『もう一つの物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#77 もう一つの物語
[もし地元中学に通っていたら]
小学生の頃、
近くの中学でもう直ぐ中学生になる学生を
他校からも集めて、集会が開かれた。
すると、近くにいたお2人と意気投合!
もし同じ中学になったらよろしくね?
とニコニコして別れた。
あれから中学生になった。
私は、彼女達とは違う中学に通うことに
なってしまった。
もし、彼女達と一緒だったら、
どんな人生を歩んでいたのかな?
そんなもう一つの物語を時折想像したくなる。
中学生は大変だったから、
こんなことを思ってしまうのかもしれない。
もちろん、良い先生もいらっしゃった。
それはとてもありがたいことだと思う。
でも、深い友達になれた人は、
いなかったのかもしれない。
だから、どうしても考えてしまうのだ。
もし、あの中学に入っていたら?、と。
「そして少女達はいつまでも幸せに暮らしました。ですのね」
ほぅ、と水色の振り袖を纏う妖は吐息を漏らし、頬を染める。
一つの物語の結末を、彼女はめでたしめでたし、で締め括った。
「物好きね。そんな大層な言葉で締め括るなんて」
語り終えた緋色の打掛を羽織った妖は冷めた目をして呟いて、懐から煙管を取り出した。
「此処は火気厳禁ですよ、炎」
「あぁ、そうだったわね」
窘める言葉を軽く返し、おとなしく煙管を懐へと戻す。
口寂しさはあるが、出て行くほどではない。
常より気怠さを隠そうともしない緋色は、欠伸を一つするとごろりとその場で横になった。
「お行儀の悪い事ですね」
「あなたに強請られて態々訪れたのだから、これ位は許してもらいたいものねぇ」
「それは、そうですけれど」
不満そうに頬を膨らませ、水色は袂を振る。
端が解け、それは上質な紙となり筆となり。さらさらと書き付けられていく文字が、墨が乾けば巻物として閉じられて。
全てを書き終えたらしい紙や筆が袂に戻り。先に仕上がっていたいくつかと新たに仕上がった巻物は一つに纏まって、形を揺らめかせて一冊の本へと姿を変えた。
その本を手にし胸元で抱いて、狡い方ですね、と小さくぼやいた。
「わたくしが炎の話を好んでいる事は知っているでしょうに。そのように言われてしまえば、何も言葉に出来なくなってしまいます」
「静かになっていいじゃない。この話は目出度い話ではないのだから」
横になったまま、緋色は素知らぬ顔で目を細める。常と変わらぬ気怠さを纏いながらも、どこかもの悲しさを醸し出していた。
「一つの話が幸せなまま終わったからと言って、話の中の人間達がすべて幸せではないわよ。それに終わった話のその先が、必ずしも幸せにある訳ではないでしょうに」
「それは分かっています。物語の裏には、哀しい別れや報われない思いがあるという事は。このお話もそうでしたし」
本を手にしたまま立ち上がり、水色は近くの書架に本を収める。背表紙を指先でなぞり、分かっています、と言葉を繰り返した。
「全てが報われるお話など、それこそ本当の絵空事でしかないですもの。失ったものは戻らず、死した者が還る事もない。炎の視て語る話は、本物なのですから」
困難を乗り越えて望みを果たした者。過去から未来へと歩み出した者。
めでたしめでたしで終わった物語のもう一つ。その裏で悲願を叶える事の出来ない者がいた事を、水色はよく知っている。
人が人である限り、全ての願いが叶う事などないのだから。
「だからこそ幸せに終わったお話を、わたくしは尊いと感じるのです。今回のお話は特にそう。いつまでも幸せに、で締め括る事が相応しいと思えるほど素敵なお話でした」
頬を染め、話を思い返す。
そんな水色を呆れたように、冷めた目で緋色は見遣り、馬鹿ね、と吐き捨てた。
一つの終わりを迎えた話の先が不変であるはずがない。
どんなに願い思った所で、終わりのない平穏は虚妄だ。
「一つ話をあげましょうか。願いを叶え望みに応えた少女は、束の間の平穏すら享受する事なく人ならざるモノの世界へと誘われるのでした」
「っ、随分と酷い事を言うのですね」
「酷くはないわ。本当の事だもの」
短く息を吐き、緋色は立ち上がる。
気怠さは消え、剣呑な鈍色が煌めいた。
「戻るわ」
「分かりました。それではまた」
水色の言葉が終わらぬ内に、緋色の姿は煙となって掻き消える。
その姿を見送って、水色は物憂げに目を伏せた。
