『高く高く』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夜空を優雅に舞う、青白い火を目で追いかける。
腕を伸ばしても火は高く、遠く。ちっぽけな自分の、短い腕では届くはずもない。
はぁ、と吐息が漏れる。
白く濁る息が外気の冷たさを余計に感じさせ、思わず身を震わせた。
さて、これからどうしようか。
何をするべきなのか、何処へ行くべきなのか。
考える。悩み見上げる空に、もうあの青白い火は何処にも見えない。
途端に心細くなり、慰めるように合わせた手を胸元に抱いて目を閉じた。
「取り繕った所で、踏み惑っている事に変わりはないがな」
「やめろ。そういう酷い事を平然と言うんじゃない」
目を開ける。
青白い火はやはり見えない。だが、背後の馴染みのある声に、気づかれぬよう微かに安堵の息を漏らした。
「酷くはないだろう。真の事だ」
「飛べないんだから仕方がない。同じような木々が続けば、誰でも迷うだろう。木々の上まで高く飛べれば、きっとすぐにでも道は見つかるはず」
屁理屈でしかないと思いながらも思った事を口にすれば、呆れた笑い声が響く。
それを咎めようと振り返り、絶句する。
思い描いていた姿とは異なる、半身を黒く焦がした知人が、記憶と違わぬ子供のような眼をして笑っていた。
「見苦しくてすまん。相手を侮っていた」
「……今度は何をやらかした」
見目以外には何一つ変わらぬ様子に、胡乱げな視線を向ける。
どこぞの狐らの喧嘩に巻き込まれにいったか。あるいは腹を空かせるがあまりに怪火でも呑み込んだか。
「神に手を出した」
「馬鹿か?それとも気が狂ったか?」
思わず、正直な感想が漏れる。
予想していたものの斜め上をいく理由に、それ以上の言葉が出てこない。
常から危ういと思う事はあれど、まさかここまでとは。
「信仰の途絶えかけた神ならば何とかなるとは思ったのだが、やはり神ではあるな。話が通じるものでなければ、残るものなどなかっただろう」
呵々と笑ってはいるものの、その声にいつもの覇気はない。
よく見れば、その笑みすら僅かに引き攣っているのが見て取れて、馬鹿か、と声には出さずに繰り返した。
「まあ、何だ。そんな訳で体が痛くて堪らない。治してはくれまいか」
「好き好んで焼かれにいったのだろう?そのままで良くないか」
「いみじき事を言うな。わざわざ迎えに来たのだ。もっと優しくしてくれ」
「自業自得だろう。優しくするべき部分が何処にもない」
そうは言えど、痛む体で無理をしてまで迎えに来てもらったのだ。その礼くらいはするべきだろう。
誰にでもなく言い訳をしながら、背負っていた籠から竹筒を取り出す。
栓を抜き、中の水を振りかければ、ぎゃっと短く叫ぶ声が上がった。
「優しくしてくれと言っただろうに!痛みで、真に気が触れそうだ!」
「優しくするべき部分がないと言った。それに、これが一番早く、良く効く」
空になった竹筒を籠に戻し、背負う。
「迎えに来てもらった事に対しての対価は支払った。それで?帰り道は何処だ?」
「少しは心を惑わしたりはないのか、薄情め」
「それくらい耐えられるだろうし、もう痛みはなくなったはずだ。気を引きたいがために、痛む振りをするのは止めてくれ」
視線を向ける事なく、空を見た。
月も星も雲に隠れているために、己が今何処にいるのかをさらに曖昧にさせている。
もしも空を飛べたのならば。
鬱蒼と生い茂る木々より高く、遮るものの一切が存在しない空から見下ろせば。
きっと、還る道はすぐにでも見つかるだろうに。
「汝人は飛べん。飛べたとて、帰る道など見えはせぬ」
