『二人ぼっち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
クラス分けで友達と同じクラスになった。
だけど、二人だけでばかり話してたせいか、期待していた友達は出来なかった。
それでも、ふたりでいれば何も怖くない。
お題『二人ぼっち』
「ねぇ、まだ着かないの?」
「んー……そうだなぁ。もうちょっとしたら見えると思うんだけど。」
エンジンを嘶かせながら、僕らは獣道を進んでいく。旅行に行こうと言い出したのは僕だったか彼女だったか。
「ふぅん……ねぇ、考えてくれた?結婚の話。」
「あー……あぁ、うん。ちゃんと考えてるよ。お父さん達にもせっつかれてるしね。」
「そうね……私の方にも『孫の顔はまだか!』なんて……気が早すぎるわよねぇ……」
僕らは、自分達の住む都会の空気から離れたかったのかもしれないと、ふと思う。仕事と恋人の為に送る日々は刺激的で、毎日に全く飽きが来ない。両親との仲も良い。けれど、どこか漠然とした不安感と焦燥感がある。僕達はいつも何かに追いかけられて生きている。それが僕らに祝福を与えようとしてくれる優しい天使なのか、はたまた丸呑みにする機会を虎視眈々と狙っている蛇なのか、立ち止まって後ろを振り返る余裕は僕にはなかった。走り続けるだけで日々は過ぎていく。
「……そろそろ、着きそうだ。」
「ん、そっかぁ……ようやくかぁ〜」
森を抜ければ、そこには開けた草原。空には明るく赤く光る星が1つ。
「はぁ……ふふ。寒いね。」
「……そうだね。」
彼女が首に巻いたマフラーの先っぽをこちらに渡す。僕はそっとそれを受け取り、自分の首に巻いた。
草原に腰を下ろす。
音はない。人はいない。娯楽施設も、信号機もない。けれどそこには確かに時間があった。
星々がゆっくりと流れていく。それは、まるで時間までもがゆっくりと引き伸ばされていくようで、空を見ているだけなのにどれほどの時間が経ったのかもわからない。
左腕に付けた時計を見れば、今が何時何分が正確にわかるのだろう。けれど、そうする気にはなれない。
「…………ねぇ」
どれくらいそうしていたかわからなくなって、彼女が口にする。
「…………帰ろっか。」
「…………そうだな。」
車に二人で乗り込み、来た道を帰っていく。ふと時計を見てみれば、1時間も経っていなかった。けれど、それはあの星々の輝きを否定することにはならなかった。
2人だけの時間は、日々の喧騒の中でも必要な、後ろを振り返る為の時間になったのだから。
眩い光に照らされ踊り狂っている。
今日は、祭りだ、祝いだ。そう言って十日も。
悪魔は、囁く。2人ぼっち。
踊り狂っている者、飲み狂ってる者、祝い狂っている者、
みんな、見事な桜を前に舞っている。 一人の人間が2人ぼっち。
そう囁くと、悪魔が顔を出す。一人の人間が言う2人ぼっち
ってどんな意味? 悪魔が言う呪いの言葉。桜の悪魔になり
、2人ぼっちになった。私とアナタ、あなたと私、桜の悪魔
は、一人の人間にだけ話せ、誘惑する。・・・・・・!
