あいつは先輩のお気に入り
あいつは先生のお気に入り
あいつは同輩のお気に入り
わたしはあいつが大嫌いだ。
顔が可愛いだけで、背が小さいだけでちやほやされてる。
だからあいつが持て囃されるたびに、イライラする
あいつはわたしの部活の同輩
典型的な女の子
泣けば許される
自分は世界の中心
私が正義
そんな心が透けて見える
あいつは許されることが
わたしは許されない
どうしようもなく自分が惨めに思える
結局ひとは顔なのだ。
中身じゃない
そんなこと言ってる奴は絶対
他人と自分との違いに気付かないクソ鈍感野郎か
顔がかわいくても振られたことのある奴だ
どうか将来
その性格のせいでなにか面倒ごとに巻き込まれてほしい
わたしはあんたの性格を指摘してあげない
落ちぶれて
惨めに
泣き喚いて
自分は世界の中心ではないと、思いしればいい
そしてその後で、
「やっぱり人は中身だよね」とか言って見せて欲しい。
滑稽極まりなくて、非常に愉快だから
わたしはきっと誰よりもきみをわかってる自信がある
最近きみの話ばっかり書いてるね
たくさんの後輩から推しとしてあがめられるきみ
「本当に先輩ってイケメンだよね!」っていわれてるけど
あの子はイケメンなんかじゃない。
どちらかというとお姫様だ。
基本受け身だし
譲ってるように見せかけて、リードされるの待ってるだけだし
「お待たせまった?」「ううん、今きたとこ」なんてできない、超遅刻魔だし
どちらかといえば甘えん坊だし
言葉が上手く作れないからって察して欲しいタイプだし、
ただ背が高くて、ショートカットなだけだろ?
本質を見てやれよ!!!
と、何度思ったことか。
わたしと別れてからのきみは、きっと全ての人から勘違いされてる
それを見てちょっと嬉しくなる自分がいる。
よかった!まだきみのかわいさは世間にバレてないんだね!
誰よりもきみを知ってる。この席は渡さない。
今日、学校の授業で最高に面白いアクティビティがあった
人の自己肯定感についてを勉強してるんだけど
その一環で
自分の背中に紙を貼って、そこにみんなから自分の好きなところを書いてもらう
昨日から見てくれてる人がいたら、
話が続いててわかりやすいと思うんだけど
あの子が、全員が書き終わった後で、一人でなにかこそこそ書いてくれているなと思ったら
あの子が、わたしの紙に
「あと大好き」と書いた
心臓が止まるかと思った
大慌てで、紙をもらってわたしも同じ言葉を書いた
明日学校に行くのが楽しみになった
10年後のわたしから、手紙が届いて欲しいとこんなに思ったことはないかもしれない
10年後のわたしの隣に立ってるのは、もしかして
約束通りあの子なんですか?
どーせ渡す相手もいないし
女子校だし
みんながくれるやつ食べてお返しすればいっか!
そんなことを考えていた矢先だった
わたしの人生は小説みたいってよく言われる
だって、彼女がいたんだ
自分はどうしたって女なのに
去年ひどい言葉を浴びせて一方的に別れた
本当の理由は全部隠して
絶対傷つけた。
だって、別れた直後学校に来なくなったから。
まあすぐ戻ってきて、新しい友達作ってたけど…
それなのに、きみは今年チョコをくれた
わけがわからない。
二年間付き合ってたのに一回もくれなかったくせに
突然わたしがご飯食べてるとこに来て
しかもなんで
なんで
食べさせてくれたの??
なんで「あーん」って言ったの???
そんなのまるで前みたいじゃん。
わたしまだきみのこと好きなんだよ
席が隣で、それだけで苦しいのに。
ずるい人
バレンタインなんて だいすきだ。
「お前のおかげで立ち直れたわ」
「〇〇のおかげでこの間の問題解決したよ!」
「お前のおかげでこないだのテスト平均点こえたよ」
「「「私の救世主だよ!!」」」
そう言われている裏で、わたしは震えている。
本当にうまく助けてあげられたかな
もっとかけるべき言葉があったんじゃないか
今困っている人はいないかな
いつのまにか誰かを助けるのが当たり前になって、困ってる人を見捨てられなくなって、自分で自分はもう限界だってわかってるのに助けてあげるのがやめられなくて
いつのまにか軋んだ体と、悲鳴を上げる感情がわたしの中でのたうち回る
「ああ、だれか私を助けてよ…」そんな言葉をつぶやいてベットの上で丸まっている
ごめんね、助けてあげられなくて。もう少しまっててね。
全部助けたその後で、救ってあげるから。
でもそれは、きっと永遠に来ないけど