『カーテン』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
暖色の影絵二人に結露する
/お題「カーテン」より
カーテン
自分でいうのもなんだけど、僕はいわゆる温室育ちだったんだと思う。
カーテンの丈なんて全部一律だと思ってた。
というわけで今僕はカーテン売り場の前で固まっている。こんなに種類あるの? なんか気に入った柄を買えばいいと思ってきたのに。カーテンレールの位置まで気にしなきゃいけないの? そんなんいちいち覚えてないって。
でもここで店員さんに「あのー、ふつーのアパートなんですけど大きさどれですかね?」なんて聞いたらアホの子みたいに見られそうだしなあ。ていうかそもそもアパートに普通とか普通じゃないとか存在するのかな。もしかしてカーテンにこんなに種類があるんだからアパートにも種類があったりする?
あ、まずい。
流石に長くカーテンの前に居座り続けすぎた。視界の橋にさっきから店員さんが見える。
ウワーでも今ここから動いたら後日この店に入れるのかな? 入った瞬間お帰りくださいとか言われたりしない?
カーテン…カーテンくらい大きさ統一しろよ! 1種類でいいじゃん大きさなんて!! アパート用カーテンこちらとかそういう売り場作ってくれよ!
「あのう」
あーーーー!!!
終わったこの店出禁だ!!!
「もしよろしければ、簡易なものではございますがこちら紙製のメジャーをご利用になりますか?」
「…エっ?」
「あ、いえ、差し出がましいようですが、サイズをお悩みになっているご様子でしたので…ご家庭にメジャーがお有りでしたらそちらで計測されたほうが正確だと思いますが」
…………メジャーで測る…のが必要なものなのか、カーテンって。
冷蔵庫洗濯機のためだけだと思ってた。メジャーなんて。
「…長さってどれくらいが良いんでしょうかね?」
「そうですね、一般的な窓ですと床から1-2cm離れる長さがちょうどいいと思います。窓のタイプによって多少変わりますが、」
そこで店員さんは手に持っていたファイルから一枚の紙を差し出してくる。
「こちらを参考に計測していただくと、カーテンとしての役割を果たせられると思いますよ」
紙にはいろいろな窓のタイプとそれにあったカーテンの長さがイラストで説明されている。
「カーテンって悩みますよね」
にこっと微笑む店員さん。
なんだこのひと…天使か? 心が読めるのか? まさかカーテンの権化?
ありがたく紙と紙製のメジャーをもらってアパートに戻る。
窓の大きさは「一般的な窓」欄に掲載されている大きさだったけれど、この紙…いや、神と神製のメジャーがなければそんなことすら分からなかった。
一応日を置いて店に再入店した。出禁がちょっと怖かったから。
無事にカーテンは買えたけれどあの店員さんはいなかった。
やっぱりあの人はカーテンの権化だったのかもしれない。
知ってるよ…♪
カーテン開けたら…
三日月からカーテンファーストコール
アイシテルヨ…
君が囁くみたいに…♪
新しいモールの屋根の上に綺麗な三日月
君に会いたい…
君に言いたいよ…
愛の証…
月が綺麗ですねぇ…♪
愛の言葉…
君に言いたいよ…
月が綺麗です…♪
恋人と一緒に暮らす部屋に荷物を入れたあと、ふたりで家具とインテリアを置いてあるお店に来た。
お店に着くと楽しそうに先に歩いていた彼女が、悩ましげな表情で俺を振り返る。
「お部屋、白と水色をイメージしたいですけど……」
「あ、いいね。俺たちの好きな色と君のイメージの色!」
水色は俺たちがふたりが好きな色で、白は色素の薄い彼女のイメージに近い。
色合いは余りバラバラにしないようにして、落ち着いた感じにしたいなー、なんてぼんやり考えていた。どうやら彼女も同じ思いのようで嬉しい。
少し歩いていると、カーテンが目に入る。彼女はさらに前を歩いていたけれど、俺は足を止めてしまった。
カーテンか……安物でもいいと思っていたんだけれど……。
ぼんやりと、俺の視線は彼女を追っていた。
遮光は勿論だけれど、今のカーテンは安全も確保できるし、音も遮断できるんだよな。
「もぉ! 気がついたらいないー!!」
気がつくと彼女が頬をふくらませて、俺のところき戻ってきてくれていた。
「ああ、ごめん。カーテンどうしようかなーって思っちゃってさ」
「カーテンってなにか変わるんですかね」
俺はカーテンの説明ラベルを見る。