目が覚めると、全員死んでいて桜が綺麗に咲いている。
ふたりぼっち
「きみはつまらなくないのかい?」
境界の魔女にそう声をかけられたシキはその言葉が理解できないというようにきょとんとした表情で「つまらない?」と境界の魔女の言葉をなぞった。
「僕なんかと契約して可哀想だと思ってね。こんな何もない、狭い空間にふたりぼっちでさ」
なにかに不貞腐れたような顔で境界の魔女は机に頭だけを乗せて突っ伏したまま足を浮かせてぱたぱたと動かしている。
ああいけないな、とシキは顔を少ししかめた。うちの主ときたら普段は人を取って食ったような態度と言葉で堂々としているというのに。急に自信やら自己肯定感やらを全て失ったようになってしまう。
磨き途中だったカトラリーを音を立てないようにそっと置き、境界の魔女の横まで歩み寄ったシキはその長い脚を躊躇なく折り、彼の主人へと跪いてその手を恭しく握った。
「主」
「うん」
「俺は怒ってます。こちらを向いてください」
「え」
予想外のお叱りに境界の魔女は首をシキの方に向けながら猫のような目をまんまるくさせる。
「な、なんで怒るのさ」
「俺は主がご自分のことを「僕なんか」というのが1番嫌いです。主は俺の唯一にして至高の主、アールグレイと境界の魔女様です。俺の主を貶すのはおやめ下さい。分かりましたか?」
「いやでも」
「分かりましたか」
「疑問符が消えた…」
「分かりましたね」
「あい…ごめんなさい…」
自分の従僕であるはずのシキの圧に根負けし、つい謝ってしまった境界の魔女は、なぜ僕が怒られるはめに…と口をへの字に曲げた。
「先程のお話ですが、ここは何もない場所ではないです。貴方や俺が取り扱う数々の品があり…何よりあなたがいる場所です。それだけで満点。セフィロトずっと居たい空間ランキング堂々の1位(俺調べ)、どんなアミューズメントパークも裸足で逃げ出すでしょう」
「おおう、うちの子いつの間にこんなに拗らせて…」
とんでもないことを真顔で言い切るシキを見てもしかして育て方ミスったかな?と少々不安な気持ちすら湧いてくる。
「そしてなにより」
「まだあるのかい?!もういいよ失言だったよ撤回するからこの話はやめよう」
「なにより」
「ひーんこの従者全く言う事聞かないんだがー!」
「貴方とふたりの空間なんて至福以外のなにものでもありません。来客など全て断って永遠にこのままふたりで居たいものです」
そこでシキは握っていた境界の魔女の手を持ち替えてそっと唇を落とす。
「…ーふたりぼっち、最高じゃないですか」
そのまま自身の顔の高さまで持ち上げたその手に頬擦りしつつうっそりと微笑みながら「ああ、でも」と言葉を続けた。
「ふたりっきり、って言い方の方が俺は好きです。何か2人のヒメゴトのように聞こえませんか?」
境界の魔女は紫水晶の瞳をさらに大きく開いてから、完敗だ。と呟いて、堪えきれないというようにふふと笑った。
二人ぼっち
君と僕とで、二人ぼっち
悪くないね、君を独り占めできるから。
僕だけの君でいて欲しい、これかもずっと。
答えなんて なくていい、全ては君の笑顔の中にあるから。
―ふたりぼっち―
私は誰かと居るのが苦手
あの子は人と話すのが苦手
でも私たちいつも一緒に居る
私が本を読んでる時
あの子は音楽を聴いている
私がゲームをしている時
あの子は絵を描いている
お喋りする時もあるけれど
お互いバラバラな事してる方が多い
会話がなくても側に居るだけで安心する
そんな関係でも良いじゃない
上を向いて歩こうの歌詞の中では『ぽっち』なんだよ。いつから半濁点と濁点分からなくなったかが知りたい。流れ的に、『これっぽっち』から来てるはず。
ぼっち、って言われると孤独感強いけど、やーいぽっちーっていわれても途端にかわいくなるわ。
二人。78億分の2は確かにこれっぽっち。
2人なら怖くないね。
満天の星空の中、夜に照らされた貴方はそう笑った。
そう、2人だったら。
ひとりぼっちよりもふたりぼっち。
愛する人と居たら、きっと寂しくないし、怖くない。
いつまでもこうやって居られたらいいね。
『二人ぼっち』
ふたりぼっちの午後
ドーナツとマニキュア
心の距離は近づく
陽のあたるリビングで
コーヒーを飲みながら
ふたりは黙々と
それぞれの作業をする
彼女は指先に色を塗り
彼はドーナツをかじる
目線は合わないけれど
何かが通じ合っている
そんな時間が流れて
気づけば日は暮れて
今日も穏やかな休日が終わる
#ふたりぼっち
【二人ぼっち】
いつからだろうか前を向いて歩くようになったのは・・・
いつからだろうか毎日が楽しく感じるようになったのは・・・
この広い世界で私はいつも一人ぼっちだった。
そんな私を見つけて友達になってくれた君のおかげで私は毎日が楽しい。
この広い世界で今、君と私は二人ぼっち・・・
ぼっちとぼっちが集まったら二人ぼっち。二人だけならうるさくないし、二人なら寂しくないよ。
私は麗叶(れか)中学2年生。私はクラスでいつも一人ぼっち。自分から話しかけるのが苦手だからなのかな?
