『1年前』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
コロナって一体何なんだ?
コレからどうなるんだ?
いつか総括しようと思って丸三年
いろいろと困ったことには見舞われたが
何とか息してる。。。
人間が、生きていけるのは奇跡の中で成り立っているんだなあ。
一年前の自分は今の自分とかなりかけ離れた人間になっている様な気がするよ。
混沌とした時代のなか、生きて行く意味を見出したのかも知れない。
美味しいパン屋が最近できたと近所のマダムに聞いたので、ロードワーク後に行ってみることにした
行儀が悪いのは承知の上で歩きスマホをしながら店名を入力して場所を調べる
階段を踏み外さないように、スマホからの視覚情報をインプットするため脳のリソースを配分する
そう遠くないところにあるのが分かって隣の相棒に話しかけようとした時、左肩に強い衝撃が走る
どうやら後ろから早足で階段を降りた人とぶつかったらしい
幸い、スポーツ選手の自分はフィジカルがあり、向こうも少しぐらついた程度で落ちることはなかった
しかし、手元にあったスマホが宙を舞った
データはすべてクラウドに保存してあるからこの後買い換えるか、と思案していると白い影が物凄いスピードで階段から飛び降りていった
ああ、まさか2度も見ることができるなんて
隣にいた相棒は完璧に受け身を取りながら、スマホが地面につくより先に足先で吸い込むようなトラップをした
すぐさま立ち上がり、俺とぶつかってしまったと思われる男に殴りかかる勢いで詰め寄るので慌てて間に入る
1年前のあの光景は、もうずっと、忘れられそうにない
『お引越し』
空っ風がしゅらしゅらと ヤドカリの抜け殻は空き家のままだ 素敵なこともあったけど 多分もう来ないよ 潮の匂いも好きだけど 他人の波風は何より甚しい 大切なのは颯爽とお引越し
1年前
柱の前に立つ。下敷きを頭に乗せ、固定してその下から抜ける。油性マジックで下敷きの下に線を引く。
新しく書いた線は、その下の線と指2本分離れていた。
目線よりも少し下にも線がある。こちらは赤いマジックで刻まれている。そのうち追いつくんだから混ざってもわかるように、と言っていた。
「あーお兄ちゃん1人でやってる!」
「げ」
「どうせ背伸びてなかったら恥ずかしいからでしょ」
「ちげーし伸びたし」
「私もやって!」
1年前 君が「好きです」と告白してくれたこの場所で、
1年後の今日、僕は君にプロポーズをする。
『1年前』#22
~1年前~
春になると店先の睡蓮鉢に新芽が出てくる
去年のいまごろ新芽の時期には…
大丈夫お別れだなんて思ってませんから
56文字の黒の史書
1年前の今日。きみはまだ十八歳で、僕が十九歳だった頃。
駅前のナナ公前で誰かを待ち続けるきみを僕が見つけたね。
寒い中、何分待ってもこなくてきみは結局帰ったよね。
僕はずっと見ていたよ。
可哀想に。すっぽかされて可哀想に。
そんなに携帯ばかり気にしてさ。くるわけないのに気にしてさ。
僕はずっと見ていたよ。
温かい場所でずっとね。
いつまでそこにいるのかなって。きみからの連絡に気付かないふりしてにこにこと。
僕のことが大好きだったきみ。すっぽかされて可哀想に。
#33 1年前
嘘つき
私はみんながいるとずっと思ってた、でもそうではなくて
勉強も運動もそれなりにできた、自慢できるほどではないけど私なりにも嬉しいことだった。
いつしかそれは当たり前とされて評価されることは減って
今から頑張ったら変わるかななんて思わなかったことを考えてしまうのは変わったところなんだと思う
52一年前
最後に熱い味噌汁を飲んだのは、一年も前の事になる。
海外赴任を終えて、もうすぐ帰国。今は飛行機に乗っている。
日本に降りたったら、まずは空港の牛丼屋に駆け込もうと思う。刻みネギと豆腐の浮いてる、出汁のきいたなんの変哲もない味噌汁。きっと全身に染み渡るほど旨いだろう。紅生姜のすっぱさとタレの甘しょっぱさが絡み合う牛丼を一気にかき込む。サイドメニューの冷奴をつるりと流し込む。あいだにしゃきしゃきのおしんこを挟む。そして最後にまた、味噌汁でしめる。最高だ。
ああ、禁断症状のように頭がくらくらしてきた。
早く飛行機がつかないだろうか!
