『高く高く』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
: 高く高く
ちぎれ雲が浮かぶ穏やかな空を
君を乗せた飛行機が得意気に
高く高く飛び去っていく
見送りには行かなかった
涙を見せたくなかったから…
夢を語る君の瞳が眩しくて
心から応援したいと思った
だけど…、だけど本当は…
いや、やっぱり君を応援したい
だって僕は君の一番のファンだから
桜月夜
「ねぇパパ。たかくたかくして!」
「たかくたかく?」
娘からの不意の言葉に一瞬戸惑う。だが目の前の両腕を上げて期待している顔をする娘を見れば、先ほどの言葉は《高い高い》のことを言っているのだろうと理解する。
娘は保育園に通い始めてから色々な言葉を覚え、今ではすっかりおませな口ぶりをすることもある。それを思えば言い間違いくらい可愛いものだ。そう思いながらも一応の訂正をする。
「いーちゃん、《高く高く》じゃなくて《高い高い》って言うんだよ」
遊ぶ気満々だった娘は動くそぶりもなく小言を言い出した私に不満気になり、今度は語気を強くし幾分か丁寧に教えてくれた。
「ちがう! いーちゃんはたかくたかくしてほしいの!それで、パパがたかいたかいするの!」
「なるほどな」
娘の言葉に一理あるなと納得する。
「じゃあやるからおいで、ほら」
「いちばんたかくまでおねがいします!」
その後は満足のいくまで《高い高い》あらため《高く高く》して遊んだ。
『高く高く』
高く高く
世の中、確率なんてものは存在しない。1%で当たるものも、一回で当たることがあれば、一万回引いて当たらないこともある。確率は引くか否かの判断基準でしかなく、結果は引いてみるまでわからない。
暗闇の部屋で一人、排出率1%の文字を見つめていた。今日から始まったソシャゲのイベント。画面でポーズを取るキャラの笑顔はあまりにも眩しい。
俺は落ち着いていた。1%。100回引けば当たると思いがちだが、100回引いて当たる確率は約63%だ。100回引いても引けない確率はその逆の37%。引けないこともジュウブン考えられる。だが、その63%や37%という値も結果を保証するものではない。俺は確率を心得ている。
まずは10連。……むろん、当たらない。大丈夫だ、問題ない。予定通りといえるだろう。そう簡単に引いては経済が成り立たない。ここで大事なのは、この結果は次の結果に何も影響しないということだ。外れたから次は当たりやすい、と考えるのは間違っている。何回外そうが、次に当たる確率は変わらない。
つまりだ。最初に引くという選択をした以上、2回目以降も引くしかないのだ。途中で引かないと判断するなら、最初から引くべきではない。それが正しい確率の解釈だ。
大丈夫だ。俺は落ち着いている。
大丈夫だ……。大丈夫だ……。
高く高く
夜空に手を伸ばす
月明かりが私を照らす
あぁ私は
_高く高く
高く遠くアサギマダラ旅立ちぬ
どうかどうぞ道中ご無事で
#高く高く
高く高く
高く高く
手を伸ばして
届かない
太陽を
掴もうとした
なんて
輝かしい
なんて
眩しくて
暖かい
そんな
温もり与う
太陽に
私もなりたい
バスを待つ。
よく晴れた空を見上げると、視界の中で一羽の鳥がビルのてっぺんから飛び立った。
珍しくもない。
いつものように時刻通りにくる事のないバスが、昨日は5分、一昨日は10分遅れたほどの違いでしかなかった。
今日はすでに3分過ぎているのに、55系のバスはまだ来ない。
天高く、なんて言われる秋。
綺麗な円を描いて旋回上昇を続ける小さな黒い点が、あの鳥だったと気がついた。
隊列を組むでなく、単独の渡り鳥。
遠い旅路をつなぐ、はじめの一歩の瞬間だった。
いってらっしゃい。
そこからでもまだ見えない地平線の向こうまで。
「高く高く」
「高く高く」
高く高く跳ね上げる
まつ毛の先に捉えしあなた
高く高く
働きに応じて
給料が上がればいいのに。
搾取されてばかりやん
高く飛べるくらい
自由な翼が欲しかった
高く高く
ああ、 高く。
高く。
もっとその先へ
高く。
高く。
そう もっとね
ええ、いいわ
あそこを飛び越えるくらい
高く。
高く。
堕ちていきたいと願った
絶望が心地よい夜
そっと
『高く高く』
「そんなに高く飛んでどこへ行こうというのです?」
「誰の手も届かないところへ。誰からも見られないところへ」
「愛したひとのそばを離れて?」
「僕が愛したひとは僕を見てなんかいなかった。彼女は自分以外ただの一人も見ていない。自分以外ただの一人も愛せない。そんな彼女にとって、僕のおぞましい姿は視界に入れる事さえ嫌な事なんだ。だから僕は、彼女の目の届かないところへ行く」
「たった一人で?」
「生まれた時から僕は一人だ。泥に埋もれたままずっとずっと、長い時を一人で生きてきた。彼女と過ごした一瞬が、特別だったんだ」
「その特別を、永遠のものにしなくては」
「君には分からない! 誰からも愛され、称えられた君には!」
「でも、私も·····本当に愛したひとを幸せにする事は出来ませんでした」
