『開けないLINE』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#開けないLINE
怖くて開けない友達とのLINE。
開いたらなんて書いてあるか。
今日で49件目。
そろそろ見ないと、
私はゆっくりとLINEを開いた。
━━━━━━━『友達やめよ』
手放すものが
どれほどかけがえがないものかは
充分に解っていたから
喪失感は
予測もし
覚悟もしていたけれど
どれだけ時を経ても
燦然と煌めき続ける
あなたとの想い出の前では
いつまでも
立ち尽くしてしまう
時に流されない
想いの強さが
また
新たな哀しみとなる
☆ 新たな哀しみ (264)
何故だろうかわからない。
昔から終わるのは突然だと言われているが突然すぎる。
通知では長文かつ不穏な文面。
確かにうだつの上がらない自分が悪いのだろう。
楽しい思い出や
にやける思い出や
もういいかなって自暴自棄になる思いとの葛藤。
いろんな考えを逡巡させながらやっとLINEを開いた。
【開けないLINE】
LINEの一番上にピン留めした、兄とのトークルーム。疲れた身体を引きずって狭い自室に戻るたびにうっかり開きそうになるのを、必死に自制する。
日本を出る前、最後に交わした会話は、売り言葉に買い言葉みたいな激しい喧嘩だった。唯一の生きた肉親である兄は、私のことを自分の娘みたいに思ってる。たいして年齢も変わらないのに歳上ぶって、ちゃんと大学を出なさいなんて真っ当なお説教をしてくる兄のことが気に入らなくて、大嫌いと怒鳴りつけて家を飛び出してしまった。
そのまま仲良くなったパティシエに電話して、兄の許可も得ずに海外へと渡ってしまったのだから、「疲れた」なんて愚痴をLINEで吐くわけには絶対にいかなかった。師匠が兄に連絡はこまめに入れているから、兄だって私が連絡をしなくても余計な心配はしていないはずだ。
兄に連絡するのは、私が一人前のパティシエになれたとき。いつか、私が作ったケーキを兄に食べてもらう。そうして「美味しい」って笑わせてみせるんだ。
師匠からお墨付きをもらうまでは、このLINEは開かない。その決意を固め直して、私はレシピノートを確認し始めた。
未読なら、まだ助かる。
既読と知られては、不利だ。
トークを長押しして、プレビューだけ覗いて、
あとは何が起こっても知らないふりをする。
そうやって逃げてきた。
もう、開けない。
明日ひま?
それだけじゃ
あなたのLINEは開けない
空のカレンダーは
あなたと会うために空いてるわけじゃない
//開けないLINE
今日の感情。曇り時々雨。
理不尽が嫌だった。ないがしろにされた自分がかなしい。
一日だけで、たくさんのもやもやが溜まる。
じゃあもういっそ、吐き出してしまおう。
誰かに愚痴るのもいいけれど。
いっぱいになる前に、くしゃくしゃでいいから。
こころの、お掃除をしよう。
そしていつか振り返って、こんな日もあったと笑えるように。
飛行機にして飛ばして。
振り返らず、その時まで前へ。
「開けないLINE」
(僕視点)
僕は今、猛烈に焦っていた。
とにかく、誰かに連絡しなきゃ。
さっき電話してみたけど、電波が悪いせいか繋がらなかった。
連絡手段……。
「…!LINEは!?」
開こうとしても開けない。
開けないというよりか、送れない、の方が正しいかもしれないが。
友達、家族など、送ろうとしても圏外で送れない。
僕は遂に、街で1人ぼっちになってしまった。
(親視点)
ああ。
まだ死にたくない。
なのに、迫り来る波から逃げられそうにない。
