『冬のはじまり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
肌を突き刺すような朝の空気に、
冬のはじまりを感じる
頬にあたる風の冷たさで
また一つ季節が老いたことを知る。
隣を歩くきみに寒いね、なんて
声をかけようとして僕は口を噤む。
強張った頬を染めて前を向く姿が
まるで知らない人のようで。
もし声をかければ
微笑むと分かっていても。
その横顔を眺めていたかった。
あと幾つ、僕の知らないきみを見つけるのだろう。
この季節が巡るたび、またひとつ、またひとつ。
冬がはじまる。
お題【冬の始まり】
気温が下がる。
寒さを感じる。
着るものが変わる。
始まりには合図がある。
さあ、合図を感じ取れ。合図をだすのは、お前自身だ。
「今日は寒いねー!」
そう君は言いつつ、軽快に豆を挽いてコーヒーを淹れている。まぁ君は年がら年中コーヒーは淹れてるからそれをもって冬のはじまりとは言えない。
俺は君のコーヒーを待たずにベランダに出た。うっひょー、今日は一際風が冷たいぜ。
なんでわざわざ外出たの? と君がマグカップを2つ持って追いかけてくる。
「寒いけど天気いいからさ――コーヒーさんきゅ」
俺にマグを渡して君は、自分のマグからコーヒーを一口ごくり。ホント雲ひとつないいいお天気だねーと空を見上げた。
俺はそんな君をチラ見。もこもこ部屋着から指先だけ出す萌え袖スタイルに両手で包み込んだあったかいマグカップ。
いやーまさに冬がはじまりましたなー。
▼冬のはじまり
形をなさない夢の輪郭がアラームの音で溶けていく。昨日の自分が設定した喧しい音を止めるために、枕元の携帯を手繰り寄せる。
午前六時。布団から出たくない。自分の体温の籠った、暖かでふかふかな塊がこちらを引き留めようと重くなっているような気さえする。一晩をかけて冷やされた部屋の空気を拒絶する。携帯を元の場所に戻し、近くに置いてあるリモコンを取って、エアコンを起動させる。それがやがてゴオオ、と温風を吐き出す音を聞いて、自分の判断は間違っていなかったと小さく確信した。
やるべき事はわかっていても、再びあの心地良い夢に戻りたいと布団に潜る。どうせ三十分後にはまたアラームがこちらを起こそうと電子音を鳴らすのだ。まだ時間はある。自分に言い訳をする間もなく、今この部屋でもっとも優しい寝具たちは瞼を閉じることを唆した。
自分の耳に入ってきた音をアラームだと認識するのに、三十分前よりは時間を必要としなかった。
ロック画面に表示された時間を見て、先程よりずっと暖まった部屋の空気を知って、幸せな時間というものはいつも一瞬だと悟る。渋々とまず上半身だけを起こし、数分をかけて名残惜しさを感じつつ、ベッドからようやく立ち上がる。
洗面所に移動する前にテレビの電源をつけ、いつもと同じ情報番組をBGM代わりにする。
空調の効いていない洗面所と冷えた蛇口の水に寒さを訴えながら歯を磨く。顔を洗う。指先の温度を犠牲にして目を覚ますことが出来た。
今日は燃えるゴミの日。前日の夜に出してしまえばいいとわかってはいるものの、何だかんだで毎度忘れてしまうのだ。
指定のゴミ袋に一通り詰め込んで、寝間着から適当な服に着替えて、家の鍵をポケットに入れて玄関の戸を開ける。
文明の利器によって自分のために作り上げられた適温から突然、自然のあるべき温度に晒される。羽織った上着をもう少し厚いものにするべきだったかな、などと考えながら、結局はゴミ捨てに行くだけだからと肌寒さを諦めた。
膨らんだゴミ袋を片手にアパートの廊下を歩き、階段を下りる。ふと自分が吐き出した息が白く立ち上っていくのに気が付いた。
子供の頃はこれが楽しくて仕方がなかったのを覚えている。ランドセルを背負って、防寒着に包まれて、はっはっと短く息を吐き出すことを繰り返したかと思えば、今度は汽車のように長く太く煙の真似事をした。横を歩く友達に見せて笑った。
冬の朝は嫌いじゃない。大好きだと言えるほど寒さに強いわけでも、待ち侘びている程でもないけれど、何だか青の白んだ空が、呼吸をする度に肺を冷やしていく空気が、どの季節よりも透き通った綺麗なものであるような気がする。
