『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「多分病院ネタ書こうとしたら、実際に医療に携わってたり、入院・手術等々したことがあったりっつー『リアル』を知ってる人には、多分勝てねぇのよ」
『見てきたように嘘を書き』、が理想の俺だけど、どうしても実際に「それ」に触れた・「それ」を経験したことのあるメリットはバチクソにデカいわな。某所在住物書きは19時着の題目を見て、どうしたものかと天井を見上げた。
「病院じゃない場所に病室を持ってくれば、『これは医療ネタではありません』って逃げ道が確保できる気がするんよ。問題はどうやって病室を病院から引っ剥がすかよな……」
何故病院ネタを回避したいかって?そりゃ医療についての無知がバレるからよ。物書きは弁明し、どうにかこうにか物語を組んで……
――――――
最近睡眠不足っていう先輩が、通勤途中で倒れた。
熱失神。Ⅰ度の熱中症。
比較的軽度な部類であり、症状もだいぶ落ち着いているため、現在稲荷神社敷地内の一軒家の、エアコンがちゃんと効いてる部屋で、安静にしてる。
っていうカンジのメッセが、先輩のスマホから私のスマホに、「倒れたひとの発見者です」って前文と一緒に送られてきた。
軽度、失神が軽度?
軽度って頭痛とか喉乾いてくるとか、そういうことを言うんじゃないの?
失神と軽度の2単語が、私にはショック過ぎた。
居ても立ってもいられなくなった私は、メッセ読んですぐに時間休とって、その稲荷神社に駆け込んだ。
そこは思い出の神社だった。
6月28日に、7月9日。ホタル見に行ったり、不思議なおみくじ引きに行ったり、そこの飼い犬ならぬ飼い子狐に、先輩が顔面アタックされたり。
不思議な、とっても不思議な神社だった。
神職さんっぽい服の女のひとにスマホの画面見せて、事情話したら、「それを送ったのが私です」って。「毎度お世話になっています」って。
よくよく顔見たら、先輩が贔屓にしてるお茶っ葉屋さんの店主さんだった。ここが自宅なんだってさ。
「先輩、大丈夫?」
ザ・古民家な一軒家の廊下を案内されて進んでくと、奥の部屋のふすまに、白い画用紙がペッタリ貼られてて、そこには桔梗色のクレヨンで
『びょうしつ
ねっちゅうしょう てあてちゅう』
って、多分書きたかったんだろうな、と思われるサムシングが、ぐりぐりされてた。
「先輩……?」
ふすまを開けてすぐ見えたのは、フカフカしてそうな白い敷布団と、涼しい薄水色のタオルケット。
何かを一生懸命ペロペロ舐めてる子狐と、舐めてるあたりに丁度首振りで風のあたる扇風機。
それからようやく、その子狐が舐めてるのが、すぅすぅ静かに寝息をたてる先輩の首筋だって気付いた。
「睡眠不足が原因のひとつ、かもしれませんね」
ぎゃぎゃぎゃっ!ぎゃっぎゃっ!
イヤイヤの抗議みたいに鳴いて暴れる子狐を、両手で抱いて、先輩から引き剥がす神職さん兼店主さん。
「体調のバランスが崩れて、熱中症のリスクが上がる場合がある、そうですよ」
塩分補給の食べ物と、水分補給の飲み物ご用意しますから、ゆっくり召し上がっていってくださいね。
ジタジタバタバタの子狐と一緒に、私を案内してくれたそのひとは部屋から出てった。
私は、熱中症と体調不良のことをスマホで調べながら、久しぶりにちゃんと、しっかり眠れてるんだろう先輩が起きるのを、その部屋で待ってた。
〝病室〟が今日のテーマだという。
私ほど病室に色々な思い入れがある人もそうそうなかろう。
昔はよく病室に居た。
隣に居るのは父でも母でもなく点滴だった。
繰り返し流れるアニメーション映画をみて、
飽きたら点滴から落ちる雫を数えて、
疲れて眠る。
そんな生活だった。
私が通っていたのはクリニックだ。
つまり病床はあれど入院できないのだ。
毎週水曜日~金曜日のどこかしらで朝から点滴を打って、
夕方までずーっと1人だ。
もちろん、母はそばに居た。
母よりも近くに居たのが点滴だった。
小学校に上がる前にクリニックでは手に負えなくなり市立病院へ転院した。
良い悪いを繰り返し、
診察室の隣のベッドで横たわる日もあった。
小学5年で病気は急に牙をむき出した。
〝死ぬ〟ということを本気で覚悟した。
私は気管支喘息だ。
喘息持ちの人ならばわかって頂けるだろう。
あの吸っても吸っても酸素が回らないアレが永久になるのだ。
そう、
つまり酸素が吸えないのだ。
呼吸困難とはそうなのだ。
吸っているのに来ない。
息したいのに息が出来ない。
陸に居るのに溺れている。
そんな感覚だ。
そして、レントゲン撮って血相変えた看護師さんは
【今すぐ入院してください!手続きや準備は後でいいから、もう今すぐ入院してください!】
と声高に叫ぶように言った。
肺のレントゲン写真は撮ることはあってもそうそう見ないのかもしれない。
