星空』の作文集

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星空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

7/7/2023, 1:33:53 AM

人の子ら、命潰えて星になる。悲しみに、寂しさに、幸福に、満足に、それぞれの色で瞬きながら、地上の幸いを夢に見る。
 今夜、満天の星空。いずれ私もゆく場所だから、あなたを弔い、祈りを捧ぐ。
 星よ、星よ、あまねく命の輝きよ。歴史の河に散りばめられた、猛き血潮の願いの束よ。我ら汝を継ぐ者ぞ。見守り給えよ、安らかに。


【星空】

7/6/2023, 3:31:44 PM

小学三年の頃から毎年校外学習はプラネタリウムだった。薄暗い空間、かすかな光、落ち着いた声。いつの間にか眠くなる密室は級友の半分以上が眠りこけていた。みんなでバスに乗ってお菓子を食べることがこの工程のピークだったのかもしれない。
私は毎回眠りに落ちそうな意識を必死に繋ぎ止めて、人工的に瞬く星を見上げていた。星に興味があったわけでも、真面目だったわけでもない。プラネタリウムの終わる直前、明け方の空には流れ星が走る。その一筋の星に、私は願いをかけていたのだ。
六年生となればすっかり覚えた南の空の隅を凝視して、一瞬で消える星に心の中で願いを唱える。プラネタリウムの映像が流れるたびに毎回同じ時間同じ場所に生まれて消えていく星に願いを叶える力などあるのかと普通は思うだろう。私だって最初は密やかな気まぐれを起こしただけだった。けれどもクリスマスでなにも言わずに欲しいおもちゃがもらえたときにはほんの少しだけ信じて、翌年には好きな人と同じクラスになれますように、隣の席になりますようになんて願いも叶った。
校外学習は六年で最後だ。とっておきの願いを南の空にかける。
子供じみた願いを忘れた頃、あれが叶っていたのだとわたかったのは、三年生になった子供がプラネタリウムの話を楽しそうに教えてくれたからだ。
南の空に流れ星が見えたか聞いてみよう。

7/6/2023, 10:46:23 AM

星空

まだまだ肌寒いある三月の事、一度田舎のお庭で一晩中星空を見上げていた事がある。たぶんに漏れず、ここ最近感じている抗い難い孤独感と無力感に襲われていた日であったのを覚えている。

暗闇から庭の大きな岩に腰掛けじっと観察していると、不思議なもので今までにない感覚若しくは錯覚に陥るのだ。まるで自分がその視界いっぱいに広がる星空の一部分に属しているかの様なえも言われぬ感覚。次に思ったのは、自分の頭にある悩み事がとてもちっぽけなものの様に感じ、少し心にのしかかる様な重力が軽減した気がした事。
と同時にこの軽減された感覚も長くは続いてはくれないであろう事も悟っていたのをはっきり覚えている。

願わくば、今夜の星空が何処か誰かの苦しみを少しでも拭ってくれていると良いと思う。私の想い人にもいつもより少し暖かなひと時が訪れるそんな夜となります様に。

7/6/2023, 10:15:52 AM

満点の星空を仰いだ彼女の、その珍しい角度からの顔を眺めていた。そんなに顎を上げているところはみたことがなかったから、彼女が景色に夢中なのをいいことに存分に見つめておくことにする。彼女の瞳は小さくてまばゆい月光のかけらをひとつ宿していた。艷やかな黒髪の房のひとつが、姿勢が変わってからワンテンポずれてゆっくりと曲がり、やがてふいにつるりと肩から滑り落ちて背中にかかった。きっと触るととてもしなやかで柔らかいのだろう。「ねえ、すごいね、こんなきれいな星空はじめて見たかも。」「……そうだね。」

