ななせ

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「どうせ合わなくなるんだから!当たって砕けろ!」

そう言って送り出した後、身体の力が抜けていくのを感じた。
アイツがあの子を好きなことも、両思いなことも知ってる。
本当は、引き止めたかった。『当たって砕けろ』、なんて。

「自分は出来ないくせに、偉そうに…」

嘘だよ行かないで、私でいいじゃん、って、言えたら良かったのかな
それができないからこんな事になってるのに、未練がましい。


『やばい付き合えた…マジで奇跡なんだけど!前から好きだったから嬉しい!』
LINEの文面を見て、余計に辛くなる。
私の方がずっと前から好きだったよ。
そう打って、留めておいた。だから、指が送信に触れてしまったのは、間違い。一縷の望みにかけたなんて事じゃない。
画面に既読の文字がついて、数秒。

『え?笑エイプリルフールだからって騙されねーよ笑笑』
ああ、こいつは本当に。
この鈍さが憎くて、愛しくて、どうしようもない。
「も〜そこは騙されろよ!リア充おめでと!笑」
こんなの、本心とは真逆だ。
いや、これが本心なんだ。そう思わないと、辛い。
文字の私は、アイツの恋を応援する良い幼なじみ。本物の私は、好きの一言も言えない意気地無し。画面の中の私になれたら、どんなに良かっただろう。

「嘘だよ、ばーか」
スマホの画面が、ぼやけて見えた。


お題『エイプリルフール』

4/1/2024, 1:15:21 PM