『私の日記帳』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私の日記帳はまっさらだ。
書きたいことが沢山あるのに書けない。
だってこれは本だと思われているから。
来る人はみんな「この本まっさらなんだね」と零して隣へと足を進める。
これは本なんかじゃないの、大切な日記帳なのに。
書くことが出来ない。私の意思ではどうしようも出来ない。私がみんなに忘れられるまでこの日記帳は本として扱われるのだろう。
人間はいつもそう。
直ぐに決めつけて勝手に想像する。
私なんて"本を持った人形"なんて勝手な名前を付けられて展示されている。
私を作ってくれたママは「沢山の人に見てもらえるだろうから嬉しいことがあったらこっそり書くのよ」って私にまっさらな日記帳を持たせてくれた。
それなのにママは私の名前を伝える前に死んだ。
だから美術館の人が勝手に"本を持った人形"なんて付けた。本じゃなくてママがくれた大切な日記帳なのに。
私の日記帳、それは日記帳とすら思われていない
まっさらな私の人生みたいな本
私の日記帳
唯一本音を包み隠さず言うことができる最高の話し相手
今日も一方的に話を聞いてもらう
「私の日記帳」
私はさゆり。
これは私が中学生の頃の話だ。
日記をつけるのが日課だった。
日記はその日に起こったことをまとめるもの。
だが、私がつけていた日記は
その日にこういうことが
起きたらいいなというものだった。
日記をつけ始め1年が経った頃だった。
使っていたノートがなくなってしまった。
私の学校には購買があり、ノートが売っていた。
そこで夢ノートと書いてあるノートがあった。
1番安くて大学ノートみたいだったので
これを買うことにした。
8月20日
今日は席替えがあった。
好きな人と隣になった。
楽しく話すことが出来た。
これは実際に起こったのではなく、
妄想の世界の話だ。
20日の内容は19日に書くことにしている。
つまり1日前に次の日怒って欲しいことを書くのだ。
しかしこの時は実際に席替えがあった。
隣の人はもちろん好きな人だ。
本当にかなったと嬉しくなった。
この時はまだ疑うことはなかった。
たまたま、奇跡的にそうなった程度に考えていた。
8月21日
今日は好きな人と帰ることが出来た。
お互いの趣味や住んでる方向が一緒だった。
好きな人と家が近いのは
誰しも一度は夢見たことがあるだろう。
しかし私の彼は家の方向が全くの逆。
趣味はスポーツ好きで似ていた。
学校で彼が驚くことを言った。
「僕、引っ越すことになって君の家の方に行くことになったんだ。今日一緒に帰ろうよ?」
私に断る理由なんてなかった。
それどころか2日連続で夢が叶ったから
味をしてるようになった。
8月22日
彼の家に遊びに行った。
勉強したり、テレビ見たり、お菓子作りしたりした。
やはり夢が叶う。
私が日記に書く夢は日に日にエスカレートしてきた。
8月25日
彼に告白された。
もちろん付き合うことが出来た。
彼にキスをしてもらった。
私は躊躇(ためら)いもなくそんなことを書いていく。
欲望のために彼を利用する自分に不安なんてなかった。
何でも夢が叶う。
それも毎日。
私は日に日におかしくなっている気がした。
彼と遊んだ日の夜の事だった。
私はノートに何も書いていない。
だが、明日の日付で何か書いてある。
私はそこに書いてある内容を見て絶句した。
9月27日
さゆり(私)は交通事故にあって
死亡した。とても痛かった。事故にあってから一二時間は苦しんだ。
血の気が引く思いがした。
誰が書いたかなんてどうでもよかった。
このノートに書いてあることは絶対。
それを知っていた。
外れたことがなかったから回避の仕方も分からない。
