『愛言葉』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
きみに話しかけるとき
言葉ひとつひとつが ちゃんと届いているか
きれいな瞳にうかがいつつ
大好きだよ あいしてる って
きみの言葉で 音を紡ぐ
にゃーんって
◇あいことば◇
気づけば、暗闇の中。
一寸先すら見えぬ暗闇に、けれども懐かしさを覚え眼を細めた。
――おねえちゃん?
りん、と鈴の音。
「銀花《ぎんか》」
振り返り、声をかける。
姿は見えない。だが確かにそこにいる気配に、徐に腕を伸ばしその手に触れた。
「大丈夫だ。怖くない」
びくりと体の震えが触れた手から直に伝わる。
これ以上怖がらせぬようにと声をかけ、人差し指を軽く握る。
片割れが弟妹《きょうだい》によく行う仕草。それをまねれば、強張る体から僅かに力が抜けたのを感じた。
――おねえちゃん。
鈴の音。布ずれの音。
どうやら己に合わせ、身を屈めたらしい。
握る手を解かれ、代わりに額に指が触れる。
額から左瞼をなぞり。頬の輪郭を辿り、唇へと小さな熱が移動していく。
こそばゆさに身を捩れば、微かな吐息が暗闇を震わせた。
――違う。もう一人のおねえちゃん。
「正解だ。よく分かったな」
頷き、笑みを浮かべる。
離れてしまった指を追って手を伸ばし、触れた指を再び握る。
――おねえちゃんが、連れてきたの?
「どうだろうな。確かにここは私が作り上げた歪ではあるが、むりやり連れ出した記憶はないな」
辺りを見渡せば、変わらぬ一面の闇。
此処がかつて片割れと共に眠っていた鳥籠の中である事は、見えずとも分かる。
だが此処にいる理由も妹がいる意味も、何一つ分からない。
感覚からして、己の眼によるものであるのだろうが。
――皆探してる。一緒に帰ろ?
鈴が鳴り。指を握る手が外され繋がれる。
見えぬと知りながら、それに首を振って否を返した。
「すまないな。私はすでに拾われてしまっている。勝手に戻る事は出来ないよ」
綺麗で哀しい彼を思う。
終わりを求めて迷い込んだ箱庭の、停滞した孤独を抱えた術師を一人にする事など最早出来る訳もない。
――そう。分かった。
すべてを告げずとも戻れぬ理由を察したのだろう。
引き止める言葉はなかった。
「あぁ、そうだ。会えたのならば、聞きたい事があったんだ」
――何?
沈黙を乱し、妹に問いかける。
「お前は己の名を、どのように思っている?」
狭間で生まれた弟妹の中で、末に生まれた彼女だけが両親以外の妖に名付けられた。
弟二人とは異なり、母の血を濃く継いでしまったためであるのだろうが、それを妹は嘆く事などあったのか。
――大切な宝物。東風《こち》が私を想ってつけてくれた、私だけの特別。
りぃん、と澄んだ鈴の音色。
名を与えられた事が幸せだと、何よりも嬉しい事なのだと。
柔らかく音を響かせる。
――おねえちゃんは?名前、嬉しくないの?