つい先程、この街を大地震が襲ったのだ。
あの子はまだ学校にいるはずだ。
ちゃんと避難できたかしら。
私は、あの子の1人の親だ。
もう何年か前に旦那とは離婚した。
だから、あの子は私の一人息子。
大切な、たった1人の私の子。
そんな子が、末永く幸せに生きられる事を祈ります。
私は、多分逃げられない。
せめて、どうか幸せで。
(僕視点)
友達とも連絡つかない。
僕はつい先程まで、友達と一緒に避難していた。
だが、はぐれてしまった。
連絡手段を探しているうちに、僕は恐らく、街で一番高いところに着いた。
だが、津波というのはとても高いもので。
僕はあっという間に波に飲まれた。
母さん、ごめんなさい。
僕は、生きれそうにありません。
貴女から紡いだ命をこんな形で無駄にしてしまった。
貴女が許してくれるのならば、また来世も、貴女の子供でありたい。
そう切に願った。
開けないLINEを、今日も君は見ている。
その開けないLINEは、最近別れてしまった彼女とのLINE。
開けようか、開けまいかスマホを持つたびに考えているけれど、私は、開いた方が良いと思うよ。
だって、毎日ほとんど気にしているから。
お風呂のときも、寝る前も、ゆっくりグダグダしてるいるときもずっときにしているから。
そんな君を見ていると、何だが私が悲しくなってなってくる。小さい頃からずっと見てきたから。だから悲しくなるのだろうか。
彼女のLINEは、決して悪い事を綴ってあるわけじゃなくて、どちらかといえば、君に感謝している。
だから早く、彼女の気持ちを受け取ってあげて…。
……こんなことを私が思っているなんて、君は気づいていない。
小さい頃に出逢って、それ以来大切にしてくれている君。
私は言葉は喋れないし、伝えることは出来ないけれど、こうして君と別れが来るまでは見守り続けているよ。
私、私こと、「新幹線のおもちゃ」がね。
よぉ、長谷川どうしたの?
スマホ、調子悪かったから機種変。
へぇ、何がダメだったの?
LINEが開けない。
そっかぁ、LINE無いと今や何にも出来ないもんなぁ。
どれくらいダメだったの?
三日? あちゃー、大事な連絡とか来てんじゃないのか?
あ、でも週末挟んでの三日・・・
遊びの誘いとかあったかもよ。
ちょっと、見せて見せて。
いいよ? ありがとう。
ああ、起動に時間かかるもんなぁ。
しかし、あれだ。週末といやぁ、山岡が作ったグループLINEで結構みんな書いてたなぁ。
え? 知らない。
・・・
ああ、あれはまだ入ってないかぁ。
今度、招待しとくよ。
でも、ほらサトミが作ったグループLINEで来月皆でキャンプ行こうって・・・・
それも入ってないのかぁ。サトミから直接連絡あるかもだよ、うん。
ま、ほら開けてみ、三日もあれば沢山連絡来てるはずだからさ
・・・
・・・
・・・
よかったぁ。ミホコ? 女の子から連絡きてんじゃん。
え? 彼女? なんだ長谷川やるじゃん。
うん?
さようなら
ああ、うん、連絡してみ、そしたら、うん大丈夫だと思うから。
うん、それじゃあ、俺いくよ。
なんかゴメン。
・・・・
・・・・
俺、アイツのLINE送ったことあったっけ?
あれ?
そもそも、アイツのLINE知ってたっけ?
・・・
・・・
縁は切れる
自分でそう選択しても、相手がそう選択しても
SNSは繋がりを簡単に、広く、大きくするけど
同時に崩れるスピードもより早く、簡単になった
今画面にしがみついて必死に返信している相手は、私にとってどんな存在なのだろう?
表情も声も伝わらないこの一言で、はたしてその人の心の中までもを図れるのか?