「まさか、坊やに呼ばれるとはねぇ」
薄暗く狭い部屋。
姿を現した緋色は、目の前の剣呑な表情を浮かべる男に対して艶やかな笑みを浮かべて見せた。
「聞きたい事がある」
「何かしら」
予想はつく。
この部屋からなくなったもの。足りないものがある。
見間違いであればよかったはずの事だろう。
緋色の言葉に男の表情はさらに険しく、その金の瞳は鋭くなる。
「黄櫨《こうろ》の躰は何処だ」
あぁ、やはり。
胸中で溜息を吐きながらも、緋色の表情は変わらず笑みを浮かべたまま。男の四肢に繋がれた縄が、男の感情に合わせて揺らめくのを視界の隅に捉えながら、伝えられる一つを口にした。
「坊やはあの娘を置いていくべきではなかったのよ。アレのいる場所に」
それだけですべて伝わったのだろう。
男の目が僅かに見開かれる。
「あの化生の屋敷か」
「いくら代わりがいれど、呪の塊でしかない娘を逃しはしなかったというだけの事。堕ちても元は守り神とされた妖よ。縁を辿れば、神域に潜り込むくらいは出来るわ」
緋色の言葉に、男の表情に苦々しさが混じる。それを気にせず緋色は淡々と見えたままを紡いでいく。
「屋敷に戻って閉じてしまった後の事は見えないわよ。あそこに煙はないもの」
「戻ってはいるのだな」
「えぇ、そうね。施された封印は強固だから喰らうにしても、他に何かに使われるにしても、すぐにはどうこう出来ないでしょうけれど。見えないのだから所詮は臆測でしかないわよ」
そうか、と男は短く答え目を閉じる。
揺らぐ縄が次第に動きを穏やかにし、姿を霞ませていく。そしてそのほとんどが見えなり、男の剣呑さも鳴りを潜めた頃、再び男は目を開いた。
「礼を言う。急に呼び出してすまなかった」
「過去が見えないのも不便なのね。気にした事もなかったけれど。まぁ、退屈しのぎにはなったわ」
ひらりと手を振り、香の煙を身に纏わせる。
そうして姿を煙と同化させ、戻る間際にふと思い出す。
「アレがまだ守り神をしていた頃を考えると、呪を求める意味に予想はある程度つくわ。藤白《ふじしろ》を探しなさい」
それだけを告げて、香の煙と共に霞み消えた。
20241030 『もう一つの物語』
もう一つの物語
一人の人間は花が好きでつんでつんで手元においたが
一人の人間は花を愛していて水をやりつづけたということ
高校三年間、一人暮らしをする為に居酒屋でアルバイトを頑張りました。
実家暮らしなので家賃も光熱費も親が払います。
だから給料は全部私の通帳に入ります。
給料日を迎える度に増えていく残高。見る度に顔がにやけてしまう。
時給が三桁とはいえ、三年も働けばそれなりの額になりますからね。
そして無事高校を卒業した私は居酒屋で正社員になる道を勧められましたが断って、予定通り一人暮らしを始めました。
次のアルバイトが決まるまでの間はのんびりしよう。
求人雑誌をぱらぱらと捲りながら家具を揃えて、趣味を揃えて、私はのんびりと過ごします。
アルバイトをして趣味に勤しんで、遂に彼氏が出来ました。
そんなもう一つの物語を考えるのです。
何度も何度も考えるのです。
#48 もう一つの物語
物事には必ず表と裏があり
勝って喜ぶ人の裏には
負けて泣く人がいる
好きな人と幸せになれる人がいれば
好きな人に振られて悲しむ人もいる
もう一つの物語
《もう一つの物語》
保全させていただきます。
いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
最近は書けておらず、本当に申し訳ありません。
落ち着いたらまた書いていきたいと思います。
その時は、どうぞよろしくお願いします。
「もう一つの物語が始まっちまったな……」
「新しい悩みが生まれる度にそういうの、止めない?」
「ばっか、お前、悩みがまた一つ増えたと重く考えるより、違う言葉で言い換えた方がいいだろ。
増えた悩みは、新しい物語き始まる! とか考えた方がかっこいいだろ!」
もう一つの物語
同じ様に一緒に1日を過ごした僕らだけど
1日の終りに書く日記にはそれぞれ違う事が書かれていく
まるでもう一つの物語のように
もし
今
Aじゃなくて
Bを選んだら―――
人生は
選択の
連続だ。
今から
家に帰る?
寄り道する?
食事は?
作る?
買う?
食べていく?
もし
いつもと
ちょっと違うものを
選んだら
日常が
非日常に
変わって
わたしの人生
ちょっとは
変わるかな?
