わたしの中には小4のわたしがいる
その子は純粋で、世間を知らず、今も父の帰りを待っている
しかしその子は達観していてどうも今のわたしを憐れんでくれているようだ
小4のわたしが可哀想だと叫べば、彼女が耳元で囁く
「だいじょうぶだよ」
「もういいんだよ」と
苦しい辞めたいと叫べば、彼女が耳元で囁く
「だいじょうぶ?」
「どうしたの?」と
世界の終わりまでキミと共にいれば、心からの笑みを浮かべてくれますか?
正直でいることはいいことなのか
一概にそうとはいえない
なにか悪いことをした時に正直でいることは大切だけれど
だれかを傷付けないためには時に嘘をつかなければならない
人を守る嘘をつくなら泥棒にはならないんだろうか
閻魔様もゆるしてくれるだろうか
あなたはゆるしてくれるだろうか
今日は学校で幼稚園実習があった
わたしが昔通っていた場所でもあるそこには、わたしの思い出がたくさん埋もれていた
いつも先生が立ってチェックしていたトイレ
水槽と体のサイズが明らかにあっていない金魚
ぽつんといる亀と脱皮したてのザリガニ
走り回るのに最適だと思っていた遊戯室は片道大股十歩
背が高いと思っていたマリア様の像もいまでは背丈を越していた
そこには確かにあった思い出をいつしか通り越していたんだ
でも、わたしはここにいたという事実が心を動かす
年長の時にお世話になった先生が目に入ったけど、どうせ覚えてないだろうと思って、通り過ぎたら
「〇〇ちゃん!!」と呼び止めてくれた
その時に広がった安心感と心の暖かさはあの時の純白で無垢な感覚のままだった
月にも願いを込めていいの?
いや月に願いを込めるなんて縁起が悪い気がする
星に願いを込めるのはずっと空で輝いてくれているからだろう。月は欠けてしまう。
いや、まてよ
三日月の時に願いをかければそのあと徐々に満月になっていくから逆に縁起が良さげじゃないか?
縁起がいいとか悪いとかそんなことをいちいち考える自分の中は、もう幼い頃の無垢さと爛漫さは消えてしまったようだ
「逃げたらいけない」
そう父に言われてわたしは育った。
逃げることは悪。
立ち向かうこそ正義なんだと何度も何度も言われてきた。
ジェットコースターに乗れない
「また逃げるのか」と父が言う
試合に出たくない
「ふーん。そうやって逃げるんだ」と父が言う
学校に行きたくない
「学校からも逃げるのか」と父が言う
何かから逃げようとするたびにずっと頭のどこかから父の声がする。
逃げたい。辞めたい。
「そうやって逃げるのね」と口からこぼれた