『冬になったら』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
冬になると、もうなんでもいい気がしてきてとにかく寝ようと思う。
【冬になったら】
「冬になったら、何するか決めようか」
…俺はぼとりと、自分が食べようとしていた
アイスの欠片を落とした。
こいつは、この真夏に何を言っているのだろうか。
あまりの暑さに、頭がおかしくなったんだろうか。
疑問に思って顔色を伺うが、
そこには割と真剣に悩んでそうな横顔があるだけだった。
…暑いからこそ冬に思いを馳せてるのか?だとしても、幾ら何でも気が早すぎるだろ。来年のことを言うと鬼が笑うとすれば、数ヶ月先のことを喋ったお前のことを鬼は半笑いで見つめてるはずだ。
アイスへの集中が途切れた俺の耳を奪い取るように、
音量最大のセミの大合唱が主旋律へと躍り出る。
…買ったのが子供に嬉しく庶民が助かる某アイスバーでよかった。もしこれでハーゲン…を買ってたとしたら、俺はちょっと凹んでいた。
「…気が早すぎるだろ」
はあ、と目の前のコイツに対してなんだか暑さに対してだかセミへなんだか訳がわからないため息をつく。Tシャツが汗でベタついて気持ち悪い。アイスを食っても、涼しくなるのは口と腹だけだ。さっきまでは視界も涼しかったが、水色が消えた茶色の棒切れでは涼しさのかけらもない。というか、食い終わったアイスの棒を見てアイスに辿り着くような、そんな想像力は俺にはない。ついでに言えば元気もなかった。
地面に落ちたミニアイスには、どこから情報を得たのかアリがすでに数匹群がっていた。よかったなお前ら。冷たいんだから腹壊すなよ。俺の奢りだから感謝して食べろ…だなんてたかがアリに対して俺が恩を売っている間にも、隣の友人は冬にやることについて真剣に悩んでいた。
「まずは雪合戦してさ、その後はかまくら作るでしょ、
そんで、そん中で焼いた餅を食べる」
「涼しくなりたかったんじゃなかったのか…」
はぁ、と今度は明確にコイツに対してのため息をついた。本当に冬にやりたいことを考えていただけなのか。分かんない奴だな…
「予約しとこうと思って」
「予約?」
「…次の季節も、一緒に居られるかなんて
分かんないじゃん?」
にへら、とそいつは笑った。自信がない時の、下手クソな笑顔だ。…俺が言えた口ではないが。
確かに、俺達は今年受験生だ。だからこうして図書館での勉強の合間に、ベンチに並んでアイスを食っている。だから勿論、コイツの言う通り一緒に居られる時間は限られているが、それは来年の春からの話であって、今年の冬はまだ一緒にいられるはずだ。
「…ほら、周りの子達は急に塾に入り始めたじゃんか。だからさあ、こういう風に勉強できるのも時間の問題なのかなーって思って」
「…まぁ、確かにな」
なんとなく感じる重たい空気に、俺は視線をあげられずに落ちたアイスを眺めていた。既に人工のプールと化したアイスの中で、先ほどまで美味しそうに舐めていたアリが足をばたつかせている。アイスで溺れ死ぬというのは、アリにとって嬉しいことなんだろうか。
ぼーっと眺めていると、する、と俺の持っていたアイスの棒が友人に取られた。そして、そのまま溶けたアイスの水たまりへ突っ込み、ばちゃばちゃと足掻いていたアリを登らせて草むらへと放り投げた。おい、ゴミを捨てるな。俺は仕方なくがさがさとそいつが投げた草むらの中へと棒を探しに行く。
優しくないんだか優しいんだか分かんないね、とそいつは笑った。当たりつきでもないまっさらな木に何があると言うのか。アリは助けないくせに、ゴミは拾う。アリは助けるくせに、ゴミはそこら辺に捨てる。お互い似たようなもんだろ、と俺は呟いた。そしてそのまま、浮かんだ疑問を包み隠さず目の前の友人に問いかけた。
「…別に、わざわざ冬に予約しなくてもいいだろ」
カサ、とゴミ箱へアイスの棒を捨ててから振り返る。
