『それでいい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
この世界には、
七つの大陸が存在する。
そして、その七つの大陸の真ん中に
ジャポルという美しい国がある。
国の特徴
ジャポルは周りを海に囲まれた
島国であり、豊富な海産物が捕れる。
領土の周りがすべて海に
囲まれていることから、
魚を多く食べ、農業で米や野菜を
作り自給自足をする食文化が主流の国。
また山も多いことから自然豊かで
沢山の動物と人間が共存している。
春・夏・秋・冬と四季が
はっきりとある点も、他の国には
ないジャポルならではの特徴。
建築
建築物においては、他の国が
石や金属を多く使う中、
木材を中心に使用する。
自ら編み出した技術によって
強度を持たせて建築されている。
ジャポルには遥か太古より、
近隣諸国から伝来した
文化や技術を数多く受け入れ、
その文化や技術を、知恵を使って
自分たちが使いやすいように
改良し発展してきた歴史がある。
ジャポル人の思考
ジャポルの人は、調和を大切に
して協調性に優れた思考をする人種。
抜きん出た人はあまり好まれない。
自分の意見や考えを発信する事も
苦手としている人が多い。
ジャポルに住む人達は
争いを好まない民族性で、
軍事力をほとんど持っていない。
ジャポルの歴史
ジャポル人の性格や、行動は
昔からの文化が現代まで
影響している。
ジャポルは島国の為、他の国と
あまり関わりを持たなかった時期も
ある事から、コミュニケーションを
図ることが少ない民族で、握手や
ハグなど積極的に接することを
苦手としている。
島国のなかで、他国と接する機会が
少ないジャポルでは、習慣、食生活、
思考パターンなどのあらゆる文化を
独自で発展させてきた歴史がある。
その文化は、今でも色褪せること
なく継承されている。
そんな、世界でも有数の美しく
歴史のある平和な国、ジャポルは
これから地獄と化していく。
今から時を遡る事、四年前のある日
ジャポルは、軍事帝国ベルゴルドから
何の予告もなくミサイル攻撃を受ける。
ジャポルには毎日、ベルゴルドから
雨の様にミサイルが飛んできた。
人々は戦争の経験がなく、
武器を扱える者も少ない。
逃げる以外に選択肢がなかった。
ベルゴルドから激しい攻撃を
受けた小さな島国、ジャポルは
わずか三日で火の海と化し、
ついにはベルゴルド兵に上陸を
許してしまう。
ベルゴルド兵は美しいジャポルの
街を次々に破壊し、武器を持たない
無抵抗な市民を殺害していった。
しかし、ジャポルも
全く反抗しなかった訳ではない。
ジャポルには、古くから伝わる
技術を受け継いだ質の良い
武具を造る技術者がいる。
その技術者が作った武具で
ベルゴルド軍と戦い、
国を守る為、必死に抵抗した。
ジャポル軍はベルゴルド軍を相手に
善戦していたが、突如として
怨魔(えんま)という化け物が現れる。
その化け物はいつ、どうやって
産まれたのか誰にも分からない。
怨魔は人の姿をしておらず、
理性や知性を持たない。
知性が無いため、言葉も扱えず、
話し合いなど通じる相手ではない。
怨魔は猛獣の様な牙と
刃物の様な爪を持っており、
人間よりも二回り程、
大きな体をしている。
また、銃で頭を撃たれても
死なず、首を切り落としても、
槍で心臓を貫いても死なない。
怨魔は炎で焼かない
限り絶命させる事が
出来ないのだ。
寿命もなく、何十年、
何百年でも生きる。
人間を見ると必ず殺し、
その後は腹を満たす為
骨まで喰らいつくす。
ジャポルの人々が次々と
殺されていく中、
一人の男が立ち上がった。
その男の名はセンリュウ。
彼はジャポル最強の戦士と
言われていた。
センリュウはまだ幼い自分の
娘を残し、弱き人を守る為、
刀一本でベルゴルド軍と
怨魔に立ち向かっていった。
センリュウの強さは凄まじく、
ベルゴルドの兵隊を次々と
仕止めていく。
その刀は振るだけで炎を
発生させて怨魔を焼き殺す。
半不死身の化け物を
相手にしても決して
負ける事はなかった。
しかしある日、センリュウは