ゴミを出して、特に意味もなく深呼吸をした。寒さが喉を通っていく。肺に落ちて、やがて体の内側がひんやりとするのを味わった。もうそんな季節だった。
思えば日が落ちるのもいつの間にかすっかり早くなっていた。出掛ければ、目に入る店々がクリスマスの飾りつけをして限定の商品やらメニューやらを掲げていた。街ゆく二人組が仲睦まじく手を繋いで会話をする光景さえもがイルミネーションを彷彿とさせた。
微々たる変化は日々起こっているのだろうが、こうして以前との差が歴然とならなければ気が付けない。
去年の自分はこの冷たい空気を吸ってどんなことを考えていただろうか。あっという間だったような気もするのに、日々は確実に過ぎていて思い出せない。
ただ、きっと自分は来年もこうして季節の変わり目を感じるのだろう。一年なんてそんなものだ。多分。
それでも、クリスマスまではまだ少し遠い気がする。
始まったばかりの今日を、いつも通りの生活を再開するため、アパートに向けて踵を返した。
【冬のはじまり】
冬がやって来た。
舞う枯葉、冷たい風、灯油の匂い、、、
今年も来たかと思って、少し嫌になるけど、でも懐かしく、ワクワクもしてくる。
寒いけど、心はなぜか温かい。
冬のはじまり
白い息。からからの落ち葉たち。
乾燥気味の冷たい空気。
昇るのが遅くて、落ちるのが早い太陽。
もうあっという間に冬なのだと思い知らされる。
毎年毎年、もう来たかと思うことはいつも同じ。
22,冬のはじまり
いつも思うんだけど、冬のはじまりっていつだかわかんないのよ。
秋の時点でもう冬か!?ってくらい寒いし。
そういえば、フユシラズっていう花があるらしいが、その花は寒さに強いんだとか。
フユシラズのように、寒さにも負けず、生きていきたいな。
2023.11.29
わたしは喋るペンギンと暮らしている。
背はわたしの腰くらい。ぺたぺたと歩く。
家には水槽がないので、泳ぎ方を忘れちゃうんじゃないかなと思う。しかし、曰く、泳ぐことに対して強い執着はない、という。代わりに本を読んだり、会話ができることがたのしい、らしい。
わたしたちはひっそり暮らしている。
春に出会い、夏に親交を深め、秋を過ごし、いま。
窓から見える景色は、冬めいてきた。
今更だけど、きみは一体何者なんだろう。
水族館で目が合った。
わたしはその頃かなり疲れ果てていて、楽しめることがほとんどなかった。忘れてしまっていた。週末も疲れ切って動けないことが多かった。そんな中で、ふと、水族館に足を運んだのだった。
訴えかけるような目をしているペンギンが一体いた。
じっ、と私たちは見つめ合った。
でもそのときはそれだけ。
その後わたしは本当に動けなくなってしまって、仕事を休むことになった。解放されたような負けたような押しつぶされそうな頭で、ぼんやり過ごしていた夜中に、とつぜんインターホンが鳴り、きみはあらわれた。
あの日、目が合ったペンギンだ。すぐにわかった。
こんばんは。大変不躾なお願いではあるのですが、しばらく匿ってはくれませんか。見ての通りはぐれものでして。
恭しく頭を下げた。喋りは流暢で、しかしどこか切実な感じがした。
わたしは不思議と、こわいとか不気味だという感覚はなくーーー色々な感覚が壊れていたのかもしれないがーーーはぐれものという言葉に共鳴してしまった。とりあえず、どうぞ、と言って迎え入れ、少しずつ対話を始めた。
いま、きみは床に座って新聞を広げて読んでいる。
「急に寒くなるようですね」
「そうみたいだね」
「湯たんぽというものを使ってみたいです」
「もってるよ。そろそろ出そうか」
わたしときみと、傷ついたふたりの、回復のおはなし。
はじまりがあり、まだ終わりはない。
仕事帰りに電飾が設置された街路樹に目がいく。
日が落ちてすっかり暗くなっているのに、ライトアップされなくて、ちょっとがっかりした。
待ち遠しいわけではないが、大通りが金や青などの美しい輝きに包まれる彩りを見てみたかったのだ。
その光景を見るのはまだ先かもしれない。
微風で揺れる木の音に侘しさを誘われて、マフラーに顔を埋めて、最寄駅に続く横断歩道を渡る。
冬の始まりに期待を抱きながら待つことにした一歩を踏み出して。
寒い季節が
また巡ってきた
寒い寒いと凍えて過ごす?
それとも
春を思い描いて
溢れ出てくるエネルギーを
一足早く花咲かせる?
