『雪を待つ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
目の前には、ぐつぐつと煮える鍋。
白菜は琥珀色に染まりつつ……あるかもしれない。
ああ、待ち遠しい。
「大根おろし、まだ?」
もうちょっとだよ。
「急いでよ」
辛い雪鍋は嫌だろう?
【雪を待つ】
No.14『営業スマイル』
散文 / 掌編小説
手のひらに吐き出した息は白く、そして暖かい。つかの間の小さな幸せを味わったわたしは、営業スマイルを浮かべ、
「クリスマスケーキはいかがですかー!」
アルバイト先の店先で声を張り上げた。
クリスマスケーキの売り子。それがわたしの短期のアルバイトだ。短期というか今日だけなのだけれど、一日でもそれなりのバイト代をもらえるのは有り難い。
「さぶ……」
ただ、このカッコだけはどうにかならないか。同じアルバイトの男の子は普通のサンタの格好なのに、わたしだけミニスカートで胸元が大きく開いたサンタコスだ。多分、顔だけで選ばれたんだと思う。バイト代も男の子より多かったが、それは性を売っているようで最初は少し戸惑った。
ホールケーキを買ってくれた家族連れの小さな女の子が、雪が降るといいのにねと笑った。雪を待っている彼女には悪いけど、雪に降られたらとても困る。
ショートケーキをひとつだけ買ってくれたサラリーマンのお兄さんは、そっと使い捨てカイロを手渡してくれた。クリスマスイブにアルバイトをしているわたしには、サンタさんからのプレゼントより嬉しかった。だけど、わたしが返せるのは営業スマイルだけで……。
お題:雪を待つ
最悪だった,少しは気に入られているのかなって思ってた
勘違いだったみたい、あの笑いは嘘に見えた
2人で歩きたかった坂道,1人で歩きたくなかった
初雪祭
僕の街では、初雪が降った次の日は必ず晴れて、虹がでる。これを狐の嫁入りのためだと考え、"きつね様"たちを祝福するという、初雪祭が、朝から夜まで開催される。稲荷神社から商店街まで、雪や氷を活かした美しい露店がずらっと並ぶのだ。小さいころから僕の冬の楽しみのひとつで、初雪が降るのを胸を躍らせて待っていた。そして、今年もその日がやってきた。
僕は幼なじみのユキと露店が並ぶ道を歩いている。彼女は「雪のお祭りなんて、私のためのお祭りみたいなものじゃない?最高!」と、例年のようにはしゃいでいた。
「ねえ、何でさっき一緒にかき氷買わなかったのよ、こんなに美味しいのに。勿体ないわ」
ユキは狐に似せてトッピングされた新雪のかき氷を見せてきた。けれど僕はこの街のみんなと違って、生まれつき冷たいものが苦手だ。
「うーん、寒いせいで不味そうに見えてたのが、寒いけど美味しそうって思うようにはなったんだけどね…」
だから僕は露店の食べ物より、氷の彫刻や氷細工に興味がある。氷の糸で織った緻密な掛け軸や、黒いキャンパスに描かれた霜の絵画、雪と氷のグロッケン……初雪祭は芸術で溢れている。一方、ユキの目的は真逆だ。
「あ、綿雪飴だ!買ってくる!」
なんて言ってまた駆け出して行ってしまった。自由奔放である。でも、彼女の喜んでいる顔を僕が一番近くで見れる点は、どこか優越感があって、悪くはない。そんなふうに思いながら、僕はまた、ユキを待つ。
12月16日『雪を待つ』
雪を待つ
やかましい蝉が死に絶えたから
勝手に霜が降りる。
季節なんて一つ老けるためのオマケだ。
雪を待つ
久し振りに去年からつけている日記を遡ってみた。
日付に穴が空いている部分もあるけれど
どうやら今年の1月6日に雪が降ったらしい。
丁度、受験が終わって浮かれていたようで
高3にもなって雪うさぎの親子をせっせと作って
写真にも収めていた。
豪雪地帯に住んでいたら、こんなに悠長なことは
言っていられないのかもしれないけれど
降る年と降らない年がある地域に住んでいるからか
今年も降らないかなと心が浮き立ってしまう。
うっすらと屋根が白くなっているのを見ると
粉砂糖が振りかけられたみたいで嬉しくなる。
我が儘な私は、
降ったら降ったで寒いと言うのかもしれないけれど
きっとまた雪うさぎを作れるくらいには
雪が積もることを望むのだと思う。
「田邊先生」
#雪を持つ
田邊先生のことは今でもよく覚えてる
初めてあったのは冬休みの終わり学校に行かなくなった私はそういう子供が授業を受ける施設に
週4日ほど授業を受けることになった
雪が降る中お母さんに車で連れてこられた特別学級
そこで先生に会った
「初めまして田邊幸ですよろしゅたうな宇留部ちゃん」「よろしくお願いいたします…」
うつむいた私を気にせず、先生はニコニコしていた
