『静寂に包まれた部屋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
今日、妻と娘の葬儀が終わった。
一昨日まで三人で暮らした我が家。
妻と娘が乗る車に信号無視のプリウスが突っ込んできたらしい…
加害者は89歳の高齢者だった。
葬儀から帰った我が家は俺以外誰がいる訳ではなく
静寂に包まれていた…
娘の笑い声も泣き声も、妻のいやみも二度と聞くことがない…
静寂に包まれた部屋で読書をしていた。
鬱蒼とした森の中。
ログハウス的小屋の中でのひと時だった。
主は人間ではない見た目をしている。周囲の山村のいうところによれば、魔女扱いされている。
たしかに人間の寿命以上は生存しているものの、人間の寿命の延長線の範疇にある。
というか、昨今の人間たちは生き急げとしすぎている。
睡眠を削るとは、寿命を削るのと同意味だ。
と、主はみゅにゃみゅにゃと寝言を言っている。
誰がどう見ても昼寝をしている、と思うかもしれない。
本の位置は寝転んだ顔の上にあり、主の顔を隠している。金色の紡糸の英字の筆記体。タイトルがそれの表紙を上にして、伏せられた状態にあった。
難しい本を選んでしまった、というのが寝ている主の意向である。
しかし、本格的に本を読む前からハンモックにて寝転んでおり、予想通りハンモックの虜となっていた。
ハンモックに隷属して少なくとも数時間は経つ。
そもそも読書をやろうという意識の量は、あまりにも儚かった。
部屋の雰囲気に人工的物体は特にない。
木の根が張り巡らされた壁面には、主愛蔵のコレクションが飾ってあった。書物が最も多い。厚さ薄さ関係なく、物語は一級品である。
そこへ、さああ、と音がやってきた。
「……んあ?」
主へ音に呼ばれて目をこすり、伏せていた本を落とす。
何ページ読んだのか分からない状態になって、パタンと本は閉じる。
寝付きの悪い主は、やはり目覚めも悪く、低血圧低血糖ときている。数十秒間、上体を起こした状態で、音を立てた者を窺った。落ちた本はそのままにした。
一人、二人、三人……
見知ったものではなさそうだと思うと、壁にかけられたひと振りを手に取る。
三日月がそのままの形、そのままの色の武器。
小柄な主の身長に対し、二倍はあるだろうか。
「誰だい、俺の縄張りに入ったのは」
そう呟いて、スキルを行使した。
瞬間移動。するともう、射程圏内。
敵の背後を取るのは簡単だ。軽々と鎌を振るう。
先ほど読んでいた本の冒頭部分を頭のなかでそらんじた。
さあ、狩りの時間の始まり始まり……。
静寂に包まれた部屋
わたしは部屋でひとり
物思いに耽る
その時 わたしは
宇宙を夢想する鉱物になる
ふと
浮かんだ言葉
「キスミーハンドクリーム」
ひとりつぶやいて
人に戻る
画面がうるさく瞬いている
此方を見てよと瞬いている
換気扇が回っている
気付いて頂戴と回っている
目覚まし時計がないている
早く起きてとないている
白い腕は伸ばされて
そのまま冷たく冷えてかたまり
一つ一つ全部静かにできるまで
綺麗でいてねと嘯いた
‹静寂に包まれた部屋›
喧騒の
ガラスを隔てた
こちら側
行き交う人の
口パク眺め
『静寂に包まれた部屋』
つらい
静寂が私を包む
今、彼はどんな気持ちだろう
突然彼の目の前から消えた私をどう思うのか
こうするしかほかなかった、私には
わかってほしいなんて無理だろう
同じ苦しみを抱いて眠る日もいつかは過ぎていく
そう願うしかないんだよね
・静寂に包まれた部屋
呟き。
一人暮らしをした事ないので静かな部屋に憧れがある。
でも一人暮らしをずっと続けてる人はこの静けさに耐えられなくなる時がある、と聞いた。
隣の芝生はなんとやら、かもれないね。
心安らぐ場所なのに、なんでこんなに寂しいのか
静寂な場所なのに
不思議な感覚
題 静寂に包まれた部屋
騒がしいのは好きではない、だからってこんなにも静かすぎるのは…つまらない。
昔からそうだ。そもそも自分は昔から外で遊ぶよりも部屋の中で本を読んでいる方が好きだった。
だからって絶対に外で遊ばなかったわけではないし、周りから見ればただ楽しんでいる普通の子供だ。
けれど、いつだってあの金髪の少女がいたからこそ楽しかったのだ。
…今は一人で部屋にいる。
ああ、この感覚を久しぶりに思い出したよ。
一人って寂しいなあ…
目を閉じても開いても変わらない暗闇