逆に問われ、否、と笑う。
名を与えられて嬉しくないなどあるものか。
「うれしいさ。私を想い付けてくれた名だから。満月《みつき》と呼ばれる声が何よりも好きだ」
腕を伸ばし、妹の髪を撫でる。
銀花、と想いを込めて名を呼んだ。
――満月お姉ちゃんに名を呼んでもらえるの、嬉しい。
「私も銀花に名を呼ばれるのは好きだ」
たまには、彼以外に名を呼ばれるのも悪くない。
ふふ、と思わず声を上げて笑う。
「心配ではあった。銀花だけが両親に名を与えられぬ事を、本当は気に病んでいるのではないかと。ただでさえ、やっかいな眼を持ったのだから。これ以上傷ついてはほしくなかったんだ」
――気にかけてくれてありがとう。満月お姉ちゃん。
ふわりと微笑む妹が、暗闇の中はっきりと見えて。
もう時間かと、少しばかり残念に思った。
手を離す。一歩だけ後ろに下がり。
「そろそろだな。次に会えるかは分からないが、また会えればいいと思うよ」
鈴の音が鳴る前に、目を閉じた。
目を開ける。
変わらぬ暗闇に、けれども眼前に映し出される白黒の光景に、まだ陽が落ちていない事を知る。
妹との会話を思い出し、唇に触れる。
何故、あんな事を言ったのか。
名を呼ばれる事を、その声を好きなどと。
名とは呪だ。
一番身近であり強力な、時に在り方すら定められるもの。その者を支配する不可視の鎖。
それは言い換えるとするならば、名付けた者の愛だ。
想いや願いを込めた、愛の言葉。先の生を照らす導であり、離れぬようにと結びつける印。
「満理《みつり》」
名を呼ぶ。己に名を与えた彼の名を。
ただ形を定めるためだけの言葉だと思っていた。拾われた事も彼の気まぐれであると。故に妹に問われるまで、気にかけた事もなかった。
「満理」
歌うように、囁くように、名を口の中で転がして。その響きに目を細めた。
不意に白黒の光景が音もなく掻き消える。
暫しの沈黙。
かたり、と音がして、闇が溶けるように消えていく。
広がる星空と草原。
何よりも綺麗な、人。
「満月」
名を、呼ばれる。触れる指の熱が心地良い。
目を閉じて擦り寄れば、くすりと笑う声がした。
「妹御との逢瀬は如何で御座いましたか?気になさっていたでしょう」
「満理のしわざか」
目を開けて彼を見上げる。
今日は随分と機嫌が良いらしい。優しく細まる深縹に、落ち着かず身を捩る。
「満月」
名を呼ばれる。普段とは異なる響きのそれが、目眩にもにた感覚を呼ぶ。
止めようと伸ばした手は絡め取られ、形の良い唇が満月、と何度も繰り返す。
「満理。それ以上は」
「おや。好きなのでしょう。妹御に話していたではありませぬか」
「っ、聞いていたのか」
「満月は私のものに御座いますれば」
くすくすと少女のように軽やかに笑う。
「満月も妹御も随分と厄介なものに好かれてしまったのですね。可哀想に…知っていますか。銀花とは雪を差す事もあるのですよ。風に舞う雪。本来は風花と名を付けたかったのでしょうね」
己のものであると示すために。
愉しくて仕方がないと笑う彼に、呆れたように一つ息を吐く。己の事すら揶揄って笑う彼は気づいていないのだろう。
「それはつまり、満理も愚弟も似たような者だという事か」
彼の笑みが消える。
口にするつもりはなかったが、どうやら声に出てしまっていたらしい。
「満月」
「だってそうだろうが。だが口に出すつもりはなかった。悪かったと思っている。だからその顔を止めろ。それ以上強く手を握るな。痛いって!」
絡めたままの手を強く握られ、痛みに涙が滲む。
本当に心の狭い男だ。
逃れようと身を捩れど逃れる事は叶わず。満理、と縋るように声を上げれば、漸く手を離された。
「不用意に言葉を紡ぐからで御座います。反省なさい」
言葉こそは冷たいが、その声音はどこか窘めるような響きを持って紡がれる。
「満月」
名を呼ばれる。優しく愛おしげに。
何故か気恥ずかしくなり、視線を外し空を見た。
彼の箱庭に広がる空には月は見えない。ただどこまでも星が続いているだけだ。
「満理の箱庭には月がないのだな」
ふと気になっていた事を呟けば、呆れたような溜息が一つ。
「月なれば此処にあるでしょう。小さく粗雑ではありますが」
そっと頬に触れられ、促されるようにして視線を合わせる。
揺れる深縹が、淡く微笑んだ。
20241027 『愛言葉』
「愛言葉」
「愛しているよ」。
「愛している」という言葉では表せないくらいに、君たちを愛しているよ。
元気で甘えん坊な双子。小さなふたりを、目一杯愛していることを、ずっとずっと伝えてきたつもりだった。
本当に愛しているから、尚更言わなければと、そう思って。
でも、小さな君たちを十分に愛することができなかった。
いくら後悔しても埋まらない時間の溝。
目先のことで誤魔化しても、私はずっと苦しかった。
苦しいのは、君たちの方なのに。
君たちをひとりぼっちにして、悲しませて。
いくら恨まれたとしても仕方がない。
そう思っていたのに。
……まさか君たちの方から会いに来てくれるなんて。
あの時と同じ小さな姿のままの君は、自分のことを「いらない子」かと聞いてきた。
違う。違うよ。
私に初めてあどけない笑顔を見せてくれた君を、いらないなんて言えるはずがない。
今も昔も、ずっとずっと愛しているよ。
優しくて賢い君だって、まだ小さい。
なのに、私の大事な仕事を引き継いでくれた。
本当にありがとう。
その元気な笑顔の裏に、たくさんの苦労を隠しているんだろう?