消して書き直そうともしたが、消しゴムでは消えない。
ペンで消しても、戻ってしまう。
私はノートを燃やすことにした。
確実に灰になったのをこの目で確認した。
しかし本が元に戻る所も見てしまった。
私は膝から崩れ落ちた。
「どうしようどうしようどうしよう、、、
このままじゃ死んじゃう。なにか無いか。そうだ、交通事故なら家から出なければいいんだ。」
私は安心した。
一人でいてもつまらないから彼に電話をした。
私「明日もうち来て遊ばない?」
彼「いや、うちで遊ぼうよ!たまには家おいでよ!」
私「行きたいんだけど明日は家から出る訳には行かなく
て、、、」
彼「何かあったの?」
私「ちょっとね、留守番頼まれちゃった」
彼「違うでしょ」
私「え?」
彼「さゆりが家から出たくないのは違う理由でしょ」
私「何を言ってるの」
彼「さゆり家から出たら交通事故で死んじゃうもんね」
私「あなただったの?」
彼「あのノート、見せてもらったよ。
少し前ノートに書かせてくれたことあったよね。
書いた内容が次の日起こった。
その時理解したんだ。このノートはその日の思い出
を書くのではなく、未来に起こって欲しいことを書
くんだって。席替えで隣になるのから僕と付き合う
の全部君が仕組んだんだね。変だったんだ、僕に
は好きな人がいた。ある日その人に全く興味が無く
なった。それまでどちらかと言えば嫌いだった君に
興味を湧くようになった。今日ノートを見て真実に
気づいた時、君への興味は全く無くなった。恐らく
それがそのノートのデメリット。残念だったね。」
頭が真っ白だった。思い知らされた。自分だけに都合がいい事なんてないんだって。
私はひたすらベットで震えていた。
「家からでなければ大丈夫、大丈夫。私の部屋は2階なんだ車が家に突っ込んでも大丈夫。」
私の期待も虚しくその時はやってきた。
ニュース「○○空港行きの飛行機がエンジントラブルにより墜落したとの事ことです。現在がれき撤去作業が行われています、、、」
私「痛い、苦しい、なんで、なんで、なんでよ、、
暑い、おもい、手からが抜けてきた。声が出な
い。お腹に木材が!痛い!痛い!痛い!叫びたい!
喉も潰れてる!足の感覚がない、、」
私「やだよ、死にたくないよ、助けて、助けて。」
それから一二時間後、瓦礫の撤去が完了した。
飛行はプライベートジェット機でパイロットはパラシュートで逃げることが出来た。
---ニュース速報---
「墜落した民家に住んでいたさゆりさんが死亡した状態で見つかりました。警察の情報によるとさゆりさんの死亡推定時刻はつい先程との事、墜落してから2時間ほど瓦礫の下で耐えていたことが判明しました。」
ロクに続いた事が無い。
海外小説に出てくるような鍵のついた日記も、学校の友達と交換しようねと言って買った日記も、読書記録をつけようと思って買った文庫サイズの日記も、全部最初の数ページで終わった。
「日記」そのものが私に合わないのかもしれない。
·····違うな。多分、自分の字が好きになれないから読み返すのが嫌になって、書く気が失せてしまうんだ。
だって、このアプリや他の読書記録アプリは続いてるから。
やっぱり綺麗な字って憧れるなぁ。
END
「私の日記帳」
私の日記帳
✕年▲月★日(◆)
果たして何日続くかな
三日坊主を舐めちゃあいけない
翌日には既に書くこと無くて終わってるからな
と書いてから云十年
ノート自体家のどこに置いたのか忘れたらしく、一日目だけ書いてあるこの家の主の日記帳が見付かった。
しかも大体同じ様な日付違いの文章が書かれた日記帳が何十冊も。
「まーた日記帳あったぞー」
「今度いつのだー?」
「■年▲月●日。いつまでこの同じ文書いてんだろな仏さん」