知らず言葉が漏れてしまったのか。
答える声に、先ほどまでの気軽さはない。淡々と紡がれる、慈悲の欠片もない言葉に、逸らしていた視線を向けた。
表情の抜け落ちた熱のない目が、咎めるようにただ己を見ていた。
それを気づかない振りをして、気分を害したように睨めつける。
「嫌がらせか?なんでそうも酷い事を言うんだ」
「事実だ。試してみるか?」
言葉より早く、抱きかかえられ強く風が吹いた。
思わず目を閉じ。感じる浮遊感に、落ちぬようにと強くしがみつく。
「ほら。此処から見えるのか?」
促され、目を開ける。
見下ろす木々は、何処までも広がり。
何処までも同じようで、還る道など何一つ分かりはしない。
「汝人には見えんだろう。たとえ地の果てまで駆けようと、空高く飛ぼうと、それは変わらぬ。此処は我らの領域故に」
言葉を失った己を哀れむような、穏やかな声が降り注ぐ。
「汝人を還す訳にはいかぬ。我らのためにここに在る。還れはせぬが、帰る場所は与えよう」
「今更。それを敢えて言うなんて、本当に酷い」
常を装い、嘯いて。
空を見上げる。今の場所よりももっと高く。雲のさらに上へと憧れる。
あの青白い火は、還るための道標は、きっとこの妖にすら届かない程の高みへ行ってしまったのだろう。
だから見つからない。届かない。
だからこそ、分からなくなる。
帰りたいのか。還りたいのか。
分からないからこそ、また道に迷い続けるのだろう。
「さて、帰るとするか」
風が吹く。
心の底の灯火が、風に掻き消され凪いでいく。
「泣かなくなったな。良い事だ」
呟く声に、当たり前だろうと苦笑する。
疾うの昔に涙は涸れ、帰してと泣き叫ぶ声すらも嗄れ果てた。
残るのはもう、諦念にすらなりえない無だ。
表を取り繕う事は出来る。誤魔化し続けるのは簡単だ。
「迎えに来てもらって、泣く必要があるもんか」
嘘を吐く。人にしか出来ぬ事だ。
偽りを積み上げ、本当だと騙し込む。
簡単な事だ。
ただ笑えばいい。
20241015 『高く高く』
現実を知った気になり、
夢を語ることを恐れ、
声は小さく小さく
最近始めたこと
朝起きた時、夜寝る前に
鏡の前でなりたい姿を声に出すこと
声は大きく大きく
一度きりの人生、自分だけの人生
まだまだ高く高く
きっと思っていたより高くない
高く高く
志は高く
誇り高く
意識高く
ただし
傲慢にならず
偉そうにせず
自分をきちんと認識して
今あるものを全部捨てて捨てて捨てちゃえば、あの空はもっともっと輝いて見えるのだろうか。
仕事も他人も今も過去も全て置いてきちゃえば、
あの道ももっと高く高く飛べるのではないか。
「高く高く」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
─────────────────────────────
「高く高く」
「ふたりとも、ここまで来たんだから中で話をしようか。みんなに君たちを紹介しよう。」
「ん!」「わかった!」
ここは命を落とした旧型宇宙管理士のための施設───言うなれば父の懺悔の場所。かつて実験で、無理な業務で苦しんだ彼らに平穏な暮らしをさせるために父はここを作った。
父の気持ちが通じたのか、ここにいる彼らはとても安心した顔をしている。きっと彼らの命も、父の祈りも、報われていると信じたい。
「君たちが博士の子どもー?ちっちゃくてかわいいね!」
「ほっぺたやわらかーい!」「ねー!好きな食べ物は?」
「何歳?」「双子なのに全然大きさ違うねー!なんで?」
……質問するなら一個ずつにしてよー!
