『スリル』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
手すりに掴まり、電車の揺れに身を任せながら
一人の男がため息をつく。
会社では上司に責められ、家では嫁に冷たくされ、
身も心も限界に達していた。
「やよい駅~ご乗車の際は──」
人がどっと押し寄せ、ぎゅうぎゅう詰めになる。
最寄り駅までの道のりは長い。
ふと、甘い匂いが男の鼻を掠めた。
目の前に立つ女子高生から香るものだ。
そっと太ももを撫でると、
女子高生はわずかに身を震わせる。
期待通りの反応に男はニヤリと口角を上げた。
これが最近のストレス解消法だ。
標的はいつも大人しそうな相手を選ぶ。
おかげで今まで一度も訴えられた事がない。
下手すれば仕事も家庭も失う恐れがあるが、
このスリルがたまらない。
「きさらぎ駅~ご乗車の際は──」
次の駅につくと、女子高生が男の方へと振り返った。
「一緒に降りませんか?」
顔も声も想像以上にかわいい。
断る理由がなかった。
その後、男の姿を見たものは誰もいない。
お題「スリル」
人生は上手くいくことばかりではない
むしろ上手くいかないことの方が多いだろう
それでも挑戦を続ける人々が居る
そんな人たちが掴みたいものを掴んだ時
人生大逆転の美しいお話が生まれる
成功者には不思議とそんな人が多い
教科書通りに生きるのではなく、
自分の興味に従って、挑戦的に生きる
そんな人生が格好いいと思う
11.12 スリル
▼ スリル
(君に気付かれないように視線を送る)
(五分気付かれなかったら俺の勝ち)
その背中をいつも見て来たけれど、どうか今は振り向かないで。
今日のシャツも似合ってる。
襟が折れているのはわざとかファッションか。
襟足も軽く跳ねている、訳ではなくて。
きっと君のオシャレ。
あまりオシャレとは言えない俺は、その君の変化に感心したり驚いたりする。
いつだって発見でいっぱいだ。
(あと三十秒、二十、十、あ)
「何」
照れ臭そうに振り返った君に、始めから負けていたのだとようやく気付いた。
作品2 スリル
空を飛ぶというのはスリルがあってとても気持ちいいらしい。彼らに聞いてみたから知識にあるだけであって、人魚の私にはよくわからない。けれど、自由に羽ばたけるのを、羨ましいなと思う。そもそもスリルってなにかしら?彼らの言うことはよくわからない。
『彼ら』と呼ぶのは何かおかしいな。あの種族は性別というものを持たないらしいから。これは、50年くらい前に亡くなった祖母から聞いた。そして『彼』とは雄を指すというのもだ。これは私の200年という短い人生経験から学んだ。
けれど、他にいい感じの言いようがあるかしら?
少し悩んでみるけれど、やっぱりわかんない。いいわ、『彼ら』で。別に思考を読まれているわけではないのだし。
私はいつもこういうことばかり考えている。ただ一人、砂浜のきれいな海辺で、人魚にしか歌えない特別な歌を歌いながら。陸に出ているときは尾が足に化けるから、人間たちからすると同じ生物に見えてるでしょうね。やっぱり偽物の足で歩くのは下手だけど。
そんなことを考えながら歌っていると、ふと視線を感じた。
いつものあの子だわ。彼らの中でも特に真っ白で、大きな翼を持ったあの子。
最近よく私の歌を聞きにくるの。バレてないつもりで隠れているのでしょうけど、生憎初めて聴きに来てくれたときから気づいているわ。
あのときの私を見たときの瞳!あれはまるで私に恋してるみたいだったわ。
日が沈んでしまった。家に帰る。母が夕飯の準備をしていた。ただいまーといい、いつものようにご飯を食べ、片付け、眠る。眠る前にはいつも母とお話をしている。陸に上がっていることは私だけの秘密だ。何を聞こうかしら?そうだ、スリルという言葉の意味について聞こう。
お母様、スリルってなあに?
スリルっていうのはね、簡単に言えば、ハラハラしたりドキドキしたりすることだよ
今日も陸に上がって歌を歌う。きっとあの子も来るでしょうね。あの子、私が人魚だと知ったら、どんな反応をするのかしら?
⸺ガサ
後ろで何か小さなものが落っこちた音がした。気になって音の近くまで行くと、怪我をした小鳥が落ちていた。可哀想に。血の匂いもするわ。
動物に襲われないところにおいてあげようかしらと、小鳥を手に持った。その瞬間小鳥が暴れ出し、血の匂いが一気に強くなった。ああ、なんてかわいそ、う、、、に……
オイシソウ……
一瞬周りの音が聞こえなくなる。
私は今何を思った?可哀想?いやそのあと。オイシソウ?美味しそう?なんで?