これらの日記帳の主は、このゴミ屋敷と化した家の一室で腐乱死体一歩前で見付かった。
テーマ 私の日記帳
不思議の国のアリスのお茶会が表紙のリングノート、日記が一緒になった臙脂色の合成皮革が表紙の手帳、白紙が続く文庫本スタイル、日記アプリ等様々なものを試してきたが、一向にちゃんと続いた試しがない。
大概記憶にございません状態で生きているのだから日記をつけた方が良いとは常々から思ってはいる。警察に先月のアリバイなんぞ聞かれた日にゃあ、覚えてなさすぎて無罪を立証できる気がしないし、証言台には一生立たない方が世の中の為になる。助けて名探偵。
続かない理由は、負の感情モードになるとやたらポエマーになるのと、そうでなければくだらないことを書きすぎるから。そして生来怠けることが大好きだからだろう。
例えば今日なら、子どもの詩集を集めた「たいようのおなら」の癒し効果が高くて旦那に薦めたら笑顔が見れて嬉しかったとか。
息子が帰宅する時インターホンカメラにジャンプでピースしてくるの可愛いとか。
初めて自分で爪切らせたとか。
秋桜の種買えたとか。
旦那咳してるの新たな風邪かとか。
まだまだあって、優先順位をつけられないのも問題なんだろうな。
その点このアプリは、適度に他人を感じられて助かっています。書くテーマも与えられて優先順位も付けやすいしね。ありがとうございます。
まぁ、日記じゃないのでアリバイ説明にはならないでしょうけども。その時はやっぱり助けて名探偵。
私は日記が好きじゃなかったな。
でも日記を付け始めた。
あれは、家族が可笑しくなりはじめたときかな。
まず父親が家族を無視するようになった。
次に家族に痣がつくようになった。
またつぎになると血がでるようになつた
おやのしんしつはぼろぽろになつていた
よか皿が割れる音が、きこえるし
いつのまにかでんきもつかなくなつたな
ははおやには風穴がとおつたし
いもおとには、ないふが、さささる
そもそも父親はめがただしいほうにむいてなあい
わたひからもひふがほろほろおちるし
へやじゅうがあかあい
きもちちちがわああああるい
はははもういないし
ちちおやは、うまった
そんなことがかいている日記にあたしは吐あいた
そんなにっきをまどkらなげすてたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
私の日記帳
楽しかったこと、
好きなこと、
嬉しかったこと、
面白いこと、
なんでもいい、
前向きな気分やそうなれることを書いた日記帳。
たまに、どうしてもだめな時は
聞いてほしいこと、
辛かったこと、
悲しかったこと、
そんなことも書く。
けれど、日記帳の中の自分だけは否定せずに全肯定というルールがある。
現実では、
毎日毎日自分がもっと良くなるように頑張れるように
自分はだめなやつだと自分に言い聞かせてるから、
日記帳に触れているその瞬間だけは
肯定して、労りたい。
私の日記帳は、前向きになれる。
だから今日も書く。
自分を大切にするために。
私の日記には
秘密がいっぱい
読んでると
ラーメンが食べたくなる
俺の名前は、五条英雄。
私立探偵をやっている。
俺の所には、他の探偵では解決できない難事件が持ち込まれる。
それを解決するのが俺の仕事。
鮮やかに解決する様子に、街は俺の噂で持ち切りだ。
今日も、噂を聞いた依頼人に『あなたしかいない』と懇願された、家出猫の引き渡しを終えたところだ。
喜んだ依頼人から依頼料をたくさん弾んでもらったので、今日は贅沢に外食することにした。
ということで、今日は思い切ってファミレスで食べることにした。
近くにあったファミレスに入り、俺は空いていたテーブル案内される。
今日は何を食べようか?
チャーハン?
それともパスタ?