ベルゴルド兵から毒針攻撃を
右腕に受けてしまう。
センリュウは徐々に腐っていく、
自らの右腕を切り落とした。
しかし、右腕を失いながらも
センリュウは力なき
人達を救う為、戦い続けた。
そんなある日、センリュウは
とてつもなく強い怨魔に
遭遇してしまう。
利き手ではない、左手一本で
刀を持ち、その怨魔と戦ったが
力及ばず滝底に突き落とされ
消息を絶ってしまった。
最強の戦士センリュウを
失ったジャポルは、
怨魔とベルゴルド軍の攻撃により、
なす術なく壊滅状態にされた。
この時から、ジャポルの地獄への
歩みが始まる。
それでいい
世の中の同年代の人やかつての学友たちは
どんどん先に進んでいると聞いた。
でも私は?卒業してから何か変わったのだろうか。
子どもの頃に描いていた立派な大人になれた気がしない。悩んでいるうちに、焦りは苦しみに変わってしまった。
「あのね、○○は仕事が大変でも、最後にはちゃんと頑張れてるじゃないの。自分のペースで進んでいけばそれでいいんだよ。」
大切な人がくれた言葉は、気づかせてくれた。
周りよりも、過去の自分と比べてどうなっているか、昨日よりも1歩進めていればそれでいいのだと。
他人に何を言われても、他人からどんな目で見られても、自分にとって必要なこと、自分がやりたいことで人に迷惑をかけなければそれでいいんだ。
#それでいい
―それでいい―
誰かに迷惑をかけるような事でなければ、他人から見て変だと思われたとしても、本人が生きるために必要ならば、それでいい。
やるべきことがある。
やっておいた方が良いことがある。
やらなきゃいけないこともある。
やりたい事もある。
でも
できない。
やる気にならない。
やるにやれない。
こんな事を毎日考えながら、
自分の無力と、自分の存在感のなさと、
でも、逆に
自分がやらなきゃ進まないという、
意味がありそうな使命感を感じて、プレッシャーに苛まれる。
でも
意味なんて特になくて。
意味なんて自分が決めるもので。
世の中なんて、押し切ってくる人ばっかで。
そいつらが決めた価値や、意味なんて、
理解はできるけど、賛同なんかできない。
人生うまくいく人って、
結局前を向いた人で。
人生うまくいかない人って、
自分にも、人にも優しくて、甘くて、
後ろ向いて世話焼いて
後ろ向いて、向かい風から目を背けてる。
でも
それでいい。
それでいいって思える人は、それでいい。
それじゃやだって思う人は、それでいい。
たくさんの人、たくさんの思い、
たくさんの感じ方、たくさんの生き方。
それでいい。
そうしよう。
それでいいから。
いつかのあなたへ。
周囲からの期待に
押し潰されそうになりながらも
君はいつもめげずに頑張ってきた
けれど
たとえ君が必死に頑張って
予想以上の結果を出したとしても
世の中はよくばりだから
君に勝手な期待を
押し付けてくることもあるだろう
だけど
誰かの期待に応えるために
君が他の誰かになる必要はないんだ
君の価値を決めるのは
他人ではなく
君自身
君は君の一番の味方であり
一番に君自身に
拍手を贈れる人であってほしい
誰かと比べる必要はない
君は君を生きていいんだよ
君がずっとこのまま僕と同じ所に、
下がっていてくれるように、
甘い言葉のように、
それでいい、と言って、
僕はこの行いを、
君と一緒にいるためだとか、
自分の中だけで正当化して、
それでいい、と誤魔化して、
君はそんな僕を、
僕の個性を、
人それぞれという曖昧な言葉で濁し、
間接的に、
それでいいと、言っている。
「それでいい」
オン眉が好き。
だから前髪を切った。
おでこが広いけど
眉毛描かないといけないけど
それでもオン眉可愛いな。
#それでいい
【それでいい】
直球すぎる言葉よりも、曖昧な言葉を欲している。
肯定しているのか、否定しているのか。
どちらでもあり、どちらでもない。
そんな中途半端な言葉だったら、いいのかもしれない。
「もう、それでいいよ」
あなたが、私に別れを告げた時のセリフだ。
私という「私」を認めてくれたのか、呆れていたのか。
あれは、どっちの意味だったのかな?
