『鏡』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
鏡
鏡をみる。
自分の目を見れない。自分の目を見て。
存在を確認したくない瞬間。私はここにいるよ。
私を見て。
「ねえ鏡さん、この世で一番美しいのは誰?」
魔女様のいつものご質問。答えは勿論決まっているわ。こう答えない人が果たしてこの世にいるのかしら。
「それは勿論、魔女様ですわ」
そういえば、有名なおとぎ話に出てくる鏡はここで「それは白雪姫です」って答えるらしいけれど、それは本当?
白雪姫。森の奥で動物や小人たちと慎ましく暮らしている薄幸の美少女だという噂だけれど、その白雪姫ならさほど美しくないわ。皆、噂を信じすぎなのよね。実際のところは、色白すぎて逆に不健康を疑いたくなるほどよ。
やはりわたくしの魔女様の方が百倍お美しいわ。
「魔女様はいつでも世界一の美しき女性でございます。
わたくしが保証いたしますわ」
「ありがとう、鏡さん。あなたもいつも綺麗よ」
魔女様からのお褒めの言葉を頂けるなんて、どれほど光栄なことかしら。白雪姫はこの喜びさえ知らないんですもの。世間知らずなお嬢さんにはきっと一生分からないわね。
わたくしはいつまでも魔女様にお仕えし続けるの。それがわたくしの唯一の望みよ。
鏡
双子の弟は私にそっくり。
同じ服を着れば親でも見分けるのが難しくなる。
ある時、男子が弟に告白した。
理由は間違えた、だそうだ。
うちの学校は私服登校だから同じ服を着ている私たちを見分けるのは至難の技。
けど、弟にも声変わりの季節がきた。
けど、声が女のような高音域の声に変わった。
いつしか、自分より女の子みたいな弟に嫉妬を覚えた。
私の方が声も高いし顔だって同じなのに、性格のせいですべてが台無しだ。
容姿は鏡を見ているようだったが、中身は正反対だった。
鏡
一日に一回は絶対見る自分の顔。
鏡などで見る自分の顔がこの上なく嫌いだ。
「はぁ…」
今日も朝起きて自分の顔を見る。
割れている鏡。
私が割った。あまりにも嫌だったから。
輪郭を確かめるように頬を撫でる。
『かわいいね』
そう言ってくれたあの子はもういない。
「よし…」
メイクも済んだので今日も社会へとでていく。
最高にかわいい私を見てもらうために。
昔から、鏡が苦手だ。私の醜いところも、隠したいところも、昨日できた虫刺されの痕や、昔つけた足の傷や、あれやそれや…とにかく全部うつしてしまう。そうして、斜に構えて私を見つめてくる。
何さ、その顔。つん、と鏡の中の偉そうな顔をした女の子のほおをつつく。背筋伸ばしなよ。その顔、なかなか悪くないんだから。
今日を乗り越えれば、鏡のあの子も笑顔になるに違いない。そうして、私は踊るように人生を生きていく。
「踊るように」
鏡を覗いて、いつも私は確かめる。
私が、ちゃんと私でいれているかどうかを。
ここ数十年間、必死に生きてきたが結局今のところ自分が何者なのか何者になりたいのか、全くもって分からない。し、きっと死ぬまで分からないかもしれない。だけどまあ、私はきっとそれでいいとおもっている。
極たまに自分を見失う時がある。
昨日の自分とは、違う自分。何故か赤の他人になったような気がして止まない時がある。
誰かの人生を、友達のゲームを横でじっと見ているかのように、ただ何も思い浮かばず眺めているかのような、そんな状況なのだ。
動いてるのは自分なはずなのに、上手く感覚が掴めなくて切り離された空間の中で冷静に、他人の人生を分析しているような、そんな感覚なのだ。
そんな時は、私は必ず鏡を見る。
鏡の中の自分の目を見て、頬に手を置く。笑ったり、口をへの字に曲げてみたり。
そうすると、鏡の中の自分も同じ動きをする。それを見て、自分は自分だと、たった1人の人間なんだと理解出来る。
そうする事で自分を保ってきた。
何者になれなくてもいいじゃないか、私が私であることは私にしか出来ないのだから。
ほら、また今日も自分を見失いそうになった。他人になった気分だ。
だから、今日も私は鏡を見て確かめる。
私が笑う。そしたら鏡の中の私も笑い、ゆっくりと目を閉じる。
あ、私って意外と睫毛長いんだなぁ、と鏡を見て思った。
────
まつ毛の長さ、なんで見えたんでしょうね。
私は目を瞑っていないのに。ね
Mr.Children 「優しいうた」の詞に
(「鏡の中の男に復習を誓う」)
