別に文句を言うつもりもないが、地面の感触が気になって眠れなかった。慣れたはずだがこんな日もある。諦めてテントから出ると、気づいた連れが顔を上げた。
少し距離を空けて座る。
自分が夜起きるのは珍しくないが、何をしてるか尋ねると頭上を示された。
いつもの夜空が広がってるだけなので首を傾ぐと、肩をすくめられた。なんだというのか。
ロマンがないだとかなんとか言われたが、夜空をロマンとは。星か月か、そのあたりだろうか。そちらこそずいぶん感傷的なものだ。
口には出さず、ふと昔、相棒に教えられたことがあったなと思い出した。
星は、道標になるという。
呟きを聞き咎められて、話題もないので聞いた話をそのまま伝える。
海では陸地も何も見えない夜には星を道標にするらしい。それに凪いだ夜に限るが、海が鏡面になりそれこそ見渡す限り星の海、だったか。
簡単に話すと、瞳が空を写したように輝いている。いつか海に出ようと言い出す。
では覚えないといけないなと返すと、自分が覚えておけばいいと、星座についての話をせがまれた。
自分が知っている有名な星座をひとつ、ふたつ、説明する。物語はうろ覚えだが、もう心は海に夢中らしい。
共にいることを、信じて疑わない様子に小さく息をついた。
7/6/2024, 9:23:07 AM