「冬って、もう受験シーズン真っ只中だし…予約しても、遊べない確率の方が高いだろ。しかも、会えなくなるのは受かってからの話だし…なんでそんな中途半端な時期に予約するんだよ。いや、そもそも予約ってのもおかしいけど…」
もごもご、と考えていた疑問点を全てそいつにぶつけてみる。コイツの事なので、まともな答えが返ってくるとは思ってなかったが予想外にも友人は小さく口を開いた。
「……今年遊べたら、嬉しいし。
もし無理でも、来年にって言えるから」
どこかバツが悪いように、友人はぼそりと答えを零した。
…つまりあれだ。コイツは、今年のことを予約しながら、同時に来年のことも予約しようとしていたのだ。鬼は大爆笑間違いなしだが、俺にとってはその、何というか……
「…そんなに、……大事、か」
俺との時間が。友達同士で言うのは憚られたが、つい口から出てしまった。そりゃまあ嫌われていないとは思っていたが、その、まさかここまでとは。……本当は、“そんなに俺のこと好きだったのか”と…聞きたかった気持ちもあるけれど。この状況でこの関係性が破綻したら、冬どころかもう二度と会えなくなりそうだったのでやめた。…嘘だ。そんな勇気も、男らしさも何もかもが無かった。
「……やっぱいいよ。予約キャンセルする」
俺が引いているとでも思ったらしい彼女は、何ともない様子を装って予約をキャンセルすると言い出した。若干寂しそうに見えるのに心を痛める。…こんなに、そんなに大事だったのか、は今では俺の台詞だった。
地面には、まだ懲りずにアイスを隅から啜るアリがいる。
「…ダメだ。キャンセル料金が発生する」
ふるふる、と首を振って俺はキャンセルを否定した。驚いた彼女のまんまるい目がこちらを見ている。
何も考えずに今を楽しんでいたさっきまでの俺は、
きっと地面に落ちたアイスに群がるアリと同じで。
制限時間があるのなんて気づかずに、アイスに溺れて、
あの日の楽しい時間から動けなくなっていたはずで。
そんな俺をお前がこうやって救ってくれようとして、
それなのに、それを訳わかんないとこに捨てようとして。
…そんな事をするんだったら。
お前が捨てたその優しさを、俺が拾いに行くよ。
「冬になったら、何しような」
『冬になったら』 白米おこめ
猫達がコタツを求めている。
そーゆー季節だ。
ふわふわが、丸くなってあったまる。
冬の猫は絵になるな。
まるで、この季節のマスコットキャラみたいだ。
冬になったら、人間も一回り大きくなる。
着膨れて、出来るだけ肌の露出をカバーする。
夏よりも服を着込んで、それだけいろんな色を纏うようになるかと思えば、夏の装いの方がカラフルだったりするのは気分の為せる業か。
冬は、地味目な色が似合う季節だったりする。
冬になったら、青空も夕焼けも夜空も綺麗になる。
富士山だって綺麗に見える。
「空気が澄んでる」って、言葉だけでも綺麗なイメージだ。
最近、日本は四季がなくなってきて、二季だなんて言われてるけど、この季節がある限り、きっと生きている実感を得ることが出来ると思う。
冬は、厳かに年を越える季節だからかな。
冬になったら、街全体が浮かれ始める。
聞き慣れたメロディが流れ、紅白のおじいさんが出没し、トナカイが街に放たれる。
子供の頃は、欲しいものを考えてワクワクしてたっけ。
大人になった今は、「若者達よ、便乗商法に踊らされるなよ」なんて、夢もロマンもない現実主義が顔を出すけど、心の奥ではワクワクしてる。
冬は、人の心にリアルとファンタジーを与えてくれる季節だ。
猫達は日向ぼっこで気持ち良さそうに。
あったかい場所は猫達が知っている。
着膨れることもなく、澄んだ空も見上げずに、ファンタジーにもときめかない。
冬になっても、スタンスを変えない猫達はきっと、「何だか寒くなったにゃー、何でか知らんけど、寒くなったにゃー」を、ただただ繰り返して生きているように見える。
それが冬。
猫達にとっての、困っちゃう季節。
