『あなたがいたから』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【あなたがいたから】
ってすごいな…
【あなた】
家族や恋人から動物にいたるまでと範囲は広い
感謝、恋心、喜び、慈しみ、嫉妬、怒り、恨み
人間の生死と喜怒哀楽には必ず
【あなた】
がいるだろうから
素直に感謝のコトバなぞ書きたくなくて
色々考えてみたけれど…むずかしいな
あなたの【あなた】は誰ですか?
私の存在意義は、あなたがいたことで耐えられた。
そうでなければ、きっと壊れてしまっていただろう。
あなたのその何でも許せる包容力に包まれて、私は今まで幸福を何の躊躇いもなく享受することが出来たんだ。
ありがとう。
あたし誰かしら。
あたし誰だったかしら。
/『あなたがいたから』
あなたがいたから
もう死にたいよ...。
俺は君がいたから生きていけた。
「ハハッ…何やってるんだろうな俺は…」
自分しかいない部屋の中、かわいた自身の声が反響して戻ってくる。
数日前までは君がいて、笑顔溢れた暮らしをしてたのにね。
【あなたがいたから】
「師匠、あなたがいたから、俺、ここまで生きてこられたよ……っ」
冷えきった私の指先を、両手の温もりのなかに握りこんで、彼は言う。かすむ視界の向こうで、子供らしいあどけなさの残る青年の顔が、こちらを覗きこんでいる。ぽろぽろとこぼれた涙が、彼の頬のみならず、私の頬までも熱く濡らす。
焼けるような熱さは、胸にも感じていた。鼓動に合わせて、どくどくと血が溢れ続けている。その熱を、荒野を吹き渡る風が冷まそうとしている。
どんなに風が吹こうとも、周囲に立ちこめる濃厚な血の匂いは、とうぶん消えそうになかった。私と彼の周りには、巨大な魔獣の残骸が無惨に散らばっている。ここら一帯を縄張りにしていた竜型の魔獣だ。荒野を舞台にした長き戦いはついに幕を閉じ、一人の青年だけがいま、勝者としてこの場に君臨している。
「師匠、昔、あのひどい戦火のなかで死ぬはずだった俺を、この歳まで、育ててくれて……、くっ、……ありが……とう……っ」
喉奥から絞り出すような声で、彼は告げた。私は驚き、わずかに目をみはる。なにかにつけて反抗的だった彼から、そんな感謝の言葉が聞けるとは、思ってもみなかったから。
「俺にっ、剣を教えてくれて、ありがとう……」
彼の唇が、苦しみを噛み潰すように歪む。
私はかすかにうなずく。この十一年間、彼にはみっちりと剣を教えこんだ。私がいなくなっても、剣の腕ひとつで生きていけるように。その結果、彼は十六歳にして、私を凌駕するほどの剣士に成長した。彼は私の誇りだ。生涯でたった一人の、最高の弟子。
「そして、あなたに教わった剣で、父さんと母さんの仇を討たせてくれて、ありがとう……っ」
私の右手を握りしめる彼の両手に、ぎゅっと力がこもる。はしばみ色の瞳に燃え立ったのは、憎しみの炎。
「いつかあなたを倒す、その目標があったから、俺、どんなにキツい修行も頑張れたんだ……!」
私はふたたびうなずき、うっすらと微笑む。魔王軍の侵略遠征に参加していた私が、戦火に包まれた街で彼を拾ったとき、彼はまだわずか五歳だった。でも、ちゃんと親の仇を覚えていた。全身で彼を庇って抱え込んでいた母親と、彼女らを守るように剣を構えていた父親を、あっさり同時に斬り捨てた巨大な女剣士。恐怖で見開かれた幼児の瞳には、大剣を握りしめた恐ろしい姿の魔族が映っていた。そう、紛れもなく、私だ。
だから彼は私に対してずっと反抗的だったし、懐くこともなかった。私の手に彼から進んで触れてくれたのは、今日が初めてだ。
私たちが戦場で初めて視線を交わしたあの日、五歳の彼は恐怖のまなざしで私を見つめながらも、飛びすさり、母親の懐から抜いた護身用ナイフをかまえた。その一連の動きに、私は並々ならぬ剣士の才を見た。そして次の瞬間には、彼を育てることに決めたのだ。彼なら私の剣術を継げる、そんな確信があった。
