『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたが受け取ってくれないこの気持ち
風に乗ってどこまでも
風に乗って
空を見てみたい
自由に飛んでみたい
あなたに会いに行きたい
だけどあなたはきっと
あの人といるから
私は風に乗って
ずっと見守ってます
《風に乗って》
#29
【風に乗って】
夏休み。真っ青な空の下に建つ、白い家。その南側にあるサンルーム。ここに僕の思い出が詰まっている。
子供の頃、両親は共働きで家にいる時間があまりなかった。だから夏休みとなれば毎日のように祖母の家に行って過ごした。
祖母はその時もう古希を迎えようとしていたが、随分と元気でまだ仕事をしていた。
仕事と言っても家の近くにある小さな花屋を経営しているくらいだ。
それでも花に囲まれ生活しているからか、祖母はいつもおしゃれをしていて、少女のような雰囲気さえ感じられた。
僕は祖母の家に行くとほとんどサンルームで過ごした。本を読んだりするにも、食事をするにもずっとここにいた。
気が向けば手伝いもしていたが多くはない。
ある時、いつものようにサンルームで絵を描いていると道の向こうに誰かいるのを見つけた。
女の子だった。
僕と同じくらいの年齢のようで、ふわっとした白のワンピースにつばが大きめの麦わら帽子を被っている。
その女の子もこちらに気づいたようで、手を振ってみると、まさか庭に入ってきた。
ぱたぱたと小走りできたと思えばにこっと笑い、
「お友達にならない?」
と言ってきた。あまりにも突然すぎてしばらく意味がわからなかったが、ゆっくりと理解するとなんとなく頷いた。
やった!と声を上げ喜んでいる女の子。
「私ね、このお家の隣に住んでいるの。」
聞いてもいないことを教えてくれたが、不思議と迷惑だとは思わなかった。むしろ嬉しいような…
この出会いをきっかけに、僕と女の子はよく遊ぶようになった。
女の子は名前を花梨といい、カリンの花言葉のように豊麗、美しかった。
僕は花梨と遊ぶようになってからサンルームに篭もることも少なくなっていた。
それでも、一日に1回、絶対にサンルームにいるときがある。
紙飛行機を作るときだ。
花梨と知り合ってから、僕は今で感じたことの無い感情を抱いた。甘くて、それでいて苦しい…そんな気持ちだ。
きっとこれが恋なのだろう。
だから、いつでも花梨と一緒にいたかった。でも、こんな子供には無理すぎる話。
そこで僕は思いついた。文通すればよいのだと。
せっかく文通するのに普通の手紙じゃつまらない。また僕はひらめき、紙飛行機なら面白いだろうと花梨に提案した。
花梨はすぐに乗ってくれて、その日から文通を始めた。
最初に僕が送ることになった。さっそく書こうとしたが、なんだか祖母のいる前では書けなくてサンルームに来た。
ここなら花梨の家も見えるし、飛行機を飛ばすには絶好の場所だ。
手紙を書くなんてことは今まであまりしてこなかったから内容が思いつかない。結局在り来りな事を書いてしまった。
花梨
今日からよろしく。でいいのかな。
おばあちゃんが育ててるカリンがそろそろ咲くから今度見においでよ。
待ってる。
こんな事しか書けなかった。当時は中々だと思ったが、今思えばとんでもなくつまらない手紙だ。
書いた手紙を飛行機の形にして花梨の家へと飛ばす。
風に乗って飛んでゆく紙飛行機は、僕たちの思い出や恋も詰まっている。
ふわふわ。ふうわり。
赤い風船が、空高く浮かび上がった。
風に乗って、風船はどこまで行くんだろう。
どこかへ逃げ出したい。
嫌なこと、全部忘れたい。清々しい気持ちで。
逃げたあと、戻ってくるから。
お題『風に乗って』
─風に乗って─
私はね、今日ベランダで歌ったんだ。
風がとても強かったよ。
気を抜いたら落ちちゃいそうなぐらいつよかった。
でもね、その風のおかげで沢山歌えたよ。
私の声を全部消してくれるの。
歌うのは楽しかったよ。
自意識過剰だけど、意外と上手く歌えたと思うの。
風に靡いてる庭の木を見てたらね、ふと思ったの。
声を消すみたいにベランダから落としてくれないかな、って。
風に乗って、私の存在ごと消してくれたらいいなって、思ってしまったの。
最近ね、私は死にたいのか分からなくなっちゃって。
風に押されたら、自然に死ぬことができるかなって思ってね。
そんなことしても、死ぬ勇気がなければ抗ってしまうのにね。
分かっていても、いつまでもこの癖は抜けない。
ベランダに居ると、楽になれるから。
だから今日も、風の強いベランダで、私は歌う。
病室の窓は換気のために少しだけ空いていた。
新年度が始まり、普通だったら私も今頃、高校生活をスタートしていたはずだろう。
でも、ちょっとした事故で、現在ベッドで寝たきり生活。ようやく上半身を二十度くらい起こせるくらいになった。
少しあいた窓からは、もう桜のピンク色は見えず、萌える緑色の葉っぱ達だけが見えた。
風は北風から南風にかわり、少し温かい。
そんな風にのって、どこからか歌声が聞こえてきた。
ここは五階なので、外からは聞こえないと思うのだけれども……と、なると、同じ病室から?
