『やるせない気持ち』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「やるせない気持ち」#23
仕事で凡ミスして損失すごい出た、、、
あのときのことを思い出す
もうダメだ、、、
気の緩みが出てしまうモチベの低いときに、、、
8/24 お題「やるせない気持ち」
やり場のない気持ちを、とりあえず僕は「気持ち箱」にしまう。
気持ち箱にはいろんな気持ちがしまわれている。共通するのは、どれも「やるせない気持ち」。やり場に困るから、箱に入れておく。
毎月月末に、僕は気持ち箱を開ける。
中身は、溶けて消えたものが大半。時間が解決してくれた。
そして、そのまま残っているものが少し。これは自分にとって重要なことに関する問題だから、考える材料にする。
それから、あとは―――決まり切った話だろう?
最後に箱の中に残ってるのは、「希望」って。
(所要時間:7分)
あの子が好きだ。
でも、あの子はあいつが好きだ。
あいつは、こいつが好きだ。
こいつは、そいつが……。
好きなった人に振り向かれない。
あの子のせいではないのに、
その存在を恨めしく思う。。
誰も悪いわけじゃないのに……と、
やるせない気持ちにもなる。
誰も悪くないのに敵を作る。
何もされてないのに思い悩む。
それでいい。
それが恋愛なのだから。
人を好きになれたことを素直に喜べばいい。
やるせない気持ち
君が悲しそうなのは
あの子のせいで
つまらなそうなのは
私のせいで
あの子がいると
自信がなくて
どうしても
冷たくなる
好きなのに
私が冷たくするのは
おかしいよね
君に好きになってもらえない
やるせない気持ち
善意に
善意に
罪悪感。
虐めて
虐めて
罪悪感。
排斥して
排斥して
罪悪感。
しかし生まれてこの方、
罪悪感だけは排斥できた覚えがない
善意で虐めさせているわけではないのだが
【やるせない気持ち】
一緒に流星群を見に行きたいと彼は言った。澄み渡った空気に包まれた山奥の静寂の中で、濃藍の夜空に真っ白な星々が雨のように降り注ぐ美しい景色を、二人きりで眺めたいのだと。
出不精な私はそんな彼の誘いを、のらりくらりと躱していた。その時期は忙しいかも、また今度ね、そうやって誤魔化し続けたことを今の私はこの上もなく後悔している。
君のスマホに残されていた計画表に従って訪れた山奥の野原は人の気配ひとつなく、秋の虫たちがひそやかな鳴き声をあげている。天を流れる無数の白銀の煌めきが、世界を美しく覆い尽くしていた。
本当なら隣にあったはずの温もりは何処にもない。秋風が冷ややかに、私の右手を撫でていく。
こんなことなら一度で良いから、君の誘いに頷いてあげれば良かった。だって馬鹿みたいに信じていたんだ、君と過ごす時間はこの先も永遠に続いていくものだと。
いくら後悔したって、空の彼方へと旅立ってしまった君が私の隣に帰ってくることはない。流星群のニュースを聞くたびに、どうしようもないやるせなさを抱えて、私はこれからの人生一人でを歩いていくしかないのだ。
じわりと滲んだ視界で、星々はただ美しく地上へと流れ続けていた。
「やるせない気持ち」
いつもなんだか、何故怒られてるのかも分かず
人に頭を下げて謝ることがある。
あの子が悪くても
ごめんなさい、私の責任です
誰のせいでもない時も
ごめんなさい、私のせいです。
助けて貰ったとき私
いつも、ごめんなさい、ありがと
っていってしまう、
そうやって思ってもいない
ごめんなさいを毎日重ねている。
ごめんなさい、
ごめんなさい、
ごめんなさい、
いつも誰かの代わりに、なんの意味もないごめんなさいが
増えてく毎日。
反射なんだろうなって、
