家族が一人でも長期入院していると、心がけていても自然と食生活は自堕落な方に向かっていくものだ。
冬になると必ず身体を崩して入院する子供のためにも、ここで自分も倒れるわけにはいかない。身体が資本というのも身にしみてはいるが、いつもお見舞いの帰りに寄るスーパーで売られている弁当や惣菜に手が伸びる。期限切れ間近で安売りされる弁当と同じように、自分も命を易く削る。
たまには気分を変えて手を加えようとしたこともある。だがどんなに飾りつけても、結局は出来合いの弁当にインスタントの味噌汁が一品加わるだけだ。沸かした湯を注ぎいれるだけである。
真冬は日が暮れるのが早い。この慣れた病院からの帰り道も、だんだん闇に染まる時刻が早くなっていった。今では私が帰る時間には完全に暗闇だ。いつにも増して憂鬱になりやすく嫌になる。
いつも隣にいるはずの存在が数ヶ月いないだけでこんなにもか、とぼんやり回る頭をそのままに、自宅への帰り道を急ぎ足で進む。家路はずっと冷たい風が吹き荒び続けていた。
帰り着いた自宅は外とたいした寒暖差はない。玄関でスニーカーの紐を解いていると、いきなり腹が間抜けな音で鳴った。
落ち込んでいてもお腹は減る。当然の人間の摂理になぜか泣きたくなった。
さっそくビニール袋から取り出した弁当をこたつの上に置く。寂しさを紛らわすためにテレビの電源をつけて、粗末なゆうげを開始した。
ニュース番組を流し見ながら、冷めた弁当をもそもそと咀嚼する。
(歯磨きまで終わったかな。あとで電話しよ)
温めなおした乾燥ワカメだけの味噌汁をずずっと音を立てて啜る。味噌汁を全部飲みきりふと目を落とすと、弁当がほとんど手付かずの状態だった。
「ああー……しんど」
食欲を失った声は、自分のものとは思えないほどとても乾いていた。
11/17/2024, 1:17:33 PM