『夢を見てたい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夢を見てたい
午後の日差しが ページをめくり
物語のなか 迷い込む午後
醒めない魔法が 解けるまえに
青い小鳥と 旅をしていたい
ちっちゃいゆめ、レースのカーテンを買うこと。
おおきいゆめ、いつかあの子におかえりって言うこと。
おそろいのキーホルダーもいつのまにか、新しいのに変わってく。繋いだ手の先以外は波紋にゆられて消えても。無い永遠と、無償の友愛を信じて、ぷかぷかうかぶ。
叶わない?そんなの気づいてる。
時間の無駄?そんなのもわかってる。
だから、皆まで言わないで
ただ、夢を見ていたい。それだけなんだよ…―
#17 夢を見てたい
(#16の律視点)
響也が、学校にいる。
教室は夕日のオレンジに染まっていて、少し開いた窓の風で、前髪が揺れていた。
響也はギターを抱えて、優しく、旋律を置いていく。
言葉が出てこなかった。
あまりにも、完成していたから。
抱きしめなきゃならない。
思わず、響也のところへ駆け出して、
そこで、目が覚めた。
自分の部屋の机。
昨日は、ここで寝落ちたみたいだ。
「夢、か」
掠れた声が床に落ちる。
頬に湿っぽい感覚がして、手を当てた。
手の甲に雫がついている。
俺、泣いてるのか。
自覚した途端、涙が止まらなくなって、声を押し殺して泣いた。
しばらく泣いて、頭が痛くなった頃、スマホに手を伸ばす。
七時五十分。
やばい、もう家出ないと。
今日は、響也の家、寄れないな。
そう考えながら鏡の前に立って寝癖を整える。
顔を突っ伏して寝たせいで、おでこに跡がついていた。
目元は少し赤くて、いかにも、泣いてきました、って顔だ。
どうみても間抜け。
もし響也がドアを開けてくれたら、俺の顔見て笑うのかな。恥ずかしいから、見られなくてよかった。
学校に着く。
なぜか教室がざわざわしていて、近くの友達に声をかけた。
「echo が新曲出したんだ、一ヶ月ぶりに、待望の新曲だったから、めちゃくちゃ伸びてる」
echo、響也のことだ。
「まっすぐなラブソングで、みんな泣けるって、称賛してる」
そう言って見せられたのは、SNSのコメント。
急上昇ランキングの一位になっているみたいだ。
「聴く?」
差し出されたイヤホンを人差し指が触れる寸前で俺は断った。
「いや、大丈夫」
今聴いたら、俺、多分止められないから。
「そう?」
うん、と軽く頷いて口角を上げる。
先生が教室に入ってきて、みんなバラバラと席についた。
HRが始まる。
一日中、ぼーっと授業を受けた。
得意のサッカーも、初歩的なミスをした。
大好きな音楽の授業も、ただの雑音に感じた。
放課後、
「律ー、今日自主練くるよな?」
そう友達に聞かれた。
「あー、ごめん、俺今日ちょっと、」
いつもは参加するが、どうしても、そんな気分になれなかった。
軽く話を流して、荷物を背負う。
ぶっきらぼうにイヤホンを耳に突っ込んで、学校を出た。
echo 新曲_
検索欄に打ち込んで、少し躊躇する。
結局押せなくてそのままポケットに押し込んだ。
なぜか、音楽が流れ始める。
ポケットに入れた時に、触ってしまったらしい。
そんな気分じゃないから、とムカついて、音楽を止めようとした。
その瞬間、響也の爽やかな声が、耳を刺す。
俯いて歩いてた俺は、顔を上げた。
ごめん
扉に手をかけられなくて
君の前に顔を出せなくて
「もう会えないのかな」って
君の言葉が離れてくれない
手遅れかもしれないけど
もう一度チャンスをくれない?
心臓が、リズムを早める。
もしかして、俺に向けて?