こんな私になってしまったのに
私は誰にも怒れない。
このやるせない気持ち。
やるせない気持ち
僕が勤めている会社はいわゆるブラック企業である。残業は130時間を優に超える。
そんな会社に今年も新人が入ってきた。この子も半年で辞めるだろうと思っていた。しかし、真面目な彼女は、どんなに帰りが遅くなっても頼まれた仕事は文句も言わずにやっていた。
嫌な顔をしないので、先輩からは後から後から仕事を頼まれる。
いつも「わかりました」と返事をし、黙ってその仕事をやる。
彼女を見ているとやるせない気持ちになる。
なのに僕は黙って見てるいるだけだ。彼女を助けると自分の残業が増えてしまうと思ってしまう。
彼女はみるみるうちに痩せていった。口数も少なくなり、目も虚である。それでも、上司は何も言わない。
そしてある日、、、。
彼女はマンションの屋上から飛び降りた。自殺だった。
上層部から上司は呼ばれたがそれで終わった。何が話し合われたかはわからないが、何事もなかったようにまた同じ日々が続く。
彼女に声さえかけれなかった自分にも罪はあるが、自分が壊れないための自己防衛だと自分に思い込ませる。
こんな風に思っている人は、この世の中には沢山いるだろう。きっと自分を守ることに皆んな精一杯だ。
何が悪いんだと思うが、自分の心が叫んで壊れていくのがわかる。
今日も残業で終わるのは夜中だろう。
仕事が終わったら、彼女が飛び降りたマンションに行ってみようか、、、。
小さな電球が
小さな部屋の
小さな魂のうえで
理屈も通らない
世界から省かれた
配線を隠していたけれど
わたしは獣みたいに
災いの穴に潜ったあとの
記憶がありません
#やるせない気持ち
生きるということ
それは
ピカソ ヨハン・シュトラウス ミニスカート アルプス 美しいものをすべて見るということ
待ってる ずっと待ってる
生きて生きて生きて生きて生きて生きる
それは生きるということ
って叫び続けたラッパーを失った私達
過去の音源でしか会えない彼を
いつまでも愛していこうじゃないか
それは生きるということ
※やるせない気持ち
やるせない気持ち
やるせないってどんな気持ち
やるせないって普段使わない言葉
やるせない気持ちになったら分かるかな
やるせない相手に会ったら分かるかな
やるせない やるせない
私の気持ちの中にやるせないを感じる場所
あまり作りたくないけど
あきかぜ
彼女はあの日から
やるせない表情を浮かべる
僕はそんな彼女を見ていたくない。
だって君の笑顔に心奪われていたから
もう元通りになってよ
─────『やるせない気持ち』
交わっているその瞬間だけ
ただの温もりを感じる
君にいくら抱かれても
すぐ冷める温もりに虚しくなるだけ
わかっているのに離れられないのは
きっと壊れているからなんだろう
どうにも上手くいかなくて、とてもやるせない気持ちになる。
それはひとえに自分の力不足である。
今はまだ努力の途中なんだと、だからこそこうやって頑張っているんだと、自分に言い聞かせる。
努力は一朝一夕で実がなるものではない。少しずつ少しずつ育っていくものだろう。
だから、今日もやっていく。どんなに時間がなくても、どんなに短くても、こうして文章を綴っていく。
自分に気合いを入れた。
書いたお話が評価少なくてやるせない気持ちになることもあるけど、頑張って続けていくんだ! と。
『やるせない気持ち』
ギャップ
振り返れば夏の輝き
目の前には秋の豊かさ
でも
私にはなんの関係もない
※やるせない気持ち
112
″やるせない″とは″遣る瀬無い″と書くらしい。
遺ると書いて″やる″と読む事自体初めて知った。遺の意味は何かをのこす、何かがのこるという意味の他にそこへ向ける、差し向ける、という意味もあるらしい。