#もう一つの物語
私たちの馴れ初めを
今度はあなたからの視点で語ってほしい
『もう一つの物語』
人の心ってのは難しい
――もう一つの物語
もしもうちの親がお金持ちだったら、あの時、人生の岐路に立つという様な事があったのかもしれないし、もう一つ別の物語があったかもしれない。
...けど、どっちが本物の自分になるんだろうね。
多分というか、完全に主観ではあること。
漫画でもアニメでも小説でも創作物なら何でも良いと思うが、主人公やその周りのキャラクターより、主人公の遂に存在する、ライバルや敵などの方が読者の感性に響く。要は人気が出るような気がする。少なくとも自分はこれまで触れてきたジャンルを振り返ってみても、ライバルや敵ポジションのキャラクターに惹かれている傾向にある。
人気があるとなると、大体のジャンルは何をするかというと、スピンオフという名の別の物語が出来上がることがある。存在意義の賛否は正直分かれるとは思うが、自分は結構好きだ。本編主人公を別視点で見ることができたりするからである。
【もう一つの物語】
もしこの職業についていなかったら、普通に働いていたと思う。そのまま建設会社に就職して、必要に駆られて資格を取ったりして、それなりに家族を食わせてやることも出来たと思う。結婚もしているかもしれない。新しい家族が生まれているかもしれない。それはそれで幸せな生活を送れていたのかもしれないな、なんてことを年に1回考えることがある。
でも毎回同じ結論に辿り着く。
それは俺であって俺じゃないのだ。
隣にあいつが居ない、あいつに名前を呼んでもらえない俺はもはや俺とは呼ばない。
名前の違う何かだ。
時々滅多に呼ばれなくなってしまったその名が恋しくなることもあるが、時にはからっと快活に、時には甘く掠れて呼ばれるなんの捻りもない渾名が愛おしい。
四半世紀以上のお付き合いですからねぇ。
そりゃもう、考えられませんよ、無いなんて。
「……何ニヤニヤしてるん?」
「いやこの仕事してなかったら何してんのかな俺って」
「それのどこにニヤける要素あるん?」
「おたくは?お前はこの仕事してなかったら何してた」
いきなり振ってくるなと怪訝そうな顔をしながらも、そうだなーと考えてくれる。そういうところやけに律儀なんだよな、昔から。だから余計に俺が調子に乗ってしまうのだ。
「うーん、具体的には思いつかんけど俺ちゃうんとちゃう?そいつ」
「いやいやお前の話してるんやぞ」
「やって前から言うてるけど俺はあんたが居らんかったら居らんもん。顔が一緒なだけで別のやつやろそいつ」
ケロッとした顔で奴は言ってのけた。自分がとんでもないことを言っている自覚がこの天然にはあるのだろうか。
「んで、なんであんたはニヤニヤしてたん?」
そう訊ねられて、思い出した。
俺も同じ穴の狢だってことを。
「……俺もおたくといっしょやわ」
「どういうこと?」
なんて絶対言ってやらへんけど。
相対的存在
もう一つの物語
今日はあなたが生まれた日
そして
「お母さん」が生まれた日
【流用しようとした原案を紛失したため執筆不可になったようだ……(´ ・ω・`)】
もう一つの物語
私は私の物語を生きている
そして別のところでは、もう一つの…また別の物語を生きている者がいる
こうしてたらなぁ、とか、
あんな会社いってたらなぁ、って
もう一つの物語を思い描くようになったのは
いつからなんだろう。
その度に、この物語だったから出会えた人とか
できたことを思い浮かべて、
いやいや全然捨てたもんじゃないでしょ!って
思うようにしてる
#もう一つの物語
お題『もう一つの物語』
これから語るもう一つの物語は萌香の友達、穂先(ほさき) 真珠星(すぴか)が萌香と出会う前の話である。
当時中学2年生の真珠星はいつも家に遊びに来る五つ上の兄、源星(りげる)の友達白鳥(しらとり)に恋をしていた。
1学期の終業式を終え自宅に帰ると出迎えたのは家族ではなく遊びに来ている白鳥だった。
白鳥「お帰り、真珠星ちゃん。外、暑かったでしょう。さっさ、特等席に座って冷たい麦茶をどうぞ」
特等席とはリビングの中で一番エアコンのクーラーの風が当たる場所だ。真珠星は鞄を手に持ったまま白鳥に背中を押されながらダイニングチェア(特等席)に座らされた。それと同時にガラスのコップに冷蔵庫の冷凍室から取り出した氷が入る、母親が作った麦茶を白鳥はコップに注ぎ入れ真珠星の目の前に差し出した。
真珠星「……あ、ありがとうございます」
真珠星は自分の家の麦茶だと頭で理解しているものの好きな人が“自分の為“に淹れてくれた。ただそれだけなのに少し緊張してしまい、震える手でコップを持ちそして麦茶を一気に飲み干した。
白鳥「いい飲みっぷりだね。将来が楽しみだ(笑)」
真珠星「どういう意味ですか?!」
と少し嫌味っぽく言うと。兄が白鳥と真珠星の間に割り込んで来た。
源星「そりゃ、お前酒豪って意味だよ(笑)」
真珠星「嘘っだ〜。おにぃ嘘つきだから信用できない!」
兄妹のやりとりがこれ以上長引くと喧嘩に発展しそうだったので、白鳥は真珠星の機嫌を取る為、翌日行われる地元の夏祭りに誘った。
真珠星は天にも昇る思いだ。その時決意した、このチャンス逃してたまるか!!と……
End
もう一つの物語。
この言葉の意味は、「自分のIF」だろうか。
あのとき、あの選択をしていたら……
この手を話をするとき「あのとき、あの選択をしていたから今の自分があり、その選択を後悔しているのだ」
といったことはよくある。
まあ、実際その通りなのだ。