『大空』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
空は彼らを見下すようだった。
多大なる可能性を秘め、希望を抱えているとされる空が、今はそう感じられた。
ルカはたとえ軽蔑されていても、空をとてつもなく美しいと感じた。
ルカとルカの友人のノアは、海のすぐ上の崖にいた。勇気のあと一歩で海に落ちそうだ。
ここから飛び降りれば、どうなる?
愚問だった。
でも彼女は愚直に、単純にそう思った。
きっと死ぬ。でも、それだけ。
ルカは空を見た。
限りなく奥まで広がった、終わりのない空を。
彼女は何もかもがくだらなく思えた。
「海は空には勝てないよね」
ひとりごとのように、尋ねるようにルカが呟く。
「どうして」
ノアが冷めた声で返事をする。
「海は、人なんかに汚されてる。地上にいて、手が届くからよ。色だってまるで、気が悪そう」
ルカは海を見下しながら言った。
「空は何色?」
「青。でもいろんな色に変わる」
「でもあなたが言うには、海だって青色で、いろんな色に変わるんでしょう?」
「海と空が同じような色なわけ、ないでしょ?」
「私にそれを聞くの?」
「……」
ノアは生まれつき目が見えない。体も弱く、外に出るのは久しぶりだった。ルカは決まりの悪そうな顔をした。
「バカね。将来的にはそんなことを聞くのはやめておくことね」
そういうところ、嫌いだ。
きっとノアだって、同じ気持ち。
互いが互いを嫌にするのに、一緒にいる。
ルカは崖の端に足を下ろして、ふらふら揺らす。
背中に風がぶつかって、ふとしたら落ちていそうだ。そう考えても、何も感じなかった。
ノアはただ真っ直ぐ、水平線を見つめているように顔を海へむけている。
そんな彼女を見て、ルカはさまざまなことを連想した。
空。
空の青。空の青とは?
空の青って、なんなんだ。
飛び降りるのと、空の青を説明すること、どちらが難しいか。
盲目の彼女に、どうしたら私が心奪われたこの青を説明できる?
飛び降りる方が難しいか?
いや、断然空の青を伝えるほうが難しい。目視で確認できるものの比喩表現なんてもってのほか。
ルカはそちらに頷いた。
「あなたならどう表現するのかな」
「何?」
「あなたに言ってない」
「……はぁ? 他に誰かいるの?」
「海に聞いたの」
「……」
空は綺麗だ。空というものは見てて心が安らぐ。それでいてどこか冷ややかだ。
とても美しい色。
そう言って、盲目の誰がその本当の青を想像するだろうか。
暗闇に閉じ込められた彼らに。
私が心酔したその景色と色を、生まれたときから見ることができないと決まっている盲目の彼らに。
言葉では理解できても、知らないものを想像するのはむり。
そうルカは思った。
彼女は色覚を、視覚を絶対に失いたくないと思った。
動けなくても、声が出せなくても、何も聞こえなくなっても、暗闇に閉じ込められるのだけは嫌だ。
同時にルカは隣にいるノアを見た。
大嫌いな彼女でも、それだけは同情するな。
ルカは勝手な妄想をした。
空はときに赤、紫、黒、黄色、灰色、いろいろな色に変化を遂げる。
その変化が交じり合ったようすは人のするべき美徳を表しているようだった。
ルカはまたノアを見た。
美徳とはほど遠いノアだ。
彼女は空を見たことがないから、これほどまでに美徳を失っているのではないか。
ルカは本気でそう考えかけた。
まぁでも、どう考えたって、大空は綺麗だ。どうしたって、そうにしかならない。
「誰も空は汚せないのよ」
ルカは言った。
空は空だ。
「煙や火山灰で汚れることはあるわ」
「それはそんなのを通して見てる空ってだけ。空は汚れてない」
「……」
「見たことあるの? よく知ってるね」
「……目は使えなくても、知識は分かるのよ」
空は変わらず空だ。誰に汚されることもない、美しい空だ。
「空よ、ねぇ。色々なものを見てきたんでしょ。空からしたら、私の命なんて一瞬。空、空、聞いてるの?」
「変な子ね」
「この大空と比べたら、私なんて一粒の砂にも満たない存在なんだわ。そう考えると、死んでしまいたくなるの」
「あら、空とあなたは、比べられないわ」
「酷い、私にはそんな価値もないってこと?」
「あなたは私に愛されていて、空は私に愛されていないわ」
「……あなたが私を愛してる?」
「そうよ。分からないだろうけれど。きっとあなたは私の空」
「……」
「あまり深く考えないで。空のことは飽きたわ」
「あなたが興味のあるものなんて、あるの?」
「あるわよ。だから、興味のない空を見にきたの」
「……」
「……帰りましょう。空はあなたにとって憧れで、危険なのね」
「……空の色が知りたい?」
「えぇ」
やっぱり、色が気になるんじゃないか。
見ることはできないのに。
ルカは切なくなった。
嫌いなノアでも、寂しくなった。
「あなたの感じる空の色が見たい」
ルカは目を丸くして、ノアを見た。
それに伴うように、ノアもルカの方を向いて微笑んだ。
ルカも笑った。二人の目があっているようだった。
今、ルカは、飛び降りる方が難しい。