この漢字一つでやるせなさの8割は表しているようなものだ。
瀬の字を見てみると、急流や水の流れを表すと辞書には書いてあった。面白みが無い程にそのままの意味だ。
先程の遺の字と合わせたのは何故だろうか。水に流せとでも言うのだろうか。余計なお世話だ。
水に流せるようなものではない気持ちが、ぶつける先もなく自分の中に溜め込まれてしまう気持ちが、やるせないという表現になるのだ。
水に流せなどふざけるな!と思うのだが、実際がどうかはわからない。恐らくこんな理由ではないだろう。瀬の字には水の流れ、渦という意味があるらしいので、気持ちが渦になって流れる…ぐるぐると思考が回るようなそういう意味では無いかと思う。
実際がどうかは、その筋が専門の人間に聞いて貰いたい。これはあくまで筆者の憶測に過ぎないのだから。
しかし、私としては「悪い気持ちは水に流せよ」なんて軽口を叩く様な意味合いでこの字が使われていたら面白いと思うのだ。
ところでこの″やるせない″という言葉を″遣る瀬無い″と表現するのは秀逸ではないと思わないだろうか。
無いというのはそのまま無、ゼロ、存在していない、という意味で捉えれば良いのだろう。
瀬は恐らく感情を、遺はその方向を表している。感情を向ける先が無いという意味の言葉を、意味を含んだ漢字を使い表現している。これがとても面白いと思うのだ。
漢字は中国から日本にやってきたんだったか。小学校で歴史を学んだ際、そんな話を聞いた気がする。
そもそも平仮名しか無かった日本に渡ってきた漢字という文字を、当時の人達はどう当てはめていったのだろう。
この″やるせない″という言葉も、やはり漢字が渡来するよりも前に存在していて、その後気持ちの表現がよりわかりやすくなる様に、言葉の意味に合う漢字を当てはめていったのだろうか。
まるでパズルの様だとは思わないか?
言葉遊び…と聞けば、文系の分野のような気もするが、こういうパズルの様な要素は理系分野なのかもしれない。しかし、そもそも理系分野の人は言葉の意味を考え、漢字の意味を考え、連想ゲームの様ない当てはめ方をする考え方は苦手なのだろうか。やはり、全て文系分野の人間が解く方が早いのだろうか。
私は、こういう形で連想から連想を繋げていき思考を続けていくのが大好きだ。
1つの事柄から浮かび上がる事をさらに考え、そこから分岐する物事について考え、それを次、次、と頭の中で想像を繋げていく。結果大きな連想となり最終的には何について考えてたのかわからなくなる程に脱線していく。
そう。今この文章の様に。
昔の人は、同じ様に言葉の意味を考えながらも、その言葉の意味がぶれない漢字を探していたのかと思うと、偉大だと思う。
よく漢字のテストで熟語の問題などが出た時に、漢字の意味で覚えると良いと教わった。
例えば遺跡なら遺っている跡、痕跡。浅瀬なら浅い水場など、熟語の意味から漢字が連想出来るのだ。昔の人はそこまで考えて漢字を当てはめたのだろう。
何故そうしたのか。連想出来ないと覚えられないとでも思ったのか。何にせよこれにより漢字のテストで救われた…というわけではないが(筆者は漢字の書き取りが苦手だった)おかげで漢字それぞれの意味を考えるという事はする様になった。
さて、ここまで「言葉の意味を漢字で表現している」事について、過去の人間達…私達のご先祖様に当たるかもしれない人々を賞賛してきたのだが、その過去の人達は今の状況を見たらどう思うだろう。
というのもだ、この世の言葉の殆どには漢字が当てはめてある。これは過去の日本人が頑張ってくれた成果であろう。しかし、最初に書いた″やるせない″を″遣る瀬無い″と書く事を初めて知ったように、世の中には漢字で書く言葉が存在しているが、平仮名で表記するのが一般的な言葉というのが確かに存在している。