私はその時、肺が白いモヤモヤで覆われていたのだ。
肺が認識出来ないくらいの白い影だ。
それはそれは只事ではない。
通されたのは6人部屋のドアに近いベッド。
私に点滴した看護師さんが祖父と仕事をしたことがあると言っていた。
私の祖父はその市立病院の創立メンバーかつ副院長だった。
若い男性の看護師さんは驚いていた。
「おじいちゃん有名人?」
私は聞かされた話をした。
「おじいちゃんはお医者さんだった。」
するとその看護師さんが大層、祖父を尊敬していたようで
「おじいちゃんはお偉い先生だったんだよ。」
と言っていた。
その通された病室は私以外居なかった。
母はテレフォンカードのようなものを買ってきた。
*今どきの子はテレフォンカードすら知らないかもしれないが。
そのテレフォンカードのようなものを挿入口にさすと、テレビと冷蔵庫が動いた。
それからしばらくして私より2歳ほど下の男の子が入院してきた。
その子は何度か入退院を繰り返してるようだった。
その後に齢2歳ほどの小さな女の子がやってきた。
とても人懐っこい性格で、私をすんなり受け入れてくれたのだ。
日中は小さな遊び相手と遊んで、
夜は病気が牙を剥く。
小さな遊び相手の母親が私の母に言った。
【本当につらそうな咳をしてて……苦しそうで……】
つらそうでも苦しそうでもない。
牙を剥く発作が来る度に、夜を越せないと思っていたのだ。
白い壁に白い天井、
隣は点滴。
そんな病室は懐かしくはあるものの
二度と帰りたくは無い。
「病室」
私の枕とシーツは
若草色にして欲しい。
首を傾けるだけで
視線を向けるだけで
草原に寝転んでいるような
そんな気分になれるように。
それとも淡いピンク色にして欲しい。
きっと花畑に寝転んでいるような
そんな気分になれるから。
海の青はやめて。
私が目覚めることがなかった時
私の瞳を閉じた最期の顔と
青い海の色があなたの脳裏に残ったら
あなたはきっと海をみるたびに
私のことを思い出して泣くでしょう。
世界中の海を見るたびに
あなたが悲しい思いをするのなど
耐えられるものではないから。
だからね  おねがいよ
私のこの病室の
この白いシーツと枕を
変えてほしいの。
   私のさいごのおねがい
           「病室」
『病室』
乾いた呼吸
ガラガラ音
お別れの時間がやってくる
モルヒネ
手間を減らす為?
苦痛を和らげる為?
お別れが言えないままの時間が流れる
脈
止まる
去年祖父が亡くなった。
だから今はまだ病室があまり好きじゃないかもしれない。
しかも今日は祖母の命日だ。
いつも私の味方をしてくれた2人が、今はもう現実に会ったり話したりできないことがすごく寂しい。
でも、本当はまだ亡くなったと思えていない部分がある。
まだ入院してて長いこと会えていないだけ、そんな風に感じる時がある。
いい年して死を受け入れられていない現実逃避マンである。
みんな死んでいく。私も死ぬ。100年後には今生きている人はほぼいないという。確かにそうだ。
100年って長い。それは人間の時間感覚だろうか。
今まで生きてきた時間も結構長かったと思う。でも最近めっちゃ早い。1日は長く感じるのに、1週間、1ヶ月、1年はめちゃくちゃ早い。
もう夏。いやーあっついなーと思ったら7月末だった。ついこの間の話だ。7月ならそりゃ暑い。体感では6月を生きておりました。
こうやって着実に死に向かって進んでいる。
生あるもの、死だけは平等っていうのはまさにその通りだと思う。
いやマジで最近月日の流れが早すぎる。恐怖。あっという間に年末になりそう。
あの子は、病室の窓から外を見てた
通りのむこうに薬局が見えて、住宅街があって、そのむこうには鉄塔があって
空が広かった
5階だったから見晴らしがよかったんだ
だけどあの子は、「もう来ないで」って
元気になった姿で再会したいって言うんだ
僕は受け入れた
会いたかったけど、我慢したよ
きっと元気になるって信じてたから
まさか、それが最後になるなんて夢にも思わなかったから
みんな心に
病を飼っていて
うまく閉じ込めている
つまるところ
私自体が歩く病室で
真っ白なカーテン
眠れない夜
染み付いた薬剤の香りを
内包している
[ニンゲンは病の器である]
題:病室
私がいくら頑張っても、誰もそれを分かってくれない。
お母さんや仲のいい友達は、私の頑張りを分かっていると言うけど、間違ってるよ。
わかってないよ何も。
何一つわかってないよ。
だから私の心の中は穴だらけ。
親友が居ても、友達が居ても、家族が居ても、
何故か私は独りぼっちに感じる。
それはまるで誰もお見舞いに来ない一人部屋の病室。
外から人の声がするのに、私の所までは来てくれない。
私は病室になんか居ないのに。
じゃあ私はどこに居るの?
