『エイプリルフール』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
エイプリルフール
今日で何度目だろう。
『本当はキライだよ』と言って騙されるのは。
他愛無い嘘だと分かっていても、限度があるよ。
僕の心もいい加減に限界なんだ。
君の口から、例えウソだとしても、
『嫌い』という言葉が出てくるのは、
あまりにも耐えられない。
『やっぱり好きだよ』
ようやく僕の聞きたかった言葉が聞けたのは、24時を回ってからだった。
今日はエイプリルフール。
君に抱くこの感情も、
張り裂けそうな胸の痛みも、
全部嘘なら良かったのに。
テーマ『エイプリルフール』
楽しかった記憶だけで
包まれていればいい
悲しかった過去は
消してしまおう
忘れてしまおう
貴方が
私の頬を撫でながら
お前だけだよなんて言ったのも
悪気のない嘘なんだから
せめて1年に1度だけの
台詞にして欲しかったわ
エイプリルフール
別れましょ、と言って午後にそれを撤回しなかった。
私のエイプリルフール。
「4月1日です、みなさんおはようございます。早速ですが速報です。地球にいまだかつて無い大きさの隕石が迫っており、世界各国は協力して対応を急いでいます。今のところ到着推定時刻は明日の――」
あした世界が終わるなら、ゆっくり深呼吸をして。
あした世界が終わるなら、この世界を目に焼き付けて。
あした世界が終わるなら、今から何をしちゃおうか。
バイトにも行かなかったけど別に連絡も来ないし、たぶんみんなそれどころじゃないよね。
お砂糖入りのカフェラテ片手に、チョコレートを探す。もうダイエットとかどうでもいいし。
なんか外騒がしいね、みんなちょっとやばい感じ?やだなぁ最後くらい楽しく過ごそうよ。平和がいちばんでしょう?
あぁ、全然平和じゃないから終わるのか。
あした世界が終わるから、ゆっくり深呼吸をして。
あした世界が終わるから、この世界を目に焼き付けて。
あした世界が終わるから、ただここにいる。
「この突如として現れた隕石に果たしてこの星は対応出来るんでしょうか?なぜこんなに接近するまで何のレーダーにもかからなかったのか!本当に、これがエイプリルフールの嘘であればどれほど良かったかと――」
あした世界が終わるから、ゆっくり今を生きよう。
〉エイプリルフール
第三惑星地球。自らの星を三番目と名乗る謙虚な星に、何百光年先からの来訪者がやって来た。
「ようやく水の惑星を見つけたと思ったら嘘つきの星じゃないですか!」
水色の髪はジェルのような光沢を持ち、触るたびに触手のように跳ね返る。紫の瞳はマゼンタの瞳孔を携え、幼い体躯は百メートルきっかり。
人らしい形の人らしからぬ色彩の少女は、卓袱台をバンバン叩く。
「嘘つきの星?」
「そうですよ! 恐竜が復活したとか、歴史上の偉人の会談in太平洋とか! 私全部見に行ったのに!」
「朝からバタバタしてるのはそれか……」
コイツは宇宙人。透明な球状の被り物のお陰で移動速度が化け物で、今朝、俺のマンションの窓を突き破って来た馬鹿野郎だ。
「ここの星の人たちは何でこんな無意味な嘘ばっかり!」
「あー今日はエイプリフールだからな」
「……は? 何ですかその奇妙な名前は」
お前の本名ほどじゃないだろ、とクアレコ・アンクレー・ヴェル・サリアンバーに言うと、私の星では貴族しか許されない高貴な名前です! と返ってきた。
「エイプリルフールってのは嘘をついて良い日のことだ。四月馬鹿〜ってな」
宇宙人はしばらく固まって、マゼンタの瞳孔のみを忙しなく動かしていた。そして、ぱち、とまばたきをした瞬間にきらり、と瞳が光る。
「なんて誠実な星なんてしょう!」
「……は?」
「だって嘘をついていい日があるなら、それ以外の日に嘘をつく人はいないのでしょう? 素晴らしいです! 私の星に持ち帰らなくては……」
そう言って端末に何かを入力し始める宇宙人。翻訳機が切れているので、呟きは全くもって理解できない。
ああそうか。そういえば、嘘が許される日は、年に一回なのだ。
【エイプリルフール】
昨日結婚した山田裕貴と西野七瀬が離婚した……っていう嘘をつかれました
危ない!!