「太陽のような」という形容詞は、明るく快活で周りを陽だまりのような温かさで満たす者に使われる。
「月のような」という形容詞は、大人しく控えめで、それでいて静かな存在感を示す者に使われる。
けれど君はそのどれにも当て嵌まらない。
太陽のように明るすぎず、しかし月のように控えめでもない。ただ周りをふわりと包み込み、素の自分をさらけ出すことができる穏やかな雰囲気をまとう人。
そんな君に相応しい形容詞は、「大空のような」というものがきっと一番似合うのだろう。
鳥が自由に空を飛べるように、自然の恵みを分け隔てなく与えるように、…私が私らしくいられるように。
人々が君を求める理由はそこにあるのかもしれない。
【大空】
大空の向こう、はるか彼方
いくら見つめていたって、何にも返してはくれない
僕が、そこまで
君のところまで行くことが出来たら、なんて呟けば
まだまだ早いと、そんな声が聞こえるようだ
(大空)
【 大空 】
『ねえ、お母さん。何で鳥は飛べるの?』
『羽があるからよ。何か気になるの?』
『だってね――』
そこで夢は途切れ、目が覚めた。
近所の森の散歩道、母に手を引かれながら歩いた記憶だ。
(懐かしいなぁ…久々に夢見た)
あれから二十数年、今では自分が親になった。
「ねーママ。鳥さんはどうやって飛ぶの?」
「手の代わりになる羽を使うんだよ。気になるの?」
「お空を飛べたら天国のばあばに会えるでしょ!」
唐突に、今朝の夢が蘇る。
続きはそう、これだった。
『だってね、お空のお父さんに会いに行きたいから!』
大空
大空と海がどこまでもつながっている景色が好き
「大空」という文字から頭に思い浮かんだのがこれ
緩やかに弧を描く水平線
普段あまり感じることがないけれど
地球は丸いって事を思い出させてくれる
そういえば海を潜ったときも空も飛んだときにも同じことを感じた
大自然の中では自分がどんなに小さいか
そしてこんなにちっぽけな私でも
紛れもなく自然の一部だということ
いつも当然のように在ること
当たり前思っていることを
いまこの瞬間大切にできる人でいられますように
会社へと向かう足を止め
上を見上げ口を開き、
「疲れた」
なんて口に出した戯言を
淡い白群に染まりゆく大空が
飲み込んだ。
……よーし、今日も頑張るぞ。
♯大空
この大空に翼を広げ〜
何回この歌を歌っただろう。
あの頃の私は無邪気だった。
あの頃は大人に憧れていたな。
立派な大人じゃないけれど、楽しくやってるよ。
自分らしくやってるよ。
#大空
「大空」
どこで間違ったのか
何も間違っていないのか
それすらも分からないぐらいに
すでに心は千切れてしまった
見上げた空はただただ青い
鼻の奥がツンとした
眺めてるとハマるよ
私だけかな
【大空】kogi
僕の名前は『大空(ひろたか)』
見ての通り名前の由来は、
大きい空のような広い心を持って欲しいだ。
そんな親からの期待に応えれるよう、
外でも家でもキャラを作って演じる。
こんなのはただの名前かもしれない。
だけど僕を苦しめてる。
僕の子供が産まれた時は
絶対名前で負担を押し付けたくない。
だけどどんな名前にせよ苦しめるだろう。
名前なんてなければよかったのに……
#『大空』
No.12
大空
悩みなんて…
ちっぽけなんだ
でも…
今のわたしには
大きな悩み
きっと…大空さんには
ちっぽけと思われる
けど…
いいの…
大空さんとわたしは
違う世界
平行線
混じり合うには
むずかしい…
混じり合えたら…
新しい大空に変わる
のかもしれないね…
私は、サナギ、いつも周りのみんなが、自由に飛んでいるのを見て羨ましかったわ、でもそれは、今日で終わり、今は、縮こまりながら、明日を待ってる、ついに大空へと羽ばたく時がきたから、ちゃんと飛べるかなって泣いた夜もあったけれど、飛べると信じないと、羽はのびきらないから、私は私を信じるの。
みかん色の大空。
つまり夕方。
そういえば昨日みかん4個も食べたなぁ。
大体のカロリー合計119らしい。知らんけど。
『大空』
「大空に羽ばたきたいんだ」
そう高らかに言う君を
突き飛ばした
妬ましかった
羨ましかった
だから君を大空に落とした
でも
落ちたのは君だけじゃなかった
僕も
僕の心も
深い深い闇に堕ちてしまった
お題『大空』
テーマ:大空 #401
「大空さん」
私は何回かそう言われて反応した。
それが私の名字になったのは一週間前のことだった。
父と母が離婚して、
母の名字になった私。
まだなれない。
「大空」なんて名字聞いたことも会ったこともない。
だからまだ慣れないというのもあるだろう。
母は父と離婚してすぐ名字を変えたがった。
よほど父が嫌いだったらしい。
私は父も母も大好きだったから
離婚の話が出た時心のなかでは全力で止めていた。
でも父と母が思いをぶつけ
怒鳴り合っているところをもう見なくて済むなら
それもいいかなとふと思った時、
離婚届が出された。
母と二人の生活はまぁまぁ楽しい。
でも3人のときのほうが良かったなと思った今では
もう遅いのだ。
大空
大空とは?