人間である彼を殺すどころか庇いながら戦場から連れ出す――その行為は、当然ながら、魔王軍への裏切りを意味する。私はほかの魔族の目から逃れるために、角を隠し鱗を隠し、なるべく人間に近い姿に身を変えて、放浪することになった。幼い彼の手を引きつつ、人間の街から街へと渡り歩いた。行く先々で野盗や魔獣を狩り、路銀を稼いだ。魔王軍からもたびたび追っ手が送りこまれてきたので、戦いの絶えない日々だった。もっとも、幹部クラスの者を十名ほど返り討ちにしたあたりから、追っ手は来なくなったが。
魔族と違って脆弱な体の人間族の子供を、追っ手や魔獣から守りつつ育てるのは、それなりの苦労も多かった。だが、毎日が新鮮な驚きの連続で、楽しくもあった。人間族の子供は、魔族に比べて成長が著しい。昨日できなかったことが、今日にはできるようになっている。それがまた面白かった。もしかしたら、彼自身も己の成長を面白く思っていたのかもしれない。剣の修行中、彼の瞳は生き生きと輝いていた。そして、ありったけの憎しみを私にぶつけてきた。
憎き仇のもとで、彼が逃げ出すことなく剣の修行に打ちこんでくれたのは、私を強い剣士として認めてくれていたからだろう。その上で、彼には絶対的な目標があった。強い剣士である私を倒す、という目標が。彼のそうした闘志や憎しみを、私は好ましく思っていた。剣士として成長するために、不屈の意志は欠かせぬものだ。彼ならきっと、私を超えてくれるだろうと信じられた。魔族随一の剣鬼と称えられ、互角に戦える相手を失っていた私が、ようやく楽しめる相手に出会えたのだ。彼のはしばみ色の瞳に睨まれるたび、私の胸は期待でゾクゾクと高鳴った。
そしてついに今日、願っていたときが訪れた。
人間も魔族もめったに足を踏み入れない辺境の荒野で、私たちは対峙した。彼の申し入れによる決闘だ。彼の成長を日々見守っていた私は、喜んで決闘を受け入れた。潮時というものがあるなら、いまだと思った。彼もきっと、そう思ったに違いない。
私の剣術は、大剣という重量物による速攻必殺を旨とする。そんな剣術の遣い手が二人いるにも関わらず、戦いは長引いた。十一年間を師弟としてともに過ごしてきた私たちは、息をするよりも簡単に相手の動きが読めてしまう。睨み合いや打ち合いばかりが続き、半日経っても勝負は決しなかった。まさに互角。このままだと、スタミナの面で人間族の彼が不利になると思われた。が、先に疲れが出たのは、老いた私のほうだった。打ち合いの隙を突いて、彼はとうとう私に一太刀を浴びせた。私に当たったのは、たったの一太刀。だが、その一閃こそが、私の胸を深くえぐったのだ。剣の動きで相手の隙を誘って一撃で致命傷を与える――私が教えた通りの、膂力と瞬発力を要にした素晴らしい剣技だった。彼が剣術で私を凌駕した瞬間だった。
ちなみに私たちの周りに飛び散っている竜型魔獣は、決闘に巻き込まれただけの哀れな被害者にすぎない。決闘騒ぎが気になったのか、たまたまこの場に顔を出したのが運の尽きと言えよう。つい、いつもの魔獣狩りのように、二人で息を合わせて叩き斬ってしまった。
「私の命は――」
彼に語りかけようとしたとたんに、胃や肺から血の塊がこみあげる。それをごふっと吐き出して、私は掠れた声で言葉を続ける。
「私の命は、あまりにも長すぎた。千年のあいだ、生きることに、惓んでいた。強さも極まり、誰も相手がいなくなり、王の命令のまま、ただ剣を振るうだけの、虚しい日々だった。だが、君がいたから、この晩年は、とても充実したものになった。永い人生のなかで、君と過ごした日々が一番楽しかったよ。ありがとう」
そう、あの日、あの場所に彼がいたから、私の目はふたたび光を取り戻すことができた。彼の闘志が、虚無の闇から私を救い出してくれたのだ。