冬になったら
ココアが美味しい
コタツでミカン
凍えるくらい寒い
コートだけでは耐えられない
恋人が欲しい
「冬になったら」
お鍋
シチュー
スープ
ポトフ
煮物
みかん
美味しいものがたくさん
そして
夜通し雪が降ったあとの
凛とした空気
冬だけのお楽しみ
寒い。
でも一緒にいたら暖かさを感じられる。
心から愛せるあなたが私にくれる暖かさが、大好きです。
おまけにそんな冬も大好きです。
長袖のセーターで見えなくなるね、
わたしのひみつの真っ赤なおまもり。
大丈夫だよって、今なら言ってあげられるけど。
【冬になれば】
「――さんは天気予報みた?」
「みるような人に見える? 眼科いけ?」
「ひどいくね」
ボクの彼女は今日も毒舌だ
「今日は寒くなるよってハナシ」
「別に寒くないよ」
「ほんとに言ってる?」
すごく寒いと思うけど
「冬になったら」
冬になったら
このもやもやした気持ちが晴れたらいい。
気分が軽くなったらいい。
楽しいことがあったらいい。
春になったら
夏になったら
秋になったら
そうやって
時間が過ぎていく。
そして、
冬がくる。
また前の冬と同じことを思う。
冬になったら
#冬になったら
寂しさを埋め合わせる恋が
きっと花火みたいにそこかしこで打ち上がる
独りでいることに耐えられない時は
誰かを求めることも悪くない
たとえ全て分かり合えなくとも
分つ時間がそこにあればいい
大人だって男だって女だって
みんな平等にさみしくなるんだよ
“冬になったら”人の暖かさが欲しくなるよね
“冬になったら”こたつとか上着とかで体は温まるけど、心は大切な人の暖かさが必要だよね
それに、夏より冬の方が人の暖かさを感じられる
だから、冬っていろんな意味で暖かさが必要だよね
8月の君の誕生日、有名な曲になぞらえて半袖と長袖のシャツをプレゼント
これからもその先も一緒に過ごせますようにと言ったら
「何それ」と笑われた
冬になったらそれを着て一緒にどこかへいこう
これからいっぱい思い出を重ねて
家族が一人でも長期入院していると、心がけていても自然と食生活は自堕落な方に向かっていくものだ。
冬になると必ず身体を崩して入院する子供のためにも、ここで自分も倒れるわけにはいかない。身体が資本というのも身にしみてはいるが、いつもお見舞いの帰りに寄るスーパーで売られている弁当や惣菜に手が伸びる。期限切れ間近で安売りされる弁当と同じように、自分も命を易く削る。
たまには気分を変えて手を加えようとしたこともある。だがどんなに飾りつけても、結局は出来合いの弁当にインスタントの味噌汁が一品加わるだけだ。沸かした湯を注ぎいれるだけである。
真冬は日が暮れるのが早い。この慣れた病院からの帰り道も、だんだん闇に染まる時刻が早くなっていった。今では私が帰る時間には完全に暗闇だ。いつにも増して憂鬱になりやすく嫌になる。
いつも隣にいるはずの存在が数ヶ月いないだけでこんなにもか、とぼんやり回る頭をそのままに、自宅への帰り道を急ぎ足で進む。家路はずっと冷たい風が吹き荒び続けていた。
帰り着いた自宅は外とたいした寒暖差はない。玄関でスニーカーの紐を解いていると、いきなり腹が間抜けな音で鳴った。
落ち込んでいてもお腹は減る。当然の人間の摂理になぜか泣きたくなった。
さっそくビニール袋から取り出した弁当をこたつの上に置く。寂しさを紛らわすためにテレビの電源をつけて、粗末なゆうげを開始した。
ニュース番組を流し見ながら、冷めた弁当をもそもそと咀嚼する。
(歯磨きまで終わったかな。あとで電話しよ)
温めなおした乾燥ワカメだけの味噌汁をずずっと音を立てて啜る。味噌汁を全部飲みきりふと目を落とすと、弁当がほとんど手付かずの状態だった。
「ああー……しんど」
食欲を失った声は、自分のものとは思えないほどとても乾いていた。
昨日うちがこれ書いてたんだ…気づかなかった…。