「いや、遮光と……」
「しゃこ?」
「遮光。光を遮るの!」
「そんなに変わるんですか?」
「俺もそこまで分からないんだけれど……」
分からない同士で話していても仕方がないと判断して、店員さんを呼んで説明をしてもらった。
カーテンなんてなんでもいいなんて、ふたりで思っていたけれど、とんでもない話だった。
遮光、遮音、遮熱、防炎、保温機能に、洗濯OKと……今の技術凄いんだな。
救助を仕事にしている俺としては、防炎に惹かれてしまう。
近くで火事があった時、彼女が逃げられる時間を稼げると思ったら値段が高くなってもいいものが欲しいと思ってしまった。
しかも好みの色があるんだよ、運命でしょ。
「……俺、このカーテン欲しいな」
彼女は俺の表情を見ると、目を細め口角を上げてくれた。
「なにかあった時に逃げる時間も取れますし、省エネ節電できそうですし! この色がいいですけど……」
と、俺におねだりの視線を向けてくれる恋人の笑顔は、俺には破壊力充分です。
でも、彼女が選んだ色は俺の好みの色で……本当に好みが一緒なんだなと思えて、頬が緩んでしまう。
「じゃあ、決定ね!」
「はい!」
俺たちは店員さんに、このカーテンがいいと伝えると、穏やかな微笑みを浮かべたまま店員さんが告げる。
「高さは何センチでしょうか?」
ふたり揃って目を大きく開いてしまった。
そりゃそうだ。ふたり共、カーテンなんてなんでもいいと思っていたから、買うために必要なものが何か、知りませんでした。
「えっと……一度帰って調べてきます……」
この日の買い物はメジャーを買って家に帰ることにした。
そして、ふたりで必要なところの幅や高さを徹底的に測って翌日に同じお店に足を運んだ。
おわり
一四八、カーテン
カーテン #19
…もう朝か。
まだ眠い目を擦らせながらカーテンの隙間から差し込む光を見つめる。
天気がいいとなぜか気分も良く感じるのは私だけだろうか。
昨日の夜ベットのそばに置いておいた制服に手を伸ばし、ゆっくりと着替えをする。
よし、カラコン付けて…メイクもばっちり
いつ彼に会ってもいいように、常に万全の状態でいたい。
あと必要なのは…笑顔、だよね!
【カーテン】
ひとりで暮らし始めた時に使い始めたのは、黄色と白のチェックのカーテンだった。母親が選んだ。
田舎の生まれだった私には気候のいい昼間は窓を開ける習慣があって、風の抜け道、あるいは入り口をつくるために玄関ドアは開けておくというのもまた然りだった。
京都の入り組んだ細かい間取りのなかを、思惑どおり初夏の風がぬける。掃き出し窓のカーテンがゆれる。まだ、京都の夏の暑さを知らなかった頃だ。
床に寝転んで、揺れるカーテンを眺めていた。
ラジオからは、ヘビーローテーションに選ばれた曲が何度も流れて、その歌詞が胸に刺さった。
カーテンが揺れて、メリーゴーランドが回る。
誰のなんという曲だったのか覚えていない。
その続きで流れてきた曲は今でも覚えているのに。
忘れてしまったほうがいいことがたくさんある。
でも、あの曲名は今でも探している。
ずいぶん遠くまできたんだ。
カーテン
ヒラヒラと優しい風が
吹く…
カーテンが優しく揺れる
あなたを優しく…
カーテンに包まれて…
隠しているようで、隠されている。
銀河鉄道が走り過ぎても、巨人がじっと見つめていても
窓の外、ほんとうは、なにも知らない。
「カーテン」
「カーテン」
懐かしの、視聴覚室にあった真っ黒な遮光カーテン。
文化祭の時は早いもの勝ちだったなあ、なんて。
「カーテン」
何もかも上手くいかない
暗い感情が渦を巻いている
カーテンの隅に 少しだけついたシミみたい
ただ聞いて欲しくてこぼした弱音に
「あのね 相手に期待するから辛いのよ」と
ド正論を返されて
貴方に解決して欲しかった訳ではなく
ただ
話しておきたかった
それだけだった
了解です
「貴方にも」期待しない事にします
金輪際 愚痴も言うまい
透けて見える傾聴のテクニックが
やわやわと滲んで
シミになっていく
明日 カーテンを丸洗いして
キレイさっぱり 流してしまおう
拗ねるなへこむな
私を私が憐れむな
海の中のような色のカーテン
深海魚になって
今日も私は眠る
猫がカーテンに登って遊ぶから我が家のカーテンは
どこもボロボロ
カーテンの上の方を見つめ始めたら
もうおわり
猫たちよカーテンになにがあるの?
何がそんなに楽しいの?