大変な思いをさせて、本当にすまない。
どうにか君を手伝いたいのに、不甲斐ないね。
だからせめて、これだけは伝えたい。
愛しているよ。これからもずっと。
君たちがここにいる間だけでも、目一杯伝えたい。
愛しているよ。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
ところで、構造色の髪の少年が何かを考え込んでいるようだが……?
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「愛言葉」。「合言葉」は、「前もって打ち合わせておいて、確認する合図の言葉。仲間うちの信条・目標としていつも掲げる言葉」。そこに「愛」は、「人がゆっくり歩きながら後ろを振り返ろうとする心情」が 合わさるとどうなるのかな?「合言葉」+「愛」=「愛言葉」 言い換えると、ニアリーイコール≒「過去を振り返るモットー」→≒「もっと過去を振り返る」→≒「かっこいいモットー」に変化していくのはどうでしょうか?!
イーナ
お題:合言葉
「頑張ってね!」と別れ際にお互いを応援し合う。合言葉みたいだ。
これからもこんな日々が続くことを願ってしまいそうになる(笑)
(2024/10/27/(日))
愛言葉
アイメッセージという言葉がある
私はこう思う
私をつけるのがポイント
他人を責めない
あくまで、自分はこう思う
私はこうしてるれると嬉しい
愛ある言葉が増えると良いね
妻に締め出されて家に入れない。チェーンロック越しに覗く不機嫌な妻は「あいことばをどうぞ」の一点張り。途方に暮れていると思わぬ助け舟があった。郵便配達員だ。「お疲れ様です。ありがとうございました」愛想良く微笑んだ妻は配達員が視界から消えるや否やギロリとこちらを睨み、朝干し忘れたでしょ洗濯物と言い放った。慌てて洗面所に向かうときっちりと干された衣類が除湿機の風に忙しなく揺れている。妻はリビングで腕を組んで待ち構えていた。僕は素直に頭を下げる。恐る恐る顔を上げると妻はもういつも通りだった。ごはんあっためるねとパタパタと台所へと向かう。子どもの頃、繰り返し母から聞かされた言葉がある。どれだけ長く一緒に暮らしてもごめんなさいだけはちゃんと言いなさい。僕達にとっては他のどんな言葉よりも、ごめんなさいが仲良く暮らすためのあいことばなのだ。#愛言葉
愛する相手に会いたくて
空いた時間に自分を磨いて
それでも会いに行くときは
挨拶でさえ僕は震える
開いた扉をくぐると聞いた
君にはしばらく会いに行けないらしい
愛の話を語りたかったが
哀話を伝える事になる
たとえどれだけ間があこうが
僕は貴方を愛すと誓う
愛言葉
「ヒトリヨガリノホコロビヲ
アヤシテアゲヨウスイレンカ」
私とお前との合言葉だ。
そんなことを君は言ったよな
俺はこんなこと初めでで最初はなんでこんなの…
と思っていたさ
だけど、次第に大事な思い出になっていった
この合言葉はルールが二つあった。
呼んだ方が上の句を読み、相手が下の句を読むんだ
どんな時でもこれは続いた
俺はこの言葉に何度も救われた
お前を名乗るやつから金だの恋だの宗教だのと
言われても、誰も上の句を言わなかった
そんな奴ら言葉は信じなかった。
もう一つのルールは1人になったらこの言葉を
相手に伝えるのだ
俺はお前との他愛のない思い出を今も思い返す