例えば「いたたまれない」という言葉は、やるせないな類義語なのだが、漢字で書くと「居た堪れない」と書くらしい。これも漢字が存在するとは知らなかった。
身近な言葉でいうと「ありがとうございます」という言葉、漢字で書くと「有難う御座います」だが、漢字で書かれているものなどあまり見ない。
単語なら「いつ」と「何時」や「あらかじめ」と「予め」など、漢字で書かない訳ではないが、平仮名表記の方が多い言葉だ。
問題は何故平仮名表記なのかという事。「ありがとうございます」や単語の物に関しては、ビジネスマナー上平仮名のが失礼に当たらないという意味がある。″いつ″そうなったのかはわからないが、何のための感じなのかと思ってしまう。
この″いつ″も″何時″と表現するのはあまり見ないだろう。結局はそういう事だ。漢字はあるが、平仮名表記が主流の物は漢字の存在が放棄されている。
漢字の方からしたら自分達は存在しているのに使われず怒っていそうなものだ。これを過去の人間が見たらどう思うだろう。
漢字が渡ってきた後、自分達が苦労して言葉の意味に合わせた漢字を選び、単語を作っていったというのに、その漢字は一般的には使われず平仮名が主流となっている言葉が世の中には沢山あるのだ。
しかし、それを頭から否定はしないだろう。理由と理解が出来て、平仮名と漢字の使い分け、平仮名のが大切さ、言葉の意味を理解する為に必要な措置……理由は沢山あるのだから。
それでも、やはり自分達が選び作った漢字を使った単語を、言葉を使って貰いたいと思うのが人間という物ではないだろうか。
それこそ「やるせない気持ち」というのがピッタリだ。行き場の無い、責めるに責められない気持ち。昔の人が今の状況を見たところで、きっと同じように平仮名が主流の言葉は、平仮名表記で使うのだろうから。
そんな事を考えてしまうと、漢字がわからないからとなんでもひらがなにしてしまうのは、過去の漢字を言葉に当てはめてくれた人々に申し訳無いとすら感じてしまう。
私はとにかく漢字を書くのが苦手だ。読むだけなら出来るのだが、いざ文字に起こそうとすると出てこない。図形のようで、線が多くて、似た様な形も多い。小中高と漢字のテストはいつも赤点だった。
しかし、過去の人達に敬意を払う為にも大人になってしまったが、少しは頑張って覚えたい。覚えたいとは思っている。
何せどれだけ書き取ろうとも、覚えられないのだ。自分でも不思議だ。
自分のポンコツな頭に、遣る瀬無さを感じているので、過去の人達には努力の気持ちだかは汲み取って貰って、漢字が書けない事には目を瞑って貰いたいと思う。
#漢字と平仮名【やるせない気持ち】
生きていると、どうしてもやるせない気持ちになってしまう。
友達に階段から落とされそうになった時も、怒りの気持ちはあったのに、何も言えなかった。
彼氏が浮気した時も、悲しかったはずなのに私は笑って誤魔化した。
大学受験も、きっと私には無理だからって挑戦もしないで諦めた。
死のうとした時だって、死んでも意味ないって、結局何もできなかった。
つまり、私は自分の気持ちを表現できないんだ。
人間らしいのか、らしくないのか。
それすらも分からない。
もうなにも、分からない。
私は副業で占い師をやっているのだが、依頼主の相談にしっかりと耳を傾け必死に占ったにも関わらずその結果に難癖つけられたり、腑に落ちない…と言ったような返信が返ってきたりすると、何ともやるせない気分になる。
と同時に、自らの占い師としての力量の限界を知り落胆する。