淡い微笑みとともに感謝を告げると、彼はカッと怒りで頬を赤くした。さっきまで流していた嬉し涙は、ひっこんでしまったようだ。
「そんなの、まるで、俺のせいで師匠が幸せだったみたいじゃないか――」
「幸せだったよ。いまもね」
私は満足の笑みを浮かべ、目を閉じる。彼の手中から指先を引き抜いて、ぱたりと地面の血溜まりに落とす。
……が、ひとつ確認し忘れていたことがあった。おちおちと死んではいられない。薄く片目を開ける。
「ところで、私が死んだら、君はこの後、どうするつもりだ?」
ここから魔族の足で二日歩けば、人間の街がある。さらに五日歩けば、剣士の腕を活かしやすい大都市がある。まずはそこに行って、定住するなりふたたび旅暮らしをするなり、とにかく彼なりの幸せを掴んでほしいと思っている。切り刻んだ竜型魔獣の鱗や角を持っていけば、当分の路銀になるだろう。
「お、俺……? このあと……?」
彼は面食らったようだ。言葉に詰まる。瞳からスッと炎が消える。――ああ、これはいけない。生きる目的を失った彼は、ただの抜け殻になってしまう。私は彼の感情のこもった瞳が好きなのに。
ひとつ息をついて、私は上半身を起こした。
彼のはしばみ色の瞳が、驚きで丸くなる。
「君の修行の課題はまだ残っている。詰めの甘さだ。本当に殺したければ、くっちゃべってないで、ちゃんととどめを刺さなければならない」
「まさか……」
私は胸の傷口に手を当てる。血はすでに止まっていた。それどころか、ざっくり開いた傷も塞がりつつある。さすがに服は修復できないので、あとで繕わなければならないが。
「前にも教えただろう。魔族の回復力を侮るな、と」
彼は魔獣や人間の野盗を相手にすることがほとんどだったから、この回復力にはぴんとこないのかもしれない。
「心臓をえぐった程度じゃ死なない。首を切り落とし、さらに脳を叩き潰すぐらいはしないと」
「そんな、まさか……」
彼は愕然とした表情でその場に崩れ落ちた。私は思わずニヤリと笑った。他種族の絶望顔にゾクゾクしてしまうのは、魔族として抗えない性(さが)なので許してほしい。
「魔族はこの頑丈な体があるから、怪我知らず病気知らずで、長生きなんだ」
そのせいで、生きることにも飽きやすい。
「とはいえ、この体も人間で言えば九十歳になる。寿命は近い」
「嘘だろ、ずっと三十代にしか見えないのに!?」
それは私が人間に化けているからだ。ただ、二十代の女性に化けているつもりだったので、彼の反応はすこしショックだった。老けて見えるのは言動のせいか。
「私の寿命が尽きるよりも先に、完全に引導を渡してみろ。それができなければ、仇を討てたとは言えないぞ」
「無茶言うなよ、人間とあまりにも違いすぎるじゃないか……」
彼の拳が、悔しげに地面を叩く。
「これでも、人間に寄せているつもりだが? 私が全身を鱗で覆ったら、その剣では歯が立たないぞ。いや、刃が立たないぞ」
「なっ」
私にハンデがあると知って、彼がますます絶望に顔を歪める。
「それに、君との戦いでは、魔族の魔術を使っていない。私が闇の魔術を使えば、君などあっという間に死霊術師のエサになる」
「そ、そんな手加減だらけの戦いであんたを殺したって、ちっとも喜べないだろうが! 正々堂々と勝負しやがれってんだ!」
私を睨みつけた彼は、屈辱で顔じゅうを真っ赤に染めていた。潤んだ瞳には、憎しみの炎がふたたび強く灯っている。私は頬が緩むのを抑えきれなかった。
「私は正々堂々と、剣術だけで君と勝負したつもりだよ。剣の腕前では、君の勝ちだ。だが、戦場で生きる剣士としては、君はまだ甘い、ということだ」
「くそっ! 俺は魔族の師匠と戦いたいんだよ! 魔族のあんたを殺したいんだよ!」
「そうか、では、次の旅の目的は、魔族化した私をも殺せるような剣の入手だな。よし、聖剣を探そう。聖剣なら闇の魔術にも抗える。魔王軍にだいぶ折られたとはいえ、世界のどこかには、まだ何本か残っているはずだ」