風も心地よいけれども、歌声もまた柔らかで心地よい。日向ぼっこに最適な日差しも差し込み、私はだんだんとうとうとしてきた。
あわよくば、歌声だけでなく、私も風にのってこの病室から抜け出したいなぁ。
【風にのって】
この穏やかな風に乗って
私の気持ちも君に届かないかなぁ、、、
なんて。
今日は本当にいい天気で暖かい。
ふわふわ気持ちいい風が時折吹く、、
今日も、
大好きなんだよなぁ、
教室で君が楽しそうに友達と話している姿を見るだけでもこんなに心が跳ねる。笑っている君の顔はやはりすごく良い。嬉しくなる。
ベランダに出て私はそんなことを考えて浸ってる。
太陽眩しいし教室に入ろ、、
『今日いい天気だよな!ひなたぼっこ?笑授業始まるぞ』
、、これは、やばい、嬉しすぎる。すき。
普通の会話でもどきどきしてしまう私はかなり君に恋してるよ。
「う、うん!今入ろうと思ってたところっ!笑」
ふー、緊張したー、、
チャイムが鳴りみんなが席に座り始めて自分も座る。
一番後ろの席の私は君の背中をチラッとみて
顔がにやけそうなのを抑える。
いつか、ちゃんと伝えよう。
よし。と背筋を伸ばして教科書をひらいた。
紙飛行機を、あの人の元まで飛ばしたい。
あの人は言った
『風は多くのものを運ぶ。』
『花粉やウイルスもあれば、人の声や願いも運ぶ』
だから僕は、
このメッセージを書いた紙飛行機を飛ばす。
天国にいる、あの人に向けて。
「届くといいなぁ...」
「届かなかったら誰の手に渡るんだろ」
届かなくてもいい。
だって僕は、あの人が言っていたことを
信じてるから。
僕は、紙飛行機を飛ばした。
あの空の上にいるあの人の元に届くことを願って。
お題〚風に乗って〛
「匂い」がしたの。あなたの。
私 べつに匂いフェチじゃないし
こんな街中で ありえないのに。
ココロが 凍りついた感じ。
血の気が引くって こういうことなのね。
すれ違ったのは どんな人だった?
