『静寂に包まれた部屋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
例えばそこは人里を離れた場所で
森や高原や山脈に溶け込み
取り残された荘厳な建築物
その奥深くの1室であればどうだろう
届くのは、明かり取りから差し込む光のみ
頑丈で少しの崩れもない素材で守られた
そんな部屋であるならば間違いなく
訪れる1人を静寂で包み込むだろう
自分一人だけの時間、静寂に包まれた部屋で、風の肌触りだけを感じている
雑音だらけの日常からほんの少しだけ距離を置けば
世界はこんなにもクリアだったのかと驚いた
これを寂しいと感じるまでは
このまま、ここで、時が過ぎるのを見守っていく
(静寂に包まれた部屋)
「ただいま」
返事はない。住人は私のみなのだから当然か。上着をハンガーに掛けてコップに冷たいミルクを注いで飲み干す。その間に風呂の湯を沸かしつつ簡単な部屋着に着替える。いつものルーティン。それはいつからだろう、気づいたらこの流れになっていた。もう体に染み付いてしまっている。無意識のうちにその動きをしてしまう。だから気を抜くとつい、やってしまうことがある。
「あ……」
並べるカトラリーは1つだけでいいのに。2組ぶん食器棚から出している。今日は疲れているのかな。早めに寝るとしよう。そしてリビングの小さな仏壇に飾られた写真に向かって笑いかけた。こんな間抜けなところを見ていたであろう貴方に。
「流石に今日は疲れたよ。でも、なんとか間に合いそうなんだ、今のプロジェクト」
今の仕事の進捗状況を一方的に報告する。これもいつものルーティン。貴方はただ黙って聞いてくれている。そう思うと私のおしゃべりは止まらない。もっと色々知ってほしくて、今日あったことを共有したくて。写真に向かって毎晩喋り倒すのだ。
「今日は疲れたからさきお風呂入ろ」
これも、独り言なんだか宣言なんだか良く分からない。大きめの独り言、みたいな位置づけになるのか。タオルと着替えを胸に抱きバスルームへ移動した。そこはまだ電気が点いていない薄暗い空間。辺りの空間に静寂が蔓延している。自分の家なのに、少しでも暗くて静かな場所に入るとこんなにも心が乱れてしまう。だから私は暗闇が怖くなってしまった。貴方を失ったあの日から。
裸になって熱いシャワーを頭からかぶる。ザアア、という音が不思議と安心させてくれた。何でもいいから音が欲しかった。少し頭痛が和らいだ気がする。なるべく音のない空間には居たくない。本当は静かな夜が大好きだったのに。貴方と過ごしたあの夜たちが、好きだった。けれど、貴方が抱き締めてくれた夜を思い出すのさえ、今は苦しい。
【静寂に包まれた部屋】
大吾はベッドに体を投げ出し、ぼうっと天井を見るともなく眺めていた。
何の音もしない。匂いも、温度も、体に触れている感覚がすら何も感じない。
静寂に包まれた部屋にあるのは「無」のみだった。
眠らなければと目を閉じるとあの時の光景が何度も蘇り、その度に大吾は歯をぎり、と噛み締める。
約束したじゃねえか。それなのに。
生まれ変わったら、だなんて言うな。
お前が、お前が言ったんだろう。
「俺はずっと、大吾さんのそばに居ます」
そう言って口元を綻ばせた峯はもう居ない。
飛び降りてしまった。俺の目の前で。
消えてしまったのだ。
極道に「永遠」なんて求めてはいけないことは分かりきっていたはずだ。誰がいつどこで死んでもおかしくない世界だ。それでも、峯の言葉に大吾は救われていた。
呼吸が浅くなり始めているのを感じる。
体が形をとどめていられない感覚に陥る。泥のように溶け出して液状化するような、そんな感覚。薄暗くなる視界、目を開けているのもつらくなって重力に逆らわず目を閉じる。
もう、いいか。
俺もそっちにいっても。
なんて、らしくない言葉が脳裏に浮かんだ時だった。
「大吾さん」
ハッと目を見開いた。
一気に酸素が肺に入り込み、大吾は荒く息をする。
一瞬聞こえたその声が、鼓膜から血管に伝わり血液と細胞を通して全身にいきわたったように感じた。
愛してやまない声だ。いつも微かな冷たさを抱えていたその声は、自分を呼ぶ時は慈愛が込められているようだと大吾は思っていた。
自意識過剰かもしれなかったが、それが嬉しかった。
ベッドから起き上がり、クローゼットを開ける。
そこには峯が置いていったシャツが一枚残っていた。
退院した頃には峯に関係するものは全て処分され尽くされた後だった。
ここにあるシャツ一枚だけが、組織の手から逃れられた唯一の峯の遺品だ。