7/6/2023, 9:54:48 AM

好きな人と話しながら見た星空。
 なんでも無い空だった。
 でも、とても綺麗で、
 もう、あんな感情にはならない。
 だけど夏の星空を眺めるとたまに思い出す。

7/6/2023, 9:53:19 AM

59星空



僕の彼女のナナヨちゃんは、とにかくすごく、だらしがない。
部屋は汚いし高校は中退してるしブラジャーは基本的に洗濯しないし、すぐ浮気をする。
中学の先輩とか、悩みを聞いてくれたバイト先の同僚とかと、至極あっさり寝る。
僕はナナヨちゃんの浮気の気配を感じるとすぐに止めに行く。
だいたいは普通の浮気だが、けっこうな確率でマルチとかAVデビューとか反社の愛人契約とか、そういうものが混じっているので、止めないわけにはいかないのだ。
僕はただの大学生で女子禁制の寮に住んでいて、だからナナヨちゃんを守るのもなかなか難しいけれど。
それでもこれはやばいぞという気配を感じたら、講義もなにもすっとばして、ナナヨちゃんのもとに駆け付ける。
今日、ナナヨちゃんはバニーガールになっていた。表向きはただのバニーがいる店だけど、裏向きにはいろいろとあるかなりヤバい店らしい。
僕は店に突っ込んでいって、バニーのナナヨちゃんを助け出してきた。
刃物を振り回して、追っかけてきたら殺すぞと怒鳴って、バニーのナナヨちゃんの腕をひいて店を飛び出してきた。自分で言うのもなんだけど、かなりぷっつんとキレていた。
僕のしたことはりっぱな脅迫であり、威力業務妨害だ。これではどちらが反社か分からない。だけど。
「ごめんね。私、バカだから。ごめんね」
僕に手を引かれて星空の下を歩きながらナナヨちゃんはずっと泣いている。バニーガールの姿で泣いている。そして夜空の星はきれいだ。
ナナヨちゃんときらきらした星。今は世界にそれだけあればいいと思う。
「もう本当に、だらしがないよ。ナナヨちゃんは」
僕はそう呟いて、あったかい手をにぎったまま歩く。だらしのないナナヨちゃんは最高にかわいい。そして僕にとって最高に大切だ。ナイフで人を脅すくらい、ナナヨちゃんのためならなんてことない。空で星が光っていて、ナナヨちゃんが隣にいる。それ以上何を望むだろう。
「星、きれいだね」とナナヨちゃんが言った。そうだね、と僕は答える。
「わたし子供のころ、月に行ってみたかった」
 そっか、とだけ、僕は答える。ナナヨちゃんはすぐにバニーになっちゃうダメ女だけど、いくらウサ耳が似合うからって、そうそう簡単に月には帰れない。そういうものだ。だからとりあえずただ、夜道を歩いていた。

7/6/2023, 9:50:53 AM

『星空』


瞬く生命の煌めきよ
強く強く火を焚べよ

鼓動の内に胎動する世界

疾駆する矢のように
誰に知られずとも灼き尽くせ

7/6/2023, 9:44:40 AM

星空
空を見上げると何時も考える
君と見た夏の大三角
君と見たオリオン座

君と見た星は、とても輝いていた

7/6/2023, 9:32:03 AM

今日のテーマ
《星空》





日本列島の多くの地域では、七夕は梅雨の真っ只中にある。
それゆえに雨になってしまう年も少なくない。

この時期になると、ショッピングモールの入口付近には笹が飾られ、短冊用の紙と記入するためのテーブルが設置される。
真面目な顔で短冊に願いごとを書きながら、少女が傍らの少年に「たなばたの日、はれるかな」と話しかけた。
少年は少女よりいくつか年嵩で、小学校の中学年くらいだろうか。
優しく少女の頭を撫でて「どうかなあ」と言いながら、もう片方の手で書き終えた自分の短冊を弄んでいる。
面倒見のいいお兄ちゃんとその妹といった雰囲気だ。

わたしは笹に飾りを施しながら、思わずほっこりとした気分でその様子を横目で眺める。
隣では同僚が別の笹の飾りつけをしながら同じように相好を崩していた。

「天気予報だと雨は降らないみたいだけど」
「でもこの時期だから夕立の可能性もあるしなあ」

こっそりそんな会話を交わしつつ、折紙で作られた輪っかをつなぎ合わせたものや吹き流し、網飾りなどを手際良く括りつけていく。
他にも、一箇所にだけ偏ってしまっている短冊を別の位置に移してバランスを調整したりなどする。
これは手が空いてる職員が気がついた時に行う業務の一環で、決してサボりではない。

