【やるせない気持ち】
一緒に流星群を見に行きたいと彼は言った。澄み渡った空気に包まれた山奥の静寂の中で、濃藍の夜空に真っ白な星々が雨のように降り注ぐ美しい景色を、二人きりで眺めたいのだと。
出不精な私はそんな彼の誘いを、のらりくらりと躱していた。その時期は忙しいかも、また今度ね、そうやって誤魔化し続けたことを今の私はこの上もなく後悔している。
君のスマホに残されていた計画表に従って訪れた山奥の野原は人の気配ひとつなく、秋の虫たちがひそやかな鳴き声をあげている。天を流れる無数の白銀の煌めきが、世界を美しく覆い尽くしていた。
本当なら隣にあったはずの温もりは何処にもない。秋風が冷ややかに、私の右手を撫でていく。
こんなことなら一度で良いから、君の誘いに頷いてあげれば良かった。だって馬鹿みたいに信じていたんだ、君と過ごす時間はこの先も永遠に続いていくものだと。
いくら後悔したって、空の彼方へと旅立ってしまった君が私の隣に帰ってくることはない。流星群のニュースを聞くたびに、どうしようもないやるせなさを抱えて、私はこれからの人生一人でを歩いていくしかないのだ。
じわりと滲んだ視界で、星々はただ美しく地上へと流れ続けていた。
8/24/2023, 10:43:29 PM