貴方の体温だけを感じて、
貴方の呼吸する音だけを聞いて。
棺桶の中はつまらないから、
貴方に一緒にいて欲しいの。
音を感じるということは
生を感じることと同義語だろうか。
静寂は人に緊張をもたらし
ときに安らぎを与え
時が刻まれていることを実感させる。
きっとまたすぐ賑やかになる。
でも今はまだこの時間を大事にしたい。
自分だけの時間
五感が研ぎ澄まされ
心の声が騒ぎ出す。
もう少しこのままで
何が大切なのか
もう少しで掴めそうだから
静寂を壊したくない
ゆるりと動き
空気と肌が触れる音を聴く
耳をすますように
自分の中の声を聴く
もう大丈夫
そして時は動き出す。
静寂に包まれた部屋で頭痛がする。
煩い。意識が沈んでいく。
遠くから、クジラの鳴き声が聞こえる気がした。
君が帰ってくるまで、ずっとこうして床に大の字のままめり込んで待ってる
天井染みが壁紙の切れ目に沿って続いていることを初めて知る
秋の音がする
君は多分、このまま思い出になってしまう
ベットに寝転ぶ私は
緩やかな空気を布団にしてる
暖かさはないけれど
安心して寝れるのだ
静寂に包まれた部屋で一人
夕暮れの暗さに身を隠したてカタカタとパソコンをタイピングする音が響き渡る。
今日も何もしない1日に終わる。
暗闇に包まれ存在さえも消え去りたいみたいだ。
部屋にポツンと一人でいると
静寂に包まれた部屋。
スマホゲーム無音でやるから
耳に痛い程の静寂。
にゃー
あれ?静寂を破って
お隣の猫、また来てる。
(静寂に包まれた部屋)
一人の時間は静かだ。
閉店間際の夜の時間帯は、お客様が駆け込まなければしんと静まり返る。日中は人で賑わっていて、店内の音楽はまともに聞こえないけど、夜はハッキリと聞こえる。月が変わった影響か、十月のイベントに合わせてハロウィン風の音楽が軽快に流れていた。
まあ、今日は何の不具合か音楽すら流れていないけど。
音楽がないと不気味で気がそぞろになってしまう。特に今日は音楽が流れていてほしかった。
先程まで早番だった同僚の愚痴を聞いていた。この同僚は気に食わないことがあると一日中ああだこうだ愚痴ってくる。
私はいつもちゃんと聞いているポーズをとって、相槌を打って、でも同調して何も言わないようにしている。不満があるのはお互い様だから、言い出したらキリがない。
それに、同僚は誰にでも愚痴を言う。隣の売り場の人にも、愚痴にしていた相手にも。
口の軽い同僚に、弱みを握られるわけにはいかない。そう気持ちを奮い立たせて、言いたいことを腹の中で堪えて頷いていた。
私は、人から愚痴を聞いた時の、この胸に溜まったモヤモヤをどう処理すれば良いのか分からない。同僚が帰って一人になると、胸に溜まったモヤモヤが込み上げてくる。とても不快で、苦しくて、居心地が悪くて、息がしづらくなる。何度も深呼吸しては「いなくなれ」と吐き出した。それでも吐ききれない何かが残っている。
私はその残骸を誰かに聞いてほしい反面、相手にこのモヤモヤを移す勇気がない。相手にこの不快感を味わってほしいわけではないから。
今日も一人静かな時間を、深く呼吸してやり過ごすしかない。
『静寂に包まれた部屋』
静寂に包まれた部屋
西日の入るこの部屋は私のお気に入り。
夕方、光が差し込む。
それは真昼の光にも
朝の光にもない。
暮れゆく前のほんの僅かに光る
目も眩むような逢魔が時。
部屋が静寂に包まれる瞬間。
『静寂に包まれた部屋』
夜気の中 遠くから聞こえる車の音が
不安な心を助長し 涙が溢れる
布団にくるまり 火をつけることを考える
学校 燃えてなくなればいいのに
《静寂に包まれた部屋》
僕は先日から、5カ国間首脳会議とその後に続く各国首脳との軍事貿易に関する協議を行う為にある国に滞在していた。
予定としては6日間であったが、首脳会議が想定以上に順調に進んだ為に終了が1日前倒しになった。
もう少し軽い外交であれば彼女を伴って行ったところであるが、今回は各国の最重要人物が一堂に会するものだ。
その身の監視が目的とは言えど、闇に魅入られし者の可能性が高い彼女を連れて行くには不安要素が大き過ぎる。
今まで彼女を監視していたが、少なくともその心根は他人を害するような物ではないと知る事は出来た。
甘い。そう言われるかもしれない。
それでも僕の自宅内であれば彼女を自由にさせていても問題無いと判断し、僕は初めて彼女を一人残し出発した。
