『理想郷』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「なぁ、ユートピアって、どんな世界だと思う?」
ふと、お兄ちゃんが小説を書く手を止め、私にそう聞いた。
「うーん……私は、大切な人と、傍にいるだけでいいから、分からない」
ユートピア。またの名を理想郷。心も体も満たされるような世界、というような意味だったはず。
憧れの小説家にはなれず、床も壁もボロボロで、布団も糸がほつれていて、そんな家に住んでいる私は満たされていないように見えるかもしれない。
でも、私はお兄ちゃんのそばにいるだけで、心も体も満たされていた。
「お前らしい返答だな。参考にするよ」
そう言ったあと、お兄ちゃんは激しく咳をして、小説を書き始めた。
それから何年か経った後、お兄ちゃんは結核で死んでしまった。
私がすごしていたユートピアは、もう無い。
「おはよう」
貴方の声が静かに響く
月光みたいな、淡くて明るい、優しい声
私の理想をぎゅっと詰め込んだような人
あの日から追い続けてる
逞しい背中をずっと見てる
恋とか愛とかそんなんじゃない
神様みたいな、そういうの
嗚呼、朝がきた
「おはようございます」
親愛なる亡き人よ、
そんな理想郷をみた。
#理想郷
怒ることがない
みんな笑って過ごせる世の中
働けて、お金もあって、友達もたくさんいて、
家庭もあって、子供もいて、健康、
何不自由がないのが、理想郷?
それもいいけど、
喧嘩して、寂しい思いや
悲しいことがあるから、
楽しい出来事が、より楽しく思え、
嬉しく思えて、成長する
だから、
みんな頑張りすぎなんだよね。
理想郷
想像の中にしか存在しない
けれど
現実は想像をも越える
とも言う
ならばどこかにはある理想郷
たった一度の生では
たどり着けないとしても
理想郷
そんなもの、存在するのだろうか
存在するとしたら、どんなものだろうか
望むものは贅沢?
高級食材をふんだんに使ったご飯
箔押しのラベルがついた年代物のワイン
丁寧に意匠をこらされた調度品
そんなもの、三日で飽きてしまうかな
望むのは、自由と平和
みんなが笑って楽しく暮らせる世界
そんなこと、かなわないから
理想郷っていうのだろうね
全員が自分の個性を愛せる世界。
お互いを尊重し、暖かい言葉が飛び交う世界。
誰にも否定されずに、自分の好きや楽しいを追い続けられる世界。
#理想郷
理想郷
自分の願い、理想を具現化するから
理想郷と呼ばれる。
花が溢れ、動植物が幸せを噛み締める場所。
光が溢れ、
時はゆっくりと流れる。
流れる川の水の様に
自由の都である。
理想郷
それは一体なんだろうか
自分の望みが叶う場所?
自分の大切な人が幸せな所?
自分の命が枯れない所?
はたしてそれは理想郷なのだろうか
全てが上手くいった理想の世界は、はたして幸せなのだろうか。
そんな問いかけを虚空に投げかける
本来ならば、何かが返ってくる訳でもなく、自問自答を繰り返すのみ。
でも今は君がいる
これを見ている君がいる
この文字列を見ている君がいる
では質問をしよう
君の思う理想郷とは?
お題『理想郷』
沈黙が心地いい相手との空間
簡単なようでなかなか手に入らない
理想郷
今も理想郷にいるのかも知れないけれど
今からすると
昔のが理想郷だったりする
不思議だよね──
(2023.10.31/理想郷)
僕の理想郷は自由。
何者にも縛られず自由に羽ばたける。
自分だけの幸せを味わえる。
月に行ったら。
いや、せめて、誰もオレを知らないところへ行けたら。オレは、もう少し生きやすくなるんだろうか?
違うか。オレから記憶を消す方が早い。
誰にとっての【理想郷】なんだろう?
自分の?家族の?友達の?それとも他人?