ハンガーにかかっているそれを手に取る。シワひとつないそのシャツを、大吾は大事に抱えた。襟元に顔を埋めると、まだ微かに峯の匂いが残っていた。それを思いきり吸い込んで、シワが出来てしまったシャツに頬を擦り寄せる。
「ごめんな、峯。俺、お前の分まで生きるから。絶対死なねえから」
だから、見ててくれ。
俺がそっちに逝くまで。
テトラ型のコップを見つめている、持ち上げてみるとずっしりと重い。ひんやりとした、だから、ただチョコレートと雨があったらいいと思う
『静寂に包まれた部屋』
ガチャリ
ゆっくりとドアを開けると、昔懐かしい匂いがしてくる。
かつて、寝起きしていた部屋だ。
『ただいま。』
足を踏み入れると、色んな記憶が呼び起こされる。
ベッドを買って貰って喜んだ小学生時代。
友達を呼んで遊んだ中学生時代。
受験勉強に苦しんだ高校生時代。
独り立ちして家を出てしまってからは、この部屋には寄り付かなくなった。
もう10年近くもこの部屋は使われていない。
母が気を遣って掃除はしておいてくれたのか、ホコリだらけということは無いが、殺風景な部屋になっていた。
『物置にでも使ってくれても良かったのにね。』
ふふっと笑いながら、窓を開けて換気をする。
懐かしい景色。
人間関係や将来に行き詰まった時にはよく外を眺めてた。
何が見えるかと言ったら、家の前の道路と真正面のアパートくらいだが、当時の私には考え事するのにはちょうど良かった。
『この景色も見納めかぁ……』
明日、結婚を機に県外へ引っ越す。
引越しの前に両親に会いに来たついででこの部屋を訪れたのだ。
『もう、こんな大人になったんだよ。』
ふと部屋に語りかけてみる。
もちろん返事が聞こえることはないが、私は続けた。
『いっぱい、お世話になったね。ずっとずっと見守っててくれてありがとうね。』
スっと壁を撫でる。
この家を出る時にもお礼は言ったが、もう当分戻ってくることはないだろうから改めて言いたくなった。
シン……と部屋が静寂に包まれる。
どこか寂しげな空気を感じた。
「そろそろ時間よー!!」
『はぁい。』
下の階から母の声がする。
どうやらタイムリミットのようだ。
窓を丁寧に閉めて、出口に向かう。
ふと、もう一度振り返った。
そこにはかつて部屋で過ごしていた私が見えた気がした。
人形で遊んだり、宿題をしたり、友達と遊んだり、ベッドで声を殺して泣いていたり。
懐かしさを感じつつも、私は一言。
『じゃあね。』
パタンっとドアを閉めて、急いで階段をおりた。
#静寂に包まれた部屋
静寂に包まれた部屋ってーと、あれだ
聴力検査の部屋!
いや、あれは無音の小部屋だな。
無音って文字通り音が無いけど
静寂って音は有る気がする。
ん、何言ってるんだろ?
ところで、聴力検査の冒頭っていつも
自分の耳鳴りじゃないかって疑って
ボタンを押し損なう。
聴力引っ掛からないからいいけど
なんか心残りになるんだよな。
別に駅から近いわけでも
便利でも住みやすいわけでもなかった
築18年の古びた2LDK。
君に言われるがままに
一緒に暮らし始めた この部屋
1年が過ぎて 2年が過ぎて
3度目の秋風が君を連れ去ってく。
カーテンを揺らす風が
金木犀の匂いを運んできて
真っ暗な部屋を携帯の液晶が青白く照らす。
あの頃の2人を映画みたいに映しては
またひとつ…消していくみたいに…。
このエンドロール終わる頃
僕はまた君のことを想うのだろう…
静寂に包まれたこの部屋を
月灯が優しく照らす。
- 秋風のエンドロール -
静寂に包まれた部屋。
つい最近までは、人がいた部屋。
今はお化け屋敷。
ココのご主人様が亡くなった。
霊として出るようになった。
面白がって入る人が増えた。
よくあるパターンだ。
人が引っ越してきた。
その人が死んだ。
親族は呪いだとわめいた。
俺が呼ばれた。
簡単な話だ。
ココには、ウジャウジャと霊がいる。
それを祓うのが俺の仕事。
俺がしているこの職業のことを、
呪術師という。
12作目_
静寂に包まれた部屋_
浮気性な彼を追い出してやった。
彼の笑顔にも、声にも、もう二度と会うことはない。
そう考えるとすっきりするはずなのに、私はなぜ泣いてしまうんだろう。
私の涙はきっと、月並みな別れ方をした事への悔しさからだ。
そう信じて、私はベッドに潜り込む。
「あの子、私よりずっと可愛かった…」
誰にも聞こえないように、そっと独り言をこぼして。
家へと帰る。
静寂に包まれたこの家は、一年前は人で溢れていた。
次第に皆が独り立ちしていって、残ったのは私だけになってしまった。
「ただいま……」
返事はない。当然わかってたのについつい言ってしまう。