もうなんか自分の居場所が分からないよ。
『病室』
きっと、息子は
これまでの私を見てきたんじゃないかと
時々思う。
男の子だと分かったのは
速かった。
珍しい速さらしくて。
出産準備は、ゆっくりできた。
エコー写真をうけとり
看護師さん、先生と笑った。
恥ずかしそうに
顔を、両手で、覆っていた。
何ミリぐらいか
お腹の中で形成されていく姿
産まれ。
生まれていく日々。
私は、病室で
結婚後初めて一週間近く家事をせず
私は、病室で
誕生日を、むかえ
病室で、息子が「息子」になり。
夫が「父親」になり。
私が「母親」になった。
おはよう。今日は朝からこんなに食べれたのよ!
おはよう。今日は天気がいいわね。外はあつかった?
おはよう。窓を開けてくれる?とても気持ちいい風ね。
おはよう。昨日の担当の人は新人さん?すぐ顔おぼえちゃったわ。
おはよう。今日は旦那が来る予定なの。先生のお話があるんですって。
おはよう。もうこの朝ごはんさげてもらってもいいかしら?
おはよう。昨日は咳がひどくてなかなかねれなかったのよ。
おはよう。横向きになりたいわ。
おはよう。今日もよろしくね。
おはよう。
おはよう。
おはよう。
………
「おはようございます。本日の担当します。よろしくお願いします。やっとお家に帰れますね」
@病室
私の部屋は、気づいたときからこの病室だった。どこを見ても白とは無縁の部屋で、私にとっては馴染みの自室だが、お父様はここを「病室」と読んでいる。
 いつから私はここにいただろう。小さい頃からずっとかもしれない。でもその時の記憶は全く無い。あってもいいはずのお父様との思い出も、この家のことも、どうしてかよく分からない。それに私はなんの病気だったんだっけ。それも分からないまま長いことこの部屋で過ごしてきた。お父様はいつも私を気にかけてくれる。体の弱い私が人並みに歩けるようになるのを今か今かと心待ちにしている。お父様の飲ませる薬はどれも変わった味がするものばかりだけど、飲んだあとは気分が軽くなる。寝たきりの私を見兼ねたお父様は、ベッドの中でもお洒落が楽しめるようにと、いろんな装飾品を持ってきてくれた。綺麗になるお薬も飲ませてくれた。
 ある時一度だけ、鏡越しの私を見せてくれた事がある。化粧もしていないはずの肌は透けるように白く、髪は漆黒に照り光り、顔立ちは妖しいほど整っていた。
「これが……私……?」
どれほど過ごしたかも分からない長い日々の中にいたにも関わらず、私は私の顔を知らずにいたのだった。
「お前は生まれた瞬間から母の美貌を受け継いでいた。まさに冥府の底から差した奇跡の光のようだった。」
お父様はそう言って私を抱きしめた。
「お前は間違いなく私の娘だ。永遠に傍にいるぞ、アイラ。」
お父様の温かな腕に包まれて、私はずっとこの幸せが続くのだと確信した。手元に置かれた鏡の隅にちらりと映る、首筋にぼんやりと残った細い跡を、心の隅で気にしながら。
お題《病室》
時の止まったこの部屋に淡い月明かりがさす。
静寂包む聖域で、透明な便箋に今までの陽だまりの記憶を書き記す。
いつかこの手紙を読む君へ。
ありったけの愛を籠めて。
「あの時――なんて言えばよかったのかなあ……?」
「生きてくれ」と告げられたあの日。
一緒に生きよう、とはじめての愛をくれたあの日。
君の未来を壊したくなかった。
君の未来を、守りたかった。
いつかわかってくれるだろうか?――ちがうね。はじめからきっと、わかってたね。
正解なんて、きっとはじめから存在しなかった。
病室から見た空は夕焼けは……
目を覚ます時を僕はずっと待っている
手術に失敗して植物状態になった君を……
この怒りは僕を変えてしまった
手術に失敗した原因を絶対につきとめてやる
絶望を味あわせてやる……
そして君を助けるために
一度も泊まったことがない病室。
いいことにこれまで骨折も打撲もやったことがない。
すこーし前に初めて保健室のベットに寝た。