ちょっと困りつつ小さな兄を見る。
心なしか少々機嫌が悪そうだ。
「⬜︎⬜︎、どうしたの?」「……。」
「……おとーしゃん、ボクと⬛︎⬛︎ちゃんいなくてもさみちくないのー。」「そうかな?でも、どうして?」
「おとーしゃんのだいじなこ、いぱーいひといるもん。ボクと⬛︎⬛︎ちゃんのおとーしゃんなのに、ボクよりだいじなこがいぱーいいるの、かなちい。」
「悲しまないで。お父さんはボクと⬜︎⬜︎が一番大好きなんだから!ね?」「ん……。ほんとに?」「本当だよ!」
ボク達はお父さんと元宇宙管理士達が楽しく遊んだり、何かを作ったり、お菓子を食べたりするところを見ていた。
そんな時、外でひとりの少女が兄に話しかけているのが見えた。兄の顔は強張っている。何か嫌なことを言われたのかもしれない。
様子を見に外に出る。兄も少女もいない。
どこに行ったんだろう。
そう思った時、さっきの少女がボクに話しかけてきた。
「あんた、博士の子どもなの?」
「え、あぁ、一応ね。」
「一応ってなにそれ?」
「というかさ、あんた機械のくせに博士のこと親だと思ってんの?意味わかんなくて笑える!」「なっ、いきなり何だよ!」
「だってさぁ、機械には血なんか流れてないでしょ?所詮は生命体の模造品のくせに、なに生き物ぶってんの?」「はぁ……。」
「あんたらみたいな道具、仕事だけしてればいいのにこんな所に出張って来ないでよ!ムカつくんだけど!」
「……。」
「機械の分際で親子とか言ってんのムカつくから、チビの方に言ってあげたの!いらなくなったからお父さんはあんたを捨てたんだーって!アッハハハ!!」
「……ふざけるな。」「は?」「ふざけるな!!!」
思わずボクは彼女に掴みかかってしまった。
「は?!キモい!触んないでよっ!」「黙れ!!!」
「あの子がどんな気持ちで苦しい時間を過ごしてきたかも知らないくせに!!!」「意味わかんない!」
「うわー、最悪。博士に言っとこう。機械どもが酷いことしたーって。」「勝手に言えばいい。……あぁ、ボクの兄はどこに行ったか教えてよ。」「知らないわよ!もう帰ったんじゃない?」
……話にならない。とにかく兄を探さないと。
兄の座標は……少し遠いがすぐに連れ戻せるはずだ。
……おそらくこの辺りのはず……あれ、いない。
たしかにここを指しているのに───あ!
位置情報共有機能付きのバッジが落ちている。
ここに来たのは間違いない。
まだ遠くには行っていないはずだ!
急がないと!
ボクは必死で兄を探す。随分遠くまで来てしまった。
それでも見つからない。どうしたものか。
そんな時、ふと思い出した。
小さな子どもは、道に迷った時、上を目指すということを。
そうだ!上を目指そう!
ボクは登った。高く高く、登り続けた。
……少し疲れたが、兄を見つけるためだ。
頑張らないと。
おーい!⬜︎⬜︎!どこー?
呼びかけても返事がない。
今ごろきっと不安で泣いているだろう。
……ボクも不安だ。
草むらを超えて崖のような所に出る。
いた!⬜︎⬜︎だ!