うるさいと思っていたあの日々も、今は少し恋しいな。
夜明け前、目が覚める。
辺りを見る、薄暗くて静かで、自分が何者だったか思い出して、寂しい気持ちがわいてくる。
カラカラカラ……
下で、玄関ドアが気を遣われてゆっくり開く音がする、ちなみにここは二階の寝室。
姉とテイちゃん(兄)が夜勤から帰って来た音だ。
安心感が体に、じんわり染み渡る。
…全く、毎晩の事だというのに、これでもモンスター姉弟の末っ子だというのに、慣れない。
少し涙目なので、タオルケットを眉毛まで被せて一呼吸……したところで、テイちゃんの微かな足音が、近付いて来た。
姉さんがお眠らしく、テイちゃんに抱えられて部屋に入り、オレの隣に寝かしつけ…られるかと思いきや、姉さんがテイちゃんにガッチリ抱き付いて離れないらしい、音と声がする。
「じゃめ…じゃめらぉ」
…ややこしい話なのだが、今現在、姉さんにとって弟のテイちゃんは、姉さんの恋人の生まれ変わりである。
何か、これは、キャラメルの匂いだな…そしてこの…水っぽい音は…、あー…、口移しラリー…してるぅ~、お~い隣人(オレ)めっちゃ起きてるんですけどぉ~っ…………いぃなぁ…。
静寂に、いかがわしい音、響かせて。末子。
キャラメルも、まさかこんな扱いを受けるとは、思ってもなかったでしょう。一旦CM。
…しばらくして、姉さんのマジ寝息が聴こえてきた、今度こそ姉さんを布団に寝かしつけたテイちゃんの、小さな吐息が聴こえる。色っぽ♡。
そして、顔が隠れたオレの額に、長い指が、ふわふわポンポンと触れ、『起こしちゃってゴメンね、もうちょっと寝てな』という、家族だから解る、言葉を使わないメッセージ。
テイちゃんは朝御飯の支度の為、一階の台所に行ってしまった。
……言えない。
オレにもキャラメル口移しを…なんて。
まだ…言えない…。
完全に音を遮断するのは無理なのではないかと思う。この世界で生きている限り、自然であれ人工的であれ何かしら音を立てているから。
音って振動なんだよ、と言うと意外そうな顔をするけど、物理的に動きがあるからこそ音が出る。それを音楽と捉えるのか言語と捉えるのか、雑音と捉えるのかは脳の処理の話。だから全くの無音の状況にしたければ、物が振動しないようにするとか、空気などの音を伝えていく存在がないようにしないと。
ロマンがない言い方をするけど「静寂に包まれる」というのも脳が音として認識していないだけなのではないか。
まず、智弘の事は未来で考えよう。
今は本部勤務就職して退職する事が大事。
恋愛に傾倒しすぎて体調壊した。
ひびきの事は、ひろみとひびきの間に入れてくれただけで感謝感謝だなぁ、有り難いなぁ。
こよりの事は、生まれ変わり出直しを知るきっかけになってありがたかったなぁ。
ひろみは親友 結婚したい相手
静寂に包まれた部屋で
僕は気付いた
寝返りを打った彼の顔から
疲れが薄れていると
年齢じゃなく
身体でもなく
僕が大人になった
初めての瞬間だった
「静寂に包まれた部屋」
静寂に包まれた部屋
静寂の中に少しの虚しさを感じていたあの頃とは
もうおさらば
この部屋に入ると
あの頃の風景が蘇る
母が三面鏡でお化粧をして
その側で父が静かに新聞を読み
その周りを2匹の愛犬達が
白く長い毛を揺らしながら
楽しそうに走り回って遊んでいる
…
今はこの部屋に居た人も犬も
みな天に舞い
残った部屋には
何の音も聞こえず
ただ聞こえるのは
私の足音だけ
…
静寂の中で一人立ちすくみ
もう一度だけ父や母や愛犬に
… 逢いたい…と
長い溜め息の後に呟いた
ひとりぼっちは寂しいって。
たまにふとそんな気持ちが湧く時もあるけれど。
誰もいない私だけの空間に。
膝を抱えてぽつんと蹲りながら。
どこか冷めた静寂に包まれる時間が。
生きるためには私には必要で。
だからこの部屋は。
私にとってのひとつの居場所。
【静寂に包まれた部屋】
ちいさな魔法で
この世界を変えられたら
消えちゃう前に
真っ暗闇で耳は静寂
心は舞踏会
目を閉じたはずなのにね
まだ夢物語
#静寂に包まれた部屋
最近、本当に集中できなくなった。
動画は10分でも長く感じるし、短編小説ばかり手に取ってしまう。
ずっと気になってた映画のDVDを見ている間に、何度もスマホを触ってしまう。
良くない。非常に良くない。
集中していて、周りの音が聞こえなくなる瞬間が、私の生活から消えてしまった。
せめて、せめてその環境を作るくらいしなければ。
テレビを消して、音楽を消して、スマホは遠くに置いてくる。
謎の不安と、あの誘惑を消してやったという優越感。
さぁ、この静寂に包まれた部屋で何をしようか。