今でも私には分からない。
そして、これからも分からないままでいい。
オムライスの皿には
ふんわりと包まれたオムレツがのっている
一口食べるとほんのりケチャップの甘さ
「それでいい」と思える瞬間がある
もう何も足さなくても
もう何も引かなくても
このままで十分だと思える瞬間
「まだまだ」とか「もっともっと」とか
欲張りになることがある
「もういいや」とか「どうにでもなれ」とか
投げやりな気持ちになることもある
それでも
ときどきはいったん全部手放して
今だけを見つめていたい
オムライスが冷めないうちに
#それでいい
No.44『いい夢を』
散文/掌編小説
ふと、目を覚ますと真夜中だった。どうやら、いつの間にか寝落ちてしまっていたらしい。寝る前に読んでおこうと、布団の中で手にした文庫本。手にした、そのままの姿勢で寝落ちてしまっていた。
「ちゃんと、寝なきゃ」
自分の寝相の良さに感謝しつつ、こないだ摘んだ道端の花で作った栞を挟み、本を閉じる。何度も読み返した愛読書。何度読んでも、違う感想になる不思議な物語だ。
もう、4月だというのに、夜と朝はまだ肌寒く、寝る時は毛布が欠かせない。毛布の暖かさのせいで寝落ちているわけで、そろそろ手放さなければいけないのだけれど。
「おやすみなさい」
誰も聞いてはいないけど、いつものように口にする。さっきは『おやすみなさい』も言わず、いつの間にか眠ってしまっていた。もう一度、
「おやすみなさい。いい夢を」
そう口にする。これでいい。これで、今夜もいい夢を見られるはずだと目を閉じた。
お題:それでいい
それでいい。
消極的な言葉だ。
わたしはよく使う。
相手に不満を伝えつつ、了承する。
自分自身にもたまに使う。
諦めないといけないとき。
それでいいと言ってしまえばその場だけ凌げる。
それでいい
自分が変わっても変わらなくても
やらなきゃいけないこと自分にとっては、
そんなのどっちでもいいことだよね。
仲間をなくして、家族をなくして泣く自分が
恥ずかしいし悲しいけど泣くのは、
自分が決める。
どんなに辛くても
それでいい
佐助
「今度の休みに服を買いに行きたいの。付き合ってくれる?」
仕事の休憩中、キミから届いたメッセージ。そういえば、この前カフェでファッション雑誌を読んでて、この服いいなぁ。って言ってたっけ。そんなことを思い出し
「もちろんいいよ」
と、返事をした。
「あった、これか」
迎えた休日。キミと一緒にショップに行くと、目当ての服を見つけたようだ。けど
「それが欲しい服?雑誌で見てたのとは違うよね?」
選んだ服は、普段キミが着そうにないもの。着たことがない系統の服にチャレンジしてみよう。ってワクワクドキドキしている感じでもない。
「うん。だって、あの服よりもこっちの方がいいって同僚が…」
「そうなんだね。でもキミは、雑誌で見てた服の方が欲しいんでしょ。なら、そっちにしなよ」
「でも…」
「同僚の方が言うように、その服もキミに似合うと思う。けど、欲しいと思ってないでしょ」
「え?」
「だって、雑誌を見てたときはキラキラした目をしてたのに、今はしてないよ」
「………」
「勧められたものを着るのも良いと思うけど、自分の着たい服を着た方が、気持ちも明るくならない?勧められたから仕方ないって気持ちなら、着ない方がいい。服がかわいそうだ」
「………」
「その服は、新しい自分に出会いたい、チャレンジしてみよう。って気持ちになったら迎えればいい。今は、今欲しい物を選びなよ」
「…そうだね」
俺の言葉が後押しになったのか、手にした服を戻し、欲しがっていた服を持って来る。