「·····君はっ」
「私は間違えた。罪を犯した。でも·····彼女の為に心を焦がし、魂を燃やした事自体を、私は間違っていたとは思いません」
「誰が·····、誰が僕のようなおぞましい生き物を愛してくれる!? 彼女だって·····」
「たとえ一瞬だったとしても、その時の優しさや笑顔は、本物だったのでしょう? 」
「――」
「あなたを空へと向かわせたのも、それが真実だと知っているからでしょう?」
「何を·····」
「私には·····あなたをそばに置き続けることはあなたの本当に美しい姿を閉じ込めてしまうことになるのだと、その方が気付いたからのように思います」
「本当に、美しい姿·····?」
「なにものにも縛られず、自由に空を舞う姿。あなたのその姿は、美しく見えこそすれ、おぞましいものには到底見えません」
――高く高く。
――どこへでもいってしまえ。
(愚かな私の手など離れて)
「もう、遅いよ」
「そうでしょうか」
「僕は彼女の手を離した。僕は彼女の元を離れた。もう守ってあげられない。もう地上へは帰れない」
「あなたが信じたその方の眼差しは、今もあなたを捉えているのでは?」
――あぁ、そうだ。
僕は愚かで、美しくて、残酷な·····優しい君を、愛したんだ。
「もっと早く、君に会えていればよかった」
「そうですね」
「さよなら。私と同じ名前の君」
「――」
どんなに愚かなことでも貫き通せば真実になる。
彼女の笑顔を、彼女の眼差しを、彼女の優しさを、たとえ嘘だと分かっていても、僕自身が信じ通していればよかった。
あぁ、空が、まるで燃えるように真っ赤だ·····。
END
「高く高く」
目標を持て高く高く
よく言われる言葉、
目指すだけならただと
思っている凡がよく
言いそうな言葉、
叶うことのできない夢に、
なんの価値があるとでも
言うんだろう
高く高く
一郎次 ニ郎次
次々に
雲雀たちは飛び立った
お天と様のかけらを持ち帰り
憎い黒雲おやじをやっつけるのだ
高く高くと翔け上がり
そして焼け死に
光の矢となり
落ちてくる
突きささった金の矢は
やがて麦の畑となって
天をめざして穂をのばす
子供と聴いた昔話
宇野重吉の語りだったか
切なかった
『老後』
ザリガニと暮らす夢を見た 白昼過ぎて 部屋は中濃ソースの匂いがほのかに香る カレーにかけた中濃ソース、、いつから使っているのだろう? 気がかり達がリレーして 新着の気がかりを運んでくる 不安なら忘れるよ シャボン玉みたく 高く高くとぉんでいくよ
高く高く
君はもう追いつけないくらい高いところに行ってしまった。
あぁなんで言ってくれなかったんだ
俺のことあんなに心配してくれたのに
俺をたくさん助けてくれたのに
なんでお前がいっちまうんだよ
なぁなんでだよ
高く高く飛びたかった
あんなに綺麗に飛んで得点を入れることができたら
チームに貢献できたら。
あわよくば活躍して注目されたらなんて考えて
こんな僕だからダメなんだ
あの人はこの試合のことしか考えてなくて一直線に向き合ってるその端で僕は見えてるのだろうか?
きっと見えてない
あの人の目の端に映り込みたい。
#高く高く
深夜に突然、衝動に駆られて家を出た。
車に乗り込みエンジンをかける。
どこでも良いから高い場所へ行きたくて。
ほんの数時間前まで彼と一緒にいて、将来の約束をしたばかり。
“ずっと二人で穏やかに暮らそう”なんて、優しい言葉が本当に嬉しかったのに。
車は暗いドライブウェイを走り、人気のない展望台にたどり着く。
空には煌々とした丸い月。
ああダメだ…やっぱり穏やかな人生なんて、私には無理なんだ。
血の沸くような凶暴な感情が込み上げ、私は月に向かって高く高く、狼の声で吠えた。
「高く高く」
わたしは小さい頃から負けず嫌いで、上だけを見続けていた。
目標の為の努力を惜しまず、ずっと一番になるためだけに生きてきた。
でも気づいちゃった。
今までの努力は全て自分の為に頑張ったんじゃないんだってこと。
お母さんに見て欲しくて、見捨てられたくなくて、ずっと頑張ってきた。
もっと妹みたいに才能があればこの頭を撫でてくれたのかな、?
才能があるね、この言葉が嫌いだった。好きでギフテッドとして生まれたわけじゃない。いつも私が特別扱い。みんなと同じように普通の学校に通って、普通の勉強をしたい。
二度と叶わない夢を抱えながら、お母さんの機嫌をとる為に笑顔でいる。
嗚呼、お姉ちゃんはいいな。普通で、
そんな、才能があった双子の妹と、才能がなかった双子の姉の話。
高く高く
高く高く上に上にひたすら舞い上がる。この羽を精一杯広げて。
まるで天使にでもなった気分だ。不思議なのになぜか落ち着くような心地よさ。
雲の上を駆け上がり風を切ってふわふわと中に舞った。体中に日があたり清々しい風と温かい日光に包まれ目を瞑った。
体がふわふわと宙に浮いている。次に目を開けたときそこはベッドの上だった。「夢か。」
でも何故かまだ体は軽い。今日は高く高く上を向いていられる気がした。