皆さんお疲れ様です。明日からまた仕事や学校ですね…。
明日、うちはテストがあるようで、今すごく勉強しています。なんだかんだ偉いんですよね、彼奴。
もうすぐでクリスマスもありますしね。冬になったら、イベントが様々ありますね。
昨日、僕がなぜ現実にうちを出させるのかということを、うちが考察していたみたいですが。
やっぱり彼奴は鋭いですね。ほとんどその通りです。
彼奴は全部諦めています。この世の中のことについて、人間関係について、家族について。何もかも諦めています。
才能を得ることも諦めて。何もかも無駄な行動と思って日々暮らしているみたいですけど。
だからこそ出せると思いました。何もかも諦めているなら、僕らのように何もかも怯えたりせず、進めるかと思ったからです。
それ以外にも少し理由はありますけど、7割ぐらいはこれかなぁ、と。
私は、たまにうちが困った時とか、先生たちなどの前でよく出します。まだ人付き合いができる方なので。
俺は…まぁ、無理でしょう。人と会わせた瞬間即座に逃げると思います。
僕は絶対嫌です。人間と同じ空気の場にいるのも嫌なのにさらに隣にいるだとか…耐えられませんね。
最適なのは間違いなくうちです。うちしかいません。
いっても、彼奴にもメンタルというものは存在します。
だから、僕が出る時は出ます。一応、此奴らの主人格的立場ですし…。
彼奴にも心というものが存在しているようですから。
死ぬことも生きることも諦めた彼奴にもあるんだなとは思ったんですけどね。
冬になったら長袖にかえる
乾燥するから風邪をひきやすい
色々注意しなきゃ!
冬になったら
新たな居場所と 出会いに戸惑う
桜の春は 落ち着かない春
熱中症なり 食欲なくなる
それでも花火や 祭りに沸く夏
残暑が厳しい 短い秋でも
味覚の宝庫 食いしん坊の秋
クリスマスが来て 正月迎えて
家族の絆を 確かめ合う冬
冬になったら
冬になったら
今年も終わってしまいます
冬になったら
冬になったら
人との距離が近づきます
冬になったら
冬になったら
お鍋を囲んで話しましょう
かぼちゃの煮物を食べて、湯にゆずを浮かべて
ともすればここから冬が始まるわけだが、冬だなと感覚で思うのはクリスマスソングが聞こえ始める頃ではなかろうか。
赤やら緑が目立つ飾りをしまって、大掃除をして、一日飾りにならないように新年の準備をする。師走とはよく言ったものである。
これが終わればあとはゆっくり過ごせるだろう
かすかに雪が積もっていく音
こたつでみかんを剥いて、ストーブの上のやかんからお茶を入れる。
ごーんと音が響いて年が明けたら、
そっと布団をめくって、潜り込んでいる猫と新年の挨拶でもしようか。
冬になったら
凍えるような
白い吐息
肩寄せあって
あたたかい色
身に纏う
―冬になったら
仕事帰り、いつものように弁当を買いにコンビニへと寄る。
毎日毎日遅くまで仕事をするので、自炊する気力も時間もない。
前回早く帰れたのはいつだったか
もう思い出せない。
家に帰っては、すぐ布団に入る日々。
休日は休日で、疲れた体を休めようとやはり一日中寝ている。
お金があっても、どこにも行けない人生。
俺の人生とは一体何なのであろう?
そんな刺激のない人生で、唯一楽しみなこと――それが弁当選び。
小さな箱の中に作られた、美しい世界。
それを『どれがおいしいだろう?』と吟味するのが、何よりも充実した時間だ。
しかし目の前にあるのは、売れ残った幕の内弁当一つだけ。
今日は仕事が長引き、いつもより遅い時間に来たからだろう。
選ぶ楽しみがないが、残っている時点で幸運なのだ。
すっきりしない思いを抱えながら、売れ残った弁当に手を伸ばす。
だがその手は弁当に届く事は無かった。
「「あ」」
俺と同じように弁当を取ろうとした女性の手と、俺の手が不意に重なってしまったからだ。
「すいません」
条件反射で頭を下げる。
だが女性はなにも言わなかった。
もしかして怒らせた?
