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無理だった。ほんとに無理だった。

クラスメイトから半分ノリで推薦されたミスコン。
何かの手違いか、神様の気まぐれか、私は最終選考まで残ってしまった。
ただここまで残れたのは容姿だのポーズだの、外見が良ければまぁなんとかなる選考が多かったからだ。
最終選考はまさかの歌唱。聞いていない。
クラスメイトをキッと睨むと、曖昧な笑顔を返される。誰も私がここまで残るとは思っていなかったのだろう。当の本人だって思わなかったのだから。
他の候補者の『アイドル』を聴きながら、私は手に汗を滲ませていた。あぁ、なんて可愛い声。

「石沢 穂花さん、出番です」
私の名前が呼ばれた。ステージに立つ。
帰りたい。こんな大勢の前で歌う勇気は無いし、あんなに可愛くに歌えない。
助けを求めるように観客席を見渡すと、見覚えのある綺麗な黒髪が目に入った。私の視線に気づいてか、彼女の口が動く。
「がんばれ」
その瞬間、私の中で何かに火がついた。

「優勝おめでとう!」
ミスコンの後、私はトロフィーと共に、クラスメイトに囲まれていた。
「あんな歌上手だったんだ!」
「最高だった!!」
「みんなびっくりしてたよ!」
みんなの言葉に笑って返しつつ、頭は別のことを考えていた。あの時、私の緊張を全て吹き飛ばしてくれた、私の大好きな人のことを。

6/21/2024, 2:06:05 AM