先生は20代後半で黒い長ズボンにワイシャツを着た
眼鏡の明るい先生だった
勉強が始まると
先生と一対一
気まずさが残る
私が勉強に身が入らない様子を見兼ねて
先生は一度授業を止めた
「いったん停止にして外でも歩こうか」
勉強を止めて二人で外の庭を歩いた
「嫌じゃないですか私みたいな子といるの?」「僕はまだ宇留部ちゃんのこと何も知らんからな嫌かどうかもわからん」「私のことはほっといてもかまいません、お母さんには私がてきとうに言っておくんで無理に私にかまわなくても…私の人生はもう駄目ですよどうでもいいです何もかも」「駄目なんか?」「駄目ですよ、学校にもいけない、もう普通じゃないです、私はレールを踏み外したんです…」
私は思わず座り込んで泣いてしまった
「レールを外れたんならまた見つけたらえぇよ宇留部ちゃん、なんならキミが自分でレールを敷いたっていい」
「…自分で…」
「そうや、今は肩の力抜いて、そんなことまで深く悩まんでええ」
「ありがとうございます…先生」
「そうや! 雪合戦でもしようか宇留部ちゃん」
「雪合戦ですか」「そうや、先生に雪玉当てられたら今日は授業なしにしたるわ」
「ホントですかじゃ本気でやります」
「ええなおもろくなってきた」
雪を持つと先生は私に雪玉をぶつけて子供みたいにケタケタ笑ってた
先生は大人気ないくらい強くて結局帰って先生の授業を受ける羽目になったけど
私があんなに笑ったのは本当に久しぶりだった。
雪を待つ
ただ雪を待つ
それだけの暮らしに
何ができるというのだろう
愛した人も
時が奪い去り
私はひとりぼっちになった
もしも願いが叶うなら
愛する人を
私にください
暗くなった
夜の街並みを
見つめて思う
雪を待つ_ #3
初雪はいつになるだろうか。
未だに私は貴方のことを待っている。
来ないとわかっているはずなのに。
ボールと一緒にくびとばねえかなーって
ちょっと本気になって考えた
所属してる輪の中で
限りなく弱者で底辺な自分。
弁えるのに慣れた
イキイキしてるのが憎かった
《____女子生徒、初冬の手記》
あいつと結ばれた君は
どんな想いで雪を待つんだろうな
私の地方はなかなか雪は降らない。
大人は迷惑がるが、子供の私は雪が大好きだ。
友達と雪合戦とか、雪だるまを作ったりだとか、楽しい思い出が蘇る。
今年の雪はこっちまで来ないかもしれない。
それでも、あの光景だけはずっと覚えてる。
あの楽しかった雪の日。
服を全力で汚して帰ってきたあの日。
また降るといいな
子供の私は、雪を待つ。
雪が降る前に
早いとこタイヤ交換しないと
そして君を乗せ
バースデードライブ
君が寒がらないように
君に似合いそうなマフラーも
用意したよ
冬なんて
寒いだけだと思っていたけど
こんなにも
あたたかいんだね。
お題 雪を待つ
雪を待つ
西日本は雪が降っても積もらない。
積もって欲しい。降っても積もらない雪なんてダメダメだ。
でも私は雪を待っている。
【雪を待つ】
これから何年経っても
君とこの街で雪を待つだろう。
枯れた桜の木にも雪が積もって
茶色い僕らの家の屋根は雪でまっしろになって。
君に積もった雪が溶け始める頃
今日も君と生きてるって実感出来るんだ、。
[雪を待つ]
離れていても
心は一緒だなんて
ありきたりな言葉だと思っていた。
恋をすると
ありきたりが、特別に思えるのね。
あぁ。
あなたの街に降る雪が
私の街にも降りますように。
【雪を待つ】
初雪、いつ来るのか
初雪とは・・・
暖かい気候の地方だと1月に雪が降る
『雪を待つ』
こんにちは雪です
いえ、雪だったものです
降り積もって初めはふわふわだった私ですが、人に踏み固められて氷のようになってしまいました
このままでは危険です
私の上を通った人が、滑って怪我をしてしまうかも知れません
だから新たに雪が降るのを待ってます
氷のように固くなった私ですが、表面だけでもふわふわに戻れば可哀想な怪我人は出ません
……日が当たって溶けるのを待てば良いって?
ずいぶんと残酷な事をおっしゃいますね
今日降れば何年振りの…
そんな言葉がテレビから聞こえる
控えめに飾られているツリー
コトコト煮込んでいる
クリームシチューの香りが
部屋を優しく包んでいる
君はまるで期待に尾を振る
子犬のように空を仰ぐ
雪を待つ
雪を待つ
関東で雪が降ることは少ない。
だから、雪国からしたら少ない雪でも大騒ぎだ。
雪が降れば足元は危ないし、交通機関も麻痺して
通勤する者にとっては最悪だ。
でも雪が降るのは、やっぱり楽しいし
真っ白に染まる姿は非日常で、わくわくする。