小鳥を持っていない方の手を見る。血がベッタリとついていた。もう片方には羽が赤くなってきた小鳥。とても強く香る血の匂い。
急に意識がなくなった。
気づくと両手は真っ赤に染まり、あの小鳥のものだと思われる羽が、私の周りに散らばっていた。口に違和感を感じ、そっと吐き出してみると、小鳥と思わしき肉塊が出てきた。
私は怖くなって、その場を離れた。
頭の中が、『もっと食べたい』で埋まっていく。『美味しい』とも思ってしまう。胸がおかしいくらいにドキドキしてる。
ドキドキ?最近聞いた言葉だわ。そうよ、この前の夜お母様に聞いたときのだわ。なぜだか、さっき感じていた恐怖が次第に消えていく。
すごいドキドキしてる。これが『スリル』ね!スリルって美味しいのね!
あの日以降、私はこっそり小鳥を食べるのにハマってしまった。日が沈んで、誰もいなくなったとき。小鳥がかかるように罠を作り、かかったときだけ少しだけ食べる。とても美味しい、私だけの味。誰にもバレちゃいけない。
そしてかわらず、海辺で歌も歌っている。あの子も変わらず、聴きにくる。あの子も翼を持っているわ。あの子は美味しいのかしら?
ある日、夜が来るのを楽しみにしながら歌を歌っていると、隣に人が座ってきた。誰かしら?
あの子だわ。真っ白な翼が穴だらけになって、血の匂いがすごいする。なぜ?
驚いたけど、これはいい機会だわ。思わず笑みが溢れる。この思いに気づかれないように、いつもどおりにしなきゃ。
人魚だけが歌う歌を、この子のためだけに今歌う。さあ、早く意識よ崩れなさい。
少しぼーっとしてきている。あと少しよ。
私は立ち上がる。この子も立ち上がる。足が痛むのを我慢して、海の方へと歩いていく。この子もついてくる。あと少し、あと少しよ。
海に潜る。この子も潜る。ああ、やっと来たこの瞬間が!
足はもう隠す必要なんてないわ。元の私を見せてあげましょう。でも可哀想に。もう意識はないのね。最期に聴く音が人形の歌でよかったわね。幸せでしょう?
大きく口を開ける。反してこの子の眼は閉じていく。この子の意識が完全になくなったのがわかる。喉の奥からギュルルと音がなる。
さあ、あなたのスリルの味を教えて!
こちらの作品は、自身が以前書いた、作品1 飛べない翼の、「彼女」目線のつもりで書きました。単体でもわかるようにしましたが、良ければもう一つの方も読んでみてください。どうして、「あの子」の翼が穴だらけになったのかが分かります。多分面白いと思います。
君が見てない隙を狙って「大好き」と呟くのが私のマイブーム 聞こえるか 聞こえないかのスリルと意気地なしのこの想いを昇華させるにはちょうど良いと思ったからだ
もうこのままでもいいや そう思ってたのに
「俺も好き」と君の声
死んでもいいわ
私は配信者として活動している現役高校生。今日の企画は心霊スポットでの歌みた配信!なんで心霊スポットなのかって?だってそうしたら色んなスリルがあるでしょう?例えば幽霊に脅かされたり呪われたりとか、あるいは立ち入り禁止の心霊スポットに忍び込んだことがバレるとか、変質者が出るかもとか。そんなスリル満点の場所で配信するのって絶対楽しいじゃない。だから心霊スポットで配信するの。普段感じることの出来ない恐怖と快感。それを味わうためにここに来たんだから。さぁ、今日の配信では何が怒るかしら。ちゃんと見届けてね。
「はーい!今日も始まりましたAMIチャンネル!今日は最近話題の心霊スポットで怖い歌を歌って何が起こるか検証したいと思います!しっかり見届けてねー?」といつも通り配信を始めた。最初の10分はいつも通り何事もなく進んでいた。なのに、2曲目を歌ってる途中からコメ欄が荒れ始めた。
「え?どーしたの?なんかコメ欄荒れてるんだけど」
ファンのコメントのほとんどが『 後ろ見て』『 後ろの人誰?』『 そもそもさっきから変な声聞こえね?』ばっかり。何かがおかしい。そう思ってファンに向かって「なになに?どういうこと?後ろって何も無いはずでしょ?だって後ろは壁だもん!誰かちゃんと説明してよ!」と言うと『 後ろに男の人の顔が』とか『 壁から男の上半身生えてる』とか『 なんか唸り声みたいなの入ってる』とか書かれてる。恐る恐る振り返るとそこには不気味な笑顔の男が立っていた。だがその男すごくおかしいのだ。だって腕が捻れて逆折になってるし足なんかちぎれかけてる。怖いのでカメラを持って全力で逃げた。最後に「めっちゃ怖かったね!次はもう少し安全な感じにやるよー!」と言って配信を終えた。
家に帰っても特に何も無いと思った。なのに、至る所にさっきの男が出てくる。結局お祓いをしてもらってあの場所についてもいろいろ聞かされて本当の終わりが来た。今後はもっと命は大事にする。
#スリル
あ 捨てちゃった?