私はウキウキと立ち上がった。傷はもう完全に塞がっている。失った血も、そこでくたばっている魔獣の肉を齧れば、すぐに取り戻せる。
「君の本音が聞けて嬉しかった。たまには死んだフリも悪くないな」
「こっ……殺してやる! 絶対に、絶対にだ! 絶対に師匠を殺してやるからなぁっ!!」
荒野を震わせ、彼の咆哮が響き渡った。この素晴らしい声量は、鍛え上げた腹筋や肺活量の賜物だ。弟子の鍛錬の成果に満足しつつ、私は自分の大剣を拾い上げ、背中の鞘にカチリと収めた。
「その日を、ずっと待ち望んでいるよ」
彼の仇として、師として、育ての親として、彼が彼自身の幸せを見つけるまでは、まだまだくたばるわけにはいかない。楽しい日々は、これからもしばらく続きそうだ。
自分の親がここまで
育ててくれたから今の自分が
居るんだろうな感謝感激
あなたが居たおかげです♪
「あなたがいたから、『選択を誤った』のか『ミスを回避できた』のか、『新しい発見ができた』か」
何かの困難に耐えることができた、なんてバリエもあるんだろうな。過酷なダイエットとか。某所在住物書きは己の腹をプルプル、掴んでは上下に揺らした。
「あなたがいたから『そこに行くのをやめた』とか『アレを食えなくなった』とか、『彼は彼女と別れた』とかつったら、不穏なハナシも書ける、か?」
まぁ俺の場合、このアプリと、ハートくれる誰かがいたから、1年以上投稿を続けてこれたワケだが。
物書きは腹を突っつき、ため息をひとつ吐いて、ふと気付く――お題、全部ひらがなだな。
「『貴方が板から』も可能ってこと?」
――――――
最近最近の都内某所、某アパートの一室、夜。
防音と防振設備のよくよく整えられたそこの、部屋の主を藤森というが、
心地良く響く木材の切断音とサンドペーパーの往復を、その発生源を、ポカン顔で見つめている。
シャッシャッシャ、シャカシャカシャカ。
完全に手慣れた作業は、趣味の賜物とは思えない。
藤森の職場の後輩と彼女の趣味仲間が、驚異的な手際で木材を――間伐杉の中古板材を加工していく。
「ヤバくない、私達、ツー様の執務室のポールラック錬成してるよ。すごいよ」
後輩が言った。
藤森は「ツーサマ」なる単語を知らない。
「あのね。ルー部長のコート掛けたい。先輩さんの丈に合わせて作って良き?良きよね。ありがと」
後輩の趣味仲間が言った。
藤森は「ルーブチョウ」も知らない。
後輩よ。 後輩のご友人よ。
あなたが いた から つくりだしているのは、
本当に、ほんとうに、サマーコートやストール、マフラーあたりを掛けるための、ポールラックか。
そのにんしきで、 あっているのか。
設計図も説明書も無く図面を引いて、迷いなくノコギリを動かし、ヤスリをかける淑女2名を、藤森は奇跡の所業かプロの本気でも見る心地でいた。
「『プロ』?私達、完全にアマチャンですけど」
「そうそう。本業のレイヤーさん、もっと神だし」
すべての発端は先日。メタフィクションな物言いをすれば、前回投稿分。
藤森は己の趣味によって、季節の花と山野草を、それから子狐と子狸の相合傘を、写真におさめた。
コンコンとポンポコの愛くるしい風景を、藤森の後輩がいたく気に入り、データのプリントを要請。
そこからアレよコレよとハナシがトントン進み、いつの間にか後輩の趣味仲間が合流し、
近くの神社でハンドメイド衣装の着用例の撮影、
同社で自作概念アクセサリー着用例の撮影、
少し移動して云々、かんぬん、以下略。
日頃、動植物や景色だけを撮る藤森。後輩とその趣味仲間に頼まれるまま、数時間たらずで一生分、人間とアクセサリーと衣服を撮った。
『写真が趣味でも「美しい写真」の撮影は高等スキルだし、撮影場所のコネと人脈はひとつの才能』
写真撮影の礼として、藤森の後輩と彼女の趣味仲間は、無償で家具ひとつの作製を請け負った。
その家具がポールラックだったのだ。
『「写真撮影と家具ひとつが釣り合わない」?
