何時ぞや私を嵌めたタヌキが車に轢かれて死んでいた。
目が痛くなりそうな青白い街灯の下、黒い毛で覆われた細い四肢を突っ張らせて。
愚かなやつだ。
アスファルトの上に血反吐を吐き散らし息絶えたタヌキの目を覗き込む。
「私達のように生きれば良いものを」
最後まで野生に拘るだなんて、実に愚か。
鼻を擽る懐かしい血の匂いに、思わず口端から垂れた涎を白いハンカチで拭う。
嗚呼、いけないいけない、今の私は唯の人間なのだから。
革靴に包まれた足先でタヌキの死骸を側溝に落とすと、靴にこびり付いた汚れを拭いたハンカチも同様に側溝に投げ捨てた。
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6/17/2024, 9:36:56 AM