志「ねぇ今度の日曜日遊ばない?」コソコソ
夕「いいよ。あ、でもあいつは抜きでいいよね?」コソコソ
藍「もちろん。だって話しかけても小声で何言ってるか分かんないんだもんw」コソコソ
っ!みんなそうだ。いつも私抜きで遊ぶ。志織も夕凪も藍那も小学校の時は仲良かったのに・・・
また一人ぼっち。
夕「ねぇ健人もあそぼ~よ(笑)」
健「え?俺?あ~ごめん。俺その日予定あるわ」スタスタ
藍「そう?じゃあまた今度」
《放課後》
はぁ~今日も疲れた。帰ろうかな。
健「なぁ」
え?健人?
麗「健人?まだ帰ってなかったの?」
健「まぁ」
麗「っていうか、志織たちと遊べば良かったじゃん。本当は予定なんか無いんでしょ?」
健「まぁな。お前こそいつも一人でぽつんといるんじゃなくて、話に入ってこいよ。」
麗「話すの、、、あんまり好きじゃないから。」
健「そ。なぁ」
麗「なに?」
健「お、俺が遊びに行ったら一人になるだろ?」
あ、そういうことだったんだ。
健「一人ぼっちになんてさせねぇから。ちゃんと二人ぼっちだからな。」
麗「ふふっ。うん。」ニコ
一人ぼっちだと寂しいのに二人ぼっちだとこんなにあったかいんだ。
ありがとう。健人。
お母さんが眠っている間に、妹と二人で家を抜け出した。
ニュースで今日は流星群が見られる日だと知り、こっそり計画していたのだった。
学校の裏山の木と木の間を抜けて、少し広いスペースに出る。
そこに持ってきていたレジャーシートを広げ、2人で並んで寝転がった。
レジャーシートが思ったよりも小さく2人の体の大半がはみ出てしまい、思わず笑ってしまった。
改めて空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。
しかし流れ星はいっこうに流れてこない。
てっきりアニメみたいに目で追えないほど流れてくるものだと思っていたので、少しがっかりしてしまった。
それに比べて妹の方は満足げに目をキラキラさせて星を眺めている。
確かに星はきれいだ。
毎日の忙しない日々と比べるとこっちの方がよっぽど良かった。
いっそのこと、このまま死んでしまえたらいいのにと思う。
いつものような暗い気持ちで終わるよりも、この幸せな気分のまま死んでしまった方がいいような気がした。
「2人ぼっちだね。こうしてると、自然と統合されたような感じになる。」
「……、たまに難しいこと言うよな。」
「そう?」
そうだよ、と言って、少しだけ無心になって空を眺めることにした。
その時、空に白い線を描いて、流れ星が流れた。
二人ぼっち
「あのさ、もしこのまま誰も見つけられなかったらさ…」
彼はどこか遠くを見つめながらぽつりとつぶやいた。
「ずっと二人ぼっちかな…」
彼女もまた遠くの景色を見つめていた。
二人が見覚えのない森の中で目覚めたのは十日前のことだった。お互いに面識はなかったが、年齢も同じで話もあったことからすぐに意気投合し、協力して他の人間を探した。
森から抜け出し、見たこともない生物をやり過ごし、獣道を頼りに生い茂る草木を掻き分け、知らない果物を食べ、ただひたすらに歩いた。
しかしどれほど探しても人も街も人工物も見当たらない。飛行機の一つも飛んでいないのである。
「人類は滅亡したのかな」
「私達知らない間に物凄く未来に…来たってこと?」
聞きたくなかった言葉。言いたくなかった言葉。彼女の言葉が一瞬詰まる。不安に首を絞められて声が死んでしまいそうだった。
「…南に行こう、少しづつ寒くなってる、少しでも南下すれば暖かいところに行けるかも」
彼はぎこちなく笑った。彼女もぎこちなく笑った。
数ヶ月後、二人は冬の只中にいた。
木や石で武器を作り大型動物を倒し、その毛皮を剥いで鞣すと防寒具にした。
草を編み、縄を作ってサンダルを作る。丈夫そうな蔦を見つけると編み上げて簡易な籠を作った。
「私達ってさ、逞しいよね」
「うん、俺たち凄いよな」