いや奮発してステーキを……
くそ、腹が空いているからどれもおいしそうに見える……
俺がメニュー表とにらめっこしていた時、不意にテーブルを挟んだ向かい合わせのソファーに誰がが座る気配がした
「相席いいですか?」
聞き覚えのある声に驚き、メニュー表から顔を上げる。
テーブルを挟んで向かい合わせの席に座っていたのは、なんと我が探偵事務所で雇っている助手であった。
今日の助手は休みのはずなのだが、なぜここに?
湧いた疑問をよそに、助手は俺に笑いかける
「先生、食事をご一緒します」
見惚れてしまいそうな美しい笑顔。
こんなのを見せられたら、どんな男もイチコロだろう。
だから、俺の助手の提案の答えは決まっていた。
「ダメだ、どっか行け」
俺はハッキリと断る。
残念だが、もう俺には助手の営業スマイルは効かんよ。
それで何度こき使われたことか……
それにだ。
モノを食べる時はね。
誰にも邪魔されず、自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ。
独りで静かで豊かで……
という訳で、俺は一人レストランで食事を楽しむのであった。
完
「待ってください。
私みたいな美人が食事のお誘いですよ!?
なんで断るんですか!?」
「美人って自分で言うのかよ……
まあいい。
理由だが、俺は仕事とプライベートを分ける人間だから。
以上だ」
「それは私もです」
「だったら声をかけてくんなよ」
「スイマセン、財布忘れてご飯が食べられないんです。
ごはん代貸してください」
助手が両手で拝むようにお願いしてくる。
始めからそう言えばいいのに……
「全く……
奢ってやるから、好きな物を頼め。
依頼料が入って、金があるからな」
「やった。
じゃあ期間限定パスタと鉄板焼きステーキ、サラダ、ドリンクバーに、えーとえーと、あ、デザートもいいですか?」
「奢りと分かった途端、急に調子に乗り始めたな」
「奢りですから。
それでデザートは?」
「いいよ、頼むといいさ」
俺と助手は、互いに遠慮が無い。
気を許していると言えば聞こえはいいが、ただ単に扱いが雑なだけである。
なんだかんだお互いが食べたいものを注文し、ホッと一息。
ひと段落付いて何気なく正面を見ると、助手と目が合う。
そして俺は気づいてしまった。
『これ、実質デートじゃね?』と……
油断していた。
助手を追っ払えばよかった、マジで!
言いたくはないが、俺は女性と付き合った事は無い。
なのでこいう時どうすればいいか、なにも分からん。
名探偵の俺でも、これだけはお手上げだ。
どうすればいい?
考えろ、俺!
「こうして向かい合って、ご飯を一緒に食べるのは初めてですね」
頭を高速回転をさせていると、助手が話を振って来た。
これ幸いにと俺は話に乗っかる。
意識していることがバレないよう、話を合わることにする
「そうだな。
結構長い事一緒にいるが、こうして店で一緒に食べるのは初めてだ」
俺と助手は昼飯のスタイルが違う。
俺は事務所で簡単な料理を作るかコンビニ弁当。
助手は近所の食べ物屋で食事。
中で食べる派と外で食べる派で平行線。
今日は珍しく交わったが、今後は無いだろうし、合わせる気もない。
俺はそう思っていたのだが……
「あの、先生……」
助手の歯切れが急に悪くなる。
何事かと助手の顔を見れば、頬も赤く染まっている。
体もモジモジしているし、まさかこれは……
「あの、また食べに来ませんか?」
やはり次のデートのお誘い!