「おーい!」「⬛︎⬛︎ちゃん……。」震えた声でボクを呼ぶ。
「嫌なことを言われたの?」「……。」
「ボク、いらないこ?」「ボク、だめなこ?」
「おとーしゃん、ボクきらいなの?」
「ボク、おとーしゃんだいしゅきなのに。」
「⬜︎⬜︎、よく聞いてね。キミはお父さんにとってもボクにとっても大事で可愛い子だよ!お父さんもボクもキミが大好きで、もしいなくなったらとても悲しいよ。」
「ほんとに?」「本当だよ!」「ほんと?」「本当だってば!」
「いいかい?初めて会った人の言葉よりも、キミが大好きな人の言葉を信じてね。」「……ん。」
「それじゃあ、帰ろうか。」「ん!」
こんなに高く、高くまで登ったからか。兄はすぐに眠ってしまった。仕方ないからおんぶしよう。
さて、お父さんのもとから勝手にいなくなった言い訳を考えようかな。
高く高く
どこまでも上ってゆけ
煙のようにゆらゆらと
静かに静かに音もなく
誰にも気づかれないように
そっと上って消えてゆけ
この想いが無くなるまで
テーマ 子どものように
テーマ 高く高く
___________________
私の心の中には子どもの頃から子どもの私がいる。"子どもの私"は、現実の私と違って、非常識で行動的で甘えん坊でノリが良い。あー、あと運動神経も良い。
夢想家の私は、子どもの私を散歩の景色の中に遊ばせる。
例えば、美術館の建物の細く変わったバルコニーからバルコニーへジャンプして歩き回る。
例えば、商店街の屋根の上の梯子を登ってぴょんぴょんと走る。
どうにも高いところが好きらしい。高く、高く。煙のように。そういえば、煙突掃除に憧れた"子どもの私"も過去には居た。
「先輩、今期の目標書いたんでチェックお願いします」
はいよ、と作業の手を止めてくれる大ベテランのモチダ先輩。
途中まではうんうんと頷いていて、OKをもらえるかと思いきや、最後に質問という名の却下をくらう。
「タケダくん、売上目標が低いんじゃない?前期もっと売ったでしょ?」
「前期はたまたまラッキーが重なって売れただけなんですもん。また同じだけ売るなんて…」
チッチッチ、と古の仕草を見せる先輩。
さすが大ベテランだ。
「あのね、100万売りたかったら150万売る気でいくの。目標は高く高くが基本よ」
「えー」
「高くしすぎたら踏み倒せばいいんだから。ハードル走だってそうでしょう」
納得していいものか迷うな。
「じゃぁ先輩は前期どんな目標にしてたんですか?」
「…10kg痩せる」
え、そんなんアリなのか。
健康維持も仕事のうちってか。
確かに健診で引っかかってたもんな、メタボチェック。
「結果は?」
「……3kg」
「なるほど、3kg痩せるためには10kg痩せるつもりで」
「………増えた」
だよね!?そうだと思った。
モチダ先輩、相変わらずもっちもちだもん。
永久保存してほしいこのもちもち。
「えーと…踏み倒したんですね」
「やめて、そんな目で見ないで!」
先輩、ありがとうございます。
今なら強気で書けそうです。
目標は、
【高く高く】
夏の甲子園行きの切符をかけた予選の決勝
俺は3年間、レギュラーにはなれなかったけれど、それでも、その結果に不貞腐れる事なく同級生や後輩への応援やノック練習などの支援を続けてきた。その結果、3年最後の記念打席の為の意味だとは思うけれど、俺は甲子園行きをかけた試合の代打として初めて選ばれた。その話を監督から聞いた時は嬉しくて、その日の夜は眠れなかった
そんな俺の夏の3年間がもうすぐ終わろうとしていた。
延長戦12回裏2死(アウト)ランナー無し1-0ので負けている場面。バッティング練習をしていた監督が俺を呼んだ
「記念打席だ。悔いのない様に1打席振ってこい」
監督の力強くも優しい言葉に、俺の緊張は自然とほぐれた
「はい」
そこで俺は打順を確認して驚いた
3番だった…俺の後では4番の同級生が声を飛ばしてきた