自分にとっての【理想郷】だったらいいな。
だって、そこでならきっと…―――。
そんなことを考えながら、僕は静かに目を閉じた。
理想郷。
理想郷とは何か。
僕には解らないが、きっとそれはそれは綺麗な処かな、。
いつ尽きるか分からない
残りの人生を
黙って静かにやり過ごす
突き抜けることも
駆け出すこともせず
ただ淡々と誰かの為に
もうそれでいいと思う
もう疲れてしまった
愛されずとも
ここに居て影のように
ひっそりと過ごす
命尽きるまで
どこにある と探し続け
ここじゃない と求め続け
希望が渇ききり、絶望となった時
眼の前に 広がってくれ
理想郷
穏やかでゆっくりとした…
スローライフ
好きなもの、好きな人
だけに囲まれた
世界
二つをミックスした
理想郷
『理想郷』
暖かい日差しが、窓の向こうから差し込んでくる。
明かりをつけていない部屋の中を、優しく照らす。
部屋着の上からカーディガンを羽織る。
水色で少し大きめのカーディガン。暖かいから冬の必需品。
私のお気に入り。
キッチンでマグカップにホットチョコレートを入れる。
それを両手で包んで、ソファーに座る。
少しずつ飲みながら、ぼんやりと遠くの音に耳を澄ます。
大通りから少し離れているし、この辺りは人通りも少ないから、よく耳を澄ませないと車の音も人の話し声も聞こえない。
直で聞くと恐怖を感じる都会のざわめき達も、ここまで小さいと気にならなくなる。
ホットチョコレートを飲み干して、空になったマグカップをテーブルに置き、ぐいっと伸びをする。
さてと。大学へ行かなくては。
せっかく第1志望の大学に受かったのだ。都会の音が怖いなどとは言っていられない。
勢いをつけてソファーから立ち上がる。
私の一日、始まり。
水族館の魚が泳ぐ遊園地で結婚式を開きたい。
これが、私の理想郷。
【理想郷】
俺は夢を見ていた。
目を覚ませば、至るところに俺を好く女がいる。酒は湯水の如く湧いて出るし、嫌味ったらしい上司も俺に平伏している。
俺はその国の絶対的な王者だった。何をしても許されるし、俺が言ったことがその国の秩序になるのだ。
以前まで俺が暮らしていた国は、本当にどうしようもない場所だった。俺を馬鹿にする奴らばかりの、腐りきった国。
頭ごなしに俺を否定する、人格が破綻した上司。俺の気持ちをちっとも理解しようとしない、口だけでかい女。少し社会に出るのが遅れただけで、そのことをグチグチと言い続ける毒親。
あいつら全員腐ってやがる。俺は常日頃からそう思っていた。
だから、全員手に掛けた。俺が新しい国へ行く前に、せめてもの配慮で全員あの世に送ってやった。
あいつら、今頃閻魔様の御前で泣き喚いているに違いない。
そう思うと、今までの鬱憤も晴れるようだった。死ぬ間際にも関わらず笑みが止まらない。
俺は新しい国へ行くための切符を思い切り蹴り上げる。椅子がガコンッと倒れ、俺は宙吊りになった。
意識が遠のいていく。待っていてくれ、俺の理想郷。
目を覚ますと、はじめに飛び込んできたのは死体の山だった。腐乱臭と血の臭いが充満している。
あちこちから想像を絶するほどの悲鳴と怒号が耳へ流れ込んでくる。
「俺じゃない、俺はやってない!」
「どうしてこんな酷いことするの、私じゃないんだって!」
「あいつが悪いんだ! 俺はこんなところにいるはずじゃないんだ!」
「さて、君の前科は?」
いつの間にか、目の前には巨大な男が座っていた。口ひげを蓄えた威厳のある赤鬼。そいつが、私を見下してにやりと嫌な笑みを浮かべていた。