今日は報告で
♡ が1001になりました
なんか、嬉しいです
いつも読んでもらって
描かせてもらって感謝感謝です
これからも宜しくお願いします。
【1年前】
去年の今ごろは、まだこのアプリの存在を知らなかった。仕事も忙しく、ブログの更新も滞りがち「文章」を書く習慣はまだなかったが、代わりに「文字」を書く習慣はあった。
文学作品の一説を書き写しては、その写真に一言二言添えてTwitterで公開した。それは、今思うと「本当は自分の文章を書きたいけれど、それが思うようにできないので」せめてもの罪滅ぼしにと続けていたのかもしれない。
このアプリと出会い、できるだけ毎日綴ろうと努めるようになって2ヶ月が経つ。何度か休んだけれど、今も続けられている。1年前には考えもつかなかったストーリーや登場人物に溢れていて、自分でも驚いている。
1年後、できればここでまだ書き続けている自分でありたい。ひそかに夢見ている自作の本が出版できていたら…いいなぁ。
母の介護を父と一緒にしていた。
僕は、介護の仕事をしていながら、なぜか母の介護に積極的に取り組めていなかった。
ある日、母は、リハビリと家族の介護負担を減らす目的で病院に1週間入院することになった。
僕は介護タクシーの中の母に「またね」と声をかけた。意外にも母は無言だった。
しかし、その時、愚かな僕は聞こえなかったのかなと特に気に止めることはなかった。
その次の早朝、家の真横を通る救急車の締め付けるようなサイレンの音で目を覚ました。
次に、父の携帯がガランとした部屋中に鳴り響いた。
僕の心臓は高なった。
実は、その時、母は静かに旅立っていたのだった。
4年ほど前から難病を患い、不自由になりながら暮らしてきた母。
母との最後の日々を無表情にこなしてきたことを激しく後悔した。
あれから、1年経った。
幸いにも、
母が言った「お前が幸せなら、なんでもいいよ」といった言葉と遺影の中で静かに笑っている母が僕の命の源となっている。
日差しが強くて
君は外に出るのを嫌がる
そのくせ レースの向こうの外をよく見遣る
青々とした植物をぼんやりと
夕方頃 庭でBBQ始めてみようか
影がゆっくり長く伸びて
君も猫のように 背伸びして
日陰になった出窓から顔を覗かせた君に
つば広帽子をかぶせてあげる
今日は俺が苦手な野菜も食べるから
はやくおいで
17
喜びも、苦しみも、一緒に。
しんどい時もあるし、投げ出したくなる時もある。
でも一緒に乗り越える。
それがとても幸せ。
1年前、こんな関係になるとは思わなかった。
ぶつかって、反発しあって。
それでもお互い気になって。
気がつけば、一番の理解者になってくれた。
時間が互いを高めあう。
1年前、互いに乗り越えられなかった壁。
また挑もう。
今度はひとりじゃないから。
一年前の今日は
私たちの記念日
今年の今日は
君の
命日なんだ。
1年前
1年前、犬を飼い始めた
まさか散歩嫌いな犬だとは思わなかった!