「そういえば、私も幼稚園くらいの頃、七夕が天気になるか毎年心配してたなあ」
「うちも妹がそうだった。雨が降ると、織姫と彦星が会えなくなるって、自分のことみたいに泣いてた」
「優しい妹さんだったんだね。それで『お兄ちゃん』はどうしたの?」
「あんまり泣くから、雲の上は晴れてるから天の川は氾濫しないし大丈夫だって言って慰めた」
「やっさしいー」

微笑ましいエピソードにますますほっこりする。
優しいお兄ちゃんを持って、妹さんは幸せだなあと、少しばかり羨ましくもある。
うちにも兄がいるけど、そんな気遣いは皆無だった。
何なら「天気予報で1日雨だって言ってたぞ」って追い打ちをかけてくるような兄だった。

「でも本来の七夕って旧暦だから、8月半ばくらいなんだよな。この時期じゃどっちにしろ天の川なんか見えないだろ」
「ていうか、この辺りだと明るすぎてどっちにしろ見えないけどね」
「たしかに」

この時期の見頃なのは何だったっけ。
胸を張って趣味だというほど熱心ではないけど、たまに星空カレンダーなどをチェックする程度には星を眺めるのが好きだ。
流星群の極大の日は夜更かししてベランダで空を眺めるし、ベランダで見えない方角の時はちょっと足を伸ばして見晴らしの良い場所まで足を運ぶくらいはする。

雑談しながらそんなことを考えていると、さっきの少年少女が短冊を持ってこちらにやってきた。
近くで見ると面差しがよく似ているからやっぱり兄と妹なんだろう。
自分で吊したがる妹を抱っこしてあげてるのが微笑ましい。
妹が吊し終わったのを確認して彼女を抱き下ろした少年は、高い位置に飾りを付けている同僚に声をかけた。

「すみません。これ、高いところに付けたいんですけど、お願いしてもいいですか?」
「はい、いいですよ」

営業スマイルでにっこり笑いながら請け合った彼は、飾り付けを中断し、渡された短冊を少年の目の前で高い位置に吊して上げた。
いいなー、ずるーい、と言いながらお兄ちゃんの手をぶんぶん揺する妹に、少年はしょうがないなって顔でその頭を雑に撫でている。
ちゃんと吊されたのを確認した少年は礼儀正しく「ありがとうございました!」と頭を下げて、まだぶーぶー文句を言っている妹と共に去って行く。
彼らの向かった先では母親らしい女性が同年代の女性と立ち話をしていた。
お母さんがママ友と話し込んでいる間に暇潰しを兼ねて書きに来たのか、あるいは子供達が書いているのを待っている間に母親が知り合いと会って話し始めたのか。

「あの子、本当に『いいお兄ちゃん』だな」

見るともなしに可愛い兄妹を眺めていたら、同僚がくすくす笑いながら小さな声でそんなことを言う。
訊ねるように視線を向けると、彼はちょいちょいと手招きをして吊したばかりの短冊を指差した。
高い位置と言っても笹は彼の身長と同じ程度。その目線の高さ辺りに吊された短冊は見上げれば余裕で読むことができる。
そこにあった願いごとに、わたしは思わず大きく頷きながら彼の言葉に同意した。

『七夕の日、晴れますように』

きっとあの女の子は、さっきだけでなく、何度も何度もお兄ちゃんに「はれるかな」と言っていたのだろう。
そしてあのお兄ちゃんは、そんな妹の願いが叶うようにと、短冊に願いを込めたに違いない。
わざわざ高い位置に吊してほしいと言ったのも、その方が神様に願いが届きやすいと思ったのかもしれない。
妹思いの優しいお兄ちゃんにますますほっこりしながら何気なく女の子が吊した短冊に視線を転じると、そこに書かれていた願いごとの可愛さに思わず悶絶しそうになってしまった。
接客業の人間として崩れた顔を晒すわけにも奇声を上げるわけにもいかないから、弛みそうになる口元を必死で引き締め、無言のまま同僚の袖を引いて短冊を指差す。
彼もまたそれを見て、口元を手で覆いながら眼差しを優しく和ませた。

