『放課後』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
─────まもなく電車が参ります。黄色い線の内側までお下がりください。
「っせー、言われなくても毎日聞いてるんだよ」
HRのあと、下木さんは口が悪いと先生に言われたばかりのマヤの口がそう文句を吐く。駅のホームには秋の西日が差し込み、風は冷たいけど肌は太陽の光にあたるとポカポカしてくる。
「ねぇフュージョンしようか」
「は?」と笑いつつフュージョンするという言葉自体にときめく。マヤはニヤニヤ笑いながら私が立つのを待っていて、仕方ないなと私もニヤニヤしながらマヤの横に並んだ。
「フュージョンってドラゴンボールのあれだよね?」
「いくよ、フュージョン!」
ジョン!のところで両手をどこかを指さすときの形にして右手を頭の上、左手を腰の辺りで私に向け固定したマヤの素早さに対応できず、ポカンとしていると「おい動けよやる気あんのかよ」と笑われ、じゃあもう一回ね?せーの、フュージョン!と2回目は私も同じように出来たけど今度は指先を合わせるんだよと文句を言われ、んじゃあもう一回するかと3回目にしてようやくフュージョンする。
できたできた!とはしゃぐマヤを、近くにいた隣の高校の男の子たちがちらちら見る。そのうちの一人と目があい、「動画撮ってくれない?」と頼む。スマホを動画撮影に設定して渡す。
「いーっすか?」
「はーい」
「はいチーズ」
「チーズは写真じゃない?」
「あー」
「あーじゃねぇよ」
男の子の後ろにいた他の子が「こえー」と笑い、私とマヤも笑う。
「じゃあ撮りまーす」
男の子はやっぱり「はいチーズ」と言った。吹き出したまま、マヤとフュージョンする。ビックリするくらい指先がピタリとくっついて、マヤと2人でテンションがあがりすぐに男の子に駆け寄った。
西日が眩しい。強い光が駅のホームに鋭く差し込むなか、私とマヤの影も、男の子たちの影も濃くて、だけどよく動き、跳ねていた。
title 放課後
放課後
夕方、駅へと向かう高校生がお互いの顔を見て吹き出した。肩まで叩き合いながら大きな声で笑っている。
いいな。放課後は学生だけの特権だね。
夕食までの自由時間は、
友達との他愛ない話でも楽しかった。
特別な時になるかもしれないと期待も少し混じってた。
会社帰りの私は足早に、彼ら彼女らの横を通り過ぎる。
振り返ってみたくなる。
代わりに得たものもあるのだけれど。
#55
放課後の学校は誰もいなくて静か
普段入れない学年の教室に入ったり
ちょっと歌ってみたり
窓から校庭を眺めてみたり
結構楽しい
先生に見つかりそうになって隠れた階段下の倉庫
バレンタインにはドキドキの靴箱
学校にはたくさんの思い出がある
ありがとう、学校
またにはこんな放課後があってもいいよね
〈放課後〉
教室を出ると、ルカリオが待っていた。
部活を引退したばかり、という時季でもないけど、やっぱり一緒に下校する。
本屋で赤本を眺めたり、予備校の料金表を調べたり、不安と夢を共有して、順当に受験生になっていく感じだった。
「最近のニュースはさ、見ていられないね。あんなに人が死んでいるのに」
ルカリオのつぶやきに、何度も頷く。
ウクライナも、イスラエルも、収束の影は見えない。非力な俺たちは、なんの役にも立たない。そんな気持ちにも、慣れたくないのに。
「俺さ、いつか、圧倒的に強くなりたいな」
ドダイトスに進化した瞬間に思い出したのが、何故かこのやり取りだった。
そう告げたら、ルカリオはゲラゲラ笑った。
「もう強いからさ、俺たちは」
別の景色が、見えそうだった。
【放課後】
放課後
放課後のことだ。学校の教室でのこと。
女の子、じゃあまた明日学校でね!
男の子、あ、待って、今日さ、この後空いてる?
女の子、なんで?
男の子、いや…、お前と一緒に宿題やろうかなって思ってさ。
女の子、なるほど!いちおう、遊ぶ約束してないから空いてるよ。やる?宿題一緒に?