冬のはじまり
吐息が白く見えるね…少し寒くなり始めた夕方、少し身体を屈め乍ら、でもちょっと嬉しそうに微笑う君…寒いから、と云いながら、私のコートのポケットに手を入れていたのを、やっぱり…とまた出すと、手を握ってきたね…矢張こっちの方が暖かいよ、とちょっと冷たい手を絡めてきた…私、寒いのは苦手だけど、こうして手を繋ぐ口実出来るから好き…頬をほんのり赤らめ乍ら、小さく呟く君の声が、胸で響いた…初めて過ごす二人の冬は、寒いけれど、少し火照る事になりそう…
朝の散歩が面倒で辛くなる
何が面倒で辛いかというと
まず、
たくさん着込むのが面倒!
夏ならTシャツと短パンで
済んだのに…
次に
玄関でシューズを履くのが
辛い。
厚手のソックスと
シューズのかかとが硬くなってるせいで
すーっと履けないから!
そして、玄関を開ける行為が
追い討ちをかける!
一日の最初の冷たい外気が頬を刺すから!
そう感じたら
『冬のはじまり』
明日もがんばろ!
まー
冬のはじまり
冬のはじまり
それは、1年で1番長く感じる季節のはじまり
指先が冷え始め
肌着が一枚増え
暖かい飲み物が増え
ホッカイロが必要になる時
私にとっての冬のはじまりは
レッグウォーマーを
履き始めた時
窓の外を眺める
庭の植物たちが
心地良さそうに
太陽に照らされて
ゆらゆらと
風に靡いている
私もつられて
庭に出て日光浴
気持ちいい
過ごしやすいこの日々が
続いて欲しいと
願わずにはいられない
少しずつ近づいて来るだろう
いや、極端な時もある
今年はゆっくり到来して欲しい…
日々刻々と
太陽の光が遠く低くなり
庭は長い影で覆われ暗くなる
北風が強く吹き抜け
庭へ出ても早々に部屋へ戻る
会話にも
「寒くなってきましたね」
挨拶と共に出る言葉
そろそろ近づいて来ましたね
布団から出られない季節が
こたつが恋しくなる季節が
鍋が美味しい季節が
冬の始まりはこれからで
今年はどの様に過ごそうか…
[ #30. 冬のはじまり ]
出したくなかった「オイルヒーター」を
物に溢れた押し入れから出した
肌寒くなってきたと歳を重ねる度に
感じるなんて しかもまだ冬の始めなのに
仕方なく出したわけだ
電気代が多少かかるのが難点だが
春の暖かさというか
そんな温もりを感じるからオイルヒーターを
使うわけで
猫たちも何だか喜んでるみたいな
俺の妄想だが.....。
季節の中で、冬がなんとなく1番好きな
気がする
だから死ぬ時は冬がいい
弟は夏に死んだ 腐らずに死んだ
焼け死んだから
だから俺は冬に死ぬつもりだ
チャーム・マーキー
いろとりどりの葉が落ちて
土に還っていく匂いがする
澄んだ空気の匂いがする
星空が鮮明になってきた
そうだ、温かい珈琲を淹れよう
『冬のはじまり』
「冬のはじまり」
きれいに色づいた紅葉が終わり、病葉が落ち始める。
クリスマスやお正月まではまだちょっと遠い
このちょっとしんみりした空気がなんとなく好き。
ちょっとだけさみしい私が許される気がするから。
冬がはじまれば、私の抱えている人に言えない感情も
白い息に溶けて空に消えていく。
今年もはやく、冬がはじまればいい。
○○○○私の話○○○○
冬って聞くと、「雪が溶けると何になる?」という
質問を思い出します。
「水」という答えもありますが、
私は「春」と答える人に惹かれます。
(私自身は初めてこの質問されたとき「水」と答えました)
雪が溶けて、水になれば、春が訪れる。
現実的な人、先を見据える人、夢をみる人…
私が知っているよりも、もっともっと色んな人がいて、
世の中にはたくさんの疑問や謎があふれてて、
疑問の答えも一つじゃなく人の数だけある。
そんな当たり前のことを、この質問を受けたとき
私は知り、嬉しくなりました。
と、いう自分語り失礼しました(笑)
午後の陽差しが
部屋の奥までとどき
加湿器からたちのぼる
蒸気の影が壁に揺れる
めくるページが眩しくて
カーテンを少しだけ引いた
「冬のはじまり」
#260
ボクはいつも目ざめると思うんだ。
(あぁー楽しいユメだった。
はらぺこだ、もう起きよう)
そしてワクワクして起き出したとき、
楽しかった事だけしか覚えていない事に
がっかりする。
動く前にユメの事を
もっとよく思い出しておけばいいんだ。
…それを毎年繰り返してる。
もうそろそろ冬が始まる。
お腹はパンパンだし、
寝る所も決まった。
準備万端。
あとはこれから見る
楽しくて幸せなユメを
忘れない様に、
気を付けて起きるぞ。
大丈夫、暖かくなったって
慌てなければ、いいだけ。
楽しみだな。
春。
ーーー冬のはじまりーーー