僕は考えてみた。
僕たちは大きな空と同じくらい大きな気持ちを持ってると。
嬉しいや楽しい、悲しいや悔しい気持ちも色々あって。
気持ちってそれぞれだけど大空みたいに広いって思うんだ。
大好きなおばあちゃんが亡くなった時、お母さんが言ってたんだ。
「大丈夫よ、あなたが忘れなければ
おばあちゃんはずっと空から見ててくれてるよ」
その時は僕は幼かったから意味は分からなかった。
でも今なら分かる気がする。
大空は広くて美しい。
でもそれ以上にこの思いは広いことを僕は信じてるんだ。
大きくて、軽い翼を広げて
自由に飛び回れる。
お題:大空
#大空
翼。
古のヲタクとしてこれだけは譲れない。
キャプテン翼はなんだかんだでずっとやってるイメージ。
私が知ってるのは中学生編位まで。
「はよ、そんなとこからおりてきぃ」
と、タバコをふかしながら僕は上を見上げた。
そこは、軍内で一番高い塔の上で。とてもとても高い場所で。そこから落ちたら常人では死んでしまうような高さで。一番、空に近い場所だった。
僕の同僚で、後輩で、面倒を見て、面倒を見られていて。まぁ、そんな感じの存在がいる。
いつもはのほほんとしてて、悩みなんてありませんよ、弱みなんてありませんよって感じで仕事してて。
そんなアイツにはひとつの癖がある。
ふとした時、困った時、疲れた時とか、まぁ、要するに普通じゃないとき。何かあった時の癖。
それが、この軍で一番高い監視塔の最上階のもっと上。屋根のその上。一般的に相輪と呼ばれている場所まで登り空を見上げひたすらに。何時間も。長い時では一日中。ただただぼーとしているのだ。
アイツと仲のよい何人かは気づいているようだが誰も触れようとしない。あのかまってちゃんの彼でさえ一度も突撃していない。それは場所の問題ではない。
その瞬間のアイツが纏う雰囲気のせいだ。
今にも空へ飛んでいきそうな。空へ帰ってしまうような。空へ溶けてしまいそうな。空に攫われてしまいそうな。そんな危うい空気を纏わせているのだ。
僕が一番最初に気づいた癖。僕が一番最初に見つけた場所。始めて見た時からその姿が儚げで、美しくて、見惚れてしまって、息を飲んでしまって、かける言葉を忘れてしまって。とても恐怖した。
だからおれはお前を「天の声」なんて呼んでやらない。そんな呼び方を定着させてやらない。雲の上の存在だなんて思わせない。こいつはただの人間なんだって。おれらと同じ人間でこいつもここで生きてここで死ぬんだって忘れないように。お前もおれも。みんなみんな忘れないように。誰も声がかけられないこのお前をこの大空から奪い返すように。お前の居場所は地上なんだって。この軍だけなんだって。
そして今日も僕はひょうひょうと空気が読めないようなアホなフリをしてお前を地上に引きずり下ろすのだ。
お題「大空」
青視点(青桃)
憂鬱な月曜
朝から隙間なく詰め込まれた電車にゆられ、会社に着けば週末に起こった地震の影響で、トラブルが山のように寄せられており一息つく暇もなく業務をこなす
昼下がりの午後、気分転換にコンビニで買った少々季節外れの冷たい缶コーヒーとサンドイッチを片手に、近場にある噴水広場のベンチに腰を下ろす
コーヒーを口にし、一息吐き出した所でだらりと背もたれに体を任せ疲労した首を反らす
ふと見上げた景色には、晴れ渡り雲ひとつなくどこまでも青く広がる空間
この数時間の息苦しさを忘れ、全ての思考を停止させた
気がつけば、午後の業務を知らせる携帯のアラームが鳴り名残惜しい気持ちを抱きながらも立ち上がる