男の子、お、おう…、ってか、俺が言おうとしてたのに!全くお前は笑
女の子、あ、ごめんね…💦、私もあんたと宿題やろうと思ってたからちょうどよかったよ。
男の子、よかった。ありがとう!じゃあ、俺んちでやる?宿題。
女の子、うん!行こうか。
仲良く二人は彼の家で学校の宿題をやるのだった。(幼馴染み設定です)
終わり
一人家で寝たい。
なるべく外にいたくないね
【放課後】
✂ーーー⚠ーーー✂
最初は仲が良かった6人組
途中で一人他のグループへ
一人、また一人と減り
最後は1人
他のグループへ行けば
最後はまた1人
終わらない悪循環
【団体行動】
いつになったら放課後になるのかな。生まれてから死んでしまうまでの間に、課されたものから放たれるときって、いつになるの。優しい人になりたいね。壊れるくらい、優しく生きていきたいね。
魔法が使えたら、自分のこと許せるんだと思う?身を切って戦って、偉いねって言われない人がいて、それもどうにもできなくて、ごめんね。代わってあげられないし、そんな力もないし。
いつになったら放課後になるのかな。微笑んでから泣いてしまうまでの間に、使命を忘れていられる戦士が何人いるの。助けてあげられなくてごめんね。それを愛せるような柔らかさもないけど、がんばったね。って、言ってみたいなとは思う。
放課後の醍醐味は制服姿で街を闊歩することだ。
きっちり着ている制服を少し崩して、校則にギリギリ引っかからない程度のメイクをして、ほんのちょっとだけ背伸びをする感覚は学生でしか味わえない。
部活もしてないし、テスト前でもないし、門限までは何も考えず自由でいられるこの時間が好きだ。別に不平不満なんてないけど、窮屈な学校から開放される気がして足が軽くなる。
そんなわけで、特に予定もないのにふらふらしていると、高頻度でナンパに遭う。よほど暇してるように見えるんだろう。
「俺らと一緒に遊ぼうよ」
爽やかさを演じている大学生っぽい二人組が逃げ道を塞ぐように立つ。こういうやり方は怖がらせるだけだと、どうして気づかないのかな。もっとこう、スマートに紳士的にすればいいのに。
「手持ちが少ないので遠慮しておきます」
「俺らが奢ってあげるって」
「近くにいいお店あってさ。期間限定メニューやってんだよね」
期間限定メニュー……それはいいことを聞いた。とは言え、この二人組と一緒に行っても楽しくなさそうだし、どうにか上手く逃げ出したい。
どうやって逃げようか考えを巡らせていると、正面の男の背後に見知った顔が登場した。
良くも悪くも人たらしで隙のない完璧な従兄弟が。
「なんだなんだ、ずいぶんと賑やかだな」
「は? なんだ、おまえ」
「おいおい、そんな態度とっていいのか? 俺はこの子の大事な人だぜ? 将を射んと欲すれば先ず馬を射よって言葉を知らないのか?」
「知らねえけど」
「不勉強なのは感心しないな。彼女は可愛いだけじゃない。頭も良くて家庭的だ。そんな彼女を口説き落とすのに知性がないのは心許ないぞ」
ぺらぺらと軽口を叩きながら、ごく自然な流れで私の隣に来て肩に腕を回してくる。踏み出す彼に合わせて動けば、嘘みたいにさらりと抜け出せる。
さりげなく肩を押されて前に出れば、その高い背を活かして私の姿を隠してくれた。
「相手を口説くならもっと状況を読まないとな。次からは気をつけろよ」
空いた片手をひらひらと振って、ご丁寧にアドバイスまでしちゃって、まるで友だちと別れるかのように歩き出す。
勝ち目なしと諦めてくれたのか、頭のおかしい奴だと判断されたのかは分からないけど、二人組が追いかけてくることはなかった。
「まったく。近頃の若人は危機感が足りん」
「……助けてくれてありがとう」
「礼はいらないが、あまり隙だらけの無防備さでふらつかないようにな。変な輩に絡まれると面倒だろ?」
さすが、隙のない人間は言うことが違う。
頭ひとつ分高い整った顔を見上げて、すぐに彼の手元へ視線を落とす。右手に提げられているエコバッグから長ねぎが覗いている。
「買い物してたの?」
「まあな。これからマイダーリンの家に行って、手料理を振る舞おうと思ってな」
「ふーん。サプライズとか?」
「いや、マイダーリンはサプライズが苦手だからな。事前に連絡を入れてある。明日は仕事も休みだって言うから、今日はのんびり晩餐を楽しむのさ」
「相変わらず仲がよろしいことで」
思わず鼻で笑ってしまった。