ギィーーー、ガッコン。
頭上から鈍い音がした。遠くにいるサラリーマンがこちらに向かって何か叫んでいる。見上げると巨大な塊がゴンゴンと、ビルの壁に体当たりしながら迫ってきていた。塊は明るい緑色をしていた。このビルの4階にある歯科クリニックと同じ色。そういえば半年前くらいに、虫歯の治療でかかったことがあった。貰った診察券を見て、この色ダサいなあと思った覚えがある。最近になって今度は反対側の奥歯が痛み出したから、近いうちまた行こうと思っていたんだ。
ああこれ、看板か。
そこのクリニックの看板なんだ。
4階から落下してきているのか。
僕に向かって。
「ははは、嘘だろ。」
この後待ち合わせなのに、どーしよ。
穏やかな昼下がり。
春を知らせる強風の中、
重たく、それは酷い轟音だった。
きっと明日は、
みんなおいしいご飯を食べて、
大切な人と笑いあって、
幸せな1日を過ごす。
そう、きっと私も。
2024/4/1/12:01
「どうせ合わなくなるんだから!当たって砕けろ!」
そう言って送り出した後、身体の力が抜けていくのを感じた。
アイツがあの子を好きなことも、両思いなことも知ってる。
本当は、引き止めたかった。『当たって砕けろ』、なんて。
「自分は出来ないくせに、偉そうに…」
嘘だよ行かないで、私でいいじゃん、って、言えたら良かったのかな
それができないからこんな事になってるのに、未練がましい。
『やばい付き合えた…マジで奇跡なんだけど!前から好きだったから嬉しい!』
LINEの文面を見て、余計に辛くなる。
私の方がずっと前から好きだったよ。
そう打って、留めておいた。だから、指が送信に触れてしまったのは、間違い。一縷の望みにかけたなんて事じゃない。
画面に既読の文字がついて、数秒。
『え?笑エイプリルフールだからって騙されねーよ笑笑』
ああ、こいつは本当に。
この鈍さが憎くて、愛しくて、どうしようもない。
「も〜そこは騙されろよ!リア充おめでと!笑」
こんなの、本心とは真逆だ。
いや、これが本心なんだ。そう思わないと、辛い。
文字の私は、アイツの恋を応援する良い幼なじみ。本物の私は、好きの一言も言えない意気地無し。画面の中の私になれたら、どんなに良かっただろう。
「嘘だよ、ばーか」
スマホの画面が、ぼやけて見えた。
お題『エイプリルフール』
嘘をついても良いですよ。今日が何月何日だったって、嘘をついていい。貴女はどう生きても良いんです。
俺たちは、貴女のすることに文句をつけたり、罰を下したりはしません。貴女が人を欺き、人を傷つけ、人を殺めたとしても、俺たちは貴女を見守り続けます。
ただ、悲しくはなるかもしれません。貴女の美しい魂が歪んで傷だらけになるのを見ているしかないのは、確かに俺たちにとってつらいことです。
それでも、貴女は貴女の生きたいように生きてください。それが貴女の幸福だと思うのなら、どうかその道を選ぶことを恐れないでください。
貴女のその道は、貴女にしか見えないのですから。
「おばあちゃんなんか、死んじゃえー!」
おばあちゃんは、少し悲しそうな顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻り、
「エイプリルフールかい?人が傷つくような冗談はおばあちゃんにだけ言いなさいね。他の人には言っちゃダメだよ」
小学4年先だった当時の私は、冗談で言ったことに対して叱られた気がして、ムスッとした。
本当に、冗談のつもりだった。
その日の午後、おばあちゃんは事故に遭い、そのまま亡くなった。
私はおばあちゃんが大好きだ。
後悔しても、何度後悔しても、後悔しきれない。
ちゃんと謝れなかった。仲直りしてない。
10周忌の日、私はおばあちゃんの仏壇にボソリと呟いた。
「おばあちゃん、ごめんなさい。大好きだよ。戻ってきてよ…仲直りしたいよ」
今は午後14時30分。嘘をついていいのは、午前中だけ。
私の気持ちをおばあちゃんに伝えたい一心だった。
仏壇の前で泣いていると、一枚の紙が落ちていた。
開くとそこには、
「私の大好きな孫へ、おばあちゃんも大好きだよ。
おばあちゃんは怒ってないよ」
どうしてこんな紙が落ちていたのかは分からない。
10年前の私がおばあちゃんに言ってはいけないことを言ってしまったことは誰も知らないし、話してもいないから、誰も知り得ないこと。
そして、この特徴的な字は明らかにおばあちゃんの字だった。
私は、この紙を抱きしめながら泣いた。
10年越しに、おばあちゃんと仲直りできた気がしたから。
それから20年が過ぎたが、今でも忘れられないエイプリルフールのエピソードだ。
あの時のおばあちゃんからの手紙は、大事にとってある。
「エイプリルフール」
エイプリルフール
「実は私、空を飛べるの!」
無邪気にそう笑う隣の席の君にちょっと意地悪したくなった。
『ねえ、エイプリルフールで嘘ついていいのって午前までなんだよ。知ってた?』
「あれれ?それ知ってたんだ。残念。」
次の瞬間、君の背中に翼が生えて空を飛んでどこかに行ってしまった。