とはいえ私が本格的に占いの勉強をし始めたのはたった2ヶ月前であり、新人も新人、若葉マークだ。
にも関わらず優良サイトで占い師として活動させていただき、ましてや賃金さえ頂いているのだ。
稼げて月2万にも満たない額ではあるけれど、私のスキルに見合った適切な額であると思うし、内職にしては稼げている方なので断じて文句などない。寧ろ感謝しているくらいである。SNSでの無料鑑定を50件以上こなして来たとはいえ、こちらは全くの素人占い師。そんな私を雇い、「ゆん.先生」と呼んでくださる運営チームの皆様には感謝しかないし、その期待に応えるべくこちらも精進していかねばと、心の底から思った。
【やるせない気持ち】
所謂ピロートークはあっても無くても平気。
心地良い疲労の中で、どちらからともなく意識を手放すまでの気怠い時間が結構好きだ。
しかし微睡んでいても田舎の月明かりは強過ぎて。疲れているはずなのに上手く眠りに就けないまま、気が付けば一時間程経過していた。
仕事から帰ってくるなり私をベッドへと連行した当人は、隣で背を向け規則的な息使いで眠っている。
彼は長い刑期を終え、今年ようやく私の元へ帰って来た。現在はこの家の簡単な家事と、職探しをする日々が続いている。
社会に於ける、犯罪者に対する想像以上の風当たりの強さ、身の内で渦巻く焦燥感にも似た行き場の無い思い―――彼はそれを夜毎私にぶつけてくる。でもそんなの構わない。
昨夜も、今も、恐らくは明日以降も私は全て受け入れるだろう。
それは私自身の虚を埋める行為でもあったから。
互いの存在無しには居られない、只それだけが今の危うい関係を支えている。
それが愛であろうと依存であろうと、そんな事はもうどうでも良かった。
結局ベッドから身を起こし、床に散らばった衣服の中から彼のジャケットを引っ張って、内ポケットにある煙草とライターを勝手に取り出し火を点けた。けれど私は生まれてこの方喫煙した事がないので、取り敢えずは見よう見真似なのだが……
一息吐くと、幸い咳き込む事もなく、煙は月明かりで青白く光りゆらゆらと天井に登っていく。
それをぼんやり見ながら、自分が吐いた溜め息の大きさに思わず自嘲気味に頬を歪めた。
(何か私、オヤジ臭い?)
「……俺にも寄越せ」
呟くような声と共に彼の背中が微かに動き、怠そうに振り返る。
「ゴメン、起こしちゃった?」
「いや、何か眠れねえ。考え事しながら眼を閉じてただけ」
「あと煙草も勝手に頂いてゴメンなさい」
煙草とライターを慌てて返すと、彼は慣れた手つきで煙草に火を点けながら私に答える。
「別に良い、煙草くらい。……そう言やアンタ、煙草吸うんだな。知らなかった」
「今、初めて吸った」
「ふうん」
尋ねておいて、さほど興味もなさそうな返事だった。
「……これ灰皿の代わりに」
そう言って私は、オルゴール付きの小物入れを彼に手渡した。てっきり空き缶や空き瓶の類が出てくると思っていたのか、今度は困惑の表情で私を見詰める。
「え、けどコレ……」
「良いの。蓋の部分欠けてて元々使ってないし、オルゴールまで鳴らなくなっちゃって。いい加減捨てなきゃって思ってたから」
しかし今の今まで大事そうにサイドチェストの上に飾られていたそれに、煙草の灰や吸い殻を入れるのはどうも躊躇われる―――
そんな彼の心情を汲んで、咥えていた煙草の灰を自ら小物入れの中へ落とし、気にする事はないと行動で示してみせた。
それにしても、彼が煙草を吸うところを私も初めて見た。吸うのは知っていたが、少なくとも以前は私の前で吸う事はなかったからだ。
「私も煙草吸うところ見たの、初めて」
「……あぁ、アンタの前では吸ってなかった。今思えば、昔は気分を切り替えたい時に吸う事が多かった気がする。人前で吸う事自体ほぼなかった」
