かたいなか

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新年度の仕事が始まって、3日経った。
昨年度新卒で入ってきて早々、当時のオツボネな係長に新人いびりされた新人ちゃん。今朝は珍しく自分から、私に初めての仕事のやり方を聞きに来た。
昨日の晩の、先輩からのグルチャのリークで、新人ちゃんが当時の――今はもう別部署に左遷させられた係長に、トラウマ持ってるって情報は見た。
よーしゃしゃしゃ。怖かったでしょう。
この、センパイの、怖くない私が、優しくサポートしてあげるからね。大船に乗って云々。
……職場の上司ってなんでこんなに下っ端使い潰すことしか考えないんだろう(虚ろ目)
と、思っていたら。

「すまない。ひとつだけ、助けてくれないか」
大量のバインダーを抱えた先輩が、書類保管庫兼務な金庫から自分の席に戻ってきて、ちょっと疲れたような、あきれたような顔を向けてきた。
「新年度早々やられた。2週間で仕上げろだそうだ」
ゴマスリ係長直々のお達しさ。先輩がそれとなく、係長の席でふんぞり返ってスマホいじってるオッサンを視線で示した。
「さすがゴマスリ」
「『若いからこういうの詳しいだろう』、だとさ」

ゴマスリ。後増利係長。新人いびりがバレて別部署に飛ばされた、尾壺根係長のかわりに来た中年オヤジ。
その名のとおり、上にゴマすることしか頭に無くて、面倒な仕事は全部部下に丸投げしてくるって評判。
ウチの部署に来て最初のターゲットは先輩らしい。
ホントに職場の上司ってなんで下っ端使い潰すことしか考えないんだろうう(チベットスナギツネ感)

「私の力量を、よくご理解なさっての激励だろうさ」
なんといっても、係長殿はごますり業務が非常にお忙しくていらっしゃるから。私達がお支えしないと。
小さな声で、それはそれは、しれぇ〜っと心にも無いことを言う先輩。
「ゴマスリにコレ任せたら絶対データ飛んで大惨事だから、ってのもアリ?」
バインダーをひとつ手繰って、中を見て仕事内容をちょっと把握して、ポツリ感想を呟くと、
「……データ飛ぶだけで済めば良いがな」
ちょっと声デカいぞ。先輩が人差し指を唇に立てて、しっ、とあきれ顔を少しだけ崩した。

「ゴマスリもデータとパソコン勉強してほしい」
「スキル習得より大事な仕事が山ほどなんだろう」
「勉強、して、ほしい」
「毒抜きはいつもの低糖質バイキングで良いか?」
「それでいい……」

4/5/2023, 3:49:45 AM