今じゃ引きずるみたいたにして散歩に行ってる
『1年前』
今日、私、山口智恵子は死んだ。
こんなはずではなかったのに。
一年前、のその日は会社の入社式だった。
何社も受けたけれど、一番入りたい会社だったから期待と緊張で胸をときめかせていた。
同期に、岡田絵里香という女性がいた。
ちょっと、他の社員と雰囲気が違っていた。
彼女の場合、比較的楽な仕事を与えられ、ちゃんとやってなくても係長も課長も何も言わなかった。
どうやらこの会社の社長の娘らしいとわかった。
そうして彼女は、私にも自分の仕事を強制的に押しつけて来た。
みんな、周りの社員は知っていても、見ないふりをしていた。
誰も助けてくれなかった。
簡単な仕事だったから、少しがんばればできる程度だった。
そのうち、会社の社員旅行があった。私は参加する予定で楽しみにしていた。
すると岡田絵里香も参加するという。
陰ではみんな嫌がったがそんなことは言えず、黙っていた。
三泊四日の旅行だった。
そしてその旅行中、ふとした事から経理課の西村俊彦という二歳年上の社員と仲良くなった。
きっかけは、夜の食事というか宴会だった。座る場所を番号を引いて決めるのだ。
それで、たまたま隣同士になったのが彼だった。
話してみると同じ県の出身である事がわかり、そこの場所独特の方言や食べ物の話で盛り上がった。
何を話しても、彼と話すと楽しかった。お酒が入っている事もあり、同じ県なんてすごい偶然が重なり、私と西村俊彦は急速に仲良くなった。
旅行中は自由行動は、彼と一緒に行動し、写真を撮ったり食事をしたり、お土産屋さんに入ったり、何をしても楽しかった。
彼といると、とても気が楽で自分らしくいられるのだ。
それを言うと、俺もそうだよ、と言ってくれて、私は彼に惹かれていき、自然に帰ってからも付き合うようになった。
普段のデートの時は、私は俊くんと呼び、彼は私を、智恵と呼んだ。
ある休日、俊くんと観たいと思っていた映画に行った。思った以上に楽しい映画でとても楽しかった。
すると、二人でいる所をたまたま岡田絵里香に見られた。
ばったり町で出会ったのだ。
何か私は嫌な予感がした。
俊くんは、別に悪いことをしてる訳じゃないんだから、あまり気にしないでいようよ、と言ってくれた。
すると、しばらくするとデートの時、俊くんが「参ったよ、岡田絵里香さんが二人で一緒に出かけようと誘ってきて、すごいんだよ」と、困った顔をしていた。「彼女、何なの?みんな遠慮してるみたいだし」と言った。
そうか、経理課までは細かい話はいってないんだ、と思い「なんでも聞いた話だと、社長の娘らしいよ。私、同期だったんだけどろくに仕事しなくても、係長も課長もなーんにも言わないんだもの」と言うと、「うわ〜!そういう人か!それは困ったな」と言っていた。
「俊くん、どうするの?」と聞く私に「それは、自分には、もう彼女がいるから、って断るよ、今度は」と言ったけれど、なんだか不安感が夏の積乱雲の様にむくむくと膨らみ、何か悪いことが起こるのではないか、と嫌な気持ちがして仕方がなかった。
そんなある日、お昼休みに、トイレで岡田絵里香と一緒になった。
もう取り巻きも何人か作り、いつも女性同士、四人くらいで行動していたのだった。
トイレの入り口に一人が見張りで立ち、他の二人は岡田絵里香と一緒に、私を囲むように立ち、彼女が「ねえ、山口さん、あなた経理課の西村俊彦さんとつきあってるのよね?」と言うので、社内でもけっこう知ってる人がいたので私は「ええ」と言った。
すると彼女はまるでハンカチを貸してくれない?とでも言うような気軽さで「彼と別れて」と言った。
私は、突然の話でついていけず「はい?」と言った。すると取り巻きの一人が「鈍い子ね、絵里香さんは、彼と別れろって言っているのよ」と強い口調で言う。
滅茶苦茶な話ではないか、そう思うと、腹が立った。
なので私は「私が誰と付き合おうと私の自由なはずです。すみませんがお断りします」と言うと、何故か妙に含みのある言い方で、「そう?本当にいいのね?」と言って取り巻きと出て行った。はぁっと、緊張から解けたことで思わずため息が出た。