俯き加減でぽつぽつと当時を語る彼は穏やかな笑みを浮かべているが、その笑みにはほの暗い影も混在していた。
「じゃあ私今、結構レアな君見てるって事だね」
彼の気分を少しでも浮上させたくて、私は明るめの声音で慣れぬ軽口を叩く。
しかしそんな私を見た彼は、むしろ悲痛な表情でしばらく黙り込んだ。
静寂の中、煙草の火だけがジジ、と音を立て赤く光る。私も何も言えず、その赤を見詰めていた。
「……アンタさ」
「ん、何?」
彼は私を呼んだにも拘らず、後を続けようとしなかった。
だが夜はまだまだ長い。
いくらでも彼の言葉を待つ事が出来る。私は俯いたままの彼を急かさず、再びその口が開くのを待った。
「……あのさ」
「うん」
「後悔してねえの? 俺なんか待つんじゃなかったって……思った事、ねえのかよ?」
随分と唐突な言葉に思えたが、それは恐らく彼が私に対して抱き続けていたある種の罪悪感にも似た思いなのだろう。
「こんな職も無いヒモ同然の男養って、そうやって気ばっか遣ってよ……一緒に居たところで昔みたいに戻れない事くらい、判り切ってるだろ」
その言葉の意味するものを、理解するのに少し時間が要った。
何か言わなくてはと思ったが、すぐには言葉が出て来ない。
「潮時を見極めるのも大事だぜ。早めに見切りを付けた方が良いに決まってる」
要約するなら『自分はもうアンタと釣り合わない、別れるなら今のうちだ』という所だろうか。
「……後悔しているなら、とっくに追い出してるけど?」
顔を上げた彼に、私は微笑みながら続けた。
「愛想を尽かすなら、そもそも待ってない」
そう言って私は彼の手を取った。
ひんやりとした温度と少しかさついた私の手の感触が、彼をやるせない気持ちにさせたのだろうか。彼は私から顔を背け、唇をきつく噛んだ。
「―――働ける目処も立たないのに、こんな生活いつまでも続けてる訳にいかねえだろ。アンタの思いに報いる事だって出来ねえ。俺は……アンタの枷にしかなれないんだよ!」
「側に居られるなら構わないし、枷だとも思ってない」
彼との幸せな日々。それは数ヶ月にもならない束の間の日々ではあったけれど、共に過ごし彼の隣で感じてしまった温もりは、私にとってかけがえないものなのだ。
「そこまでして貰える人間じゃねえって言ってんだよ、俺は」
「それは、私が決める事よ。―――さ、もう寝ましょう」
彼は信じられない、と言わんばかりの表情で私の顔をしばらく見詰めていたが、ふぅ、と息を吐いて表情を緩めた。
「……そうだな。お休み」
「お休みなさい」
ようやく睡魔が訪れたのか彼は静かに眼を閉じ、やがて規則的な寝息が聞こえてきた。
「二度と一人にしないでよ……」
呟きは彼に届かないまま、闇へと溶ける。
自分の思いが時に彼を追い詰めているらしい事に、私も気付いていた。
(身勝手だって判ってるけど、……もう君と離れ離れの日々は沢山だから)
見詰めていたはずの彼の姿が、滲んでぼやけていくのを無視して眼を閉じる。
(―――側に居ると決めたから)
彼の寝息のリズムに呼吸を合わせるように、私もゆっくりと眠りに落ちていった。
〜やるせない気持ち〜
世界は多くのものに囲まれながら
それでも人の気持ちは常に満たされず
安定を求めながら
なぜ現状を良しとしないのか
働く上で多くを求められ
けれどそれほど期待はされず
物を大事にしなさいと言われながら
簡単に人は切り捨てられる
個性を求められるも
「一般的」であることを強要され
堂々とする姿勢に憧れるも
いつも何かしらの視線に怯えている
泣いてるように笑い
笑っているようで怒っていて
怒っているのになぜか悲しそうで
悲しいのに楽しそうに振る舞う
大丈夫
人間みんな、そんなもの