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『理想郷』
 暖かい日差しが、窓の向こうから差し込んでくる。
 明かりをつけていない部屋の中を、優しく照らす。

 部屋着の上からカーディガンを羽織る。
 水色で少し大きめのカーディガン。暖かいから冬の必需品。
 私のお気に入り。

 キッチンでマグカップにホットチョコレートを入れる。
 それを両手で包んで、ソファーに座る。
 少しずつ飲みながら、ぼんやりと遠くの音に耳を澄ます。
 
 大通りから少し離れているし、この辺りは人通りも少ないから、よく耳を澄ませないと車の音も人の話し声も聞こえない。
 直で聞くと恐怖を感じる都会のざわめき達も、ここまで小さいと気にならなくなる。

 ホットチョコレートを飲み干して、空になったマグカップをテーブルに置き、ぐいっと伸びをする。

 さてと。大学へ行かなくては。
 せっかく第1志望の大学に受かったのだ。都会の音が怖いなどとは言っていられない。

 勢いをつけてソファーから立ち上がる。
 私の一日、始まり。

10/31/2023, 10:26:14 AM