そんな自惚れた考えが頭をよぎる。
いやいや、違う。
これは、まっすぐなラブソングだって、みんなが言ってた。
そう思いながらも、弾き語り動画の概要欄を開いてみる。
歌詞が書いてあって、その下に#がずらりと並ぶ。
誰に向けて、なんて、書いてあるわけないよな。
みんな、それを知りたいんだから。
書いてあったら、コメントで盛り上がってるはずだ。
わかっていても、並んだ文字列を一番下までスクロールせずにはいられなかった。
そこに書いてあったのは、
一番大切な、親友へ。
その、一言だった。
思わず、スマホを落としそうになって、イヤホンが抜ける。
あたりに、響也の曲が小さく響いた。
明日は、響也が出てくるまで、ちゃんと待とう。
学校に遅れても、休むことになっても。
手遅れじゃないって、分かったから。
夢を見ていたい
私も!!やだ!冬休み終わっちゃあああ
しばし休業中
そこは『田舎』の畦道だった。
田舎なんて住んだこともなければ、旅行で行く機会もなく。車で通り過ぎることはあれど、その地を歩いたこともない。
そこに立つ自分自身があまりにも場違いで、すぐにこれは夢なのだと気がついた。
風も匂いも気温も、全てが曖昧な中で一歩踏み出す。ジャリッと鳴った舗装もされてない道は、小石を踏んだ感触が分からなくても新鮮だった。顔を上げれば空は晴れ。日差しも木陰に遮られていて心地よい温もりだけをなんとなく感じさせた。
居たこともない田舎の夢は、なぜか酷く哀愁を誘う。
向こうから小さな子が駆けて来る。赤い着物を着た、女の子。頭には大振りの花飾りが添えられていてとても可愛らしい。パタパタと揺れる大きい丸みのお袖が蝶々みたいで
まだ、夢をみていたい。
…眠たくなったので、今日はここまで。おやすみなさい
くだらない日常が心を殺すなら
生きることはできないと悟る
生きる希望が枕を染みるなら
目を開けていたいと必死に願う
夢見る物語が実現するのなら
なんだってしてやる
そう幾度も思えど
幻だったかのように感情は霞んでいく
遠くで眠れる勇気があったなら
人間を愛する覚悟があったなら
死んだ価値観を否定できたなら
感情にスパイスをかけられたなら
韜晦する私を好きになれたのなら
私はきっと、幸せな絵だったんだろう
色のない人間が、色のない人間を見れるなら
きっと楽しいものでしょう。
#夢を見てたい
ここはあの時の、あの場所
この角を曲がれば
この道を進めば
あの時のあの局面に辿り着けるはず
急いて、走るように行こうとしても
なかなか進めず辿りつけない
行けたと思っても、そこは違う場所
もう一度あの瞬間を
せめて夢の中だけでも
辿り着けないのなら、いっそ
永遠に終わらないで
そう思う頃に、目が覚めてしまう
何を望んでいたのか
何を見たかったのか
何処に辿り着きたかったのか
それすら、わからないまま
夢を見てたい
滑らかな肌をなでる
あぁ、あなただ
優しく眠たげな眼差し
可愛らしさなんて程遠いはずが
なんて愛おしい
神様のいたずらと
私の傲慢で
掴んでしまったこの糸
するすると滑り抜けるようで
絡まって解けない
引けば手繰れるのに
いつだって手放せて
不安定で都合が良い
私まだ
絡まってたい
手繰り寄せていたい
都合良く転がってたい
予想してなかったとは言えない
でも、予定ではなかった
神様は相当ないたずら好きみたい
左右に折れるような急カーブ
ふたつ
選べない訳ない
簡単な話
ただ、私が私を傷付けるだけ
私の傲慢と浮つきで
解こうとしなかった糸
手放してないのに
するすると引いていく
都合が良いのはお互い様
頭の中では満場一致
簡単な話
ただ、私まだ
私まだ
夢を見てたい
夢を見て
目が覚めて
もう少し夢の中にいたいと
目を閉じる
そんな日曜の朝
「将来の『夢』を持ちなさい」
私はそう言われて育った子供である。
他にもたくさんそんな子供がいるだろう。
でも私はそう言われたことを恨んでいる。
なるほど夢を持つことはいい事だ。
『夢』は人生を豊かにする。
それは否定しない。
だけど『夢』が無いことは悪い事だと言い聞かせ、無理やり作らせた『夢』を『夢』と呼んでいいのだろうか?