い 赤い服、要らないって…
あ 要らないの、青い服だよ
い …赤だと思って…
あ ……
い …なーんてね、捨ててないよ
あ …え?
い 一緒に買いに行った服だもん
あ 良かった…
い この青のは、誰と?
あ …え……
『スリル』
私はジェットコースターが好きだ。
ふわっと浮かぶような感じがして落ちていく感覚も、ぐるぐると回る感覚も大好きだ。
大嫌いな仕事も、遊園地に行くため頑張っている。
いつか遊園地のスタッフになって、ジェットコースターの点検をしたいと思うくらいにはジェットコースターが好きだ。
なんでそこまで好きなのかはわからないけれど⋯
きっと「スリル」が好きなのだろう
縁石から落ちたらワニに食べられちゃう。
横断歩道の白い線から落ちたらワニに食べられちゃう。
友達にガイドされながら目を瞑って帰る。
友達にガイドされながら後ろ歩きで帰る。
学校の帰り道は危険がいっぱい。
そしてそこら中ワニだらけ。
「スリル」
「スリル」
学生時代、鍋パーティーすることになり
食材を買いに仲間と街に出かけた。
野菜、菓子、酒、必要な物を買い物カゴに入れてると
仲間の1人が肉は俺にまかせてと言った。
あいつは肉のパックを自分のエコバッグにささっと入れて、ゆうゆうとスーパーの出口から外に出で行く。
万引きしたのだ。
仲間も皆あぜんとしていた。
もちろん俺も。
だけど誰もあいつに注意しない。
大学の寮で皆で集まり簡易のガスコンロに鍋を乗せ
食材を入れて鍋をつつく仲間達。
何事もなかったかのように皆あいつの戦利品
肉を鍋に入れて平らげている。
歓談し笑いながら。
誰も万引きに触れない。
俺も皆と笑う。
心の奥にバレなかったからよかったという
安堵感と罪悪感がちろちろと小さな暖炉の火のように
灯るのに。
あいつの犯罪に何故俺が罪悪感持たなければいけないのかという怒りもあるのに。
なにも悪くないように自然と盗みを働く姿、
盗人なのにけろりとしていて
なのに見ている俺はスリルでハラハラしていた。
仲間たちもあいつの犯罪をみて見ぬふりしながら
ハラハラとスリルを感じていたのだろうか。
罪とは、当人も止めなかったまわりも含まれる。
遠い昔の嫌なスリル体験だった。
スリルを感じてみたくて、
夜の車道を歩く
まるで自分だけの夜のような感覚で、
そして街灯の光で、
自分を包むシャドウ
『スリル』
ハラハラする!ドキドキする!
心臓がドクドクと波打つ
スリルは生で生こそがスリルだ
予測不可能な人生を楽しもうじゃないか!
……何?
恐怖も緊張も嫌?
そんなものでは楽しめない?
自分はただ穏やかに生きていたいだけだ?
つまらないことを言うねぇ!
スリルのない人生なんぞ歩む価値もない
その臓器をお飾りのままにしておくつもりかい?
君のそれが波打つ時、
その血は全身を巡って君を君たらしめる
寿命が縮みそうなくらいの負荷を与えよう!
バクバクとする鼓動に耳を澄まそう!
それこそが今、君がここにいる証だ!
