夜明け前、目が覚める。
辺りを見る、薄暗くて静かで、自分が何者だったか思い出して、寂しい気持ちがわいてくる。
カラカラカラ……
下で、玄関ドアが気を遣われてゆっくり開く音がする、ちなみにここは二階の寝室。
姉とテイちゃん(兄)が夜勤から帰って来た音だ。
安心感が体に、じんわり染み渡る。
…全く、毎晩の事だというのに、これでもモンスター姉弟の末っ子だというのに、慣れない。
少し涙目なので、タオルケットを眉毛まで被せて一呼吸……したところで、テイちゃんの微かな足音が、近付いて来た。
姉さんがお眠らしく、テイちゃんに抱えられて部屋に入り、オレの隣に寝かしつけ…られるかと思いきや、姉さんがテイちゃんにガッチリ抱き付いて離れないらしい、音と声がする。
「じゃめ…じゃめらぉ」
…ややこしい話なのだが、今現在、姉さんにとって弟のテイちゃんは、姉さんの恋人の生まれ変わりである。
何か、これは、キャラメルの匂いだな…そしてこの…水っぽい音は…、あー…、口移しラリー…してるぅ~、お~い隣人(オレ)めっちゃ起きてるんですけどぉ~っ…………いぃなぁ…。
静寂に、いかがわしい音、響かせて。末子。
キャラメルも、まさかこんな扱いを受けるとは、思ってもなかったでしょう。一旦CM。
…しばらくして、姉さんのマジ寝息が聴こえてきた、今度こそ姉さんを布団に寝かしつけたテイちゃんの、小さな吐息が聴こえる。色っぽ♡。
そして、顔が隠れたオレの額に、長い指が、ふわふわポンポンと触れ、『起こしちゃってゴメンね、もうちょっと寝てな』という、家族だから解る、言葉を使わないメッセージ。
テイちゃんは朝御飯の支度の為、一階の台所に行ってしまった。
……言えない。
オレにもキャラメル口移しを…なんて。
まだ…言えない…。
9/30/2023, 6:23:59 AM