日々好日

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「スリル」

学生時代、鍋パーティーすることになり
食材を買いに仲間と街に出かけた。 
野菜、菓子、酒、必要な物を買い物カゴに入れてると
仲間の1人が肉は俺にまかせてと言った。

あいつは肉のパックを自分のエコバッグにささっと入れて、ゆうゆうとスーパーの出口から外に出で行く。
万引きしたのだ。
仲間も皆あぜんとしていた。
もちろん俺も。
だけど誰もあいつに注意しない。

大学の寮で皆で集まり簡易のガスコンロに鍋を乗せ
食材を入れて鍋をつつく仲間達。
何事もなかったかのように皆あいつの戦利品
肉を鍋に入れて平らげている。
歓談し笑いながら。
誰も万引きに触れない。
俺も皆と笑う。
心の奥にバレなかったからよかったという
安堵感と罪悪感がちろちろと小さな暖炉の火のように
灯るのに。
あいつの犯罪に何故俺が罪悪感持たなければいけないのかという怒りもあるのに。

なにも悪くないように自然と盗みを働く姿、
盗人なのにけろりとしていて
なのに見ている俺はスリルでハラハラしていた。

仲間たちもあいつの犯罪をみて見ぬふりしながら
ハラハラとスリルを感じていたのだろうか。

罪とは、当人も止めなかったまわりも含まれる。

遠い昔の嫌なスリル体験だった。





11/12/2024, 4:05:46 PM