冷瑞葵

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星空

「はーい、今日は星空を作る授業です! 先生の空を真似して自由に作ってみてね!」
 20人ほどの小さな神たちが集まった教室。まだ幼い彼らは目を輝かせながら空を紺や黒に塗り、白い点を散らす。
 特別幼く好奇心の強い一人の神は、迷わすピンクと水色を選んで全面に塗りたくった。見回りをしていた先生が立ち止まり彼の作品を覗き込む。子供の神は続いて原色の赤や青でスパッタリングして星を描いていく。先生は慌てて呼び止めた。

「ねぇ、星空って、そんな色してるかな? 星空はね、暗い色なの。それに星は確かに近くで見ればいろいろな色があるけど、遠くから見ればほとんど白にしか見えないの。だからね、その色だと星空じゃなくなっちゃうよ」
 子供は驚いて先生の顔を見た。自由に作っていいって言ったのに。そう言いたいけど言えなくて、子供は黒い絵の具で空を塗りつぶした。涙が空に落ちてピンクと水色が滲む。白でスパッタリングをすると先生は手を叩いて喜んだ。
「すごい! きれいな星空になりましたね!」

 ピンクと水色の滲んだ幻想的な星空には最優秀賞の札が掛けられた。甲高く褒め称える声の中で、子供の心には唯の一つの光も見えない闇夜のような感情が渦巻いた。

7/6/2024, 9:34:10 AM