『話し合いがスムーズに行くといいですね。』
玄関で僕を見送りながらそう言ってくれた彼女は、笑顔ではあるが気の所為でなければどこか元気が無さそうだった。
いつもの会話の中にある満面の笑みが目の前に無い事に、僕は少しの不安と寂しさを覚えた。
『身体には気を付けて。』
いつもの笑顔を曇らせているものが、体調不良ではありませんように。
そう祈りつつ彼女に声を掛けると、その元気の無さを振り払うように笑み崩れた。
『…はい。あなたも、気を付けてくださいね。』
そうして互いに手を振り僕が歩き始めた後も、振り向けば貴女はずっと玄関前に立ってくれていた。
出発前の光景を思い出しながら急ぎ歩いているうちに、眼の前には夕方前の柔らかい光を受けた玄関が。
そこには、彼女は立っていない。
それもそうだ。予定よりも早い日程の帰宅、しかも連絡も無しだ。
飛空艇ならば然程の時間も掛からないからと、連絡をする間も惜しみ急いだのは僕だ。
玄関は、きちんと施錠されている。戸締まりはきちんとしてくれているようだ。
僕は懐から鍵を取り出し、鍵穴に差し込みカチリと回す。
扉を開けると、西に向かい始めた日光のみが光源のエントランス。
「ただいま戻りました。」
声を出すも、返事も無い。
ただひたすらな沈黙が、エントランスを包む。
この家は、こんなにも静かだったか?
最近は彼女と二人ここを出入りするのが当たり前になっていた僕には、その静けさが奇異なものにすら感じられた。
とりあえず施錠し直した玄関に荷物を置き、僕は家の中を巡る。
廊下を辿り、リビング、食堂、洗面所も。
だが、彼女の姿は見当たらなかった。
いつも僕の隣で楽しそうに話をする貴女。
食堂で向かいの椅子に座り、美味しそうに食べ物を咀嚼する貴女。
見られていないと油断しているのか、朝に時折僕の後ろで大きな欠伸をしている、廊下の窓ガラスに映る貴女。
離れていたのは、たった5日のはず。
元々、ここ数年は僕の一人暮らしだったはず。
かつての当たり前が、いつの間にか不自然へと変化していた。
それをじわじわと実感しながら廊下の突き当りに向かうと、扉が開いている部屋がある。
あそこは…彼女の寝室だ。
いつもなら閉じられている扉、きっとその中に貴女がいるのだろう。
微かに逸る気持ちを押さえ、室内が見えないように近付いて軽くノックをする。
反応が返ってこないので、声を掛けてみる。
「もしもし。ただいま戻りました。」
…返事が返って来ない。
他の部屋の扉は閉まっていた。
女性の寝室に失礼ではあると承知してはいるが、何事かあってはそれこそ問題だ。
そう考えた僕は緊張に包まれながら、そっと開いている扉の向こうに入った。
するとそこには、普段着のままクッションを胸に抱きながらベッドで眠る彼女の姿があった。
足は、ベッドの外に投げ出されている。おそらく、座った状態から横になったのだろう。
とりあえず、何事も無くてよかった。
僕はいざという時の為の緊張を解くと、音を立てぬように眠る彼女に近付いた。
そっとベッドの脇にしゃがみ、彼女の様子を伺う。
物音の無い室内では、耳は彼女の小さな寝息すらよく拾う。
よく眠っている。顔色もいい。
出発前に心配したような体調不良は、全く無さそうだ。
でも、その寝顔にはまだ出発前の曇りが残されている。
夜には早いが、目覚めるまでそっと寝かせておいたほうがよさそうだ。
その曇りの理由は分からないが、風邪をひいてはいけない。毛布でも掛けようか。
そう考え、ベッドに手を伸ばそうとしたその時だった。
「会いたい…『貴方』に会いたいな…」
僕の顔のすぐ近く、会いたいと囁かれた僕の名前。
まさか、もしかして。
貴方の表情の曇りの理由は。
3年前に家族を皆喪って以来、ずっと一人で過ごしてきた家。
ここにまた、僕に帰って来てほしいと願ってくれる人がいる。
それの何と喜ばしいことか。心強いことか。
貴女が目覚めたら、また明るく暖かい日常が始まるのだろう。
いつもどおりの優しい、大切な日常が。
心に灯った小さな光の暖かさを抱きしめながら、僕は手にした毛布をそっと彼女に掛ける。
「ただいま。」
小さく囁き貴女の髪を撫でるとその顔から曇りは去り、小さな笑みの浮かぶ寝顔になった。
僕は、静寂に包まれた部屋で密かに願った。
ゆっくり休んでほしい。でも、早く目覚めて聞かせてほしい。
あなたの声で、「おかえりなさい」と。