その時は、とても嫌な気分だったが、俊くんに言っても困られるだけだから言わずにいた。
デートの時、俊くんが「智恵が入社してきてもうすぐ一年だね」と言われた。私は仕事と、岡田絵里香の事で、うっかり忘れていた。
「あ!そうだね、もうすぐ一年だ」と言うと、くっくっと笑ってから
「そんな大事なこと忘れてるなんて智恵らしいな」と言った。
トイレの時の話はしてない。
彼も不快な気分になるだろうから。
「一周年のお祝いをしようね」と言ってくれた。
とても嬉しかったし、幸せだった。
でも、その時私は彼女とのことを軽く考えすぎていた。
三月近くになると、経理課はとても忙しくなる。なかなかデートの日も取れないくらいだった。
なので、夜遅くに電話で話をよくしていた。
そんなある日、経理課で大問題が発生した。金庫のお金が百万円足りないのだ。経理課の人間なら誰でも金庫は開け閉め出来る。経理課のみんなの机はもちろん、私物やロッカーまで調べられた。見つからない。このままでは済まない。
そこへふらりと岡田絵里香がやって来た。
「なあに?これはなんの騒ぎ?」と言い、本来は部外者であるはずの彼女に、経理課の課長が苦しそうに、実は、と話した。
すると彼女は真っ直ぐに、西村俊彦を見て、「西村さん、あなた、庶務課の誰かと付き合ってたわよねえ」と言った。課長は西村俊彦に「それは本当か」と言った。彼は「はい、つきあってはいますが、それとこれは全然関係ないのでは?」と言った。
が、岡田絵里香が「誰かさんが、この間買い物をしすぎてお金が足りないって言ってたわよね」と言うと課長が「西村、誰とつきあっているんだ、その子にお金をお前が渡したのか?」と言われ、やられた!、と思った。
「西村、誰とつきあっているんだ!」と課長に強く言われ、しかたなく「そこの岡田絵里香さんと同じ、庶務課の山口智恵子です」と言った。そして「でも自分は彼女にお金など渡していません!」と言ったが、課長は部下を何人か連れて庶務課に急いだ。
私はいつも通り仕事をしていると、急に騒がしくなった。経理課の課長が部下を連れ、私を見ながら言ったのだ。
「庶務課長、経理課の金庫のお金が百万円足りず、居合わせた岡田絵里香さんの話では、山口智恵子さんがつきあっている、うちの課の西村俊彦から受け取った、と。探させてもらってもよろしいですね?」
私達はザワザワとして、みんな、同じ事を考えていた。
私は事態が飲み込めずにぼうっとしていた。すると、経理課長が「机から離れなさい」と言い、私の私物も入っている机を徹底的に調べた。
無いとわかると、うちの課の課長に「彼女のロッカーも探したいので同行してもらえますか」と言った。
「君もだ」と私を見て言われ、ようやく私は事態を呑み込めた。
いくらでも探せばいい。そんなお金、私は知らないし、今朝もロッカーを使ったのだ。そんな物はなかった。
しかし、庶務課の課長が私のロッカーを開けると、経理課長が私のバッグを掴みだし、その中を調べ始めるとすぐに、百万円の束を出してきた。
庶務課の課長が「山口くん、君は」と顔色を変えている。
一番驚いたのは私だ。
だってそんなお金、全然知らないのだから。
「わ、私、そんなお金知りません!取ってなんかいません!」と言ったが、「じゃあ、なぜ君のバッグから出てきたんだ!」と言われ言葉を失った。そうか、岡田絵里香だ!
でも、証拠が、ない。
庶務課の人達が、私を気の毒そうに見ている。
みんな、岡田絵里香がやったのだと確信している。
でも、何も言えない。
私は仕事から外され、庶務課の課長に会議室に連れて行かれた。
経理課では課長が戻ってくるなり「岡田絵里香さんの言うとおり、山口智恵子のバッグから出てきました」と岡田絵里香に言った。
すると、岡田絵里香は「課長、ちょっと」と隅に呼び、しばらく何かを話していた。課長はうなずき、ハンカチを出し、額の汗を拭いた。
西村俊彦は智恵が心配だった。
岡田絵里香がやったのはわかっている。でも、何故、智恵を悪者に?