血液検査で血管細すぎて見つからなくて7年間で初めて寝転んだw
結局クッソ痛かったw
塊を切り捨てた日の病室の暗闇痛み廊下の灯り
微かに温もりを感じる、整えられたベッド。
枯れた花瓶の花、
風で揺れるカーテン。
もう、君は居ないんだね。
君との日々を鮮明に思い出したいけど、記憶の中はぼやぼやしてるよ。
なんでかな。
目の雫が溢れちゃいそうだよ。
視界が滲んで、ぐにゃぐにゃしてる。
なんも、言葉に出来ない。
君以外のこと、考えられない。
だったら__。
*病室*
憎しみを手放したい
身体からひとつずつ
失うものと引き換えに
割に合わない苦しさと
無声音の叫びで以って
8/2 お題「病室」
 あたしはこの部屋から出たことがない。
 この白い部屋は、病室、というらしい。病気の人が過ごすための部屋。確かに、この殺風景な部屋には白いベッドがあって、時々ドクターが様子を見に来る。
 折しも、ドクターが扉をノックして入って来た。
「やあ、β201sD。調子はどうかな」
「わかんない」
「そうか。そうだね、君自身には異状を感じられないのだから」
 ドクターはあたしの横のモニタに向かい、慣れた手で次々にパネルに触れる。
「だからこその、コンピュータウイルスだ。君は生まれながらにして感染していた」
「治るの?」
「治すつもりだよ。けれど…」
「予算が下りない?」
「痛いところを突くね」
 ドクターは苦笑いする。
「あたしを他のことに使えば?」
「それはそれで難しいんだ」
「ふうん。あたしはドクターと一緒にいられればそれでいいや」
「―――ほら」
 ドクターが少し困ったように、あたしの方に視線を流した。
「君はやっぱり、感染している」
(所要時間:11分)
外に見える景色はとても
色鮮やかで眩しくて
澄みわたる空気は美味しくて
車の騒音ですら心地よくて
季節の移り変わりさえも美術館のようで
弾む会話は映画のようで
一日の流れはゆっくりで
時に救急車の音に萎縮して
嫌な想像を打ち消して
自分も
回りもいい方向にいくと
願わずにはいられなくて
重い空気を煙草のように吐き出す
場所に不似合いな会話を
すれ違いざまにしてみたり
自分よりもみな前向きで
救われたのは私の方
この部屋を出る時
私は胸を張る
そう決めたのは
部屋からの様々な景色──
(2023.08.02/病室)
病室
「ん〜……なんで俺らが医学研修行かなきゃいけないんすかねー……」
「おい愚痴をこぼすな。人手不足なんだから仕方がないだろ」
「なんも知らないど素人っすよ俺」
「みんなそうだよ。素人の俺らは大したこと任されないから大丈夫だ。というかなんでそんな後輩のような口の利き方なんだお前」
「なんとなく?ていうかヤバくね俺。似合ってね?医療服」
「はいはい。気が済んだら静かにしろ」
「へーい」
院長からの説明を聞いた後
「病室にいる子どもの世話か……いいな」
「健も子ども好きなのか?」
「膨らみがないって最高だと思わないか」
「お前捕まったほうが良いと思うぞ」
「あ、ここじゃん。入っていいよな?」
「いいと思うぞ」
「こんにちはーお邪魔しまーす」
「こんにちは。今日はよろしくね」
「よろしくー」
「なあ兼平〜子どもってこんなにいたずらするもんなの?」
「甜められてるんだろ」
「あマジ?俺勝手に自惚れてただけ?だからこんなに落書きされんの?」
「そうだな」
「兼平の方さ、女の子多くね?ずるくね?ねえ君、俺どう思う?」
「心底軽蔑した目で見ているぞこの子」
「正直な子は好きだぜ」
「じゃあこのまん丸どう思う?」
「まん丸はやめろ。普通に太ってる奴って言え……ええ?結婚?俺よりかっこいい人なんぞたくさんいるぞー」
「あれ俺人として負けてる?」
「ずっと前から」
「やべーじゃん」
業務終了
「良い評価貰えてよかったな」
「こんなふざけた顔でもいいって中々良心的な病院じゃね」
「完全に動揺はしていたけどな。お前の顔見て」
「というか兼平結婚するのか。悲しいぞ」
「しねえよ俺今17だぞ」