俺はビクビクしながら女性の顔色を伺うと、女性の方も驚いた顔をしていた。
「もしかして……
お兄ちゃん?」
お兄ちゃん?
だが俺に妹はいない。
『人違いですよ』
そう言おうとして、俺は思い出す。
妹はいないが『お兄ちゃん』と呼ぶ女の子はいたことを。
「もしかして、順子か?」
小学生の時、仲のいい女の子がいた。
隣の家に住む3歳年下の女の子で、俺によくなついていた
その子は俺の事を『お兄ちゃん』と呼び、俺も可愛い妹が出来たみたいで、よく一緒に遊んでいた。
本当の兄妹みたいに仲の良かった俺たちは、ある日離ればなれになった
順子の親の海外出張が決まったのだ。
それ以来、俺たちは出逢うことなく今に至る
「奇遇だね」
「ああ、びっくりしたよ」
「お兄ちゃん、元気だった?」
「仕事が忙しくて、毎日へとへとだ。
順子はどうだ?」
「私も同じような物かな……」
順子は力なく笑う。
子供の頃の、順子のヒマワリのような笑顔の面影はどこにもない
よく見れば目の下にクマが見える。
順子も苦労しているようだ。
けれどそれ以上会話が続かない。
言いたい事、聞きたいことがたくさんあるのに、なにも出てこない。
子供の頃、大人が呆れるほどお喋りをしていたというのに、今は世間話すらできない。
会えなかった空白の時間は、俺たちを他人にしてしまったかのようだ。
時間は残酷である。
とはいえ、ずっとこのまま立っている訳にもいかない。
この気まずい空気を何とかしようと、俺はなんとか言葉をひねり出す。
「弁当を持って行っていいぞ。
俺は大丈夫だから」
「いいの?
でもお兄ちゃんは?」
「家に帰れば非常食のカップ麺あるんだ。
たまにならカップ麺もいいもんさ」
「そっか……
じゃあ甘えて――
あれ?」
順子が間の抜けた声を出す。
弁当の方へと目線をやると、さっきまであったはずの幕ノ内弁当はどこにもなかった。
二人で戸惑っていると、レジから『チーン』とレンジの音。
レジの方を見れば、客が幕の内弁当を受け取っているのが見えた。
どうやら二人で話し込んでいる間、弁当を取られてしまったらしい
「ふふっ、お弁当取られちゃったね」
順子がおかしそうに笑う。
子供の頃と同じ、屈託のない笑顔。
「ああ、取られちゃったな」
俺もつられて笑う。
「あーあ、どうしよう。
私、お腹が減って餓死しちゃう」
と順子が目線を送ってくる。
ああ、懐かしい。
これは順子がおねだりするときの顔だ。
「じゃあ、俺のうちに来いよ。
カップ麺ならある」
「じゃ、お言葉に甘えて」
順子は俺の腕を取る。
「早くいこう」
順子は俺を、力強く引っ張っていく。
これも懐かしい。
よく順子に引っ張られて、遊びに連れていかれたっけ……
大抵はろくでもない目に会ったが、今となってはそれも懐かしい。
「分かったよ。
だから引っ張るな」
確かに俺たちは長い時間を失った。
でもそれが何だというのだろう?
過去は変えられない。
けれど神様の悪戯なのか、俺たちは再会することが出来た。
だったら、二人でまた一緒に思い出を作っていけばいい。
俺が心の中で決意していると、順子はクルリと回ってこちらを見る
「これからもよろしくね。
お兄ちゃん」
彼女はヒマワリの様に笑っていた
冬になったら
冬になったら
新しい私になる為の目標を立てよう
今は今で目標はあるけれど‥
今の目標が叶うかは分からない
今の目標が叶わないなら
新しい目標を立てて
少しでも願う私になりたい
私はわたしに正直になりたい
冬になってもまだ正直になれていないなら
冬になったら
正直である自分を認めて生きていこうと思う