いや全然等価交換だけど?』
ダメ元で「実は」と申し出た藤森の部屋に、後輩が杉の板材を持ってきたときは、酷く驚いた。
冗談だと思っていたのだ。己の写真に一切の価値を認めていない藤森であったから。
ぶっちゃけ「あなたがいたから」のお題解消ゆえの苦しまぎれなこじつけであることは、事実ではあるものの、深く気にしてはいけない。
「こっち切るの終わった。ヤスリ手伝う?」
「大丈夫。先輩さん先に測っといて」
「おけ」
本当にこの重労働が、私の写真撮影と等価なのか?
藤森のポカン顔は今もなお継続中。
後輩とそのお仲間の手により瞬時に、かつ端材少なく形を変えていく板材を、それこそ、ポカン。
後輩よ。 後輩のご友人よ。
本当に、本っ当に、あなたが板から、流れる無駄のない作業と所業で作っているそれは、私の趣味道楽なんかと釣り合う価値であるところの家具か。
藤森はただただ、深く首を傾けた。
「先輩、先輩立って両手広げて」
「……」
「大丈夫ヘンなことしないから。
はいピシっと立って。もちょっと腕上げて。
はーい、はーい。ほいほい……」
悩んだ苦しんだ
でもそれはとても大事だった
脇目を振っても身体は動かない
向かおうとする先にはやっぱり君がいる
今は遠い遠いところで
元気で好きなことをして
自由をふりかざす
そんな憧れのまま
それでいいの
それがいいの
あなたがいたから
ああ、ほんとに、クソッたれ。心の中で舌打ちする。
ここ数日どこのゴミ箱を漁ってもろくな食べ物が見つからず、空腹のあまりつい闇夜に紛れることを忘れてしまった。
背後に迫るガラの悪い男たちの怒号。複数人の足音。捕まったら終わりだ。今だけはこの目立つ大きな尻尾や耳が忌々しい。
走って、走って、なけなしの力を振り絞り目の前の高い柵を飛び越えた。
転がり落ちた先はどこかの金持ちの庭のようで、花の香りが漂っていた。
綺麗に整理された芝生、つる薔薇のアーチの下には寛げそうなベンチが置かれていた。降り注ぐ柔らかな陽光すら、この庭の為の特別仕様になっているかのようだ。
俺は仰向けに寝転がったまま、天国にでも迷い込んだのかと錯覚した。
泥だらけで空腹に痩せ細った薄汚い姿は、この場所にはあまりにも不釣り合いのように思えた。
それに、落ちたときに脚をやったみたいだ。捻挫か、それとも折れたか。さすがに一歩も歩けそうになかった。
「……終わりか」
ぽつんと空に呟いた後に思った。
別に、俺がここで終わったからって誰が困るって言うんだ。俺を売ろうとした汚ねえヤツらか、俺を買おうとした気色の悪い金持ちか。だったらざまーみろ、だ。
薄い笑いが口元に浮かんだ、そんなとき──
「……だれか、いるの?」
存外近くに聴こえた幼い声に、俺は肩をビクつかせた。咄嗟に唸って威嚇しようと半身を起き上がらせるが、その小さな姿を見た途端、俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
肩のあたりで切り揃えられた艶々の黒髪は、水色のリボンで飾られている。くるくると丸い青灰色の瞳。花柄のレースで飾られた高級そうなワンピースは、間違いなく目の前の女の子がこの屋敷の子どもであることを示していた。