「うん。いい笑顔だ」
さっきまでとは違い、嬉しそうに笑っている。
「やっぱり、これがいい。これを着たいと思ってたの。同僚に言われたからそれにしようと思ったけど、私はこっちが欲しいしすぐにでも着たい」
「それでいいよ。誰かの意見を参考にするのはいい事だと思う。けど、最終的に選ぶのは自分なんだから、自分の好きなようにしな」
「うん」
「そうやって笑ってるキミが、俺は好きだよ」
顔を赤くして固まるキミの手から服をサッと取り、俺はレジに向かうのだった。
『それでいい』
失くさないように抱き締めて
真っ黒な世界の果ての底で
陽だまりみたいな愛を憂いる
涙の雫が乾くまで傍に居るよ
他人が泣いていようが
他人が怒っていようが
他人が辛そうだろうが
他人が不満だろうが
自分が良ければ別にいい
それでいい
それでいいんだ
他人が泣いていて不満なら
なんとかすればいいし
他人が辛そうで不満なら
なんとかすればいい
ヒーローは皆そうだ
誰かが泣いていると気に食わないから
笑わせにいくんだ
俺には到底理解できないけど
でも
あの子が泣いていたら
隣で見守ってたくなるんだな
それでいい
ただっぴろい白い紙が私の足下に広げてある
いまからここに私は文字を書き記す
何を書こうかはすでに決めていた
私の手には私の背丈と変わらぬほどの大きな筆
たっぷりの墨を含ませて
えいやっと意気込んで筆を紙へと置く
右へ滑らせ次に左
ここはしっかりはねて
ここはしっかりとめる
頭の中ではそうシミュレーションしてあったのに
実際の線は何とも歪で
美しさからは遠くかけ離れていく
それでも一度書き始めたら止まることはできない
私は理想とは違う線を
それでも精根尽くして書ききった
できあがりはやはり想像していたのとは全然違う
けれど
私はこの全然違う線をそれでいいと思った
それがいまの私にできること
いまの私の全てなのだから
【それでいい】
新年度の仕事が始まって、3日経った。
昨年度新卒で入ってきて早々、当時のオツボネな係長に新人いびりされた新人ちゃん。今朝は珍しく自分から、私に初めての仕事のやり方を聞きに来た。
昨日の晩の、先輩からのグルチャのリークで、新人ちゃんが当時の――今はもう別部署に左遷させられた係長に、トラウマ持ってるって情報は見た。
よーしゃしゃしゃ。怖かったでしょう。
この、センパイの、怖くない私が、優しくサポートしてあげるからね。大船に乗って云々。
……職場の上司ってなんでこんなに下っ端使い潰すことしか考えないんだろう(虚ろ目)
と、思っていたら。
「すまない。ひとつだけ、助けてくれないか」
大量のバインダーを抱えた先輩が、書類保管庫兼務な金庫から自分の席に戻ってきて、ちょっと疲れたような、あきれたような顔を向けてきた。
「新年度早々やられた。2週間で仕上げろだそうだ」
ゴマスリ係長直々のお達しさ。先輩がそれとなく、係長の席でふんぞり返ってスマホいじってるオッサンを視線で示した。
「さすがゴマスリ」
「『若いからこういうの詳しいだろう』、だとさ」
ゴマスリ。後増利係長。新人いびりがバレて別部署に飛ばされた、尾壺根係長のかわりに来た中年オヤジ。
その名のとおり、上にゴマすることしか頭に無くて、面倒な仕事は全部部下に丸投げしてくるって評判。
ウチの部署に来て最初のターゲットは先輩らしい。
ホントに職場の上司ってなんで下っ端使い潰すことしか考えないんだろうう(チベットスナギツネ感)
「私の力量を、よくご理解なさっての激励だろうさ」