やってみるわけにいかないから
教えてほしい。。。
舞い戻る、揺れる、膨らむ、翻る 部室でひとり風を視ていた
題-カーテン
カーテンを貫いて光が差す
その控えめだが存在感ある明るさが、
朝が来たのだと告げる
カーテンと部屋を覆うように光が照らす
カーテンに遮られてなお強い輝きで、
昼間であると知らせる
カーテンが朱い光に染まる
仄暗さの中の確かなその色は、
夕方になったことを教えてくれる
カーテンには外からの光はもう通らない
光と音の止んだ暗い静寂
それは、夜が訪れたのだと語りかけてくる
時間が進むごとに、
カーテンは光によって様々に表情を変える
たとえカーテンを閉め切った部屋でも、
光はカーテンを通り、時を感じさせる
視線を感じ、顔を上げると、カーテンの合わせ目からこちらを覗く瞳があった。
ベッドに横たわって、私を見ていた。服部洋平、さっき頭が痛いので休ませてほしいと青い顔で保健室を訪れていた子だった。
「どうしたの。目が覚めた?」
ベッドに歩み寄り、白いカーテンを開ける。服部くんは、仰向けの額に手の甲を当てる格好で、眩しそうに目を細め、
「はい。今何時ですか」
と尋ねた。
「3時過ぎね。もうすぐ6時限目が終わるわ。具合はどう」
「頭の奥が疼く感じですね。寝不足が祟りました」
「勉強?」
「まさか。株のトレーディングを、少し」
私は驚いた。冗談かと思ったけど、それきり彼が黙るので、追及できなかった。
首だけこちらに向けて、じっと私を見ているので「なあに? 授業に戻る?」と訊いてみた。
「いいえ。ーー先生、中居先生、でしたか」
「うん」
「綺麗な声ですね。頭痛がするのに、全然気に障らない」
真顔でそんなことを言うからまた驚く。ーーまったく、最近の高校生は。
大人びちゃって。そう思いながら私は言った。
「褒めても何も出ないわよ、保健室の先生じゃ、内申にも関わらないし」
「そんなの興味ないです。少し、このままここにいていいですか」
手を額から離して、私に微笑む。
私はそこで、彼がとてもきれいな貌をしていることに気が付いた。
ことり、と心臓が鳴った。かすかに。
「……いいわよ。6時限目が終わるまでなら。ゆっくりしていきなさい」
「ありがとうございます。先生、悪いんですけど、カーテンをまた閉じてくれませんか」
「ん? ああ、まぶしかった?ごめん」
私は白の布に手を伸ばす。それを、いえ、と止めて、
「ここに座って、話、してください。……カーテンの中に、いて」
服部くんは目で私をそっと促した。
いま思えば初めからだ。最初の出会いから、私は服部くんの言いなり。
彼に恋したときから、ずっと。
#カーテン
「束の間の休息2」
※カーテン
皆、報道のカーテンがあるから知らないですか?
敬宮(としのみや)愛子様がご公務を全うした。
散々、他親族に公務参加出来ないようにされていた。
「他国が招待しても他親族が来て迷惑」という
英語新聞やニュース番組があるのをご存知だろうか?
歓迎されている雰囲気で、とても喜ばしく思う。
わたし、若輩者ではありますが。
窓を開けて、手を振り、車はゆっくりと進む。
他親族の方々とは本当に違いますね。
「来るな!帰れ!」とゴミを投げつけられるから、
窓は開けず、手を振らず、車は早く進む。
わたし別段、敬宮愛子様が〜とかないですが
他親族が英国でやらかした事件を知ってるので
「他親族が、英語でどう表現されたか知っているので」
感慨深く思ってしまいました。
日本の報道は、カーテンが随分と分厚いことで。
題 カーテン
カーテンの隙間から柔らかい光が差し込んで来た。
朝、目覚めた私はベッドに横たわって休日の光をただ受け止めていた。
優しい光のシャワーをたボーっと浴びていると、心が癒されて行く。
日差しが体に触れるとその場所がほんのり暖かく、気持ちが幸せに溢れてこぼれだす。
幸せ・・・。
幸せな1日。
会社にも行かなくていいし。
こうしてただ何もしなくていい時を過ごせることがたまらなく幸せに感じて。
何をしようかな。
そう思えることが心をウキウキと跳ねさせる。
今日、これからの時間、何をしようかと考えていると
楽しいアイデアが次々と沸いてきた。
好きなフレーバーティを仕入れに行こうかな。
それとも近所に出来た高級なカフェに行ってケーキの味を味見しに行こうかな。
考えているだけで頭の中がピンクのふわふわしたもので満たされていくようだ。
カーテンの隙間から見える青空も空も
いつも通勤の朝に見る時は暗い色に見えるのに、今日はきらきらパステルカラーに見える。
私はしばらくそうしてまどろみながら休日のプランを考えてから、うーんと伸びをした。
さぁ、今日というかけがえのない素敵な1日をはじめていこうか!!
「カーテン」
このカーテンを見ると思い出すな。
初めて君とここに越してきた時のこと。
一緒に選んだ物の中で1番悩んだよね。
君のこだわりが強くて。
でも、2人でしっかり悩んだものだからこそ1番記憶にあるよ。
君と一緒にこの部屋から見た景色。
寒かったり、暑かったりしてたけど何気に楽しかったね。
これからも一緒に過ごしていこうね。
カーテンが風に吹かれている。
君と選んだカーテンが。
布一枚が間にあるだけでこんなに明るさが違うように、あなたと私の間にも薄いのに確かに邪魔な布が挟まっているみたい。
人生は即興劇で、だれもが同じ舞台の上に立っている。
あなたにはどんなエピローグが、終幕があるだろう。
わたしはもう決まっている。
カーテンコールであなたの名を叫び、
だれよりも大きな拍手を送るのだ。
カーテン