「おい、近づくな。俺は悪いヤツかもしんねーぞ」
我ながら何言ってんだ、と自嘲したもんだ。
わざわざ脅しかけたりしなくたって、この子はあと数秒もしないうちに逃げ出して、大人達を呼びに行くだろう。そうして俺は、この庭からつまみ出されてお終いだ。
けれど、女の子は逃げ出すどころか俺におそるおそる近づいてきた。
「けがしてるの?」
舌足らずな甘い声。
頷いて返事をすると、小さな手のひらが躊躇いがちに伸びてくる。子ども特有の温かい体温が、俺の髪を優しく撫でさすった。
「よしよし。よしよし……いたいの、いたいの、とんでけ」
そう言って心配そうに見つめる彼女を、俺は食い入るように見つめ返した。
そんなことで痛くなくなるわけないだろ。そんなことより、もう何日も風呂なんて入ってない。俺なんかに触ったらこの子の綺麗な手が汚れてしまう。そんなことばかりが気になって。
「あ、あのね。おにいちゃん、おなまえは?」
「……────」
思わず素直に答えてしまう。銀色の髪だから……誰がつけたのかもわからない、安直な名前だった。
「わあ、かっこいいね。すごく、つよそう」
「別に……」
彼女が口にするとつまらないと思っていた名前も特別な響きをもって聞こえてきた。何だか急にいたたまれなくなって視線を逸らしていると、気が抜けたのか腹が思いっきりぐるるると鳴った。
「おなかすいてるの? あのね、クッキー、たべる?」
小さなポシェットの中から布に包まれたクッキーが何枚か取り出された。香ばしい小麦とバターの香り。もう何日も水以外口にしていなかった俺は、余裕なく奪い取るように口に含んでしまった。濃厚で甘い味わいが口いっぱいに広がり、つい大きな尻尾がバフバフと揺れてしまった。
「わ。……えへへ。よかったぁ、おいしいね」
まるで自分のことみたいに、彼女はふにゃりと嬉しそうに笑った。
思えばこのときには既に魅せられていたんだろうか。いやいや、そんなワケ。ないか。あるか……?
ともかく、この出逢いから10年以上ずっと、お嬢は俺のお姫さまで、女王さまで。
それから、俺の大切な……
お見合い結婚で
どうも性格があわないようで
しょっちゅう愚痴を言うわりに
一緒に喫茶店に行ったり
子供や孫のいいところを見つけると
自分に似たんだとお互い言い張ったり
なんだかんだ言って
家族が大事な父と母
あなたがいたから生きています
【あなたがいたから】
今生きてる
ずっと伝えたかった
ありがとう
あなたと出会って、
いろんなものを一緒に見て。
隣にあなたがいてくれたおかげで、
たくさんのことを知ることができた。
あなたがいたから、
わたしの世界はより一層輝いて見えた。
だけど、
あなたの傍に、わたしはいるべきではなかったみたいで。
あなたに、たくさん迷惑をかけてしまった。
あなたのことが大切だから、
これ以上あなたを苦しめたくないから。
わたしは身を引くことにした。
それでも、
あなたがいたから、
あなたと出会って過ごせたことが、
わたしにとっての幸せだったから。
この気持ちだけは、
宝物みたいに、大切にすることを許してほしいな。
あなたがいたから今の私があるのに、これからは一人で歩いていけと言うの?