「独りよがりの綻びをあやしてあげよう睡蓮花」
俺がこれを1人で読むようになって5年経った。
俺はヒトリ涙目を浮かべながら
睡蓮花を飾り何度もあなたに問いかける
睡蓮花の花言葉は
清純や恋、信頼、優しさ
互いに心が堕ちて立ち直れないときに
この花を思い出し、立ち直ってきた
俺と君との約束の花
そっちに行ったらまた睡蓮花を君に贈るね
愛言葉
「養えるようになるまで結婚はしない。」
恋人にそう言われて僕はどう思ったか、って?
んー…大事にされてると思ったし、
結婚する未来を約束されたように感じたよ。
恋人はね、しっかりとしているんだ。
計画をちゃんと立てて、それ通りに進むような。
片道切符のような僕の性格とは真逆で、
とても頼りになって、
一人でも生きていけるような性格で。
…そんな性格の人が、養えるようになるまでって
ハッキリと言ってくれた。
二人でずっと暮らしたいっていう隠れた思いが、
僕、分かっちゃうんだ。
彼なりの最大限の愛言葉だと感じたよ。
愛ある言葉をかけられる人になりたい。
めちゃくちゃ頑張ってる人に、
「一息ついていいんだよ」
ってタイミングよく言えるような人。
#愛言葉
そもそもね、それはちょっと違う。
愛というのは、思考の末の行動なんだ。
言葉じゃない。
口から出るものなんて、排泄行為さ。流れて行くだけ。唱えれば唱えるほど、人はカラになるんだよ。
紫の袈裟を着た人が、メガネを拭きながらそんな話をしてくれた。
【愛言葉】
「いつもありがとう」
2024/11/02 #愛言葉
好きでも無い女に「好き」とか言って
シャンパンもらって生きている俺に
価値なんかあるのかって
毎日毎日思ってる
言葉なんて所詮言葉
嘘なんていくらでもつける
少なくとも俺は嘘をついて生きてきたし、
嘘をついている人しか見てない
本当の愛言葉なんて昔は夢見てたけど
もういらない
そんなことを考えながら
俺は金言葉、じゃない
「本当の愛言葉」
を囁いている
私はいつも、家に帰ると「ただいま」と言う。
なぜなら、中に誰かがいることを示し防犯にもなると聞いたことがあるからだ。
でも、私の声に返事はない。少し寂しく思いながら靴を脱ぐ。
「おかえり」
その声は突然だ。タバコ臭い父がこちらにやってくる。
「今日は早かったな」といつも同じように言う。
私も「うん、今日は部活がなくて」といつものように言う。
家に帰って誰かと話すと安心する。今日も生きて会えたことが嬉しくなる。
こんな毎日がずっと続けばいいな。
そんな願いを込めた「ただいま」を今日も私は叫ぶ。
愛されたい
愛されたい
愛されたい
もうずっと子供の頃から
愛されたい
それしかない
他にはない
それ以外いらない
誰でもいいわけじゃない
だから難しい
愛されたい
愛されたい
愛されたい
死ぬまでずっと1ミリも変わらずに愛されたい
《愛言葉》
愛してる なんてそんなありふれた言葉では言い表せない程に私は貴方を愛していた。貴方も同じ気持ちだと信じてた、信じてたのに。
もし来世があっなら転生しても一緒だよ。あの日交わした約束。
再会の合言葉は......。
10月31日締め切りだと思っていた懸賞はがき
10月27日消印有効だった。
そしてそれに気づいたのが本日17時過ぎ。
もうどうにもできない。本当に後の祭り。
膝から崩れ落ち、そして1時間リアルに起き上がれない。
なんで私はこうも先延ばし癖があるんだろう。
