No.312『手紙を開くと』
隠すように引き出しの奥にしまってあった手紙を見つけた。
あいつのことだからかっこつけたかったんだろう。
あいつは少しイタイ奴だった。
その手紙を開いてみる。
「私の大切な人に幸あれ」
は、はは…ほんとにイタイ奴だよ、お前。小説の読みすぎだっての。そんなお前に便乗してやるわ。
「お前がいないこの人生に幸せなんてねえんだよ」
溜まってた涙がこぼれ落ちた。
No.311『すれ違う瞳』
あなたの目は私の何もかもを見透かしそうで怖かった。
私が隠す秘密もあなたに対する想いも、全て。
だから私はあなたから目を逸らす。
No.310『好きになれない、嫌いになれない』
自分のことが大嫌いだった。
ずっと前から私は自分が嫌いなんだと思っていた。
でも違った。
私は、自分のことを好きになれなければ、嫌いにもなれていなかった。
自分を本当に嫌うなら自分を殺してしまえばいいだけなのに、私はどうしても自分を殺せなかった。
結局私は自分が大事でどうしても嫌いになりきることなんてできていなかった。
これは、こんな面倒くさい私の面倒くさい人生の話。
No.309『夜が明けた。』
夜が明けた。
それは僕が夜が明けるまで必死に生きたから。
明けない夜はないというけれど、死んでしまえばその人にとっての夜はもう明けないも同然。
それでも夜が明けるのは、その人が一生懸命その日を生きた証。
…さあ、また次の夜が明けるまで必死に生きようじゃないか。
No.308『ふとした瞬間』
ふとした瞬間に思うことがある。
どうして人には感情があるんだろうって。
感情がなくて、みんなが効率よく子孫を残せるように人間が設定されていたなら争いなんてものはなかっただろう。
動物たちは生き残るために戦うけど、私たちはなんのために争うんだろう。
本当に醜くて汚い。
ああ、感情なんてなければこんなことも考えずに済んだのになあ。
こんな世界、大っ嫌いだ。