない。
理解して、少し立ち止まった。
脇腹が痛い。
「ワン!」
威勢のいい声がして、ポチはもう、穴の向こう側に飛び出て走っていた。
俺は一気に、穴を飛び越えた。
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🙂夢って意味わかんないですよね。
おやすみなさい。20:53
ー片想いー(胸が高鳴る)
僕には気になっている人がいる。
隣のクラスの転校生。
息を飲むほど綺麗な顔立ちをしている里山(さとやま)さん。
彼女は底抜けに明るくて、すぐにみんなの人気者になった。
僕なんか、目に入っているわけない。
そう思っていた。
でも、そう。
集会とか、学年全員が発表する場とか。
そういう時に、必ず目が合う。
大体僕の方を終始見てくるんだ。
あぁ、しかたないな。
見てあげるよ僕も。
目線が合わないと寂しいもんね?
それだけじゃない。
彼女は僕のそばを通る時、かなり近づいてくる。
匂いを確かめてる見たいに。
そんなわけで、僕たちは両想い。
いや、両片想いだってこと。
最近はドキドキして眠れないこともしばしば。
そろそろ卒業も近い。
僕は意を決して、告白することにした。
……しかし、現実はそう甘くない。
僕が告白を決心した翌日、彼女に彼氏ができたことが噂になっていた。
どうやら僕と同じクラスだそう。
そいつは名簿順で言う、僕の一つ後ろのやつだった。
なんでも出来るイケメン。
僕はそれを知って、胸の中にストンとなにか落ちた気がした。
つまり最初から、僕の独りよがりだったのだ。
そして僕の想いは、驚くほどに冷めてしまった。
なんだ。
僕じゃなかったのか。
…じゃあ良いか。
――――――――――――――――――
😔