恋人と一緒に暮らす部屋に荷物を入れたあと、ふたりで家具とインテリアを置いてあるお店に来た。
お店に着くと楽しそうに先に歩いていた彼女が、悩ましげな表情で俺を振り返る。
「お部屋、白と水色をイメージしたいですけど……」
「あ、いいね。俺たちの好きな色と君のイメージの色!」
水色は俺たちがふたりが好きな色で、白は色素の薄い彼女のイメージに近い。
色合いは余りバラバラにしないようにして、落ち着いた感じにしたいなー、なんてぼんやり考えていた。どうやら彼女も同じ思いのようで嬉しい。
少し歩いていると、カーテンが目に入る。彼女はさらに前を歩いていたけれど、俺は足を止めてしまった。
カーテンか……安物でもいいと思っていたんだけれど……。
ぼんやりと、俺の視線は彼女を追っていた。
遮光は勿論だけれど、今のカーテンは安全も確保できるし、音も遮断できるんだよな。
「もぉ! 気がついたらいないー!!」
気がつくと彼女が頬をふくらませて、俺のところき戻ってきてくれていた。
「ああ、ごめん。カーテンどうしようかなーって思っちゃってさ」
「カーテンってなにか変わるんですかね」
俺はカーテンの説明ラベルを見る。
「いや、遮光と……」
「しゃこ?」
「遮光。光を遮るの!」
「そんなに変わるんですか?」
「俺もそこまで分からないんだけれど……」
分からない同士で話していても仕方がないと判断して、店員さんを呼んで説明をしてもらった。
カーテンなんてなんでもいいなんて、ふたりで思っていたけれど、とんでもない話だった。
遮光、遮音、遮熱、防炎、保温機能に、洗濯OKと……今の技術凄いんだな。
救助を仕事にしている俺としては、防炎に惹かれてしまう。
近くで火事があった時、彼女が逃げられる時間を稼げると思ったら値段が高くなってもいいものが欲しいと思ってしまった。
しかも好みの色があるんだよ、運命でしょ。
「……俺、このカーテン欲しいな」
彼女は俺の表情を見ると、目を細め口角を上げてくれた。
「なにかあった時に逃げる時間も取れますし、省エネ節電できそうですし! この色がいいですけど……」
と、俺におねだりの視線を向けてくれる恋人の笑顔は、俺には破壊力充分です。
でも、彼女が選んだ色は俺の好みの色で……本当に好みが一緒なんだなと思えて、頬が緩んでしまう。
「じゃあ、決定ね!」
「はい!」
俺たちは店員さんに、このカーテンがいいと伝えると、穏やかな微笑みを浮かべたまま店員さんが告げる。
「高さは何センチでしょうか?」
ふたり揃って目を大きく開いてしまった。
そりゃそうだ。ふたり共、カーテンなんてなんでもいいと思っていたから、買うために必要なものが何か、知りませんでした。
「えっと……一度帰って調べてきます……」
この日の買い物はメジャーを買って家に帰ることにした。
そして、ふたりで必要なところの幅や高さを徹底的に測って翌日に同じお店に足を運んだ。
おわり
一四八、カーテン
10/11/2024, 11:27:21 AM