君がまだ、ここにいてくれている証だ
最高のスリルを楽しもう
予測不可能な人生を共に歩もう
そうしてどうか君の音を
少しでも長く僕の耳に。
あんなスリルはもう二度と味わいたくはないんだよ
「ねぇ、死んでくれないかな?」
血塗れの姿。片手に包丁。これは俺が望んだ現実だ。
「真面目に生きなさい。甘えず、誠実に。贅沢はせず、謙虚に。」
小さな頃から、唱えられてきた言葉。確か、曽祖父からの言い聞かせだったはず。俺は、この言葉が嫌いだ。この言葉を言われると、まるで自分が怠惰のように思えてしまう。そして、そう思えば思う程に、脳が侵されていく。
俺の人生は、平凡なものだ。欲を言うことは許されずに育ったせいだろう。俺の人生同様、俺自身も平凡でつまらない人間になってしまった。きっとこれは、望まれる人生なんだろう。それでも、心の何処かでは何かが風化していくようだった。
俺が心の限界を知った時には、もう手遅れだったようだ。手には包丁が握られ、シャツに付いた血が冷たさを帯びていた。目の前には、空になった祖母の身体。俺はそれら全てに意識を向けた。瞬間、吐き気が込み上げてきた。そして、同時に喜びが染み渡った。俺は笑いながら吐いた。
「やっと、自由だ。」
掠れた俺の声が、解放を告げた。
「ねぇ、死んでくれないかな?」
俺は、実の父親に刃先を向けた。父は怒号をあげた。
「お前を、そんな奴に育てたはずはないのに。どこで間違えてしまったんだ。」
「そうだね。アンタらが育てて来た模範人間は、もう死んだんだよ。」
俺は父の喉に一突き。父は黙った。
きっと、俺の今の姿は、望まれないものだ。誰も望んではくれないものだ。しかし、俺にはその孤独が心地良かった。今まで味わった事のない、スリル。俺の人生が終わるまで、このスリルに飽きるまで、俺は自由に生きてやる。
【スリル】
それが心地良い時期もあった
ドキドキと高鳴った胸も
今となっては
動悸となり
沈めるのに一苦労
わざわざ高鳴りを求めたあの頃を懐かしむ
今日彼氏と別れた
彼は好きかどうか分からなくなったって
私は大好きだよ
実感が湧かない
何がいけなかったのかも聞けなかった
母に慰めて貰った
別れたのを認めたくない
母は見返してやれと言っていたが、彼のことが大好きだからそんなことはできない
1人になるのが怖い
喪失感に押しつぶされそう
今の私は泣くことしか出来ない
認めたくない
【スリル】
浮気や不倫といった不貞行為を行う理由に、スリルをあげる輩がいる。
汚らわしい不貞の関係を、明るみに出されるか出されないかの際で愉しむのが興奮するのだろうか。そういった類のことを一切毛嫌いしている私にとって、それはなんとも理解し難いことだった。
特定の相手がいるというのに、不特定の人間とまぐわうのはどういった心理なのだろう。性欲は人間を構成する重要な欲求であることは重々理解している。ただ、逆に支配されてしまっては、それはそこいらの獣と何ら大差ないではないか。
スリルのために相手を裏切る、という行為もなんとも解せない。理由がなんであっても許せないものは許せないが、不貞行為に走る理由の中では特に訳がわからない醜悪なものだと常々思う。私が不貞を詰問して得られた返答が「スリルを味わいたかったから」であったなら、それを人間として見なすことはやめる。
「スリルがほしいならそう言ってくれたらよかったのに。十分愉しかったでしょ?」
私は元人間だった肉塊にそう投げかけた。
スリルのない世界って楽しいのかな?
虚無って楽しいのかな?
私世界世界私
僕は私を殺したい。
人間なのがイライラするんだ。
ボコボコになった様を見てこういってやるんだ。
お前のせいだ!
スリル
毎日が、綱渡りの生活…ギリギリのラインで、生きている…子供の頃、ハラハラドキドキな暮らしをしている大人になりたい…そう願っていたのが、ある意味、叶ったのかも知れない…
この生活は、でも、決して好ましいとは言えない…出来るなら、ハラハラもドキドキもない、単調な生活を送りたい…
スリル
肝試し。いるはずのないものに自ら近づく、危険な行為。を何故コイツらはしようとしているんだ!
「なあ深夜4時ピッタリにだけ現れる廃神社があるんだって。行ってみよーぜ」
にやりと笑って結真はスマホの画面を見せた。そこは隣町の山にあり、何人もその神社に迷い込んだらしい。だが一度入って出たあとは、もうその神社を見つけることはできない。一期一会な神社だという。
「ふらっと行くにしては遠くね?」
と言ってもなんだか目をキラキラさせて、行きたそうにしている幸之助。
「チャリで行けばスグよ、ほら」
見せられた立体マップの予想移動時間は30分。そこまで遠くなく、神社が出現すると噂の場所も山の麓に近い。難なく行けそうなのが判断を僕の鈍らせる。マップに神社など写っていない。噂が正しいわけもないし、とズルズル考え込んでいた。
【スリル】
「このスリルが好きなんだよね!よっと」
そういう君はフェンスの向こう側の足場に座る
「落ちても知らないよ」
「平気平気私ってバランス感覚あるし余裕〜」
活発な性格の君はよく体に傷をつくっていた
大人しくしていればいいのに変に頭が回る君
そんな所も好きなんだけどね私も変わり者だな(笑)
ザワザワ
ヤバくない どうしてッ! ぅわ
(なんか騒いでるな何かあんの)
そこには真っ赤に染まる君がいた
足を滑らして転落したらしい
(ざまぁないね...)
手には私とオソロで買ったキーホルダー
そのキーホルダーは落ちた衝撃で壊れてしまっていた
大人しくしていればこうなることもなかったはず
君のその正義感は人を刺激するから
こうなるんだよ