時の儚さに憂いて
それでも受け入れて…
【鏡】
シズクは鏡を見た。
そこには見慣れた顔がある。その無駄な造形美のせいで生きにくさを感じてることはもうどうでもいいし、考えないようにしている。
それでも穴が開くまで鏡を見つめているのは、子供のころ読んだ鏡の中に広がる世界のファンタジーを描いた本のことを思い出していたからだ。
現実では虐げられていても、自分のカラを破れなくても、どんな姿をしていても、ひとたび鏡を潜り抜けて違う世界へ行けば、己を苦しめる暗黙の了解というしがらみも、偏見もカーストも何もない。自由でありのままの自分で冒険ができる。
シズクの現実の世界を、苦しいとか、大変だとか、ましてや無理ゲーなどと表現する者はいないだろう。でもそれは他人の主観だ。他の人達が楽をしているとは思わないが、自分が苦労していないとも思わない。
シズクは鏡をそっと押してみた。物語とは違って、それは無表情で冷たく、硬くシズクの手を押し戻した。
ふと気づくと、その鏡の中に、知らない女生徒が写っていた。シズクは少し目を泳がせたが、精いっぱい素知らぬ顔をして、もう一度手を洗い、ポケットからハンカチを取り出して手を拭いた。
その間もずっと女生徒はシズクの後ろに立っていた。
「どうかした?」
意を決して、シズクが尋ねる。
女生徒はうろたえたような顔をして、
「いえ、なんでもありません。」
女生徒は一つ下の学年の色のジャージを着ていた。
腰まで届きそうなロングヘアが少し不自然に光ったような気がした。よく見ると、女生徒といっても、少し筋張った腕が気になる。
(いや、あんまり見るのも悪いな)
シズクはそのまま振り切るように女子トイレを出た。
シズクのいなくなったトイレで、今度はレイが鏡を見つめていた。
(ヨシカワ先輩・・・だよな。)
一つ下のレイの学年にも、彼女の名は知れ渡っている。才色兼備、文武両道、完璧超人と言われる人だ。
(先輩が、Kanzaki・・・?そんなまさかな・・・。)
レイは、SNSでたくさんの絵師たちをフォローしている。色彩やコンセプトなど、服のデザインに繋がるところがあるからだ。
(でも、あのキーホルダーは・・・。)
シズクの制服のポケットから出ていたキーホルダーに、見覚えがあった。
たしか、Kanzakiの投稿で見かけたような・・・。
Kanzakiとは、イラストや、短いアニメーションを投稿しているユーザーだ。その、やけに純粋で卑屈な世界観が癖になる。
(まさかな・・・。)
そう思いながらレイは鏡を見る。そして思い出す、鏡越しに見たシズクの顔。
(なんか、別人に見えたな・・・。)
#鏡
鏡よ、鏡よ、鏡さん?世界でいちばん美しいのは、だーれ?
小さい頃、白雪姫に触発されて、鏡は喋るものだと思ってた。
何回も何回も、毎日鏡に喋りかけては答えのない日々。
何度、枕を涙で濡らしただろうか。
いつの間にか諦めて、鏡に話しかけることも無くなった。
それは、私が1歩大人になった証。
『水たまり』
夜空のおぼんは鏡じゃないか 写っているのはただの僕 白雪姫じゃありません ただの僕 雨が上がって
水たまり できたばかりの水たまり 水面をみれば
これもまた 立派な鏡なんじゃないかと思いつく
ここにもやはり僕がいる 紛れもなく僕がいる
父と叔父は一卵性双生児
初めて見たのは子供の頃
話では聞いていたけれど
本当によく似ている二人
父は角刈り叔父アイパー
見分けるのが髪型として
正直どちらも大差はない
庭にいる叔父を見かけて
今日休みなの珍しいねと
近所の人が話しかけてる
叔父はにっこりと笑って
そうなんだよと返答した
懐かしく思い出す一場面
お茶目で優しい話し方は
やっぱり父と似てるのだ
叔父は元気にしてるかな
今二人並んでるところを
見てみたいなあ、なんて
洗面所で歯磨きしながら
思い返してたところです
『 鏡 』
鏡
「鏡よ鏡世界で1番美しいのは誰?」
もちろん貴方と応えてはくれない
神様は平等に美しい顔を与えてくれない
大事なことは
私が私自身のことを可愛いと思うこと
鏡の自分を見ると、今日の自分かっこいいな…イケてるな…と思ったものの、カメラに映し出された自分があまりにも見るに堪えないグロ画像になることは無いだろうか。
だが、ほとんどの鏡とカメラに映し出された物はどれも本当の自分の姿では無いらしい。
どれも光の当たり方や、見方で自分の顔の印象は変わってしまう。