よくもまあ恥ずかしげもなく『マイダーリン』と連呼できるものだ。
「まだ遊ぶつもりなのか?」
「んー……そろそろ引き上げようかな。なんか萎えちゃった」
「じゃあ送ってってやろう」
ほれ、と腕を差し出してくる。手を握るなんて可愛いものじゃない。腕に掴まれというエスコートの仕草だった。すれ違う人たちがうっとりしたり、羨ましそうな顔をしていることに気づいてないのか。
「マイダーリンに見られたら困るんじゃないの?」
「問題ない。君のことは顔写真付きで話してあるしな」
「いや、こっちのプライバシーは無視すんのかい」
「家に置いてあるアルバムで盛り上がってなぁ。姪っ子ちゃん可愛いーって褒められたから、つい自慢しちまったんだよ」
どこの世界に、恋人に姪っ子を自慢する男がいるんだよ。ああもう、本当におかしいんじゃないの。
恥ずかしいやら呆れるやらで、もうごちゃまぜだ。
くるりと踵を返して来た道を戻る。ちょっと遠回りして帰ろう。一緒にいたらおかしくなる。
「なんだ忘れ物か? まったく仕方な」
「ひとりで帰る! あんたはさっさとマイダーリンのところに行け! この無自覚天然人たらしが!」
「自覚はあるぞー。じゃあ、気をつけて帰れよー」
間延びした明るい声に後ろ手で手を振り返して、青信号に変わった歩道を駆け抜ける。気恥ずかしさを塗り替えるような嬉しさをどうにかしたかった。
放課後って学校が終わった後の時間にしか使わないな。なにか他の用途で使われてないか調べたけどやっぱりそれしかないみたいだ。
つまり学校関係者しか使わない単語なわけだ。そしてもう学校となんの関わりもない俺には縁のない言葉だ。
しかし昔は放課後になにしてたか。野球部に入っていた時期もあったように思うけどあんま記憶にない。もう昔のことだしな。
マンガなんかだと学生の記憶を色鮮やかに覚えている人も多いけど俺はさっぱりだ。昔のことなんかほとんど覚えてない。もう記憶喪失みたいなものだな。
こうしてぼけ老人になっていくんだと思うと恐ろしい。そう考えると若いうちに死にたいって人の気持ちもわかるな。
放課後
駅前のショッピングモールに、新しくドーナツのチェーン店が入るらしい。
その知らせから二ヶ月ほど。ついにドーナツ屋さんがオープンした。
学校の最寄り駅の近くだから、放課後に買いに行こう。オープンの一週間前から決めていたんだ。
学校が終わって、私はすぐにショッピングモールへ向かった。…が、時すでに遅し。
ドーナツ屋さんの前だけに、長い行列がすでに出来上がっていた。友達グループ数人で来た高校生に、目を爛々とさせる主婦。会社員も混じっていて、私が並ぶか迷っている間にも列は伸びていく。
これは、待てないな。
諦めてショッピングモールから出る。すると、どこからか甘いにおいがやってきた。ドーナツじゃない、少し遠くから。
においに釣られるように歩いていくと、商店街についた。あまり来たことはなかったけど、駅前には商店街もあったっけ。
商店街をきょろきょろと見渡していると、甘いにおいの正体を見つけた。鯛焼き屋さんだ。あったかそうなおじちゃんとおばちゃんがやってる、ほっこりした鯛焼き屋さん。
結局、あんこの鯛焼き一つを片手に、ほくほくと家に帰ったのだった。
#放課後
放課後
僕は教科書忘れて、学校に取りに戻った
随分日がくれ辺りは夕陽が差し込む
教室には隣の席の女の子がいた
机の上でピョンピョン飛び移り綺麗な踊りを踊っていた
こっちに気づいた彼女は机を飛び越えて教科書を僕に渡した。
放課後にいつも帰っていた友達がいた。
その子は学内で少し浮いてたけど、全く気にしてなかった。
多分私も同じくらい浮いてたから、同じようなことを彼女も思ってたのかも。
彼女は卒業した今でも元気に連絡をくれる。
放課後
放課後は友達と一緒に駅に行って同じ電車に乗る
特には何も用事もないけれど、放課後 学校に残るのはなんだか非日常感があってワクワクした。
生徒も少なくなってきて、クラスには誰一人もおらず
いつもは人々の声と熱気で賑やかな学校も、放課後はしばらく経つと一転、静けさを取り戻したかのよう。
普段は関わりのない同級生も、私と相手しかいない空間だと、何となく一言二言交わしてたりする。
小学生の頃は、残ったメンバーでバスケしたり、男子達がお笑い劇をやり始めては笑い転げた。
特に印象的に残ってる思い出ほど、やっぱり放課後というスパイスもあるのだろう。
「放課後」
もう一度学生に戻ったら?