ゆっくり振り返った。
心臓の音がうるさい。
ちがう。
ホッと安心したのと
残念だったと期待してた自分。
あなたであっても 声はかけられないのに。
#風に乗って
風に乗って飛んできた花びらは貴女と昔見た花のものだった。貴女が好きだと言っていたしだれ桜の花びら。後ろを振り向くと美しく桜が散っていた。一瞬そのなかに笑った貴女が居たように感じ目が潤んだ。また来年桜が咲くのを楽しみに。
私は今日、紙飛行機を飛ばした。自分の今の気持ち、今まで抱え込んで、隠して、爆発しそうになっていた気持ちを。誰にも相談が出来なかったこの思いを紙に書いて紙飛行機に折って、誰かに届くようにと思いを込めて。紙飛行機は屋上から投げたから見えなくなるまで飛んで行った。こんな汚い気持ちを誰かが拾って、それで知ってくれという身勝手な思いでだけでこれをした。この思いを、風に乗せて。
天使の死に方
あなたはいつも笑顔で優しくて文武両道で隙がないあなた。いつもの登校の時間7時50分。待ち合わせてる交差点。8時半をすぎても現れないあなたは、5分前に通り過ぎた救急車の中。部屋での首吊り。
あなたはあんなに笑顔の似合う天使だった。
その笑顔の裏には笑えない、私には理解のできない、辛いことがあったんだよね?天使の結末。あなたと最後の時間まで一緒にいたかった。 想
風に乗って風船みたいに飛んで行こう。
きっと楽になれるよね。
(友達と遊んで来ました。遅刻してごめん)
【風に乗って】
想いや噂はよく風に乗る。
理由としては囁かれたり、行動で見られたりと様々であるが、これだけは届いてほしくない、というものもきっとあるだろう。
“あいつが嫌い”だとか、“あの子が羨ましい”だとか。はたまた、“彼が好き”だとか。
そんな嫌悪や羨望、恋愛感情は最悪人間関係の破壊にさえ繋がってしまう。それでも、風に乗ってでも伝わってほしい、と願う人がいるのは、そうであったとしても伝えたいという強い想いがあるからなのだろうか。
……結局、“想い”が全てなのだなとはよく思うことである。
風に乗って
想いよ届け
広い空の下なら
どこまでも届きそう
自分が風に乗って
行けたらいいけど
それはまだ先の話
魅想の彼方・・・
紅き閃光
照らし朱黒の華
華弁咲かせ舞い
魅了の心
美しさの哀しみ
旋律が嘆いてく
此の空間の
一時の夢に
咲き誇り 叫んだ・・・
独り孤高 謳う音・・・
妖艶に生きて
叶え願う儚き
朽ち果て・・・
遮る光闇世界
此の鼓動の生
生きた証・・・
又 何処かの
天空の下で・・・
「何時・・・」
君を見つけたあの日から
なんだか心が騒がしい
名もない花を見つけたような
少しばかりの幸福感
君のことを知る度に
ざわつく心が休まらない
もっともっとと欲張って
思いがどんどん加速する
恋という名の小さな芽が
君という名の水を得て
今、綺麗な花が咲いた
大地を駆けるそよ風さん
ボクの思いを風に乗せて
君のところへ届けてほしい
#風に乗って
祖母が亡くなった。
遺された遺書に書かれていたのは、自分の灰を海に撒いて欲しいという願いだった。当然、家族と親戚間で議論になった。
遺骨は残しておくべきだと言う人と、祖母の最後の願いを叶えたいという平行線の話し合いが続いていた。
私は祖母がその願いを残した理由を生前に一度だけ聞いていた。戦争の世を生きていた祖母と祖父。二人は結婚してから一緒に過ごした時間が本当に短かったという。理由は祖父が海兵として戦争に駆り出されたからだ。だが、祖父は故人として帰ってきた。海に沈んだせいで、遺品の一つも見つからなかったという。だから祖母は、自分が死ぬときは愛する人と同じ場所に沈みたいと言っていた。
だが、その話を知っているのは私だけのようだった。だから私は話し合いがまだまとまっていない中、祖母の遺灰を持って話に聞いていた海まで車を走らせた。
ようやく辿り着いたそこは、なにもなかった。落ちたら即死するであろう高さ。真下には剝き出しになった岩礁が姿を現している。祖父が亡くなった場所はきっとここよりももっと遠い海なのだろう。でも、同じ海で再会できるのならきっと幸せだ。
そう思って、祖母の遺灰を手に取った。握りしめた手を広げると、風に乗って祖母は海へ飛んで行った。
祖母が何十年も愛し続けた人と、この海で再会できることを祈っている。
すてきな概念だ。
わたしたち人間は、生まれてこの方、一度も飛べたことがない。けれども、もし飛べたらと空想した時に、魔法の箒という道具や、浮かぶという能力を獲得するわけではなく、すぐそばで流れているこの風と心通わせあえたらあるいは、なんて。
澄みきった透明なあなたのように、重たい色を脱いでみるから、いつかきっと、風に乗って。
#1 お題:風に乗って