先週切手も買ったのに、なんでやらなかったんだろう。
あまりの愚かさに、人に話すこともできず
ただただショックで気を失っています。
【愛言葉】
―――合言葉は…なんだったか…
結構昔のことだから忘れてしまったな…
誰もここを通さないまま何年か経過していた
ただ覚えのない言葉のために
ここを守っている。
私は何を守っているのか
どうして合言葉が必要だったのか
誰がここを通れるのか
そんなことはもう忘れてしまった
思い出そうとしても分からなくて
ただ辛い時間が経過するばかりだった
もう誰でもいいから通してしまおうか
分からないものを待ち続けても苦しいしな
さぁ誰でもいい、早く来い。
今なら何を言ってもここを通れるぞ
……人だ。
やっと終わる…苦しい辛い時間が…
「ここを通りたければ合言葉を言え。」
さあなんでもいい。合言葉らしいことを言え
『大好き。』
「よし、通っ………へ?」
『え?だから、"大好き。"』
「え…それ…合言葉?」
『うん。違ったかな?』
なんだ?"大好き"?
そんな言葉が合言葉なわけあるか?
「そんなのが合言葉なわけないだろう?」
『愛してる。』
「は?」
『これは?』
「だから……あの……」
『これも違うのかぁ、じゃあ……』
「待て待て待て!ストップ!!」
『ん?なに?』
「なんで好意を伝えるんだよ」
『え?だって"愛言葉"でしょ?』
「そうだ。"合言葉"だ。」
『うん。だから"大好き、愛してる"でしょ?』
本当にそれが合言葉なのか?
覚えていないけれど、
これは絶対に違うんじゃないのか?
『他にあるの?』
「分からない…」
『なら合ってるよ!』
そう……なのか?
合ってる…んだな…
「わかった…ここを通そう。」
『やった!』
なんか雰囲気で通してしまった……
本当に、あれが合言葉でいいのか?
『ねね!』
「?」
『ありがとう!』
「は?」
『ずーーーーっと一人でここを守ってたんでしょ?』
「え?あ、あぁ」
『だから、ありがとう!』
『これからは一緒にここを守ろうね!』
あぁ……これを聞くために
ここで何年も一人で居たのだろう。
この場所は私の心だったのかもしれない。
一人で自分を守るのがもう辛くて
ずっと支えが欲しかった。
誰も通したくなかった。
それでも支えが欲しかった。
私は人を信用したかった。
この人は信用できるかもと思っても
ここには通って欲しくなくて
じゃあそれは信用してないと同じで。
いつまで経っても人は通らなかった。
いつまで経っても人は通れなかった。
だからここを通れた君だって…
本当は偶像なんだよ。
私が作った想像。
罪深い私を許してくれる人
病を患う私を支えてくれる人
自分に甘い私を連れ出してくれる人
そんな優しい人。
の妄想……。
いるわけ……ないのにな。
一人で心を守れればこんな思いはしないのに
誰か魔法の言葉で
私の心を開けてくれやしないか
魔法の力で私を守ってやくれないか
そんな都合のいいことは
もっと苦痛を乗り越えてからだろう……
楽が出来る世界なんて存在しないんだよ
妄想の君が目の前に現れることなんざ
有り得やしないんだ。
もういっその事、誰かを私のように罪深くして、
私の所まで堕としてしまおうか。
さぁ誰でもいい……
ここまで堕ちてくるといいさ
ありがとう だと思う。
言葉って初めは人にありがとうを伝えるために作られた。
そう信じてるから