放課後にぼーっと学校で時間潰したり
イケメンの部活動見たり、友だちと
ぶらぶら寄り道したいなー
だってさ、今は帰りも忙しくて。
晩御飯の買い物とか、早く洗濯物入れなきゃとか
自分のために使える放課後がないんだもん
学生よ、放課後を楽しめ
放課後はいつも部活ばかりしていた
学校は地獄だったが、部活動はまだマシだった記憶がある
小中と6年間やり通したことは偉いと思う
今思うと子供の頃の自分は忍耐強くまじめに取り組んでいたと思う
ただそのため高校でストレスでパンクした
その後の人生もストレスを溜めてはパンクの繰り返し我ながら成長がない笑
高校生になると、放課後によく友達とカラオケに行ったり、お喋りしたりするようになった。課題やテストのことを忘れられる、いい時間だ。大人になるとこの感覚は色褪せていくのかな。
「では、これより会議を始めます」
重苦しい台詞とは裏腹に、周囲から聞こえる雑音はいつにも増して騒がしい。なぜなら、ここは駅近くにあるファミレスだからだ。
「議長」
「はい中沢くん」
「ここのアイスは仕入れているメーカーが他社と違うと聞きました。ソフトクリームバーも付けることを提案します」
中沢と胸元に刺繍の入ったジャージの少女が手元のメニューを揺らしながら前のめりに提案した案に、同じくメニューを持ち真剣に聞いていた他二人が頷く。
「では本日はいつものピザにソフトクリームバーということで」
先ほど議長と呼ばれた一つ結きの少女が店員呼び出しボタンを押し、ふうと息をつく。途端に張り詰めていた空気が緩み、席を囲む四人からも苦笑やあくびが漏れた。
「うちら授業中より真剣じゃん」
「マジにならなくてどうするのよ、放課後だよ?」
「放課後ぐらいちゃんとしないとね」
「森センに怒られそー」
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。先生の説明を静かに聞いていたなんて嘘のように教室が賑やかになった。
「お腹が減った」「遊びに行こう」「練習試合が待ちきれない」とみんな思い思いのことを言い合って、担任の先生が連絡事項を伝えてくれる間も賑やかさは変わらなかった。
みんなこの後の予定が楽しみなのだ。私も『放課後』を待ち望んでいたそのひとり。
教室を出て階段を下りているのに普段よりも長く感じてしまう。早く早くと着いた靴箱はやっぱり混雑していた。彼が門の前で待っているのに、人波がなかなか引かなくてもどかしい。彼は人目を惹く容姿をしているから囲まれていないか心配だった。学校のマドンナが彼にアタックするだとか噂も立っていたから余計に。
結果は、杞憂に終わった。彼は別のものに囲まれて私の想像通りにはなっていなかった。彼の足下にはにゃぁ~んと猫が転がって気持ち良さそうに喉を鳴らしている。
「あんまりくっつかれると毛がついちゃうんだけどな」
彼に撫でられている猫を羨ましく思った。大きなあったかい手は安心するから、私以外を可愛がっている彼の手に、猫に。ちょっとの嫉妬心。
「君も撫でたい?」
ほら、と撫でる手を止めて場所を開けてくれるけど猫は私を見もしない。そろそろ手を伸ばして撫でようとしたらシュッと鋭い爪が。そのまま猫は威嚇して去ってしまった。
ポカンとする私の手につぅーっと現れる赤い線。ヒリヒリして次第に赤が垂れる。そこに彼の唇があたっていた。あまりに自然で猫に舐められたようなざらりとした感触は一瞬で幻のようにすぐに離れた。パクパクする私に彼は一言。
「消毒」と。
「…驚かせちゃったかな」
「臆病な子だったかもしれないね。大丈夫、次は仲良くなれるさ」
血が流れないことを確認して彼はホッと息を着いた。ペタリと貼られた絆創膏はなんとも可愛い猫の柄。彼の指先にも同じものが巻かれていた。
「妹が持たせてくれたやつだよ。俺より君がつけた方が可愛いや」
「お揃いだね」
私は手の甲だけど意図せずにお揃いになったことが表情に出てしまう程に嬉しくて絆創膏を猫の代わりに撫でた。一緒に帰るだけなのが少し惜しくなる。
「…放課後デートにしようか。君の好きなフラペチーノの新作出ていたんだよ」
こっそりと期待した言葉をくれる彼はどうかな?と小首を傾げて、私が頷くのを待っている。
放課後、私は決まって
グランドが見える校舎でサッカーを眺める
女子達はグランドのフェンスの周りで
集まって観戦してるけど
実は校舎から眺める方が良いなんて
知らないんだろうなと少し優越感に浸る。
私は別にサッカーが好きなわけじゃない。
幼なじみと一緒に帰るのが日常だったから
仕方なく終わるのを待っているようになった。
彼は決まって教室で待っていた私に
「今日も下で見てくれなかったの?」
なんて聞いてくる。
答えなんてわかってるくせに
「そう。ここで見るサッカーは最高だから」
いっっつもこう答えて
彼と並んで歩き出す。
クラスが違くても放課後がいつも一緒だから
もしあなたが休んだ時は
寂しい放課後になってしまうかも
─────『放課後』