「…ひどい人」
この空白もこれまでの存在証明だから、痛みさえ消えなくていい。いつか伝えたかった言葉を見つけられた頃、あなたに会いに行こう。
私の姉は運がものをいうゲームが恐ろしく強い。
ことモノを賭けたりしようものなら絶対負けない。
子供の頃、お客人からの頂き物のまっずいチョコを
ポーカーで負けた方が一つ食べるという賭けに
安易に乗ってしまったことがあった。
とはいえワンチャンスポーカーである。
こんなもんカード運以外の何物でもないと思うし
普段の勝率は大差あるわけでもない。
…まさかの10連敗であった。1個も勝てない。
苦くてまずいチョコを立て続けに食わされ
とうとう続行を断念したという、まさに苦い思い出がある。
これはほんの一例に過ぎず、何度か姉にこの手のことを
持ちかけられる度にコテンパンだった私は
早いうちから自分にはたいした運はないと理解した。
運任せのゲームは勝てる気がしない。
ま、おかげで大人になって
賭け事で身を持ち崩すようなことになってないのは
姉がいてくれたからなのだろうか。
(あなたがいたから)
あなたがいたから、
ここまでこれたって事も多いです。
たくさんの人のおかげで、
感謝してる。
みんなダイスキ(*^^*)
#あなたがいたから
あなたがいたから
このあなたってのは人限定か?もしそうなら俺はなにも書くことがなくなるのだが。
書くことがないのでどうしようか。今日の天気の話でもするか。
今日もまた雨がふっている。気温が下がってエアコンいらずなのは助かるけどこうも雨がふるとやんなっちゃう。
休みの日なら恵みの雨とも思えるけどバイトの日に雨は勘弁してほしいものだ。かっぱ着るのめんどくさいんだよね。
それと普通のパンツだと濡れるから防水パンツにしないといけないのもめんどくさい。早く梅雨が終わってほしいものだ。
#あなたがいたから
貴方と出会ってから、どんな時も貴方がいたから、いてくれたから、私は、今日も足掻きながらも生きれてる。そう。貴方が私の生きる力なの。私のどん底の様な人生から貴方が抜け出させてくれて、精一杯、私に幸せって思える人生を与えてくれた。今日だってそう。ホントは、一人で見たいかもしれない推しのイベントに貴方は、私を呼んでくれた。わざわざイベントの話を話してくれた。ホントに、私は、貴方と出会えて付き合えて同棲出来て毎日が輝いて幸せです。貴方と出会えたから、今日も明日も未来も生きていける。本気で変わろうと思えたのも、貴方と付き合えてから、沢山変われたのも、全て貴方と出会えたおかげ。婚約指輪も高い思いしてまでも買ってくれたね。毎日、この指輪のおかげで、私の人生は、更に輝いてるよ💍🤍𓈒𓏸いつもホントにありがとう。これからもずっと大好きです♥️
あなたがいたから
今の私がある
あなたがいなかったら
今の私はいない
今の私に不満しかない
最悪ぅー
無理だった。ほんとに無理だった。
クラスメイトから半分ノリで推薦されたミスコン。
何かの手違いか、神様の気まぐれか、私は最終選考まで残ってしまった。
ただここまで残れたのは容姿だのポーズだの、外見が良ければまぁなんとかなる選考が多かったからだ。
最終選考はまさかの歌唱。聞いていない。
クラスメイトをキッと睨むと、曖昧な笑顔を返される。誰も私がここまで残るとは思っていなかったのだろう。当の本人だって思わなかったのだから。
他の候補者の『アイドル』を聴きながら、私は手に汗を滲ませていた。あぁ、なんて可愛い声。
「石沢 穂花さん、出番です」
私の名前が呼ばれた。ステージに立つ。
帰りたい。こんな大勢の前で歌う勇気は無いし、あんなに可愛くに歌えない。
助けを求めるように観客席を見渡すと、見覚えのある綺麗な黒髪が目に入った。私の視線に気づいてか、彼女の口が動く。
「がんばれ」
その瞬間、私の中で何かに火がついた。
「優勝おめでとう!」
ミスコンの後、私はトロフィーと共に、クラスメイトに囲まれていた。
「あんな歌上手だったんだ!」
「最高だった!!」
「みんなびっくりしてたよ!」
みんなの言葉に笑って返しつつ、頭は別のことを考えていた。あの時、私の緊張を全て吹き飛ばしてくれた、私の大好きな人のことを。
あなたがいるから、俺は頑張れる。
この幸せをずっと守りたい。
明日はあなたの誕生日。
一番あなたが喜んでくれるものは何だろう。
悩んだ挙げ句、友人に相談することにする。
あいつなら、俺の彼女のことも知っている。
友人の家を訪ね、すべてが覆る音を聞く。
そこに、あなたがいたから。