3月22日は、さくらねこの日だそうですね。それにちなんだワケでもありませんが、ネコ目イヌ科キツネ属のおはなしです。
最近最近、都内某所のアパートに、人間嫌いと寂しがり屋をこじらせた捻くれ者が、一人ぼっちで
「おとくいさんおとくいさん、おかげん、いかが」
住んでいた筈なのですが、
ひょんなことから、この一人ぼっちの部屋に、最近週に1〜2回、不思議な二足歩行の子狐が、不思議な不思議なお餅を売りにやって来るのでした。
細かいことは、気にしません。子狐なんて童話の中じゃ、大抵しゃべって歩くのです。
「これ、ととさんから。かっこんとー」
さて。一人ぼっちの部屋あらため、捻くれ者と子狐、二人ぼっちの部屋です。捻くれ者、何が祟ったか悪かったか、仕事が終わって帰ってきてから、熱を出して、寝込んでいます。
子狐特製「風邪ひきさんスペシャル」、不思議なお餅を食べてから、だいぶ具合は良くなりました。
「これかかさんから。お弁当。朝いっしょに食べる」
子狐こんこん。お餅を買ってくれるお得意様、捻くれ者の症状を、ノートにクレヨンでぐりぐり書いて、
都内某病院で漢方医として労働し納税している、父狐に見せて、お家の常備薬から葛根湯を、捻くれ者に持ってきたのでした。
細かいことは、気にしません。このおはなしでは狐も葛根湯を飲むし、人に化けて働くのです。
「風邪がうつる。ありがたいが、早く戻れ」
捻くれ者こんこんこん、顔を熱でほてらせて、ちょっと咳が出ています。インフとコロナのダブルチェックなキットでは、双方陰性だったので、まぁまぁ、ひと安心ではあるのですが、
「かかさん、『狐は人間の風邪ひかない』って」
「あのな。もしこれが、新型」
「ととさんが、『今陰性なら、多分大丈夫』って」
捻くれ者には、大事な大事な仕事があります。出勤こそ無理でも、在宅で仕事の用意だけは、しておきたいのです。そこに子狐がやってきて、問答無用で寝かしつけてくるのでどうしよう。
「ねんね、ねんね」
こんこん。子狐、父狐の言いつけで、風邪ひきの捻くれ者をベッドに押し込み、一緒にお布団に入ります。
「一応聞くが、エキノコックスは、」
「ととさん、エノキキノコ聞かれたら、『野ネズミ食べないし、自宅も衛生面は人間同様だし、毎日お風呂も入ってるから、心配ありません』って言えって」
「は……、はぁ………」
漢方飲んで、体をぽかぽか温めて、8時間キッチリぐっすり休んだ捻くれ者。結局ただの風邪だったらしく、翌日すっかり元気になって、2日後の昼からスッキリ出勤していきましたとさ。
二人ぼっちの、不思議な不思議なおはなしでした。
細かいことは、気にしません。このおはなしの中の風邪は、不思議な子狐のお餅を食べて、漢方飲んでぐっすり寝れば、かならずケロっと治るのです。
3/22/2023, 4:14:37 AM