私はその時に言わされた『夢』もどきを、本当の夢と勘違いし大人になった。
『夢』を追いかけて大学まで進学したというのに、ずっとなにか違うという思いに苛まされた。
卒業して、就職しても、ぬぐい切れぬ違和感。
それに気づいたのは30半ばを過ぎてから。
日本人の平均寿命は80~90歳くらい。
人生の三分の一を使って、やっと間違いに気づいたと言える。
ある意味人生を無駄にしたとも言える。
時間を返せと、切実に言いたい。
でも夢を見ていた間は確かに幸せであった。
『夢』さえ見てれば、他のものは見なくてよかったから。
辛いことがあっても、『夢』があれば気にならなかった。
でも今は『夢』を見ていないから、嫌なことが見えてくる。
世の中の不条理さとか、人生の不平等とか。
自分の本当の『夢』は何だったのだろう、とか。
だけど、よかったこともある。
『夢』とは関係ない趣味が出来た。
園芸とか、料理とか、筋トレとか。
あと、こういう風に小説を書き始めるなんて、小さい頃の自分は夢にも思うまい。
とりあえず、今は小説家になることが今の『夢』と言うことにしている。
勝手に設定した。
おかげで他のものを見なくて済むし、辛いことがあっても、「まいっか」ってなった。
幸せではないけど、充実してる気がする。
まあ、嫌なことがチョイチョイ目に入ってくるけど、前ほど辛くはない。
なんだかんだ文句を言っても、きっと自分はまだ夢を見ていたいのだ
P.S.
夢って打ち過ぎて、ちょっとゲシュタルト崩壊した。
夢っていう字が気持ち悪ってなりました。
本当に、ヤバい字だと思ってビックリした。
読んだ人が気持ち悪くなったらゴメンね
時間が立てば治ります。
ちなみに本当の夢は「やりがいのあるほどほどの仕事でたくさん金を稼いで良いもん食う」ですw
ただの願望だけどね
もう一度小さいころに戻れるなら夢は「任天堂に入る」です。
エリートしか入れないらしいので、勉強頑張ります。
アイツがオレを見てくれない。
アイツが他の女と楽しそうに話している。
アイツにとってはただの幼なじみ関係、
オレにとってはそれを超えた関係。
隣で笑っていてほしいのに。
「大好きだよ」って言ってほしいのに。
……そんなの、叶わない。
男のオレには。
でも、夢くらい見たっていいじゃねぇか。
〜夢を見てたい〜
ワルツの調べに乗せて、オーガンジーのドレスが揺れる。
暖炉に燃える炎のおかげで、ダンスホールは暖かだ。
1・2・3、1・2・3、ステップを踏む。
リズムに乗って君はくるりと回る。
夢を見てたいの。
目を閉じて君が笑った。
レコードが止まりそうになる度に始めに戻し、僕らは踊り続ける。
濃い霧が立ち込める湖と広がる森が窓から見える。
僕らは踊り続ける。
君の腰に回した腕も、ステップを続ける足も、くたくたに疲れているけど。
君の目が覚めるまで、ワルツは続く。
僕らは踊り続ける。
⚠️ワンクッション⚠️
・男性同士の同性愛です
・文ストのキャラを使わせて頂いております
・新双黒の芥敦です。
・地雷などがありましたらご読みになるのはお止め下さい
・とても短いです。
・内容が難しい方はあとがきをご覧ください
・前回のずっとこのままの芥敦版です。
・内容としては芥川くんが任務で変装しながら
部下(ひぐちゃじゃないMOB女さん)と街中歩いてたら
買い物中の敦くんとばったり遭遇してしまい、
浮気してると勘違いしてるあつぴくん。
あつぴに誤解されてることが解ってなく、先日の
セッ久を激しくし過ぎて怒っていると
勘違いしてるどんかん芥川くん。
同棲してる家からあつぴが出ていき、鏡花ちゃん家で
わんわん泣いて慰めてもらってる感じ、
芥川に浮気されたと勘違いしているあつぴはもう
芥川に愛されてないと思ってとてもネガティブです
長くなってすみませんでした💦
芥川に愛されない生涯なんて、努力しても
報われない生涯なんて、、もう死ぬしか無いじゃん。
人虎が笑わない一生なんぞ、
もう僕が生きる意味が無くなった。
ダザイ 〝 敦君は探偵社の希望だよ〜これからも、ね。〟
モ リ サ ン 〝 芥川君、君にはこれからも期待しているよ。〟
ならもういっそ
ならばもう、
「夢を見てたいな、」
『夢を見ていようか。』
#12 【 夢を見てたい 】
あとがき
↓
すれ違いと勘違いで起きた喧嘩です、
期待されてるから死ねないしお互い居ないと死にたいしで諦めた感じなんですよおお!!でもこの後ちゃんと誤解解けて、仲直り出来ました 、💞 まじでこんな妄想だけの私の二次創作見てくれてありがとうございます。明日もこの時間か夜中に投稿するかもです。ここまでご読み頂き誠にありがとうございました!