産まれてからこの体と一緒に生きてきたのに、自分の本当の姿を知らないとは不思議だ。
毎日鏡に向かって
今は落ち着いています
かつては全てのことを
ワンオペでこなす毎日で
ヘトヘトになり
虐げられていたあの頃
仕事帰りに毎日
ヘルメットの下で涙したあの頃
あんなに好きだった
オシャレやお化粧が出来ませんでした
鏡を真っ直ぐに見ないから
どんな顔だったのか思い出せません
今はあなたのおかげで
自分を取り戻し
鏡の前で笑顔になれます
全てのことにありがとう
鏡
鏡と向き合い手を重ねる。触れているのは冷たい鏡であるはずだけど、どこか暖かく感じる。鏡の中の私が私にエールをくれるよう。
ちょっと変わった私のエネルギーチャージ。
鏡を見ると
醜い醜い私がいる
醜い人間の子
ハッピーエンドになるといいな
今日の心模様
朝から快晴で、髪も上手く巻けたし、星占いも一位だったし、今日はいい日だと思ったのに。
(嘘でしょ……)
帰る頃になって急に雨。友達は部活だし、置き傘もない。
(アイス食べて帰ろうと思ってたのに)
「ひゃーすごい雨」
「! 結城くん」
心臓が飛び上がった。
「三島さんも帰れないの?」
「傘なくて。通り雨かな」
「ていうかスコール」
「ふふ、ほんと」
でも恵の雨だ。結城くんと話せるなんて。
今日は、晴れのち雨ときどきドキドキ。
夜の海
ザザーン、と音がする。
窓の外は真っ暗だが、昼間見たときと同じように、岩場に波が打ちつけているのだろう。白く泡立つ波の花が岩にぶつかり砕け散る。
ザザーン、と音がする。
波の音には癒し効果があるというが、とてもそうは思えなかった。バシャ、ゴポゴポ。岩肌に当たるせいか、渦巻き海中に引き込まれる音が背筋を粟立たせる。
ザザーン、と音がする。
誰かが海の中から手招いている。寂しげに泣いている。
そんな音だった。
自転車に乗って
バサバサとスカートが風に翻る。ハーフパンツを履いているからいいけど、それ以前に車輪に巻き込まれないかちょっと不安だ。
「おーい、あんまり遅れんなよ」
顔を上げると、振り返った綾瀬とは少し距離が離れていた。
「そっちがペース落とせばいいじゃん!」
「遅かったら後ろからウイリーで煽るっつうから」
「ちょ、前見ろ前!」
「うわっと」
大型トラックの脇をすり抜ける。
「買い出しだる」
「アイス食わね?」
「いいね! 内緒で!」
鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?
「あなた」とは言ってはくれない
私はこの世の女王にも姫にもなれないから
毒りんごを食べた白雪姫のように助けてくれる王子様がいる訳でもない
''この世で一番美しいのか''は誰かが決めていいものではない
美しいがすべてではないから
毒りんごを食べた白雪姫はきっと『毒』だと分かって食べたのだろうか
白雪姫の美しさを妬んだ女王はそれだけの理由で娘に『毒』を渡したのだろうか
鏡は真実を映し出す
鏡よ鏡、この世で一番嘘つきなのは誰だろう?
空は淀む
つまりは目の前にいるってことでしょ?
自分がぁ、なるほどね。
定期的に聴こえる鐘の音。家の前のうるさい川の音。
家族の誰かが、下手したらどこかのホラー映画より不気味な、音を立てて
いる。
お願いだから静かにしてよ!!
鏡
つまりは目の前にいるってことでしょ?
自分がぁ。
自分のかおが?
自分の体が
自分は防犯カメラじゃないんだって実感するよ本当。
自分は、自分の目だけで世界を見ている気になっていたけど、
鏡みたら、自分に目以外の実体があるって気づいたよ。
別に自分さえいなかったら、きっと文句も言われないんだろうよこの音たちも。
自由気ままに鳴り響いて時々不協和音を出したりして。
でも僕がいなくちゃ、私がいなくちゃ、この部屋にほこりが溜まってしまうし、
っていうか、なんの価値もないじゃないか。
人が一人もいない世界って感じか?
鏡みたらさ、どうしようもなく自分の体はでかかったよ。
嫌でも認識してしまうね、この迫力は。
音にうるさいって怒ってた自分の方が
圧倒的に景観と空間の風紀を乱す風貌をしていたよ。
音と視は違うけどね。よく考えたら、
自分だって呼吸の音とか髪の毛の擦れる音を出していたよ。
まったく自分を棚に上げていたんだ。
鏡は
いいねぇ。
主観を圧倒的に断ち切ってくれるよ。
鏡よ鏡。
鏡を見る度、魔法をかけてちょうだい。