二人は洞窟を見つけ、そこに居を構えた。これから冬がますます深くなれば移動はできない。春までの一時的な住居としては中々の物件だった。
冬の星空を見ながら二人は長い時間を過ごし、次の冬が来ても二人はまだその洞窟にいた。彼と彼女は父と母になり、子供は健やかに育っていた。
次の年もその次の年も、その洞窟で過ごすうちに二人はようやく他の人類を探すことを諦めた。
「それに、もう二人ぼっちじゃないでしょ?」
「うん、もう違うな」
二人は子どもたちと手をつなぎ、言葉や文字、星や季節の巡りを語り、苗木から育てた果樹や、食べられる植物の栽培を成功させ、魚釣りや狩りの仕方を教え続けた。
数十年後、彼も彼女も永く生き、大勢の家族に見守られながら幸せそうに息を引き取った。
子供たちは、代々最初の祖先である二人のことを語り継いだ。あの二人は冬の星を眺めるのが好きだった。
北の空を指し、ミライノホクトシチセイと呼んだ。今は形が違うけど、あと何万年もするとヒシャクみたいな形になるんだよ、と。二人はたまにお互いのことをふざけてアダムとイブと呼んでいたが、子孫たちがその意味を知るのは何万年も後の話である。
あの頃にはきみがいて
学校に行けなかったわたしの
いちばんのともだちだった
きみは人間みたいな表情で
わたしをいつも見つめてくれた
ひとりで食べるごはん
ひとりで食べるおやつ
コップの中のソーダ水がはじけて
その向こう側にいつでもわたしは
希望のかけらを見つけようと
目をこらし
そしてあきらめた
きみはもう
遠いところへ行ってしまった
本当はきみのこと
思い出さないようにしていた
胸がひどく痛くて
心が壊れてしまったんだ
わたしはこんなにも歳をとり
きみのいない世界で生きている
今は新しい家族と一緒に
今日もこうして生きている
きみと一緒だった夏を
春を 秋を 冬を
今も大切に思う
ふたりしか知らない秘密も
やがてこの地に還るだろう
そして空に還ったきみを
いつかまた追いかけてみたい
きみとの時間こそが
わたしを希望へと導いたのだ
#二人ぼっち
お題《二人ぼっち》
どんな痛みも分かち合える。
二人だから。
二人なら、大丈夫だ。
3月22日は、さくらねこの日だそうですね。それにちなんだワケでもありませんが、ネコ目イヌ科キツネ属のおはなしです。
最近最近、都内某所のアパートに、人間嫌いと寂しがり屋をこじらせた捻くれ者が、一人ぼっちで
「おとくいさんおとくいさん、おかげん、いかが」
住んでいた筈なのですが、
ひょんなことから、この一人ぼっちの部屋に、最近週に1〜2回、不思議な二足歩行の子狐が、不思議な不思議なお餅を売りにやって来るのでした。
細かいことは、気にしません。子狐なんて童話の中じゃ、大抵しゃべって歩くのです。
「これ、ととさんから。かっこんとー」
さて。一人ぼっちの部屋あらため、捻くれ者と子狐、二人ぼっちの部屋です。捻くれ者、何が祟ったか悪かったか、仕事が終わって帰ってきてから、熱を出して、寝込んでいます。
子狐特製「風邪ひきさんスペシャル」、不思議なお餅を食べてから、だいぶ具合は良くなりました。
「これかかさんから。お弁当。朝いっしょに食べる」
子狐こんこん。お餅を買ってくれるお得意様、捻くれ者の症状を、ノートにクレヨンでぐりぐり書いて、
都内某病院で漢方医として労働し納税している、父狐に見せて、お家の常備薬から葛根湯を、捻くれ者に持ってきたのでした。
細かいことは、気にしません。このおはなしでは狐も葛根湯を飲むし、人に化けて働くのです。
「風邪がうつる。ありがたいが、早く戻れ」
捻くれ者こんこんこん、顔を熱でほてらせて、ちょっと咳が出ています。インフとコロナのダブルチェックなキットでは、双方陰性だったので、まぁまぁ、ひと安心ではあるのですが、
「かかさん、『狐は人間の風邪ひかない』って」
「あのな。もしこれが、新型」
「ととさんが、『今陰性なら、多分大丈夫』って」