ひぐま ʕ ˶ ᷇ᴥ ᷆˵ ʔ
久しぶりに君の夢を見たよ。
お気に入りのティーカップに緑茶を注いで飲んでいた。
まるで紅茶を飲んでいるかのように優雅に、でも飲んでいるのは緑茶で、それが何だか面白くて可笑しくて。
クスクス笑っていたら、君がキョトンとした顔をする。
懐かしい、胸が熱くなるようなこの気持ち。
幸せ、君と居るだけで。
君さえ居てくれれば、他には何も要らないのに。
目が覚めなければ良いのにと、朝日に霧散した君の笑顔を思い出しながら目元を拭った。
テーマ「夢を見てたい」
今みたいに、
貴方が隣りにいて、笑ったり泣いたり、
たまに喧嘩して。
何の変哲も無い日常だけどそれが幸せ。
ずっとこのまま夢を見ていたい。
遠距離になるまであと2ヶ月とちょっと。
離れたって私とあなたとの関係が変わることはない。
そうわかってはいるが、
あなたが私の近くにいないことが耐えられない…。
「聞いて!別の場所に行かなくて良くなったの!」
「だからずっと一緒だよ!」
なんてあなたから言われる、そんな夢を見てたい。
240113 夢を見てたい
『積み木あそび』
木枯らしは小石を飛ばすけど 私の積み木は崩さなかった 家猫も百足を獲っては自慢するけど やっぱり私の積み木は崩さない ガウディみたいだって人は言う 私はただ面白く積めればいい 私の想う素敵な形になればそれでいいのだ 木枯らしと猫に感謝しなが
ら
【夢を見ていたい】
年が明けて、冬休みも終わってしまった1月中旬。
もう当分二度寝ができないことにがっかりして、授業にもなかなか身が入らない日が続いている。
窓の外を見ても怪物はいないし、目を閉じてみても、妖精の声が聞こえるどころか睡魔が襲ってくるだけだ。
何をしても状況は変わらないし、憂鬱な気分もとれないままで、時計ばかりを気にしてしまう。
「ね、シャー芯持ってない?」
びっくりした。大した反応もできないまま隣の席を見ると、こちらをじっと見つめるクラスメイトの女子。
意識の中から現実に引き戻されたような感覚がして、僕もその子を見つめてしまう。
「シャー芯、持ってないの?」
彼女は授業中の教室で目立ちたくないのか、声量を少し抑えながら急かすように聞いてくる。
「あ、ああ、はい」
僕はしどろもどろになりながらも、なんとか筆箱の中からシャー芯のケースを取り出して渡す。
「ありがと」
彼女の、すこし申し訳なさそうにケースを受け取る笑顔を見て、何故か違和感を感じた。
「…学校、来てたんだ」
その違和感が何か、
気づいた時には口にしてしまっていた。
彼女は少し動揺した表情を見せたあと、気まずそうに微笑んだ。
「ん、まぁね」
「…もう体調は大丈夫なの?」
「うん、もう良いんだ」
「そっか」
そうだ。彼女は病気で入院していた。
学校には滅多に来ず、存在自体がレアな人だった。
休みボケか、妄想のし過ぎのせいで忘れかけていた彼女についての記憶が、少しずつ蘇っていく。
「さ、佐藤さん…で合ってる?」
佐藤。確かそんな名字だった気がする。
彼女に対して呼んだことがなかったので、少し自信がない。
彼女はそれが少しおかしかったらしく、くすくす笑って応えた。
「ん、合ってるよ」
ホッとした。これで間違っていたらとても気まずいまま時間をやり過ごすことになっていた。
「て言うか、よく覚えてたね」
「うん、自分でもびっくり」
「ふふ」
彼女の名前は、休み前の席替えの時に知った。
隣の席が居ないのは少し寂しい気もしたけど、気楽に感じていたのも確かだった。
「みんなは覚えてるのかなぁ。」
「さあ…どうだろうね。佐藤さんこそ、僕の名前知ってるの?」
「知ってるよ。加藤くんでしょ」
「…うん」
なんで知ってるんだろう。僕はそもそも存在感がないから、たまに担任にも忘れられたりするのに。
「なんで知ってるの」
「知ってるよ。入院中ね、よく名簿を見てたから」
「名簿?」
「うん、クラス名簿。学校復帰できたら、早く皆と仲良くなりたかったんだ」
「そう。じゃあ良かったね」
「うん。…でもね、私が名前を覚えても、相手が私の名前を覚えてくれなくちゃ意味ないんだ。」
