No.277『手を繋いで』
もう一度手を繋いであの場所に行けると思ってた。
私たちのそんな約束は当たり前のように履行されると信じていた。
ああ、でも、もう…無理。
あの場所に行っても手を繋いでくれる人がいないんじゃ、なんの意味もないの。
No.276『どこ?』
大切な人がどこにいるのかなんて記憶を失ってしまった僕には分からない。
名前も顔も君の全てを忘れてしまったのに、君が愛おしいという思いだけが消えてくれない。
だから僕は今日も歩き続ける。…もう僕には君を見つけるという使命しか残ってない。
「ねえ、君はどこ?いるなら返事をして…僕はここにいるよ…!」
No.275『大好き』
私の周りには「大好き」で溢れている。
だから、もう十分だと思った。
私がこれ以上を望むことはわがままだと思った。
いや、違う…。これ以上「大好き」を増やして「大好き」が失われていくことが私は怖いんだ。
だからなるべく「大好き」は増やしたくない。
「大好き」が失われるその日がやってくるのを怯えて過ごす私は人生を楽しめているんだろうか…?
No.274『叶わぬ夢』
「叶わない夢なんてない!願い続ければいつかは叶う!」
いつだったかそう言っている人がいた。
くだらない。
私はそう思った。
いつかを待っていて、だけどそのいつかが訪れずに人生を終えた人がどれだけいると思ってるんだ。
叶わない夢なんてない…そんなのはいつかが訪れてくれた奇跡の人だけが言えるセリフで、それが全員に訪れると信じてやまない、現実を知らない愚か者が言ったセリフ。
ああ、でも誰かが歌ってた。
「願いは願う者だけ叶う」
…確かにと納得してしまった。
願いは叶わないかもしれない。だけど願わなければそれが叶うことは絶対にない。
それなら少しだけ願ってみてもいいかもしれないと思ってしまった。
No.273『花の香りと共に』
花の香りと共にあなたの匂いも思い出された。
ああ、そうだ。あなたはこんな匂いをしていた。
優しくて暖かくて愛おしい香り。
2度とこの香りを嗅ぐことなんてできないと思っていたし、もう忘れてしまっていたと思っていた。
でもまだ僕の中に残ってた…!!
その瞬間涙が溢れて止まらなくなった。