まさかのモテキ到来に動揺するが、ここで答えを間違えてはいけない。
うかつな発言は火傷するだけ……
俺はゆっくりと自分の気持ちを伝える。
「俺は嫌だ。
なんか副音声で『奢れ』って聞こえたから」
「ソンナコトナイデスヨ」
「お前、探偵舐めんな。
そんくらい分かるわ」
焦ったのか、いきなりぶっこんで来たから、逆に冷静になったわ。
だが、ジワリ来られたらどうなったか分からない。
正直助かった……
助手が「くっそー」と悔しがっていると、店員が料理を持ってやってきた。
「お待たせしました。
ご注文の品です」
テーブルの上に料理が並べられる。
なお、テーブル上の料理の8割は助手の物だ。
……頼み過ぎである。
「「いただきます」」
俺たちは目の前の料理に手を付ける。
目の前のたくさんの料理を前にして、目を輝かせる助手。
今までの色っぽい雰囲気はどこへやら。
女は魔物って本当だったんだな
だがまあ……
「おいしー」
おいしそうに食べる助手の顔を見たら、俺も嬉しくなってしまう。
男もまた、単純と言うのは本当らしい。
自分のバカさ加減に呆れる。
だが、助手と食事はなかなか楽しい。
今度食事に誘うのもいいかもしれない。
そう思う、俺なのであった。
――ただし、次は奢らないがな
今日も絶えず息をする
いつか夢みた暗闇へ
黒に染まって堕ちてゆく
今日も絶えず終わりを探す
続く光を追い続け
明日はきっと永遠に
正直 日記はいつも三日坊主だ
新年に さあ書くぞ!と意気込んでみても
3日目には 毎日同じやん となってしまう
だから日記代わりという訳でもないが
その日の気分で詩を書く
なんでもない日常のこと
気になった事象のこと
忘れられないあの人のこと
毎日では無いけれど
こちらの方が私には合っている
あとは写真
作ったものや食べたもの
記念という訳ではないが
そういうものの方が記憶に残っている
日記とは言えないちょこっと記録
「私の日記帳」
《私の日記帳》
続かない
だから…書きたい時だけ書く
自由気ままに
わかば
━━━
《私の日記帳》
心がモヤモヤした時
頭の中でグルグルした時
そんな時は文字にする
”秘密“の日記帳
あおば
・私の日記帳
私の日記帳は見ちゃダメなの
だってだって、そこには理想の私の日常を書いてるから
は?内容??……特別に教えてあげる…ごにょごにょ
え?普通だって?
私にとってあなたたちの普通は理想なの
だって私、テレビの撮影で毎日忙しいからね…
私の日記帳
日記帳には、たくさんの思い出が記されている。
楽しいこと、辛いこと、笑えること
色々だ!!!!
それに、日記帳に記すと、心の整理が出来るんだぞ?
自分の気持ちを文字として記すことが出来るからな!
でもまぁ、その代わり
人に見せれる日記帳と見せられない日記帳が出来てしまう。
うーん笑
困ったものだ笑笑
日記帳。
私の日記帳は、こんな感じだ。
まぁ人によってそれの想いは違うからね。
あくまで、個人の感想だけど、君たちにもそういうものが出来たらいいなと心から願っているよ
「マジかぁ」
久しぶりに上がった隣家の2階で、思わず呟く。
自分の部屋が窓の外の向かいに見える机の前で、私はしばらく立ち尽くした。
机の上には、分厚い冊子が置かれている。
ちょっとした辞典のように立派な分厚い…。
…表紙には上段に「10年日記」下段に「私の日記帳」。
金で印刷された上段の読みにくい字に対して、下段の字は掠れた黒マジックのあの子の字。
私の部屋の真向かいにあるこの部屋にいた、私より少し年上のあの子は、魔法使いだった。
幼い頃から、あの子は私に魔法を見せてくれた。
千切れたぬいぐるみを治してくれた。
破れてよれよれの紙飛行機の羽をピンと伸ばしてくれた。
割ってしまったママのマグカップをこっそり直してくれた。
間違えて混ぜちゃった牛乳を、コーヒーから取り分けてくれた。
夕焼けの日に照らされながら彼女がステッキを振る。
