M.I.

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5/20/2024, 12:40:35 PM

No.4『理想のあなた』


私の理想のあなたは何があっても泣かない人──。


私は泣く人が苦手だった。
泣く人を前にすると私も泣きたくなったから。私は笑顔でいないといけないのに。

私の理想をあなたに伝えた時からあなたは泣かなくなった。
私はいつも白いベッドの上から、笑顔のあなたを見た。
そんな私の腕や体にはいくつもの線が繋がっていた。

いつしか体は動かなくなった。唯一動かせる目を動かしてあなたを見ると、相変わらずあなたは私の理想のままでいてくれた。

指すら一ミリも動かない。息さえ上手く吸えない。ああ、もう終わりなんだなと本能的に悟る。
悟ってしまった瞬間、あなたを見た。あなたは泣いていた。
「ごめんっ…君の理想のままで見送れなくて…っ……」
そう言いながら泣いていた。
その言葉を聞いて、自分の目にどんどん涙が溜まっていくことに気づいた。

 ──笑顔で逝きたかった。
 ──あなたが私を思い出す時、泣き顔じゃなくて笑顔を思い出して欲しかった。
 ──最期に見るあなたの表情は笑顔が良かった。
だけど…と思ってしまう。

私の死に涙してくれてありがとう。余命がある私を愛し続けてくれてありがとう。

理想のあなたは深く強く私の中に残っています──。

5/19/2024, 10:41:21 AM

No.3 『突然の別れ』

「すぐ帰ってくるからね、行ってきます」

 ──君の「ただいま」は2度とかえってこなかった。

どうして、なんで、いやだ、信じたくない

今でも私は君の「ただいま」を待ち続けている

5/18/2024, 10:49:38 AM

No.2『恋物語』

「好きです」

から始まって

「来世でまた逢おうね」

で終わる。

そんな恋を…私は望んでいる。

5/17/2024, 1:59:26 PM

No.1『真夜中』

真夜中、その時間に私が起きていることは珍しい。起きているとすれば長期休みくらいだ。
私はその時間が好きであり、嫌いである。そんなおかしな等号が私の中では成立してしまっている。
真夜中は好きだ。誰にも邪魔されない、私だけの時間だと感じるから。
真夜中は嫌いだ。1人でいないといけない時間が長いから。
寂しい──
そんな弱音を吐いても誰にも届いてはくれない。
それが苦しかった。
ある日、真夜中に曲を聴いた。ただぼーっと聴いていただけだが、ある歌詞が聞こえた。

『明けない夜はない』

どこかで一度は聞いたことのある、この言葉。
それはなぜだか私の頭の中で幾度も再生された。
その夜はいつもとは違い、一瞬で過ぎていって、気づけば朝になっていた。
ああ、そうか。『明けない夜はない』のだ。
それに改めて気付かされた私は、今でも真夜中の1人が嫌いだと感じるが、以前よりかは前向きに考えられるようになったのだった。