なんといっても、係長殿はごますり業務が非常にお忙しくていらっしゃるから。私達がお支えしないと。
小さな声で、それはそれは、しれぇ〜っと心にも無いことを言う先輩。
「ゴマスリにコレ任せたら絶対データ飛んで大惨事だから、ってのもアリ?」
バインダーをひとつ手繰って、中を見て仕事内容をちょっと把握して、ポツリ感想を呟くと、
「……データ飛ぶだけで済めば良いがな」
ちょっと声デカいぞ。先輩が人差し指を唇に立てて、しっ、とあきれ顔を少しだけ崩した。
「ゴマスリもデータとパソコン勉強してほしい」
「スキル習得より大事な仕事が山ほどなんだろう」
「勉強、して、ほしい」
「毒抜きはいつもの低糖質バイキングで良いか?」
「それでいい……」
#それでいい
将来の自分
私は考える、本当にそれでいいのかを
夢のある仕事をして生きなくても
夢のある生き方はできるもので
堅実に将来を決める
それでいいんだね
先生が言う
それでいい
それがいい
【それでいい】
「はい、深く呼吸して」
時乃は静かに深く鼻から吸い込み、長く口から吐いた。空気の通る時間が長く感じて、吐き出した途端に少し咳き込む。
「んー、もう一回」
背後から時乃を抱き込む男の声が、僅かに笑ったような気配を含んだものになった。もう一度吸い込んで吐き出す。今度は咳き込まずに済んだ。もう一度、と呟く声に呼吸を繰り返す。酸素を取り込むたびに重かった体に澄んだものが満たされる感覚。ぼんやりした頭がハッキリとしてくる。
確か、市街戦が突然始まって巻き込まれたのではなかったか。生体兵器で争うようになってから、人間体に擬態した兵器を送り込む手法が見られるようになった。今まで防衛エリアの市街地では起こっていなかったが、そうか、もうだめなのか、と時乃はようやく像を結んだ視点で周囲を見回した。背後の男の姿は見えない。腰と腹を支えるように抱き込む腕はコンバットスーツとプロテクターに覆われている。
「口を開けて、声を出すんだ」
頷いたときに僅かに頭が重く感じた。ひらひらしたものが感じられて、いよいよ不味いか、と覚悟を決める。皮膚が剥がれたかもしれない。
ざーっと、ノイズのような声が漏れた。痛みがある感じはないが、声帯が焼けたのかと思う。しかし男の声はもう一度、と促してきた。
ざー、ざー、と繰り返していくうちに、微かに、あー、という音になってきた。
「それでいい、もう少し」
「……あー」
ようやく、音らしいものが出た。すると背後の男は腕を解き、時乃の前に歩みだす。
時乃はコンバットスーツから彼が何者なのか把握していた。何しろかのスーツは時乃か自軍の生体兵器部隊に支給したものだからだ。
ライオンの頭をした男は、敬礼して笑みを浮かべる。
「祖江村時乃科学国防大臣、大変失礼いたしました。緊急事態のため、部下に動画を残させた上で、御身に生体兵器化薬剤を投与し、命を守らせていただきました」
おやおや、と時乃は肩を竦めた。科学国防大臣といえば、人間を獣に堕とした嫌われ者だ。生体兵器部隊も反感を持つものが多いと聞いている。
「見捨てればよかったものを」
「はっは、何をおっしゃいます、あなたの尽力で、どれだけ国土を取り戻せたことか。少なくとも獅子隊はあなたを尊敬しておりますよ」
自虐的な吐き出しに、ライオンは堪えきれないとばかりに笑った。
「では、庁舎へご案内しても?」
「ああ、それでいい」
歩き出そうとして、関節の形が変わっていることに気付く。手には肉球もあり、何かしらの肉食動物になったことは分かった。
ライオン頭に急かされるまま、庁舎を目指す。見れば既に的兵器は制圧されて、火災も概ね鎮火済みだった。