『おにいちゃんのおねがいが かないますように』


その日、仕事を終えて帰ろうとしたわたしは、職員用休憩室の窓のカーテンレールにてるてる坊主が吊されてるのを発見した。
誰の仕業かは確認するまでもない。
わたしもまた自分のハンカチで即席のてるてる坊主を作ると、そっとその隣にそれを吊した。
あの可愛らしい兄妹の願いが叶うようにと願いを込めて。

7/6/2023, 9:25:48 AM

夜空には無数の悲しい神話が閉じ込められている。
太陽が昇ると、隠れるようにひっそり消えていってしまうのも物悲しい。

星は願いを叶えるというのに、星になったものたちの涙や想いや苦しみは、いったい何処にいってしまったんだろう。

それがわからないのが切なくて、
幼い頃、夜空で燃えつき星になった、ヨダカの光を探した。

マッチ売りの少女は星になったのだと思っていたから、彼女の面影も探した。

星がながれれば、今、この世界のどこかで
誰かが死んだのだと思った。

ヨダカの星も、マッチ売りの少女も、広い夜空のどこで瞬いているのか結局わからなかったけれど、

美しいものが何かを忘れかけるような日々の終りに
ふっと顔をあげた先の星空をみて
私はいつも、懐かしい歌を思い出す。


「夜空を旅する星たちを 小さな指で数えてごらん
あなたが生まれた日に 星がまたひとつふえた」

7/6/2023, 9:19:55 AM

始まった「物語」 ※呪術廻戦

登場人物
☆浜島紗菜
→呪術高専2年生、

その他原作通り

1章『はじまり』

悟「今日は新しい2年生を紹介しま〜す!」

真希「早くしろよ」

パンダ「まぁまぁ真希落ち着けって」

棘「しゃけ(そうだよ)」

悟「入ってきて〜」

紗菜「…はい」

真希「お前名前は?」

紗菜「浜島紗菜です。」

真希「浜島?!」

浜島紗菜は御三家をまとめるトップの家系

7/6/2023, 9:08:52 AM

私はいつもと同じ場所でベンチに座り、星を眺めていた。
次の日もまた次のにも、、、、、、、
今日は、珍しく、先客が来ていた。それは、僕の友達のタツヤくんだ。
タツヤは、私を見て、驚いていた。
私は、その顔を無視して、隣に座った。
沈黙が続き、耐えられなくなり、その場を立ち去ろうとしたとき、
手を捕まれた。

7/6/2023, 8:33:19 AM

〖星空〗

星空を眺めるのが好きだった祖父は私が学生時代

夏休みや冬休みなどの長期休みになると毎年のようにお気に入りの展望台へ私を連れ出し星空を眺めていた。

私が、幼少期の頃「あの空のキラキラしたのってなーに?」と言う質問に

祖父は、「あれはお空に穴があってそこから雨が出てくるんだよ」

などと今となっては馬鹿話のような事を

「そーなんだー!」と驚いた私の反応が面白かったらしく、毎年のように、それっぽい嘘を私に教えては驚いた反応見てご満悦の顔をしていたのを覚えている。

それから数年が経ち、社会人になって地元を離れていた私に父親から電話があった。

「祖父が、体調を崩し入院した」

私はふと、嫌な予感を感じた。

今までこれといった病気もしていなかった元気の塊のような祖父が入院した?