魔法がかかる。
私がはしゃぐとあの子は嬉しそうに笑って、手を握ってくれた。
あの子の目は苺みたいに赤くて、白い肌と色の抜けた髪がショートケーキみたいに可愛かった。
その見た目の特異性のせいか、あの子と私が外で遊ぶことはなかった。
それでも、彼女の部屋で遊ぶのは、何より楽しかった。
お互いの窓から、紙コップと凧糸で作った電話線を張り巡らせた。
声を出したくない時は、お手紙を紙飛行機に折り変えて窓から飛ばした。
私たちはお互いがお互いに、一番の仲良しだった。
ある日からあの子の部屋に行けなくなった。
まもなくして、彼女は大勢の大人に囲まれて出ていった。
病院に行くらしかった。
自分の部屋に上がると、窓際の机に、紙飛行機が辿り着いていた。
あの子が部屋を去る時、最後に私に飛ばした紙飛行機らしかった。
紙飛行機にはあの子の字が踊っていた。
「もし私に会えなくなったら、私の日記帳をあげるから。私の日記帳には秘密があってね。全部読みきったら魔法が使えるよ!」
あの子とあの子の家族は、この街では馴染めていなかった。
そんなわけで、私は、彼女が死んで二週間も過ぎたこんな日に、あらゆるお節介な視界を掻い潜ってようやく、あの子の日記帳に辿り着いた。
辿り着いた結果がこれだ。
10年日記…!?
あの子が筆マメなのはよく知っていたけど、まさかここまでとは。
…私は文字を読むのが苦手だ。
ぎっしり並んだたくさんの文章を見るとどうしても目が滑る。頭に入ってこない。
あの子の手紙の字が踊っているように見えるのも、実のところは私が読みやすいように空白をたくさん開けているから、そう見えるのだった。
…だから正直、日記にはちょっとうんざりした。
私が魔法を使えるのはいつになるんだろうか…。
とりあえず私は日記帳を手に取った。
それをそっと持ち出した鞄に忍ばせる。
それからそうっと階段を降りる。
今日、私は引っ越す。
この街から、ママの田舎に帰るらしい。
きっと、これから私はもう二度と、あの子とあの子を知る人に会うことも、あの子に縁のある景色を見ることもないのだろう。
だからこの日記帳は大切にしよう。
大切なあの子の日記帳。あの子が書いた私のための、私の日記帳。
ぜったいに離すものか。
そうっと家路に着く。
あの子はあの大きな本の中に何を書いたのだろうか。
字を読むのは嫌いなはずなのに、日記帳を開く時が、なぜだか、とても楽しみだった。
私の日記帳
落ち着かない
イライラする
涙が止まらない
震えが止まらなくなる
苦手なことに極度に不安定
になる…拒否反応
自信ない
私の日記帳は
ネガティブだらけ
日記に優劣つけるなんて、悪しき教育残像をぶっ飛ばしてね。
夏休みは、休んでいいんだよ。
先生も休んで、どっかの生徒になってきな。
【私の日記帳】
#私の日記帳
日記を付けだしたのは1ヶ月前からだった。
長年付き合っていた恋人と不完全燃焼な形で別れ、
このモヤモヤを晴らすために付け始めたのが
きっかけだ。初めは偶然だと思っていたのだが、
日記の終わりに明日は、~な日になりますように!!と
毎回書き記していたのだ。
ある日は、『明日は、仕事が早く終わりますように』
と書いた。その日は出先からの直帰になった。
またある時は、『美味しいディナーが食べたい』と
書くと、先輩から有名店のディナーチケットを
譲ってもらった。
こんなことが続くと試してみたくなるのは、
人間のさがだろう···。
ある日の日記にこう書いた。
『明日は元恋人に不幸が!!私はそれを目撃できる。』
······しばらくながめた後、しっかり消ゴムで消した。
人の不幸を願っても、私が幸せになるわけでもないし
明日は、時間にゆとりを持って起きられますように!
あ まじ、見せてくれるの?
い うん
あ 心の中って言うか
い そだね
あ ?
い どした?
あ ここ白紙
い 描ききれなかったから
『私の日記帳』