「そんなこと無いんじゃない?佐藤さんの名前も、これから知って覚えてもらえばいいじゃんか」
「そうかな…」
「そうだよ」
佐藤さんは思ったよりネガティブな人のようで、僕は無意識に語気を強めてしまう。
でも、もう季節は冬。1月だ。
このクラスもあと二ヶ月程度で終わってしまうのだから、また来年度頑張ればいいのではないか。という意見は流石に無神経な気がして伝えるのをやめた。
「じゃあ加藤くんは覚えててくれるの?」
佐藤さんは僕の方を向いて、なにかを訴えるように見つめてくる。あまりにも熱のこもった視線にドキッとして、僕は少し動揺した。
簡単に「はい」と言えないような、不思議な引力が働いているようだった。
「…うん。忘れないようにするよ」
気付けば背中には汗をかいていて、心臓の音もうるさかった。彼女はそんな僕の緊張とか、気遣いとか、そういうのを全部見透かしているような気がして堪らなくなった。
「じゃあ絶対忘れないでね。約束」
そう言って笑顔を見せたあと、不意に彼女は席を立った。呆気にとられる僕を余所に、彼女は何も言わずに教室を抜けて廊下へと消えてしまった。
「ーーーー藤、加藤!起きろ!」
「…えっ」
「全く。休みボケか?」
「はい…ごめんなさい」
意識を取り戻した僕はやっと、さっきまでの彼女との世界が夢だったことに気付く。
そうだ。夢で当たり前だったんだ。だって佐藤さんは、
一ヶ月前に病気でこの世を去ったのだから。
でも、夢での彼女の姿は、驚くほどに鮮明で生き生きとしていた。もしあれが彼女の魂的なものだったとしたのなら、なんで僕なんだろう。
僕が、名前を覚えていたから、なのだろうか。
彼女はきっと、病室で名簿を見つめながら、クラスメイト全員の名前を一人ひとり丁寧に覚えたんだと思う。でもきっと、当のクラスメイトはそうじゃない。彼女の名前も知らなければ、興味すら示していない人もいるだろう。
佐藤さんはもしかしたら、覚えていて欲しかったのかもしれない。誰でもいいから、たった一人。
このまま年老いたあとも、存在を忘れないでいてくれる人が欲しかったのかもしれない。
でもこれは、僕の妄想に過ぎないから。
できることならもう一度夢を見て、そして彼女に聞いてみたい。今度はちゃんと、「忘れない」と言いたい。
もし、また彼女に会える夢が見れたなら。
そのときはずっと、夢を見ていたい。
《夢を見てたい》
辺り一面を曼珠沙華が埋め尽くしていた。
金魚は、僅かな水滴を纏い宙を泳ぎ去る。
手を伸ばせば、全てが蒼き光の粒子となって空に溶けて消えていった。
此れは夢だ。
考えるまでもなく、頭が其れを告げた。
物理法則がまるで存在していない世界でただ一人、不自然に花の咲いていない空気を踏み歩いて行く。
頭上にも花が咲き誇っている所為で、此処が正しく地面なのかすら分からない。
曼珠沙華——彼岸花。
とどのつまり、此処は、幽世と現世の境のようなものなのだろうか。
だが、三途の川らしき水源はなく、紅で彩られた世界にそれ以外のものは殆どない。
なら、異世界のようなものか。
現実世界ではないのだ、不思議な世界観の夢を見たとて不自然はない。
何故此処に己が存在しているのか、全く心当たりがない。
其れに、夢だと解れば目が覚めてもいい筈が、その様子がないのである。
不可思議なものだ。
違和感は覚えるものの、所詮は夢の中だ、特に気にする程の事でもないだろう。
幾ら歩けど見える世界に変化はなく、飽きを感じた頃だった。
誰か、いる。
遠くに立つ人影を見つけた。
それが人と解ったのは、此方に向けて声を放っていたからだ。
上手く聞き取れないが、名前を呼ばれているのだ、と思った。
懐かしい声だった、とても。
泣いている。
それが解った。
そして、その涙を止める為の術も。
だからこそ。
嫌だ。でも、仕方ない。
最初から夢だと知っていたのだから、諦めはつく。
この泡沫の夢から逃れることも、容易い。
目を覚ますと、傍らで泣いていた。
手を伸ばし、その頬を撫ぜる。
ごめん。辛いんだ、もう。
その辛い現実に、君はいる。
だから、生きなければならないのだろう。