捻くれ者には、大事な大事な仕事があります。出勤こそ無理でも、在宅で仕事の用意だけは、しておきたいのです。そこに子狐がやってきて、問答無用で寝かしつけてくるのでどうしよう。
「ねんね、ねんね」
こんこん。子狐、父狐の言いつけで、風邪ひきの捻くれ者をベッドに押し込み、一緒にお布団に入ります。
「一応聞くが、エキノコックスは、」
「ととさん、エノキキノコ聞かれたら、『野ネズミ食べないし、自宅も衛生面は人間同様だし、毎日お風呂も入ってるから、心配ありません』って言えって」
「は……、はぁ………」
漢方飲んで、体をぽかぽか温めて、8時間キッチリぐっすり休んだ捻くれ者。結局ただの風邪だったらしく、翌日すっかり元気になって、2日後の昼からスッキリ出勤していきましたとさ。
二人ぼっちの、不思議な不思議なおはなしでした。
細かいことは、気にしません。このおはなしの中の風邪は、不思議な子狐のお餅を食べて、漢方飲んでぐっすり寝れば、かならずケロっと治るのです。
まっさらな大地の上に立ったキミは
ボクに手を差し伸べる
「世界開拓し放題だね」
そうボクらはふたりぼっち
でも不思議と怖くないのはキミがいるから
お題「ふたりぼっち」
二人ぼっち、二人ぼっちか
一人ぼっちよりも寂しくなくて
一人ぼっちよりも聞きが良くて
一人ぼっちよりも苦しくて
でも、今の僕にそんな偉いことは言えない
一人ぼっちになった君と
二人ぼっちを逃した僕は
まるで一緒のような
僕らみたいな
こんな二人他にはいない
これでやっと
二人ぼっち
※軽くBL要素がありますのでご注意ください。
「あのさ、あんた邪魔なんだよね。いつでも彼と一緒にいてさぁ……いい加減離れてくんない?」
ああ、うざったい。今日も、なにも知らない奴の相手をしないといけないなんて。
「ちょっと聞いてるの?」
「うっせーなぁ。離れるのはお前の方だっての。もしかしてお近づきになれるって期待してんの? ムリムリ」
顔が真っ赤になっていくさまはちょっと面白い。
「あ、あんたが彼のなにを知ってるってのよ! いい加減言わないでよ!」
「あ? お前こそなに言ってんの?」
こっちの声にびびったのか、思いきり唇を噛みしめたままで反論はなかった。誰も彼も度胸がなくてつまらない。
「あいつのことよく知ってんのはおれだけなの。おれ以外知る必要もないの。あいつもおれ以外のことはどうでもいいって言ってるし。嘘だと思うならあいつに訊いてみたら?」
これ以上の無駄話は必要ない。背中に投げつけられる罵倒の数々はただの雑音にしか聞こえなかった。
「お帰り。ごめんね、毎回面倒かけて」
「気にすんなって。お前だって同じ目に遭ってるだろ」
「僕はいいんだよ。ちょっと警告してあげてるだけだから」
彼は自分以外の人間には驚くほど冷淡だ。さっきの奴なんかその姿を見たらみっともなく泣き出してしまうんじゃないか?
「あーあ、今回の人生はなかなか落ち着かないね。学生だからかな」
「大学生になれば実家出れるし、二人で過ごす時間も増える。もう少しの辛抱だ」
自分たちは、前世からのつながりを保ったまま転生を何度も繰り返している。
今回の人生では、自分たちは「幼なじみ」という関係のようだった。
――次生まれ変わったときも、必ず二人で生きて、二人で死のう。
最初に交わした約束を、今も叶え続けている。
負担? そんなことは全然ない。
だって、彼は他の誰も変わることのできない、自らの命と同じくらい大切な人だから。
次生まれても、またその人と生を共にしたいと願うのは当然だろう?
彼からのキスに思わず笑ってしまう。ちょっと食むように唇を包むやり方は、何度生まれ変わっても変わらない。
「今回のおれ達は恋人同士じゃないだろ?」
「あれ、そうだったっけ?」
すっとぼけた声にまた笑う。まあ、今さらではある。
きょうだい、親友、仲間、恋人――いずれも、何度も経験してきた関係だけど、どれも正解で、外れでもある。
誰よりも大切な存在。
自分の世界に必要不可欠な存在。
それだけわかっていれば充分なのだから。
お題:二人ぼっち