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桜が美しく生き生きと花を咲かせる春、私はここ星園学園の教師として赴任してきた。
学園の校長先生をはじめとした教師陣が快く私を出迎えてくれた。
入学式が終わり初めての授業で黒板を見ると、
私は一年前の記憶を蘇らせていた。
一年前私こと香月香苗は人生最大の危機が訪れていた。
当時大学3年生に進学した私を待っていたのは、残酷なテストの点と単位の数値によって落第への道へ突き落とされようとした。
教師に厳重注意をくらった帰り道、私はこんなことになった原因を探っていた。
やっぱり大学2年の時の夏休みの時間をゲームに極振りしたことかな、いや、もしかしたら2学期のテストの勉強をすっぽかして2月位沖縄で住み込みバイトをしたことかもしれない。
その全部だと突っ込んでくれる人もいなく終わりなき自問自答を繰り返していると前の同級生の女子とぶつかってしまった。お互いに尻餅をつき、その女子の手に持っていたプリントが散乱してしまった。
やってしまった。と思い即座に頭を全速力で下げると向こうも同じことを思ったのか再び頭を強打してしまった。
頭を抑えながら向こう方のプリントを拾う。
すると目に入って来たのは、難しそうな理論が書いてある数学のプリントとわかりやすくまとめられた物理のプリントだった。
それを目にした途端、厚かましいなどは考えずに向こう方の手を取って
「勉強を教えてください!」と叫んでいた。
これがぶつかった彼女、後の親友兼私の教師となる百華との出会いだった。
最初は急に手を取られて耳元で叫ばれた百華は呆然としていたがやがて正気を取り戻し、この厚かましい要求に答えてくれた。
百華が私の教師となると私の単位と成績はV字回復を遂げた。いや全盛期よりも尚高い成績を取った。
とても分かりやすく教えてくれる彼女につい何度も百華っていつもどれくらいの成績なの?と聞くと、百華は「気にしなくていいよ」と答えた。
そっかと思うともう百華に成績の話はしなくなった。
順調に卒業への道を私が切り拓き等々卒業日になりいつもの如く百華に会おうとすると百華はそこにはいなかった。唖然とするわたしをみて察した周りが事情を説明してくれた。
百華は私のせいで単位不足となり退学したのである。
こうして私は彼女の贖罪として教壇に立つことにした。
これからは私が生徒らに教える番だ。
お題一年前
ここまで読んでくださってありがとうございました。

6/17/2024, 9:30:07 AM