父親は「見舞いに来れるなら来たらいい」とだけ伝え、祖父の容態などは詳しくは話さなかった。

私は、その対応も何か引っかかるものがあり、その日の週末に祖父の入院している病院を尋ねた。

病室へ入ると祖父は居らず、両親に待合室へ連れていかれた、そして祖父は癌である事を告げられた。

薄々、何かあるのではとは思っていたが、私にとって衝撃的な事に変わりなかった。父親の話によると本人(祖父)の意向で延命治療はしないと言う話だった。

病室へ戻ると祖父が部屋のベッドに戻っていた

部屋に入るなり祖父は私を見つけ

「おお!帰ってきたのか!」と自分家にいるような大声で私に言い、思わず家族全員でシ━━━ッd((ˊ皿ˋ ;)とやってしまった、それがまた面白かったらしく高笑いをしている祖父を見て、ホントに病気してんのかこのじーさん...と思ったのは忘れもしない。

だが、そんな笑い話のような出来事も長くは続かず、それから1ヶ月後、祖父は癌で亡くなった。

それからもう何年も経つ今年、姪っ子に星が見たいと夜、外に連れ出された、たまたま天気にも恵まれ満点の星空が見える。

「お空キラキラしてて綺麗だねあのキラキラしてるのなんだか分かる?」

「お星様!」

「えー、違うよあれはお空に穴があいていて雨がでてくるところだよ?」

姪っ子は眉間にシワをよせ(  ・᷄-・᷅ )

「ママー、おんちゃん変なこと言ってるよー」

心の声(じーちゃん、ひ孫には通じなかったよ)[END]

7/6/2023, 8:29:52 AM

ひさびさに、ももを冷やして時間をかけてむいて、あまい匂いをした指を口に放り込んで、舌でごろっとした幸せをたしかめてからじゅっと噛みしめてみる、ひとは季節をたべるために生きていると勝手に思う

7/6/2023, 8:29:07 AM

晴れの日の夜でも都会のこの街で星空と言えるほどの
星を見るのは難しい。

そんな小さく輝く星を探しながら歩く夜が
私は好きだなと思う。

でもね、私の1歩先を歩く君の背中を
みることはもっと好きなんだよ。

7/6/2023, 8:27:44 AM

【星空】

やることがなくて退屈だな、と思っていた時。
ふと夜空を見上げると、無数の星が見えた。
たとえば、眠れなくて羊を一匹、二匹と数えるように。
暗い空に輝く光の粒を一つ、一つ数えるのは忙しくて、あぁ、今日は充実していたな、と思いながら眠った。

そんな思い出がある。

7/6/2023, 8:23:12 AM

ふわりふわりと霞のような雲が漂っている、そっと手を伸ばせば届いてしまいそうだ。
月明りのせいだろうか、漆黒に塗り潰されているはずの空はグラデーションのように少しずつ趣が違う。

海の地平線を見つめていると地球は丸いことを実感するが、いま私が見上げているこの空も半円球であるということがわかる。きっと都会では知ることはなかっただろう、この景色。

空は落ちてくるのではないかと思うほど近くにあり、どこまでも果てしなく、そして数多に輝く光の粒達は、綺羅びやかに瞬いている。

この光達はいつから地球を見守っているのだろうか?

遥か先人達も見た星はあるのだろうか?

たしか金星あたりなら……

そんなどうでも良いことを、つらつらと考えながら、また歩き出す。
辺りから、芳しくも美味しそうな献立が浮かぶ香りが漂ってい来る。

幸せな日常を噛み締めながら、家路へ向かう足取りは自然と軽くなっていく。



『 星空 』

7/6/2023, 8:10:25 AM

「心臓蘇生は希望されますか」
「いいえ…」
「いいんですか?」
「ええ、もういいんです。今のままのように寝たきりなら、生き延びても母も私も辛いだけだわ」
子供の頃の私は、母の言っていることがてんでわからなかった。入院している祖母に何かあったとき、生き延びられる方法を、母は諦めたのだ。祖母は死んでもいいということか?自分の母親なのに。そう思っていた。