『俺の事は気にするな。3年間何度も打ってきた。お前の応援があったから、ここまで来る事ができた。俺たちは全力を出してここまで来たんだ。だから、お前も全力で1打席を楽しめ』
その言葉に涙が溢れそうになった。
『お前が出塁したら俺がホームラン打って逆転してやる。約束だ。皆んなで甲子園に行こうぜ』
同級生は…いや…チームメイトは誰一人甲子園の可能性を諦めてはいなかった。心の何処かで諦めていたのは監督と俺だけだった。俺はその恥ずかしさから唇を強く噛み締めてバッターボックスに入った
それから気がついたらカウントは、3ボール2ストライになっていて、俺はファールも含めて11球も粘っていた。
スタンドからは俺への応援の声が聞こえてくる
そして相手投手が12球目を投げた時、それがストレートだと何故か直感し、俺は渾身の力で金属バットに球を叩きつけた
金属バットからは甲高い音が鳴り響き、俺の打球は高く高く
真っ直ぐ進み、バックスクリーンを直撃した。それと同時に客席からは大きな歓声が巻き起こった
俺が初打席 初ホームラン…しかも同点
ベースをゆっくり走りながら実感のない事実を噛み締めた
(まだ、甲子園への道が繋がる)
そう考えたら自然と口元が緩んだ。その緩んだ口元でホームベースを一周して仲間の待つ所へと戻った俺は、仲間に笑顔で
もみくちゃにされた。その最中、再び甲高い音が聞こえた。振り返ると4番の同級生がホームランで相手チームに試合の終わりを伝えた。
それから俺たちは甲子園の準決勝まで進んだが、そこで圧倒的な大差で敗れ、俺の3年間の夏は終わった。
※この物語はフィクションです
高く高く 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
もっと
もっと
デキるように
なりたい!
あの人のように。
憧れた人に
いくら
頑張っても
追いつけない。
まだまだ
頑張り続けないと
足りないのに
いつの間にか
眠れなくなってしまった。
まだ
全然
追いつけていないのに。
#高く高く
“高く高く”空を見上げると
毎回違う雲が楽しめる
足元も時々見ながら歩くと
アリンコだったり雑草など
毎回楽しめる
視野を広く周りを見てみよう
高く高く
ほら、高い高い〜
おじいちゃんは僕を持ち上げてそう言う。
ゴキっ
その音ともにおじいちゃんは動かなくなった
ぎっくり腰
高く高く、なるべく高くを競うようだった。
神目線から見下ろせば、積み木を組み立ているようである。いや、材質からして積み石か。
積み石の上に積み石を。
少しずらして配置するその様子より、完成形を想像するに、ピラミッドを作っているのだろう。
賽の河原で行われる石積の苦行をしている。
石のサイズは、大人二人分を並べた以上はある。
横に長く、ずっしりと重い直方体を、使い古された綱で繋いで、大人数で石を引っ張っている。
綱が切れないのが不思議なほどだ。
物言わぬ労働者は皆素足をさらけ出し、乾いた地面に足をつけている。
服も貧相なもので、髪もヒゲもボサボサときている。
それが、長蛇の列を作っている。
ずるずる、と重苦しい雰囲気が一直線上となる。
切り出されたばかりの石の角は、最前列になると丸みをおびるようになる。
採石場とピラミッド建設現場までの距離が遠いのだ。
いつしか長い道のりに対し、なぞり書きされたような太い線を作っていった。
設計図を見て指示をしている人が幾名かいる。
早く、早く、と口酸っぱく責め立てている。労働者は皆影絵のように口を閉ざしている。
どうやら、日が落ちる前にピラミッドを完成させたいようだ。上からの命令、納期が……。
そんなことはできない、無理だ。
などというものは、一人残らず首を切られてしまう。
一歩一歩、規則正しい秒針のごとく稼働している。
そんな残酷なピラミッド予定地区だが、こんな残酷が十いくつも同時進行していた。
どれも「高く高く」を標榜としていた。
ピラミッドを作る目的は明かされていない。
それは労働者はおろか、指示をしている者、上から命令する者、その王すら不明だった。王の側近である神の預言者も「神の思し召し」だと言って聞かない。