隣の席に白い羽が一枚落ちた。
「さっき一緒に自習してた子どこ行ったの?」
トイレから戻ってきた友達がそう聞いてきた。
『空飛んでどっか行っちゃった。』
「あはは、今日エイプリルフールか。しょうもない嘘つかないの!」
嘘だったらよかったのに。
私は白い羽をそっと抱きしめてあの子の体温を必死に思い出そうとした。
忘れてた。
ぜんぜん私の中でイベントじゃない。
それよりリクルートスーツ姿の新社会人らしき
若者を道端で見るほうがよっぽどイベントだった。
頑張ってね。
辛いこともたくさんあるだろうけどそれもいい経験だから。
【エイプリルフール】
今日はエイプリルフール。嘘をつくのが許される日。でも、ぼくは今日嘘をつかなかった。というのも、今日がエイプリルフールということを、すっかり忘れてしまっていたから。一年に一回しかない貴重な日なのに忘れちゃうなんて、それだけこの日に対する思い入れが薄れちゃったのかな。
【248,お題:エイプリルフール】
「今日エイプリルフールなんだってな」
「うん、」
「絶対に騙されねぇからな」
「そうなんだ、意気込んでるとこ悪いけど、それ昨日だよ」
「エッ、マジかよ...」
「嘘♡ww」
title.嘘が上手いパートナー
嘘なんかつかなければ、そう後悔したところであいつは戻らない。
[エイプリルフール]
付いていい嘘と、ついてはいけない嘘がある。
嘘は程々に。
「俺、来週中にこの家出てくわ」
「…は??え、なんで??」
「ふはっ…思ったより盛大に引っかかってくれたなぁ?今日はエイプリルフールやで!」
「……」
「…あれ?怒ったんか??」
「あのさぁ。エイプリルフールってな。午前中にしか嘘ついたらあかんのやで。知らんの??」
「エッ?そうなん??え、なんで????」
「やーい引っかかってやんの」
「……」
「…ん?怒った?」
「怒ってません!」
「ふはは」
【エイプリルフール】
詩『別れ話』
エイプリルフールはいろいろ諸説あるけれど、イギリスのオークアップルデーや、フランスの旧正月を貴族が祝ってた説や、インドの揶揄節なんかもあって、午前中しか嘘は駄目って五月の祭りだったオークアップルデーのしきたりが近年広がっただけで…、
うん、うん、うん、へー、知らなかった、すごい、よく知ってるねー、
男は知識を競い合い優位に立つ会話が好きだから、いつも私は馬鹿なふり。
女は、ただ共感して気持ちを受けとめてくれるだけでいいのに、あなたは話しの本質をいつも聞きたがる。
だから、
「別れましょう!」
あなたは
「・・・・・」
「エイプリルフール?」
「オークアップルデー!もう午後よ!」
嘘の恋は、ばらさなきゃ。
"嘘、でよかった"
"嘘、にしたかった"
だから、始まりにもならない『告白』の終止符として新学期の始まりとなるその日を選んだ。真実すらも偽者へとすりかえる為に。
── 好きだよ。ずっと前から、好きだった。
それは最後のチャンスで、故に最低で最悪な別れの言葉だったと我ながら思う。
何を言われているのかわからないとでも言いたげな表情をした貴方。それはそうであろう。今日まで自分は友人の誰よりも近く、けれど恋人なんて甘さはない 普通の当たり前の友情を築いてきたのだから。
だからこれは、裏切り行為に等しい。否、それ以外のなんでもない。けれど、この学び舎から別の空に向かって飛び立った自分たちはこれまでの地位を変わらず保つことは厳しくて。ならせめて思い出にと欲張ってしまったこの業。
── 返事はいらない。伝えたかっただけだから。身勝手でごめんね。今までありがとう。
身勝手に言い募り、呆然と立ち尽くす貴方に背を向ける。優しい貴方はどんな返事も出来ずに私の言葉が消化できるまで思考の迷走を続けるでしょう。その世界で私はきっと永遠だ。
『それはきっと幸せなこと』
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「随分と昔のことを……」
あのころ私は幼くて我儘で。大切なものが手からすり抜けてゆくことがどうしても許せなかった。だからせめても、と。そんな子供騙しの行為。
思い出したのはきっと薄く儚い花のせい。どこを見ても視界に入る柔らかな花弁。私の罪の証。
「嘘、でよかった と思いたかったの」
「何が? ようやく見つけた」
吹き付けてきた風が桜花のカーテンとなり視界を遮る。そして再び瞳を開けたら、ここにいるはずもない人が見えた。
今年のエイプリールフールの気まぐれは随分と都合よくできているのだと笑いながら、その幻覚に一歩だけ近づいてみる。あまり傍によれば消えてしまいそうな気がして、普段より小幅な一歩になった。
「ねぇ、あの日私は私以外に嘘をつかないように と心がけていたんだよ」
甘く優しい幻想に向けて種明かしをする。あの日私に嘘があったとすれば、『嘘をついてもいい日』を『嘘をつく日』だと思い込ませたこと。
嘘と真実の境目がぼやけた瞬間は都合の悪い事象を嘘にできたから。現実に傷つくことなく逃れられるから。
「嘘、にしたいと願う程 本気だったから」