人は死んだら、お星様になる。
そうして、大切な人をいつまでも見守っている…。
こんな話を、きっと一度は聞いたはずだ。

今になって、やっと分かった。
あのとき、母が祖母を無理矢理この世に引き留めなかった理由。
ベットの上なんかじゃなくて、お空で、昔のように生き生きと、私たちを見守ってて欲しかったんだね。
分かったよ、私。もうあの時の子供じゃないよ。
だから戻ってきてよ。
綺麗な星空は、あんなにも遠い。
我儘でごめん。でもね、私はお母さんに、隣にいて欲しかったんだよ。
「星空」

7/6/2023, 7:56:29 AM

三題噺「星空、スマートフォン、サイコロ」

「今日はもうお開きだな」
 天体写真家は雲には勝てない。誰だって知っている。

 星空の美しさを追い求めてこの業界に入ったが、理想の星空というものを撮ったことがなかった。撮れるのはつまらない星空ばかり。
 私はため息を付きながら山の上に作られた観測所から降り、駐車場に戻ろうとした。

「――ん」
 スマホが車の前に落ちていた。私のものではない。戻って観測所の受付にでも預けるかと思った時、画面に指が触れ、待ち受けが表示される。

「――――――!」
 理想の星空だった。目が離せない――――

「はぁっ! はぁっ!」
 呼吸を忘れていた。脳が混乱している。いけないと思いつつもスマホを調べる。電話帳には何も記載もなくチャットアプリすら入っていない。ただ写真フォルダには2枚画像があった。

「星空の写真とサイコロの写真……」
 若干の気味の悪さを覚えつつもサイコロの画像をタップする。
「……サイコロの目が変わってるような」
 サムネイルをタップした時に5だったものが3に変わってる気がする。
「あれ」
 画像をスワイプすると星空の画像が写っていた。しかし先程の待受の画像ではない。理想的な星空ではない。間違えるはずがない。再びスワイプする。サイコロが1になっていた。GIFファイルかなと思った時、ふと月明かりが照らし出された。晴れたらしい、上を見上げる。
 ――知らない空が写っていた。星座も月の位置も何もかもぐちゃぐちゃな空。月が落ちてきそうなほど近い。

 逃げなきゃ―― どこへ―― 半狂乱になりながら車に乗り込みエンジンを掛ける。とにかく月から逃げたかった。

 スマホが鳴る。私のものではない。助手席に放り出されたスマホが鳴っていた。何かに突き動かされるように手に取る。
「サイコロを振って!」
 頭が働かない。
「急いでっ!」
 ようやく先程の画像のことだと気付いた。震える指先でサイコロの画像をタップして、スマホを外に放り投げた。そのまま逃げるように車を走らせた。

 しばらくしていつもの空だとようやく気付いた。あれは何だったのか、夢でも見ていたのか。分からない。ただいつものつまらない星空が少し美しく見えた。

 [星空]

7/6/2023, 7:42:39 AM

星空のもとで、私たちはそっと寄り添った。左頬に感じるぬくもりが、私の心をほっとさせる。

じっと見つめる視線の先で、星々は少しずつ南に動いていく。夜が更けて、空気が冷んやりと身体を包みこむのを感じた頃、二人はようやく身体を引き離した。

これからの未来を想像すると、今の平穏さが奇跡のように思える。

「明日…。」

私は気持ちを引き締めながらつぶやいた。

「いよいよだね。」

答える彼の横顔は、暗がりの中にシルエットとなって浮かんでいる。この横顔がたまらなく好きだ、と思いながら私は目を逸らした。今は時間が惜しい。

「夜が明けたら出発だね。」

私は手近な荷物をまとめた。失敗は許されないのだ。

テントの中の小物を隅に押しやり、寝袋に入って眼を閉じる。まださっきのキスの余韻で、心なしか鼓動が早い。

そっと横を見ると、彼はさっさと眠る構えのようで、アイマスクを付けているのが薄暗がりの中で見えた。アイマスク?!

(なんでやねん…。)

私は心の中で突っ込みを入れた。

もう少しロマンチックな気分でいたかったが、アイマスクで防御されたら、すごすごと引き下がるしかない。

【星空】

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