すると、経理課長がみんなに「みんな、これはここだけの話だ。聞いたら忘れてほしい」と言い、実は西村俊彦は岡田絵里香とつきあっていたが、山口智恵子が岡田絵里香の事をあることない事、横恋慕してきて西村俊彦に告げ口をした。
自分には目もくれないとわかった山口智恵子は、嫉妬に狂い、自分もろとも西村俊彦も陥れたのだ。だから西村俊彦は悪くない。今まで通り仕事をしてもらう。
そんな話は経理課のみんなは聞きながら、嘘だとわかっていた。課長だってわかっているはずだ。
だって、さっき、西村俊彦が自分は山口智恵子とつきあっていると言ったではないか。でも、西村俊彦に目をつけた岡田絵里香が、彼から山口智恵子を引き離す為に、自作自演をしたのだ。
社長の娘なら、金庫の番号を知っていてもおかしくない。
可哀想な、山口智恵子。
西村俊彦も気の毒だ。無理やり自分の彼女に罪を着せられたのだから。
西村俊彦は体の力が抜けていくのがわかった。
なんてことだ!よりによって智恵にそんな罪を着せて。
でも、証拠がない。嘘だとわかっていながらどうしようもできない。
会議室に連れて行かれた智恵子は、完全にはめられたのを悟っていた。
トイレでの、あの会話は、こういう事だったのか。
何を言っても、もう無駄だと思った。
そこに、経理課長と岡田絵里香が入ってきた。庶務課長が立ち上がり、お辞儀をする。
すると、経理課長がおもむろに言った。
「社長に伺ったら、この件は絵里香さんに任せるとの事だ。本当なら横領罪で刑事告訴する所を絵里香さんの寛容なお心で解雇処分だけで済んだ。庶務課長もお咎め無しだ」と言うと、庶務課長がはぁーっと安堵のため息をついたのが聞こえた。
それはそうだ。みんな我が身がかわいい。ましてや、家族がいたら尚更だ。
私は、一つ、とても気になっていたことを聞いた。
「あの、西村俊彦さんは、罪になるのでしょうか」
すると、経理課長が突き放すように「西村は悪くない。それは君が一番わかっているだろう」
私は、ものすごくほっとした。
良かった。彼はまぬがれたんだ。
でもきっと、岡田絵里香とこれからつきあっていかなくてはいけないだろうけれど。
私はその日のうちに解雇処分になった。
職と恋人と同時に失った。
これでどこの会社も雇ってくれはしない。
だって、前職のここに問い合わせれば、横領で解雇処分になったのだから。
生きていく気が、なくなった。
すべてがどうでもよくなった。
岡田絵里香に目をつけられた時から、こうなる運命だったのだ。
死のうかな、と思った。
線路に向かって歩いていく。歩きながら、奇しくも一年前の明日、入社式があったんだ、と気がついた。
楽しかったな、この一年。
さようなら、俊くん。
いつも優しくて楽しかったよ。
パァー!っと遠くで電車の音がする。
特急列車だ。
ここは、駅と駅の間なのでスピードは出したままだ。
線路の前まで来ると、ためらわず飛び込んだ。
翌日、入社式が行われていた。
新しく入った者たちはみな、期待と緊張で胸をときめかせていた。
1年前、俺は殺された。
それからずっとこの世を彷徨っている。
最近、家族に会った。
元気そうでよかったよ。
俺はある子を愛していたんだ。
その子は他の男の人と歩いているところを見たよ。
元気そうで、楽しそうで良かった。
いつから付き合い始めたのかな。
俺のことは忘れてないかな。
あ、でも幸せになって欲しいから、俺のことは忘れてね。
もう俺には思い残すことなどないよ。
それじゃあね、世界。
上から見守ってるからね。
お元気で。
【1年前】
「5月8日のお題が、たしか『一年後』だった」
1年前の6月17日って、俺、何してたっけ。去年の行動内容をスマホに溜め込んだ写真やスクリーンショットに求めようとした某所在住物書き。
サ終したアプリや消し飛んだ課金額に思いが動いて切なくなり、過去発掘は5分で終了した。
「『今日から数えて』1年前だったら、2023年6月17日のハナシだが、『〇〇を実行する』1年前、とかならずっと昔のハナシも書けるんよな」