"怖い"
それは本当の意味で繋がれない場所で繋がろうとするからだ
簡単だよ
開かなくてもいい
縁を切るか、会いに行く、ただそれだけ
-開けないLINE-
毎日欠かさず
送り合ったLINE
いつしか気持ちがすれ違って
しまったけど
それでもLINEだけは
欠かさなかったね
結局もう何もかも
終わりにしたその日
あなたとの思い出のやり取りは
全て消去してしまったな
だってね未練がありすぎて
また連絡してしまいそうだったから
これ以上嫌われたくなかったんだ
開かなくした私の最大の
強がり
誰かから一通のLINEが届いた。
"仲川すみれ『久しぶり 今週会える?』"
見覚えのない名前だった。
が、下の名前には見覚えがあった。
結婚したのか?あいつ
あいつとは"伊藤すみれ"のことだ。
伊藤すみれとは高校生活をほぼ一緒に過ごした。
だが、高校3年の秋、些細なことから始まった喧嘩がどんどん大きくなっていた。それからあいつとは疎遠になっていた。
高校卒業から6年経った今、何を話すのだろう。
今週は空いている日が多いが、なんて返そうか。
そんなことを考えている間に2時間が経ってしまった。
貴方が好きで、好きで。
でも苦しくて。
【 開けないLINE 】
貴方を好きになって
付き合って、愛し合って。
今まで知らなかった貴方を知って、
今まで知らなかった私を知って。
感情に振り回されて、冷静になれなくて
好きなのに、付き合えたのに。
なんでこんなにも苦しいんだろう。
終わらせたくなって、LINEを送った。
案外返事はすぐにきたが、開けそうにもない。
終わりたいけど、終わりたくない。
貴方が好きで、好きで。
でも苦しくて。
でも、
好きだから。
スマホ新しいのに代えたらLINE開けないんじゃ。怒
他のアプリは開けるん?
他にもいくつか届かん。
届かんって何?
親指が攣りそうな位がんばっても無理。
知らんがなー!
ちな、ホームをダブルタップか、左右へスワイプしてみ。
ほーん、これ大技林か?
ピコン
LINEが鳴った。
「誰からだろう」
そう思って差出人を見た。
「…」
元カレだった。
彼とは酷い別れ方をしてから会う事も話す事もなかった。
だから悪いとは思いつつも開かないでいようと思った。
(これで良い。今の私には守りたいものがもうあるんだから…)
開けないLINE
全てをシャットアウトしているときは
私のLINEもいつまでも既読にならない。
『ママのLINEはピン留めしていて、通知が
来たらすぐ見るよ』って言っていたのに。
同じ屋根の下、届かないはずもないのに。
トーク画面には右側に寄った文字が並ぶ。
あの子からのLINE
開けない
開きたくない
だって、ケンカしちゃったんたもん
なんて書いてあるのか見るの怖いし
絶交!とか書かれていたら
マジで落ち込む·····
でもスルーもよくないよね
もちろん既読スルーも
思い切って開いてみた
·····あっ、·····
そこには一言ごめんねって書いてあった
こんなにグチグチ悩んでた私より
やっぱりあの子は潔くてカッコイイ!
あぁ、やっぱりあの子と親友でよかった!
私の方こそ、謝らないといけないのに
すぐに私の方こそごめんなさいってLINEしたよ
明日からはまたいつも通りの仲良くできるかな
心の中がモヤモヤしてたけど、今は顔がニヤニヤしちゃう
やっぱり友達っていいよね
····················そんな友達欲しかったなぁという妄想
『開けないLINE』
あなたから送られてきた最後のメッセージ。
私はどうしてもそれを開くことが出来ない。
書いてある文章は知っている。LINEのメッセージ一覧に、たった一言表示されているから。
だけど、未だに既読をつけることが出来ないでいる。
もし開いてしまったら、未読1の表示はもう二度とつくことがないのが分かっているから。
もし。
このメッセージをあなたの訃報を聞く前に開いていたら、私はこの開けないLINEで悩むことはなかったかもしれない。
多くの人からメッセージが来るたびに、あなたのトークは下へ下へといく。
沢山の公式LINEのメッセージにうんざりして、一斉に既読をつけたかったけどもしそれをしたらあなたのLINEに既読をつけてしまう。
だから膨大な公式LINEのメッセージも、一つ一つトーク画面を開いていき既読をつけていくのだ。
いつか既読をつける日が来るとしたら、それはあなたのことをいい思い出に出来たときです。
せめてそれまでは、まだ未読のままでいさせてください。
創作 2023/09/02
開けないLINE
LINEのパスワードを忘れてしまった。
高校時代の思い出が淡い六つの数字によってつなぎ止められていた。
パスワードを入力しようとして、辞める。
開けなくなったLINEの中、あの日の僕らはそこにあった。何ひとつが失われずにそこにあったのだ。