思考停止だ。
実を言うと、ピラミッドの設計図を描いたのは神目線……すなわち神だった。
時々神は空中散歩という名の暇つぶしをした。
太陽の光でできたオープンカーで、世界中を駆け巡っては、このように空から進捗を確認するのだ。
別に設計図通りに作る必要はなかった。
神から――空から見れば誤差である。
完成寸前のところで、砂嵐や川の氾濫をしてやり直しをさせる腹積もりでもある。
神は悪態をつくタイプだった。
「うーん、なーんか妙な鳥になっちゃったなあ。上手く行かない……」
砂漠地帯は落書きに最適だった。
いつでも書き直せて、いつでもやり直しが効く。
その時代の者たちは全員死んだが、のちに一部は「ナスカの地上絵」として生き残った。
今も昔も、砂絵も神も労働者も、形も立場もまったく変わっていない。
謎は謎のまま。神秘は神秘のまま。人は人のままだ。
高く高く
一軒家の前、1台の軽自動車がようやく停められるような広さしかない駐車場で1人 シャボン玉を楽しんでいた
強くも弱くもない風が吹く夕暮れの空に自分が吹いて作ったシャボン玉が浮かんでいく
浮かんで屋根を超える前に弾けて消える姿を見て「なんて儚いんだろう…」と思ってしまう
(高く…高く高く浮かんで…)
そんな気持ちを込めて息を吹く
私の気持ちを汲んだのか、上手く風に乗ったのかシャボン玉は屋根を超えた
(今度はもっと高く飛んで)
空を見上げる。どうしたって届かないもの。人には到達できないもの。……だったのは、昔の話。
技術はどんどん発展して、空はもはや、路のひとつとなった。そうして、空だけでは飽き足らず、人類はすでに宇宙(ソラ)へだって、飛び立っている。
人類はどこまで到達するだろうか。どこまでだって、チャンレンジするのだろう。そういう生き物だ。
手の届かないものに、手を伸ばす。私たちはそういう風にできている。いつだって、求めている。どこまでも高く高く、遥か先の何かを、その手に掴むことを、渇望している。
そういう、イキモノだ。
テーマ「高く高く」
よく子どもの頃に戻りたいとか、子どものように複雑なことを考えなくて、単純に生きていけたら…とか、世間ではいうかもしれない。
それは違うとおもう。
子どもの頃を思い出して欲しい。
子供は子供なりに問題を抱えていたり、悩みなどがあった。
だから、子供の頃からやり直したいとは思わない。
……とかまあ、難しいことを考えるのはやめた。
高い所に登っていく。ビルでも、山がないなら丘や、小さな坂の上でもいい。
少しでも高いところへ。
高く高く。
高い所に立って、そこから吸い込まれるとか、飛び降りたいと思わないなら大丈夫だ。
まだ、大丈夫だ。
私は高い所から下の景色を見下ろして、普段とは違う高さの空気をゆっくり深呼吸した。
わたしは、大丈夫。
【お題:高く高く 20241014】
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 溜まるな〜、ちょっと考えよう
高く飛べば、地に落ちて、砕け散る。
頑張れば頑張るほど、
生きれば生きるほど、
壊れるのだと解っていた。
それでも、飛び続ける。
高く高く、遠くへ。
その先で見た、空の青さ。
テーマ 高く高く
飛べ
飛べ
高く飛べ
高く高く飛べ
もっと高く飛べ
もっともっと高く飛べ
きっと今よりも高く飛べるから
(題目しらず)
私の中にいる殺し屋が
銃の試し撃ちをし始めた。
学校の校庭のような大粒の砂混じりの固い地面を、無機質な表情で見下ろして無造作に歩きながら撃っている。
あの銃はなんだ?
拳銃ではないのでそんな小さなものは想像しないでほしい。ライフルに近い形に見えるがそんなに大きなものでもない。祭りの屋台の射的に使う銃をもう少し重厚に肉付けした物くらいに思ってほしい。
重そうでもなく、適度に力を抜いて片腕を軽く伸ばして地面に向かって撃っている。
何をするつもりだ…?