たとえば「ガチャ爆死する1年前」とか。「大量課金する1年前」とか。……とか。
「……あれ。おかしいな。涙が止まらねぇや」
その日物書きが金銭の話をすることは以降無かった。
――――――
6月半ばの都内某所。夜のあるアパートの一室。
人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、茶香炉焚いたぼっちの部屋で、スマホの画面をじっと見て、ため息をついている。
画面には、数十分前に実家から送られてきた、故郷近隣の祭風景。シャッター街と、さして人の入らぬ観光施設が、かつての賑わいを吹き返す数時間。
1年前より更に数の増えた感がある、露店と、見物客と、なによりおそらく、祭参加者の笑顔であった。
これが終わって、ようやく捻くれ者の故郷の春は完全に終わり、初夏が来る。
東京より短い夏が。風吹き花爆ぜる夏が。
捻くれ者は、職場の後輩にその画像を、ようやく届いた故郷の初夏を、共有しようと画策して、
送るメッセージを編集し終えた直前に、悲しき思い出に待ったをかけられ、苦悩し、悶々が続いて数十分。
吐いたため息は10を超えた。
(送るな。やめておけ)
それは昔から人間嫌いだった捻くれ者の、遅い遅い初恋と、いわゆるよくある黒歴史。失恋のエピソード。
(独り善がりだ。どうせ、どうせ)
都会と社会の悪意に揉まれ、折れそうになった時、確かに自分の心を支え、魂を助けてくれた筈のひとに、高く持ち上げられ、初速度つけて落とされた数年前。
「連休あなたの故郷に二人っきりで行ってみたいかも」と言うから、早速二人のぼっち旅のため、向こうの料理を店を花の状況を調べていた矢先、見つけてしまったそのひとの、呟きアプリの裏アカウント。
「あいつあたまおかしい」。
捻くれ者は連絡手段をすべて絶ち、部屋を引き払い、職場も居住区も全部変えて、今の場所に辿り着いた。
(まだ敵ではないだけで。何かが変われば。何かを、崩してしまったら。あいつだって)
人間など敵だ。あるいは「まだ」敵でないかだ。
でももしどこかの片隅に、まだひとつ希望があって、もう一度誰かと心から、笑い合うことができたら?
もしもう一度、平坦な心に暖かい風を吹かせて、波を立たせ花を咲かせることができたら?
(もし、もう一度、……もう一度、だけ)
心を寄せては、動かしてはいけない。それは己の、頭おかしい妄想でしかない。捻くれ者はズルズル、人の悪意と良心と己の諦めの悪さを思いながら、
(もういちどだけ、ひとを、しんじつづけられたら)
二人のぼっち旅の傷の、その先を空想に思い描き、画像共有のメッセージを送るそのボタンを、
(やめろ。駄目だ)
基本ヘタレなので、結局タップできず、メッセージを全部消し電源も落としてスマホをベッドへ放った。
1年前の今日、私は今この隣にいる人とある勝負をした。
“先に恋人作った方が勝ち!″
私にはそんなの無理だった。だって私には好きな人がいてそれは、、この人で、、。
『できてないね』
「う、うん、、、」
(い、、いおうかな、、好きって、、)
『、、、勝負ふきかけたのは俺なんだけどさ、』
「え、お、うん、ん?」
『無理な話だったんだよね、』
「へ?」
『だって、俺、、俺が好きなの、、お前、、だし。』
顔を真っ赤にしていうもんだから、
こっちも、、あつくなる。
『なんか、、言って、、よ』
「わ、私も、、好き。」
『え、』
「勝負しよって言われた時から無理って思ってた、、ずっと、。
ずっと、、前から好きだったから、、」
『、、、、それはなんか、わ、、悪かった。』
私に近づき手をとって
『1年、いや、すごい時間かかったけど、変な勝負してごめん。
大事にする、、だから付き合ってほしい。
好きだ。』
「うん。謝らないで。、、私も好き。
よろしくお願いします、、」
『と、とりあえず、、、、
ご、ご飯にでも、、行こう、か?照』
なんか甘い甘い時間がやってきました。______