独り言を吐くどこかの誰か

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【愛言葉】


―――合言葉は…なんだったか…
結構昔のことだから忘れてしまったな…

誰もここを通さないまま何年か経過していた

ただ覚えのない言葉のために
ここを守っている。

私は何を守っているのか
どうして合言葉が必要だったのか
誰がここを通れるのか

そんなことはもう忘れてしまった

思い出そうとしても分からなくて
ただ辛い時間が経過するばかりだった

もう誰でもいいから通してしまおうか
分からないものを待ち続けても苦しいしな

さぁ誰でもいい、早く来い。
今なら何を言ってもここを通れるぞ

……人だ。
やっと終わる…苦しい辛い時間が…

「ここを通りたければ合言葉を言え。」

さあなんでもいい。合言葉らしいことを言え

『大好き。』

「よし、通っ………へ?」

『え?だから、"大好き。"』

「え…それ…合言葉?」

『うん。違ったかな?』

なんだ?"大好き"?
そんな言葉が合言葉なわけあるか?

「そんなのが合言葉なわけないだろう?」

『愛してる。』

「は?」

『これは?』

「だから……あの……」

『これも違うのかぁ、じゃあ……』

「待て待て待て!ストップ!!」

『ん?なに?』

「なんで好意を伝えるんだよ」

『え?だって"愛言葉"でしょ?』

「そうだ。"合言葉"だ。」

『うん。だから"大好き、愛してる"でしょ?』

本当にそれが合言葉なのか?
覚えていないけれど、
これは絶対に違うんじゃないのか?

『他にあるの?』

「分からない…」

『なら合ってるよ!』

そう……なのか?
合ってる…んだな…

「わかった…ここを通そう。」

『やった!』

なんか雰囲気で通してしまった……
本当に、あれが合言葉でいいのか?

『ねね!』

「?」

『ありがとう!』

「は?」

『ずーーーーっと一人でここを守ってたんでしょ?』

「え?あ、あぁ」

『だから、ありがとう!』

『これからは一緒にここを守ろうね!』

あぁ……これを聞くために
ここで何年も一人で居たのだろう。

この場所は私の心だったのかもしれない。

一人で自分を守るのがもう辛くて
ずっと支えが欲しかった。
誰も通したくなかった。

それでも支えが欲しかった。
私は人を信用したかった。

この人は信用できるかもと思っても
ここには通って欲しくなくて
じゃあそれは信用してないと同じで。

いつまで経っても人は通らなかった。

いつまで経っても人は通れなかった。

だからここを通れた君だって…
本当は偶像なんだよ。

私が作った想像。

罪深い私を許してくれる人
病を患う私を支えてくれる人
自分に甘い私を連れ出してくれる人

そんな優しい人。
の妄想……。

いるわけ……ないのにな。

一人で心を守れればこんな思いはしないのに

誰か魔法の言葉で
私の心を開けてくれやしないか

魔法の力で私を守ってやくれないか

そんな都合のいいことは
もっと苦痛を乗り越えてからだろう……

楽が出来る世界なんて存在しないんだよ

妄想の君が目の前に現れることなんざ
有り得やしないんだ。

もういっその事、誰かを私のように罪深くして、
私の所まで堕としてしまおうか。

さぁ誰でもいい……

ここまで堕ちてくるといいさ

10/27/2024, 9:16:02 AM